第十七訓
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船に着くと陸奥さんが手際良く船員達に声をかけ、全員が船に乗って行くのを確認していた、それを手伝うように副長達も指示を出している
もっさんは陸奥さんの方へと向かって歩いて行く、陸奥さんと一言二言話して船に凭れて陸奥さんの作業を見始めた、私も副長の方へ行き作業を手伝おうとした時
「あ、花無為……さん」
陸奥さんが控え目に私の名前を呼び肩を掴んだ、振り向くと陸奥さんは少しだけ気まずそうに視線を泳がせたが意を決した様に顔を上げた
「先程はあのアホの友人だとは知らずに酷い事を言った」
「……ああ、大丈夫ですよ、気にしてません……私こそ疑われる様な事を軽率に言ってしまってすいません」
陸奥さんが少し前に疑った時の事を謝ってきたので、私は笑いながら気にしてないと答えた、すると陸奥さんは少しホッとした様な表情になったがすぐに笠を伏せてしまった
ペコリと会釈してから陸奥さんと離れて副長の元へと向かった、副長は私を見ると小さく溜め息をついた
「やっと来やがったか」
「あはは……すいません」
副長の言葉を聞いてサボっていた事を思い出し、軽く謝ると副長はまた溜め息をついたが聞かないフリをして残り少ない作業を手伝った
乗り遅れのないように人数を数え、荷物等ももう一度確認して燃料や不具合がないかも調べ、いよいよ飛び立つ準備が出来た、突風などが来るのでその場を離れようとした時ハッチの部分からもっさんが私に向かって声をかけてきた
行きたかったがまた副長に何か言われると思い踏み止まった、しかし副長は私の背中を突き飛ばす様に押してもっさんの方へ行けと目で訴えてきた、副長の優しさに思わず強く頷いて駆け足でもっさんの方へと向かった
「花無為会えてよかったぜよ」
風が吹きバタバタともっさんの服が靡く中、気にしてない様子で笑いながらもっさんはそう言った、いつもと変わらないもっさんにやはり懐かしさを感じ思わず涙ぐんでしまう
これが最期の別れではないのは知っているがもしかすると……と言う思考がどこかにある、もっさんは昔から私の支えだったのかも知れない、だからこんなにも別れが辛いのだろう
「もっさん、気を付けてね」
「それを言うなら花無為もじゃなか?クマが凄い、ちゃんと休まんといかんぜよ」
「……うん、大丈夫」
もっさんは私のクマを指すように自分の目の下をトントンと軽く指さしてへラリと笑った、そんなもっさんの優しい言葉に思わず声が震えてしまう
船が突風と共に地面から離れた時、もっさんが閉まりかけていくハッチの隙間から手を伸ばした、その手を掴みもっさんと何も言わず握手をする
もっさんの右手の古傷の感触を感じ思わず息を飲んだ時、もっさんは聞こえるか聞こえないかくらいの声で別れの言葉と再会を願う言葉を言って私の手を離した、ハッチが完全に閉まりもっさんと陸奥さんと船員達を乗せた船は空高く浮上して行った
突風と共に巻き上げられた砂が目に入らないように片手で塞ぎながらも私はしばらくもっさんの船が飛んで行った方を眺めていた