第二十二訓
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病院の敷地から出てすぐにタクシーを捕まえて乗り込む、運転手は私が病院服だと言う事に気付いて驚いていたが実家に忘れ物をしたと嘘を付いて何とか誤魔化した
実家と言ってしまったので直接高杉の場所ではなく一旦どこか家らしい所で降りないといけないのが面倒だがどの道着替えないといけないので仕方ない
少し考えてから私はある場所を運転手に伝えて車を出してもらった、まずは高杉の明確な場所を突き止める事が大切だがついでに一つ確認したい事があったのだ、思い出すのは私をこんな姿にした人斬り岡田似蔵の言葉だ
"「桂は楽しませてくれなかったが、アンタは楽しませてくれよ?白鬼の裟維覇さん」"
私を斬ったあの時、確かに岡田似蔵は桂の名前を口にした、桂と私ときたら次に狙われるのは銀時だろう、普段の岡田似蔵なら銀時には危機ではないが今の岡田似蔵は危ない存在だ、あの得体の知れない刀があるのだ流石に白夜叉と恐れられた銀時でも苦労するだろう、つまり私は一度万事屋へ行って銀時の安否を確認してから高杉の所へと向かう事にしたのだ
ふと窓の外を見ると雨が降り始めていた、雨が降るとどことなく傷が疼く気がする、湿気の違いからなのかどうか定かではないが昔の傷も最近付いた傷も昨夜付いた傷も、ジクジクと疼き始めてきたので思わず顔を顰めてしまう、傷が疼くような雨は好きではない
そんな私を見て運転手は気まずそうに容態を聞いてきた、どうやらまだ私が病院を抜け出した人物だと思っているようだ、間違いではないのだがこのまま病院の関係者に連絡でもされたらわざわざ山崎を巻き込んで出てきたのが水の泡になってしまう、どうしたものかと考えた時、視界の隅に特徴的なフォルムをした物体を見つけた
「あ、エリザベス」
桂と初めてあった時や対峙した時に何度か目撃した、ドラム缶のような体型でコーヒー豆のような形状の口をしたあのペンギンと言うか不思議な生き物、エリザベスが傘もささずに何かの前に立っていた、雨粒が滴る車窓からは良くその姿は見えないが何やら嫌な胸騒ぎがしたので私はタクシーを止めて降りる事にした
運転手が傘はどうするのかと聞いてきたが大丈夫だと伝えてお礼と共にここまでの運賃を渡す、タクシーから出て手荷物を頭上に構えて軽く雨を凌ぐ、パシャパシャと地面に薄く張っている水溜まりの上を早足で走りながらエリザベスの元へ駆け寄る、エリザベスは私を見ると一瞬身構えた様に見えたが荷物と一緒に刀を頭上に掲げているので敵意がないと分かったのかすぐに身体の力を抜いた
初めは全く気にしてなかったが、エリザベスの向こうに見えた物に私は思わず顔を顰めた、使い古された刀に血塗ろの誰かの小物入れの様な物が引っ掛けられている、見た目は墓のように見える、エリザベスと墓、そして傍に居ない桂、岡田似蔵の言葉……
「……その墓は?」
思わず雨を凌ぐ為に掲げていた荷物を降ろしながらエリザベスに聞くとエリザベスは身体の向きを変えて何も言わずにまた墓を見つめ始めた、その無言に様々な意味が含まれている様に感じて私はなんとも言えない気持ちになった、あの桂が岡田似蔵ごときに殺られるとは思わないが相手はあの紅桜だ、私は運良く生きていた事を悟られなかったがもしバレていたらトドメを刺されていただろう、それが桂だったら?
そんな不謹慎な事は考えたくないが、万が一という事もあるのがあの紅桜だ、荷物を膝に抱え込んで手を合わせて軽くだか供養をした、これで本人が生きていたらそれこそ不謹慎だがこの状況だ仕方がない
「エリザベスさん……それってもしかして桂さんの……」
合掌をしていると聞き覚えのある声が後方から聞こえてきた、声を掛けられたエリザベスが"何も言うな"とプラカードを出すのを見て私はゆっくりと振り向いた、すると予想外の人物が傘をさしてそこに立っていた
「新八……?」
「えっ……花無為さん?」
雨の音がどこか遠くの方から聞こえるような錯覚に陥った、新八がエリザベスと一緒にいる事は予想外で銀時と桂はまだ会っているので面識はあるとは思うが銀時抜きでこうしてエリザベスといるとは思わなかったのだ、驚いていると新八が足早に私に近付いて傘を掲げてくれた
こういう事を何気なくしてくれる新八は本当に年齢に比べてちゃんとしていると改めて感じる、辛い体勢だろうから新八が掲げている傘を受け取り少しだけ新八の方に傾けた、それよりも何故新八がこんな所に居るのかが気になる所だ、銀時や神楽の姿も見当たらないのも気になる
「新八、二人はどうした?」
「花無為さんこそですよ、岡田似蔵に斬られたんじゃ……」
新八に二人の事を聞こうとしたが予想外の言葉が新八の口から発せられて思わず絶句してしまった、何故新八が岡田似蔵の事や私が斬られた事を知っているのか、嫌な予感が足元からゾワゾワと迫ってくるような感覚がした
私が斬られたのを知っているのは現時点では病院関係の一部の人間と真選組だけだ、無論誰々が斬られただの入院してるだの攘夷浪士に知られたら不利になるような情報は漏洩しないように情報は厳重に保護されている筈だ
そんな事を何故新八が知っているのか、考えられる理由としては私を斬った岡田似蔵に直接聞いたと言う理由くらいしか考えられない、岡田似蔵に新八が会ったとなると近くに銀時も居る筈だろう、新八と岡田似蔵がやり合ったとは考えにくい
「何故、私が斬られた事を知っているんだ?岡田が言ったのか?会ったのか?……まさか、銀時が……」
思わず掲げている傘を落としそうになったが耐えて新八にそう問いかけた、自分の声が震えているのが手に取る様に分かる、あの紅桜と言う化け物を手にしている岡田似蔵と会った銀時が無傷だとは考えにくい、だとしたら……と最悪なシナリオが頭の中で駆け巡る、私が言葉を濁していると新八はしまったと言う表情をして口を手で覆い隠した、そこで私は銀時に何かあったと察した
「頼む…………本当の事を教えてくれ新八」
声を絞り出してそう聞くと新八は少し考えた後ゆっくりと口を開き私に今までの事を教えてくれた
桂が行方不明になってからエリザベスが依頼に来た事、その時銀時が別の依頼を受けて別行動をした事、神楽と新八は別れて行動した事、辻斬りを探していると岡田似蔵に出会った事、銀時が受けた依頼が紅桜を探す依頼だったと言う事、そして岡田似蔵に襲われたエリザベスと新八を守る為に銀時が紅桜を持った岡田似蔵と交戦した事、そして……
銀時が重傷を負って今だに意識を取り戻していない事を