威圧感
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私が働いている職場は、何と言うか全員が個性的である
ある人は赤が大好き過ぎてどこで手に入れたのか赤い鉢巻を巻いている熱血漢、ある人は驚く程チャラいのに仕事中とか私生活が明らかにオカンっぽい人
またある人は不良っぽいのに根はとてつもなく優しい人だったり、ある人は眼帯をつけて意味もなく会話の所々に英語を入れたり
そんな個性的な人達がなんの因果か集まる職場に就職してしまった私も、個性的なのだろうか、そんな事を思いながら同期のかすがちゃんが煎れてくれたコーヒーを飲む
かすがちゃんが煎れてくれたコーヒーは格別で、疲れた時はいつもかすがちゃんに頭を下げて煎れてもらうのだ
二口程飲み、一息ついて伸びをした時、隣からクスリと笑う声がした
「なんでそこで笑うのさ、佐助」
私の隣のデスクの佐助は先程話した個性的な人物の一人、オカン属性のチャラ男だ、一応この職場での先輩なのだが、本人は敬語が嫌いなようでほとんど同期のような関係になっている
そんな佐助に何故そこで笑うのかと眉をひそめながら聞くと、困ったように肩をすくめて
「いや、対して疲れてもないのによくもまあそんなに疲れてるような態度をするなぁって思ったりして」
と人を小馬鹿にしたように言ってきた、そんな佐助の態度に少し腹が立って私は足を伸ばして佐助の椅子を軽く蹴った
すると格好をつけて座っていた佐助はバランスを崩し少し焦った声を上げる
「もー、足グセが悪いなぁナマエは」
「うるさいですよ佐助先輩」
「だから敬語はやめてよ、と言うかそれわざとやってるでしょ」
佐助に少し怒りながら嫌がらせをすると少し困ったように眉毛を下げて文句を言ってきた
佐助をほとんどスルーしてから私はまた作業に戻った、カチャカチャとテンポよくキーボードを押していると、隣で佐助がつまらなさそうに溜め息をつくのが聞こえた
文字入力を終わらせた時、丁度コーヒーを飲み終えていた、少し体を伸ばしてかすがちゃんを探した時
「かすがならさっき、上杉さんと少し早めのランチ食べに行っちゃったよ」
と隣から佐助の声がした、そんな佐助の言葉に私は思わず溜め息をついた、そして自分で煎れようと決意して私は重い腰を上げ、給湯室に向かった
途中、慶次がついでに煎れてくれと言ってきたが私はあえてスルーをした、ちなみに慶次は私の後輩だ男なのにポニーテールをしている変人
慶次のショックを受けたような声を聞きながら湯を沸かしていると、ポンポンと肩に手を置かれた
「ん?」
慶次かと思い振り向くと、そこにはポニーテールの変人ではない別の人……私の上司、片倉さんがいつものような厳つい顔をして立っていた
思わず肩をビク付かせてしまうが片倉さんは気にしていないようだ、まあいつもの事だからか……それもそれで失礼なのは知っているのだがどうしてもこの人は少し苦手なのだ
「ど、どうしたんですか片倉さん?」
「いや……俺もコーヒーを飲もうと思ってな」
「あ、ああ、そうなんですか」
「……こうして話すのも久しぶりだなナマエ」
片倉さんとぎこちない会話をしていると、片倉さんは急に給湯室の扉に軽くもたれながら懐かしむようにそう言ってきた
これは私にとって絶体絶命ではないだろうか、逃げようにも逃げられない状況、少し苦手な上司、そしてこんな時に限って湯は全然沸かない!!
片倉さんが後ろ手で少しドアノブを捻ったせいでパタンと給湯室の扉は閉まり、私と片倉さんは完全なる二人っきりになった、変な意味ではない、むしろこれは弱肉強食の縮図である
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