第二十二訓
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まるで頭に巨大な金槌が振り下ろされたかのような衝撃だった、あの銀時が死ぬ訳が無いとは思っているが今だに意識を取り戻していないと言うのは明らかに危険な状態であるのは間違いないし、新八の話を聞くと私以上に傷が深い事が分かる、あんなに大きな紅桜の刀身を腹部に突き刺されたなんて、想像するだけで意識が薄れる
自分ではショックを受けた事をあまり顔に出さないようにしていたが新八の反応を見ると相当顔に出ていたらしい、心配そうにこちらを見ている新八の頭に手を置いて大丈夫だと言いながらポンポンと頭を撫でた、正直自分に言い聞かせているがほとんどなのだが
「銀時がそんな状態だと心配だよな、手負いで悪いが何か私に出来る事なら力になるから言ってくれ」
正直上手く笑えているのか自信が無いがこれ以上新八に負担をかけたくないので口角を上げてそう言うと新八は思い出したかのように声を上げた
「ありがとうございます……そう言えば花無為さん傷の方は大丈夫なんですか?てっきり僕と銀さんは花無為さんが死んでしまったのかと……」
「オイオイ、縁起でもない事言うなよ……」
「だって、岡田似蔵は血塗れの花無為さんの警察手帳を僕たちに見せてきて……てっきり……」
「……あー、あの時盗られたんだったな、何の為に使うのかと思ったらそんな下らない事の為に使われたのか……」
私の警察手帳は確かに岡田似蔵に斬られた時に盗られたがまさか銀時を挑発する為に盗られたとは思わなかった、よく斬った相手の髪や所持品を倒した証として持っていく人斬りの話を聞くので岡田似蔵もそれに似た類だと思っていた
それよりもそんな風に使われたのであればきっと銀時は私が死んだと思っているのだろうか、攘夷志士時代も一度死んだと思われていたが私は一体何回死んだと思われればいいのだろうか、また、いちいち説明するのが面倒だと思い新八に気付かれないように溜め息をついた
「でもあれだけ出血していたのに動いて大丈夫なんですか?」
「ああ、多少なら大丈夫だ」
新八は私の傷の状態を心配しているようだったが大丈夫だと伝える、心配してくれている新八には申し訳ないが紅桜という物で繋がっている事が明確となった今、一番岡田似蔵や高杉に近いのは銀時達だ、手伝う事を口実に一緒に行動していれば近いうちに高杉の所に辿り着く事が出来るだろう、高杉の場所を突き止めたら真選組に連絡して一斉攻撃を仕掛ける事が出来る、聞こえは悪いが新八を利用する手が一番最善だろう
考えを巡らせていると新八が懐から水に濡れた紙を取り出した、所々滲んでいて読めない部分がある、その紙を一目見た後新八は墓の前に座ったままのエリザベスに近付いた、傘を掲げたまま私も一緒に新八と動く
「エリザベス……神楽ちゃんが帰って来ないんだ、今朝定春だけが万事屋に帰っててこれを……雨に濡れて所々見えないけど地図みたいだ……」
新八の言葉を聞いて私は思わず持っている紙切れを見つめてしまう、神楽が帰って来てないと言う言葉に驚いたのもそうだがそれ以前にもしかしたらそれが高杉の居る場所かも知れないと予想したからだ、そうなると私はその場所に行かなければ職務放棄で切腹になってしまうだろう
正直着替えてゆっくりしたい所だったがそうも言っていられないらしい、新八がエリザベスに詳しく話した後私の視線に気付いたのかこちらを見て首を傾げた
「どうしたんですか花無為さん?」
「新八、私もそこに行かせてくれ」
「えっ……でも傷が」
「傷の事なんていい、神楽が心配だしなにより私の探している奴がそこに居るかもしれないんだ」
新八は私の容態を心配したが私の真剣な表情を見てか固唾を飲んだあと力強く頷いた、そうして私達は神楽が託してくれた地図の場所に向かう事にした
途中、準備の為に寄った新八の家で病院服をオフの日用の着流しに着替えた、少々動きにくいが病院服よりはマシだろう、刀の状態も岡田似蔵と戦った後から手入れ等はしてないが刃こぼれ等は特にないので大丈夫だ、いつも肌身離さず持ち歩いているあの御守りは岡田似蔵と戦った時の血がべっとりと付いたままだがこれは持っていないと落ち着かないので迷わず懐に入れる、改めて荷物を持って来てくれた山崎に感謝しながら私は新八と一緒に出発した
神楽の地図の場所は思っていたより簡単に見つかった、示された場所には巨大な船が佇んでいて思わず新八と顔を見合わせてしまう、物陰に身を潜めながら行き来する人物の顔を指名手配や攘夷浪士の名簿を見た時の記憶と比べる、手元に原本がないのでなんとも言えないが何人かが高杉派の攘夷浪士の顔と一致したので恐らく高杉の船で間違いないだろう
そうなるとこれ以上新八を連れて行くのは危険だ、新八がその辺の一般人より強いのは知っている、あの銀時の背中を追っていける程の成長性を持っている事も知っている、しかし新八は私達真選組から見たら一般人だ、これ以上巻き込む訳にはいかない、一般人を守る為に私達はいるのだから
それを伝えようと新八に声を掛けようとしたが新八が先に口を開いた
「銀さんが動けない今僕が行くしかないんです、神楽ちゃんは間違いなくこの船にいます」
真っ直ぐな瞳を私に向けて真剣に言う新八の強い意志に私は開きかけていた口を紡いだ、こんなにも仲間の為に動こうとしている人を私は突き放すなんて出来なかった、出かかった言葉をふぅ…と溜め息に変えた
「問題はどうやって乗り込むかだな……」
「そうなんですよね……なんか浪人がウヨウヨいるし、恐い人ばっかで……」
「さっきまでの威勢はどうした?大丈夫だ、刀で誰か一人脅して道案内兼盾役を見繕えば……」
「花無為さん発想が恐いです」
物陰に身を潜めたままそう会話をして行き交う浪士の様子をもっと詳しく探るために目を凝らしていると、ふと何か変な物が視界の隅にあるのが見えた、初めは私の見間違いか何かかと思って気にしてなかったがペタペタと不思議な足音まで聞こえてきた
思わずその方向に目を向けた時、私の視界に長髪のカツラを被り着物を着たドラム缶のような体型のペンギン顔が飛び込んできた、どこからどう見ても変装したエリザベスだ、もはや違和感がありすぎて変装なのかもわからない
「「なんか変なのいるぅぅ!!」」
周りの人物に気付かれないように小声で叫ぶと新八も同じタイミングでエリザベスを見つけた様で同時に叫んだ、思わず口があんぐりと開いてしまうが頭を振っていつものまともな顔に戻す
ツッコミを入れるべきかどうするべきか考えているとエリザベスがすれ違った浪士に止められた、そりゃそうだ誰だって今のエリザベスを街中で見かけたら引き止めるだろう
「オイなんだ貴様、怪しい奴め」
「こんな怪しい奴は生まれて初めて見るぞ」
「怪しいを絵に描いた様な奴だ」
初めは数人だった浪士が集まりだして小さな人集りができる程エリザベスは怪しまれ始めてしまった、一体何をやりたかったのか謎だがこのままだとエリザベスがやられてしまうので思わず駆け出そうとした時、エリザベスがいつものプラカードを出した
"すいません道をお伺いしたいんですが"
「あ?」
"地獄の入り口までのな!!"
あくまでも丁寧な口調で道を聞くエリザベスだったがその後に物騒な文章をプラカードで出した、しかも"地獄"の文字が赤い色で書かれていて雰囲気はバッチリだ、しかしこのままでは挑発をしただけになってしまうがこの後はどうするつもりなのだろうと思っていたがそんな私の考えは簡単に吹き飛ばされた
ドォンッと凄まじい爆発音がして目の前にあった船が火を噴き出した、その後地鳴りの様なゴゴゴゴゴ……と言う音が聞こえてきた、思わず隠れる事を忘れて身を乗り出してエリザベスの方を見ると独特な形をした口から銃火器が飛び出ていた
エリザベスの周りにいた人集りは驚きからか腰を抜かして声が出ていなかったが状況を飲み込むと即座に身体を起こしてエリザベスに向かって叫び出した
「なっ……何してんだてめェェェ!!」
「チィッ曲者ォォ!!曲者だァァッ!!」
一人が叫ぶと一人、また一人と叫び出し、それによって遠くに居た人が集まり出してくる、流石に一人でその人数は無理だろうと加戦しようとエリザベスの元に駆け出した時エリザベスが何かを新八に向かって投げた、どうやら私達の事はとっくに知っていた様だ
新八が受け取ったのは刀で、先程までエリザベスの腰に差していた物がないのを見るとどうやら武器を渡してくれたようだ、一瞬呆気に取られていた新八だがエリザベスがこちらに"早く行け"と書かれたプラカードを向けて更には近付く浪士に銃火器を向けて足止めをしてくれているのを見て薄らと涙を浮かべた後勢い良く駆け出したので私もそれに続く
「うおおおおお!!エリザベス先輩ィィィッ!!」
涙を流しながらそう叫び走る新八に私は先程エリザベスが船に向けて撃った場所を指さす、少々高所にあるがよじ登れない高さでは無いのでそこから侵入する事にした、周りにいた浪士達はエリザベスが足止めをしてくれていたので誰にも見つかる事無く船に乗り込む事が出来た