第二十五訓
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「天人!?」
桂も天人達の存在に気付き驚いた様に声を上げて咄嗟に刀に手をかけた、私も場合によっては斬り捨てるつもりなのでいつでも斬りかかれるように足に力を込める
真剣に天人達と向き合っていると背後で高杉の笑う声が聞こえてきた、それと同時に嫌な予感が頭をよぎる、何故ここに天人がいるのか、答えはおそらく簡単だろう
「高杉……アンタまさか」
「……そう睨むなよ花無為、ヅラ聞いたぜ、お前さん以前銀時と一緒にあの春雨相手にやらかしたらしいじゃねぇか、俺ァねェ連中と手を組んで後ろ盾を得られねぇか苦心していたんだが……」
刀から手を離さず高杉を横目に見て睨み付けると高杉は何が面白いのか、肩を震わせてクスクスと笑いながら桂に向かって話し出した、桂と銀時が春雨に喧嘩をふっかけたのは初耳だったが高杉は事もあろうにかつての仲間をダシに天人と手を組むつもりのようだ
ギリッと奥歯を噛み締め思わず高杉の方を向いて叫びたくなったが今は高杉に噛み付いている暇はない、天人達が私達を斬る為に降りてきたのだそうなるとこの目の前に居る鬱陶しい天人達を片すのが先だ、そう考えて刀に手をかけた時高杉がまた話し出した
「お陰で上手く事が運びそうだ…お前達の首を手土産にな」
「高杉ィィ!!」
もはや私達を取引の為の道具としか見ていない高杉の発言にいよいよ桂が激昴した、桂はまだ高杉に対して怒りと言う感情をしっかりと感じているあたりやはり根は優しい人なのだと分かる、私はもう高杉に対して期待をする事をやめた、もうコイツには何も言っても意味が無い、私には救う事は出来ない
「言ったはずだ……俺ァただ壊すだけだ、この腐った世界を」
高杉は私達二人を見下す様に嘲笑いながらいつもより地を這う様な低音でそう言い切った、まるでそれが攻撃の合図かのように天人達が私達に向かって攻撃を仕掛けてきた、力を込めていた足を動かし天人の一撃目を避けて斬り捨てようと刀を抜いた瞬間目の前の天人は呻き声を上げた後大きな音を立ててその場に倒れ込んだ
天人の代わりに私の視界に入ってきたのは珍しく完全に激怒している時の桂の表情だった、思わず刀を落としてしまいそうな程驚いてしまう、が、桂は一度ゆっくりと目を瞑った後静かに深く呼吸をした、どうやら心を落ち着かせているらしい
「ねぇ、大丈夫?」
「……ああ、少し頭に血が上っただけだ……それより甲板に置いて来たアイツらが心配だ、戻ろう花無為」
思わず声をかけると桂はゆっくりと目を開いて私にそう言った、確かに私も新八と神楽が心配だ、それに先程の建物が崩れる様な音の原因も気になる、そう思い頷くと桂はそのまま来た道を戻って行った、私も後ろから着いて行こうとしたがふと高杉の事が気になって先程まで高杉が居た方向に目をやった
しかしそこには既に高杉の姿は無く、恐らく天人に構っている間にどこかへ行ってしまったのだろう、高杉はすっかり変わってしまったのだ、いや、それは私もなのかもしれない、結局どちらが正解なのか分からない、先生の為に世界を壊すのも、先生の為に世界を守っていくのも、視点が変わればどちらも正義だ
だが、私はせめて先生の言葉を大切にして、少しでも命を助けられたと言う何物にも代えがたい恩を真選組に返していきたい、そのためにはこの世界を守っていく必要がある、どんなに、どんなに憎くても
「花無為」
「うん」
ボゥッと空を眺めながらそう考えていると通路の奥から桂が呼んできた、小さく返事をして私はようやく空に背を向けて歩き出した、すぐに桂に追いついてそのまま走り出す、通路では先程までは影も形もなかった天人達の姿が見える
私達を、正確には桂を見る度に、大声を上げて襲いかかってくる天人を斬りながら走るペースは落とさずに進み続けた、隣に桂が居る為もあってか攘夷戦争の時の事を思い出してしまいそうだ、もし今あの時に戻れたとしても私は高杉を救えるだろうか、あの時何か一つでも選択が違っていたら今も昔の様に皆で笑い合っている未来があっただろうか
いや、そんな事は無いだろう、きっとどうやっても私達はいずれこうなる運命なのだ、一瞬頭をよぎった呑気な考えをかき消す様に私は目の前に飛び出してきた天人を斬り捨てた、そしてベットリと刃先に付着した血を払い落とす
「行こう」
改めて桂にそう言って私は走り出した、もう、高杉が居た方向には目を向けようとは思わなかった、例えばの話はもうしなくていい、過去を振り返るのはもうやめにしよう、そう考えて私は走るスピードを速める事にした