第十七訓
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艦長という立場のもっさんが来てから、書類も無事に記入漏れなく片付いた、点検等に使われた備品や荷物を船員の人達が戻して行く中、私ともっさんは昔語りに花を咲かせていた
もちろん近くには副長や他の隊士達もいるのでなるべく目立たないように、そして攘夷戦争の事を大っぴらにしないように話している、だがもっさんは声がデカイので目立たないように話せていると言ったら少し嘘になるのかもしれない
しかし、近くで話していて耳が痛くなる程大きな声で話すもっさんはあの日とほとんど変わっていなくてなんだか少し安心した気持ちになった、高杉と言う一番変わってしまった人物に会ったからだろうか、もっさんの変わらない姿に甘えたくなってしまう
「それにしても花無為が幕府の関係者になるとはのォ、時間と言うのは怖い」
「それを言うならもっさんもでしょ?船に乗ってるなんて予想外だよ」
「予想外と言えばおまんよく生きとったのォ!!てっきり死んだかと」
「あははッ!!私も驚いてるよ」
もっさんと話していると自然と笑いが込み上げてくるのが不思議だ、思わずお腹を抱え大きな声で笑ってしまった、ふと視線を感じ目線を上げると山崎がなんとも言えない表情をしてこちらを見ていた
「山崎、どうかしたか?」
もっさんに一言言ってからその場を離れ、山崎の方へ歩み寄ると山崎は少し驚いた様に身を引いたがすぐに私と視線を合わせて言いにくそうにゆっくりと口を開いた
「……その……船の準備が整ったそうで、あとは船員が乗るだけだって」
山崎の言葉を聞いて私の頭はゆっくりとその意味を理解した、山崎の顔を見て自分の表情が暗くなっているのが分かり思わず俯いてしまった
別にずっともっさんに居て欲しい訳では無い、ただ昔に戻った気分に少しだけなっていただけで懐かしかっただけだ、そんな理由でもっさんを引き止めはできない事くらい分かっている
「あの……花無為さん……」
「ああ、うん……坂本さんに伝えてくる……」
山崎が気まずそうに私の名前を呼んだが私はそれを遮るように話し、その場から離れる勢いで踵を返した、山崎が私の背中に向かって何か言いかけたが気にせずにもっさんの方へと向かう
もっさんはキョロキョロと周りを見渡して私を待っている様子だった、正直な所もっさんをまだ帰したくない、もっさんは桂と違い真選組に怪しまれる事なく話が出来る相手だ、だが私のわがままでもっさんを困らせたくない
意を決してもっさんに声をかけるともっさんはこちらを見て、少し早足で向かってきた、そんな人懐っこい性格だから大規模な船を持てるのだろうと感心しながら先程山崎から聞いた事を言う事にした
「もっさん、あのさ……」
「なんじゃ?」
「船の……準備が全部整って、あとは乗るだけだって……」
「!!……そうか」
もっさんとしっかりと目を合わせてそう言うと少しだけもっさんが悲しそうな顔をして返事をした、なんだかもっさんの顔を見てられなくなって目を逸らした時もっさんが私の頭に手を乗せた
「まだ少し、花無為と話したかったが……仕方ないのォ」
もっさんは本当に別れを惜しむ様な声色でそう呟いた、思わず目を見開きもっさんを見上げてしまう、サングラスの奥で私を優しい瞳で見下ろす目と目が合った
もう一度もっさんは私の頭にポンッと手を置いてから船の方へと歩いて行った、少し遅れて私も後を追うように歩き始めた