第二十三訓
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甲板の床に若干頭をめり込ませた桂の姿を見て私は一瞬思わず口をあんぐりと開けて呆然としてしまったが、すぐに意識を取り戻して桂をそんな状態にした神楽に声を掛ける
「ちょっ……神楽、何して……」
神楽に声を掛けようとしたが私の言葉は途中で止まってしまった、先程まで神楽を磔にしていた木材を片手に引き摺りながら新八がこちらに向かってくるのが見えたからだ、新八の表情は俯いていてよく見えないが何か嫌な予感がするのは確かだ
固唾を呑んでゆっくりと桂から離れて距離を空ける、巻き添えはゴメンだ、そんな事も知らずに桂は頭を押さえながらゆっくりと起き上がる
「イテテ……」
「てめ〜〜人に散々心配かけといて、エリザベスの中に入ってただァ~?ふざけんのも大概にしろォォ!!」
桂が起き上がったとほぼ同時に新八は桂がエリザベスの中に入ってた事に対して烈火の如く激昴しながら手に持っていた木材を桂にぶち当てた、バゴッと大きな音を立てて頬に当たり桂は吹っ飛んでいく、その桂に巻き添えを食らったのは攻撃を仕掛けようとした鬼兵隊の隊士だ
「ぐはっ」
「いつからエリザベスん中に入ってた、あん?いつから俺達だましてた?」
桂と共に吹っ飛んでいった隊士は桂の頭が顎に当たり気を失った、それは良いのだが血気盛んな鬼兵隊の隊士達に合わせて新八と神楽の怒りが相手となってはいくら桂でも少々手こずってしまうだろう、私は新八と神楽に無駄な心配はかけてないので問題は無い、静かに桂に対して合掌をする
いまだに状況が飲み込めないのか桂は目を白黒させながら新八を見上げていた、そんな桂を問答無用で見下ろす新八と神楽は私でもちょっと恐怖を感じてしまう程の剣幕だ
「ちょっ……待て、今はそういう事を言ってる場合じゃないだろう!!ほら見て!?今にも襲いかかってきそうな雰囲気だよ!?」
「うるせーんだよ!!こっちも襲いかかりそうな雰囲気!!」
桂は相当驚いているのか少々裏声で新八と神楽に鬼兵隊の隊士達が襲いかかりそうな雰囲気であると伝えるが、キレキレの新八のツッコミで足蹴にされてしまった、正直な所この三人は放置して私だけで隊士達を対処してもいいと思うが、面白いのでこのまま見届けるとする
「待て、落ち着け…何も知らせなかったのは悪かった、謝る…今回の件は敵が俺個人を標的に動いていると思ったゆえ……敵の内情を探るにも、俺は死んでいる事にしておいた方が動きやすいと考え…何も知らせなんだ……」
今にも食ってかかって来そうな新八を宥めるように桂は手を前に差し出して話し出した、確かに桂個人を標的としていたらなら死んだと思わせていた方が何かと動きやすい、思わず桂の言葉に深く頷いてしまう
しかし、恐らく二人が知りたいのはそんな難しい事ではないだろう、現に私自身もずっと桂に聞きたくてソワソワしているのだから、エリザベスとほとんどずっと一緒に行動していた新八や神楽はもっとだろう、しかし桂はそんな二人の事はあまり気にしていないようだ、目を伏せて桂は言葉を続けた
「なにより…俺個人の問題に他人を巻き込むのは不本意だったしな……ゆえにこうして……」
一向に二人が気になっているであろう話題には触れようとせず、話を続ける桂だったが、好機と見たのか鬼兵隊の隊士達が斬りかかってくる、どう迎え撃とうとか考えていると新八と神楽がおもむろに桂の足首を掴み、振り回した、慌てて身を屈めて桂の身体と衝突するのは防げたが周りの鬼兵隊の隊士達は避け切れずに衝突していく、二人の機転に思わず感心していたが
「「だからなんでエリザベスなんだァァァァ!!」」
「ふごをををッ!?」
「ああ…そっちなんだ」
二人が叫んでいる所を見ると特に隊士達の為に桂を利用した訳では無いようだ、ただ単に桂へのツッコミとして振り回しているだけらしい、身を屈めたまま思わず呟いてしまうが、ふと鬼兵隊達の方に目をやると
「うおおおおお!!」
「近寄れねェ!まるでスキがねェ!!」
「何やってんスかァ!!」
勢い良く振り回される桂によって鬼兵隊の隊士達は近寄れないと叫び、来島また子もまた戸惑いからか叫んでいた、ツッコミとして振り回しているだけとは思えない理由はどうであれ効果は絶大らしい、素晴らしいな…なんて思いながら桂を振り回している新八と神楽を見上げてしまう
しかしいつまでも桂を振り回している事は出来ない、数人は衝突した衝撃で倒れているがまだまだ刀を構えてこちらの隙を伺っている連中は沢山いる、刀だけでなく来島また子の銃撃にも備える必要がある
どう立回るべきかと振り回される桂の叫び声を聞きながら考えていた時だった、遠くの方でなにやら地鳴りの様な音が聞こえてきた、思わず周囲を見回してみるが身を屈めている視線の高さでは何も見えない
「ん?アレは……」
「オイ、アレ……なんかこっちに……」
キョロキョロと辺りを見渡していると武市変平太と来島また子も音に気付いた様で辺りを見渡した後、何か遠くの物を見つめながら呟いていた、二人が見ている方向を私も見てみると甲板の向こう側、曇り空の上に何か船の様な物がこちらに向かってくるのが見えた
「ぐはっ」
桂を振り回していた二人も気付いたようで、無造作に桂を地面に落として音の鳴る方向に顔を向けた、落とされた桂は痛そうに声を上げるが私は無視をして身体を起こした、地鳴りの様な音が段々と大きくなってくる
よく見るとエリザベスを先頭に乗せた船が衝突する勢いでこちらに一直線に向かってくるではないか、まずいと思った瞬間、ドォォォンッと大きな衝突音が響き渡り爆発と共に船が揺れて黒煙が立ち込める、船上は一気にパニックに陥っていく
「どわっ!!」
「うわァァァ!!」
「船が突っ込んできやがった!!」
「なんてマネを!!」
鬼兵隊の隊士達が揺れる船上で慌てふためき声を上げる、立ち込める煙に咳き込みながら新八と神楽の腕を掴み離れない様にする、桂もようやく起き上がっていたので四人離れない様に固まる、あわよくばこの混乱に便乗してこの船から脱出しようと考えていた時だった
「わあああああッ!!」
「なっ!!」
「ッ!!」
立ち込める黒煙の向こうから叫び声を上げながらエリザベス率いる攘夷浪士が鬼兵隊に向かって突撃してきたのだ、予想外の第三勢力に来島また子と武市変平太は驚きの声を上げた