第二十四訓
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「刀は斬る、刀匠は打つ、侍は……なんだろうな……まァなんにせよ、一つの目的のために存在する物は、強くしなやかで美しいんだそうだ……剣のように」
腰に差していた刀をゆっくりと引き抜いて高杉は刀身を空に掲げながら話し出す、つまりは岡田似蔵と言う人を斬る事だけに執着してもはや刀と化した一人の人間は一つの目的のためだけに存在している、その姿が美しい……と、高杉は言いたいのか
そんな狂気じみた言葉で人間を、仲間が死ぬ事を正当化するなんて、私は許せない
「ククッ…単純な連中だろ?だが嫌いじゃねぇよ……俺も目の前の一本の道しか見えちゃいねぇ……あぜ道に仲間が転がろうが、誰が転がろうがかまやしねぇ」
刀を仕舞い肩を揺らしながら笑ってそう言う高杉の後ろ姿を見て私は怒りが限界点に達した、なんとなく小難しい言葉を使っているが、結局は目的の為なら手段は問わず、いくら犠牲が生まれようが、仲間がどれだけ死のうが知らぬフリをする……そんな大将に高杉は成り下がったのだ
「いい加減にしろよ高杉」
気が付いたら私は高杉を鋭く睨み付けながらそう声を発していた、隣で桂が驚いた様に肩をビクつかせたのが見え、当の高杉はゆっくりとした動作で私の方を向く、高杉のどこか虚ろで掴み所がない目と目が合った
私が怒っているのを見ると高杉は鼻で笑って船の手すりの部分に体をもたれさせ、口角を上げたまま私を見据える
「あの結果に行き着く事を知ってて引き留めようともせず何もしなかった癖に、それを美しいだ何だ小難しい言葉を並べて勝手に正当化して……そんな奴は一つの隊をまとめる資格なんてない」
「何が言いたい花無為」
「高杉晋助は大将の座にふさわしくないって言ってんだ、そんな奴が国を変えるなんて大層な事を抜かすな」
「……花無為、幕府の犬のお前が、鬼兵隊が一人死んだ事に対して腹を立てられる立場かよ、むしろ減って喜ぶべきだろ」
高杉を睨み付けながら今の高杉の思想に対しての不満をぶつけると口角を上げて余裕のある素振りをしていた高杉が段々と真剣な表情に変わっていく、一つの隊をまとめる資格がないと言い捨てると高杉は目を細めた
続けざまに国を変えようとしている事に関しても不満を漏らすと高杉は顔を顰めたまま真選組の立場の私に対して静かに苦言を呈した、真選組としての裟維覇花無為ならその言葉に思わず舌を巻いてしまっただろう、だが、今の私は桂の友人であり、銀時の友人であり、そして高杉の友人としてここに立っているのだ
「確かに真選組の私がそんな事を言ってはいけないな……だが、今の私は高杉の友人の一人としてここに居るんだ、だから自分の隊すらも破壊しかねない行動はやめろ」
「俺達を裏切った奴がよく友人なんて軽々しく言えるな花無為ィッ!!」
若干頭も冷やされて今度は少し諭す様な口調で高杉に言ったがどうやら地雷を踏んだらしい、高杉は私が言った"友人"と言う単語を聞いた瞬間目の色を変えて私に反論した
裏切り者、その言葉が重く背中にのしかかってきた気がした、しかしそれと同時にいつか銀時と話した時の言葉を思い出した、正々堂々としていればいいと銀時は言った、そうだ、この道を歩くと決めたのは他の誰でもない私だ、曲げられない信念があったと正々堂々と高杉に言ってしまえばいい、開き直ったと思われてしまってもそれでいい
「すまない……私は先生と約束したんだ恩は必ず返すと、真選組は私を救ってくれた、だから私も真選組になって恩を返してる……例え仲間を裏切る事になっても、私は先生との約束は破りたくなかった」
今まで他の誰かに言った事はなかった先生との約束を高杉に言うと驚いた様に目を見開いた、隣にいる桂の息を飲む音も聞こえてきた、グッと一度固唾を呑んで目を瞑る、瞼の裏に先生の優しい笑顔が見えた気がした
「それと同時に仲間を助けると約束した、高杉、このままいくとアンタは孤立する、それを黙って見過ごす事は出来ない……私は確かに裏切り者だ、だが高杉の事や皆の事は友人だと思ってる、嫌われてもいい、貶されてもいい……だが私は自分の友人を助けたい」
先生の笑顔を思い出しながらポツリポツリと高杉を説得するために話しかける、岡田似蔵の件で一瞬頭に血が上ったが先生の優しい笑顔を思い出した瞬間不思議と気持ちが落ち着き始めて、私は比較的優しめの口調になった
そんな私を見て高杉は一瞬驚いた表情をした後すぐに口角を上げて私を嘲笑うかのような目で見ていた、しかし、何も言い返してこないのを見るとこんなエゴの塊を多少は納得してくれたようだ、その事に安堵しながらも決して気を緩めず高杉を見据える
先程銀時が岡田似蔵と戦っていた方向から建物が崩れ落ちる様な酷い騒音が聞こえたが、私は高杉から目を離さずにいた、銀時が負ける訳が無いと言う事もあるが一番は意識を高杉から他へ移したくなかったからだ