第十八訓
name changes
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「あ、紹介が遅れましたね、私の名前は"たま"と申します」
絶句している私を他所に女性はご丁寧にお辞儀をしながら自己紹介をしてきた、たまさんの声を聞いて私はやっと意識が戻った気がした、あまりにも予想外な出来事が起こると人間は固まってしまうのだと思いながらもとりあえず今は私も自己紹介をした方がいいと思った
「か、花無為……裟維覇花無為です……」
引き攣る口を動かし自己紹介を済ませる、まさか以前私が高杉に斬られた傷を手当してくれたスナックの方とこんな会い方をするとは思わなかった、ある意味手間が省けたと言うか、丁度良かったと言うか……複雑な感情だ
たまさんは私の名前を復唱したあと納得したように頷いて握手を求めてきた、私はそんなたまさんの行動に思わず笑みがこぼれ、差し出されたたまさんの手を握った
「これからよろしくお願いしますね花無為さん」
「はい、よろしくお願いしますたまさん」
私の手を握り返しながらたまさんはそう言いフワリとした笑顔で微笑んだ、私も笑いよろしくと言い返すとたまさんはペコリとお辞儀をしてきた
とても行儀が良い人だと思っているとスナックお登勢の扉が音を立てて開いた、その音に思わず目を向けると中からタバコを咥えた女性が出てきた
その人を見ると慌てたように私の手を離したまさんは早足で女性に向かって行った、もしかするとあの人がお登勢さんなのかもしれないと思っているとたまさんが女性と話し始めた
「帰りが遅くなってしまってすいません、ただいま帰りましたお登勢さん」
「ああ、おかえりたま……と、アンタは?」
たまさんの言葉を聞くとやはりこの人がお登勢さんらしい、お登勢さんはたまさんと話をした後私の方を向いてタバコの煙を吐いた、その行動はどこか凛としていて自然と背筋が伸びた気がした
「はじめまして、裟維覇花無為と申します……あの、お登勢さん……ですよね?」
「花無為……どこかで聞いた気が……ああ、もしかしてアンタ銀時の知り合いかい?この間怪我してた」
「はいっその節はどうもお世話になりました」
「お二人は知り合いだったのですか?」
やはりこの女性はお登勢さんで合っているようだ、お登勢さんと話しているとたまさんは驚いたような声を上げて私とお登勢さんを見比べていた、結局砂だらけでお礼を言う形になってしまったがこの際仕方ない事だ
「怪我はもう大丈夫なのかい?」
「はい、お陰様で」
「それにしてもなんでそんな砂だらけなんだい」
「あ……これは……」
「私のせいなんですお登勢さん、困っている時に花無為さんが助けてくださって……」
お登勢さんは砂だらけの私を不思議そうに眺めていたがたまさんが慌てて事情を説明してくれた、少し恥ずかしかったが大体の事をたまさんは説明してくれた、それを聞いてお登勢さんは早くシャワーでも浴びて来なと言い私を中に案内してくれた
怪我の手当てまでしてくれてその上シャワーまで借りても良いと言ってくれるなんて本当に優しい人なのだとしみじみと感じた、お言葉に甘えて砂だらけの体をシャワーで洗い流す事にした
着物はどうやらたまさんが砂を叩いて落としてくれたようですっかり綺麗になっていた、たまさんに感謝しつつその着物に腕を通す、風呂場から出るとたまさんとお登勢さんの他にもう一人女の人がいた
「花無為さん、もう大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございました」
「オ登勢サン、ナンデスカコノ男ハ」
「女です」
たまさんの言葉にお礼を言っているともう一人の女の人がお登勢さんに向かって私の事を聞いてきた、男と勘違いしたのですかさず女と言う事を伝えるとつまらなさそうに私の方を見てきた
猫耳をして緑色の着物を着た女性、どうやら地球人ではなさそうだが悪い人ではないだろう、自己紹介をすると女性はキャサリンさんと言うらしい、自己紹介を済ますとキャサリンさんはたまさんを連れて出入り口へと向かう、どうやらどこかへ行くようだ
「ジャアナ白髪頭ノ花無為」
「花無為さんそれではまた……待ってくださいキャサリンさん!!」
キャサリンさんは私に暴言を吐きながら、たまさんは名残惜しそうにして出て行った、そんな正反対の二人に苦笑いをして手を振って見送るとカウンターから物音がした
振り向くとお登勢さんが酒瓶とお猪口を二つ出してこちらへ手招きをしている、どうやらこれから私は一杯呑む事になるようだ
カウンターの席に座ると予想通りお登勢さんはお猪口にお酒を注いで私に差し出した、礼を言いながらお猪口を受け取るとお登勢さんはもう一つのお猪口にもお酒を注いだ
「キャサリンはああいう奴なんだ、別にアンタの事を嫌ってるわけじゃないから安心しな」
「大丈夫ですよ、名前も覚えてくれたみたいだし、安心しました」
お酒を注ぎながらお登勢さんはキャサリンさんのフォローをした、それに対しては私は特に気にしてなかったので大丈夫だと伝える、不器用と言うか素直になれないと言うか……キャサリンさんはきっとそう言うタイプの人なのだろう、でも今度会う時はもう少し話したいと思った
お登勢さんの分のお酒も注ぎ終えたようでお酒が入ったお猪口をこちらに向けて差し出す、差し出されたお猪口に自分の分を合わせるとカチャンっといい音が響いた、その音を聞いた後お猪口に入ったお酒をグイッと飲み干すと体が少し火照った気がした