第二十訓
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(花無為視点)
意識が浮上しかけたと同時に左腕と脇腹の鈍い痛みで目が一気に覚めた、消毒液の匂いと清潔感のあるベッドシーツ、右腕には点滴が施されていた、服は血塗ろの隊服ではなく入院服に着替えさせられていた、そして見慣れない天井、どうやらちゃんと病院に運ばれたようだ
正直自分の携帯で救急車を呼んだのはいいものの意識が遠のく中で状況を説明したので何と言ったのか記憶が曖昧なのだ、変な事を言ってなければいいのだが、こうしてちゃんとベッドで寝かされているのできっと大丈夫だろう
そう思った時また斬られた部分が痛み出した、しかし今度は鈍痛と言うか鋭い痛みで戸惑う、傷口は縫われたと思うがこれはあまりにも痛み過ぎなのではと思い視線を脇腹あたりに移動させた、するとこの鋭い痛みの原因が姿を現した
「山崎……」
私を見舞いに来たのか山崎が私の脇腹を枕にしてスヤスヤと居心地の良さそうな顔をして熟睡していた、心配をかけてしまったかと少し申し訳ない気分になるが山崎が呼吸する度に私の脇腹の傷口に軽い衝撃を与えてくるので、今すぐにでもその息の根を止めたいと思う
動かせる右腕をゆっくりと動かしてナースコールを探すが生憎ギリギリ手の届かない所に設置されていた、左手なら届きそうだが山崎がいるので無理だ、仕方ないと溜め息をついてもう一眠りしようと目を瞑った
意識がフワフワしていよいよ眠りに落ちようとした瞬間、山崎が寝返りをし私の傷口に頭を打ち付けた、傷口は縫われていているとは言え耐え難い激痛が走る
「ぬ"ぐッ!?」
一気に意識が覚め、それと同時に山崎に対しての殺意が湧いてくる、山崎の気持ちよさそうな寝息や寝顔も今の私にとっては火に油を注ぐ様なものだ、我慢できなくなり右腕を動かし山崎の頭に一発叩き込んだ
しかし力が上手く入らず私の一発はヘナヘナと力無く山崎の頭に着地した、しかし衝撃はあったそうで山崎は少し身じろいだ後目をゆっくりと開けた
「んん……あれ?俺……」
「山崎、早く退かないとアンタも入院させるぞ、骨折で良いよな?」
まだ意識がボーッとしている山崎に一言ドスの効いた声で言うと山崎は二、三度瞬きをした後驚いた様に声を上げながら飛び起きた、そして何度も私に向かって謝ってきたが私は何も言わずにナースコールを押した
看護師さんが来るまでに山崎に私が寝ている間に何か起きた事がないか聞く事にした、山崎は恐る恐る私のベッドの横に椅子を置いて私の方を見てきた
「私はどのくらい寝ていた?」
「えっと……数時間って所ですかね……夜に運ばれて今は深夜ですから」
「じゃあ今日は副長は来ないな」
どのくらい寝ていたのか聞くと山崎は腕時計を確認しながら私に言ってきた、通りで外が真っ暗なわけだ、睡眠が足りないのか心做しか少しだけ眠気がまだ残っている、点滴や手術中の輸血で血などは足りている筈だが、やはり身体を治すには睡眠が必要なのかもしれない
そんな事をボーッとした頭で考えているとナースコールで呼び出した看護師が慌てた様子で病室に入って来た、そして目が覚めている私を見て慌てて医師へと連絡をした、これから細かい説明をされる事になるだろう
とりあえず生きていて良かったと思いながら、少しボーッとする頭で医師の傷についての説明を聞いていた、とにかくしばらく安静にするように釘を刺された、治るには最低でも二週間は必要になるだろうと言う事だった
わざわざ深夜に来てくれた医者と看護師に礼を言って私は少し睡眠を摂る事にした、傷口を治すにはそれも大切だと医者が笑いながら言い、私の病室から出て行った
「山崎はもう屯所に戻りな」
「え、でも俺は副長に……」
「いいから、また傷口に頭乗せられたらたまったもんじゃない」
「うっ……花無為さん、すいませんでした」
山崎にももう帰るように言って、私は消灯された病室の中一人で考え事に勤しんでいた、私を斬ったのは岡田似蔵で勿論高杉との何かしらの繋がりがある、もしあの気味の悪い刀で幕府に対して何か馬鹿げた事をするつもりなら……
「絶対高杉を止めてやる」
これ以上高杉に過激な行動はさせたくない、それに野放しにしておくと確実に面倒な仕事が増えるのでそれを未然に防ぐ為、私は高杉を止める事を決意した、副長や沖田等と一緒に行動してもいいがうっかり高杉が私の昔の事を零したりしたら余計に面倒だ、幸い傷口は縫われているので病院から少々痛み止めを拝借すればいけるだろう
頭の中でひたすらどうやって高杉を止めるか考えているうちに私は眠りに落ちた、明日の朝にでも見舞いが来ないのを確認してから動く事にした