第二十四訓
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"うおおおお"と書かれたプラカードを持っているエリザベスを先頭に各々刀を構えて桂派の攘夷浪士が鬼兵隊に突撃して行く、血気盛んな攘夷浪士の雄叫びが船上に響き渡り緊張感のある空気が一気に船上を支配する
「高杉ィィィィィ!!」
「貴様らの思い通りにはさせん!!」
「チッ!!全員叩き斬るっス!!」
桂派の攘夷浪士が高杉に向かって叫び一気に斬りかかって行く、それを来島また子の一声によって鬼兵隊達は迎え撃って行く、刀と刀がぶつかり合う激しい衝突音が複数回響き渡る、時折爆発音や発砲音も聞こえてくるので流れ弾が新八と神楽に当たらない様に周囲を警戒する
数人蹴散らした桂派の攘夷浪士が桂を見つけるとすぐさま傍に駆け寄って私達を含めて桂を守る様に前線に立つ、エリザベスもすぐさまこちらに向かって桂のすぐ正面に立ち塞がる、そうして私達の周りには円を描く様に桂の仲間達が集まった
「エリザベス……みんな……」
「すみません桂さん、いかなる事があろうと、勝手に兵を動かすなと言われておきながら」
「桂さんに変事ありと聞きいてもたってもいられず……」
桂が自分の周りを見渡しながら驚きの声を上げる、それに対して仲間達は真っ先に勝手に兵を動かした事を桂に謝罪した、エリザベスも"いても、たっても"とプラカードを掲げてただじっと待つ事が出来なかったと桂に伝えた
決まりを破った事に関しては咎めるべきかと思ったが仲間達の後ろ姿を見た時そんな考えは吹き飛んだ、微かに身体が震えているのが見えたのだ、初めは武者震いや何かかと思っていたが頬に何か光るものが伝っているのが見えた時理解した
「やめてくれ…そんな顔で謝るお前達を叱れるわけもない……」
桂が目を伏せて申し訳なさそうにそう言った、その直後仲間達は鼻をすすりながら漏れる嗚咽を堪えていた、先程見たのはやはり涙だった様で、泣いている理由は桂が生きていた喜びか、勝手に兵を動かした事を申し訳ないと思ったのか……両方なのかもしれない
「それに、謝らなければならぬのは俺の方だ…何の連絡もせずに……」
泣いている仲間達に向けて桂は生きていた事や高杉の船に乗り込んだ事など、何も連絡をしなかった事を謝罪した、しかし桂が頭を下げる前に泣いていた内の一人がこちらの方を向いて口を開いた
「桂さんあなた……かつての仲間である高杉を救おうと、騒ぎを広めずに一人で説得に行くつもりだったんでしょう……それを我らはこのように騒ぎ立て、高杉一派との亀裂を完全なものにしてしまった……これではもう……」
「言うな……奴とはいずれ……こうなっていたさ」
桂の仲間が言った事が本当なら、桂も私もつくづく馬鹿らしい、自分の身を犠牲にして高杉の為にこんな空の上まで来るなんて、しかしどう頑張っても結果は分かりきっていた事なのかもしれない、説得をしようにも既に高杉は私達とは別の方向を見てしまっているのだから
騒ぎが大きくなる中高杉は来島また子と武市変平太と一緒にどこかへ行ってしまった、思わず俯いて自分の無力さに奥歯を噛み締めた、結局私は覚悟を決めても仲間一人助ける事も出来ない無力な奴なのだと、改めて突き付けられた気分だ、悔しくて悔しくてギュッと固く目を瞑った時、エリザベスがプラカードを掲げた音が聞こえた
"桂さん、ここはいいから早く行ってください"
"まだ間にあいます"
まだ間に合う、エリザベスのその一言に私は少し救われた気がした、ロクに話もせず勝手に決めて諦めてはいけないと、改めて邪魔が入らない所でもう一度桂と一緒に高杉を説得する事が出来れば……きっと、止める事が出来るかもしれない
"今度はさっさと帰ってきてくださいよ"
続けざまにそう書かれたプラカードを掲げたエリザベス、心做しか口角が上がっている様に見える、相棒であるエリザベスにここまで言われてしまっては流石の桂も行くしかないだろう、思わず桂の方に目を向けると、一度フッと笑った後
「すまぬッ!!行くぞ花無為!!」
と、仲間達にもう一度謝った後私に声をかけて走り出した、新八と神楽をこんな乱戦の中に置いて行くのは少々気が引けたがエリザベス達が乗っていた船があるのを思い出し、私は新八にその船に乗るように伝えてから桂の後を追った
桂の前にすぐさま鬼兵隊の隊士が立ち塞がるが桂は易々とそれらを蹴散らして高杉が消えて行った方向へ駆け込む、私も続いて部屋に入ろうとした時
「真選組ッ!!不本意だが、今回だけは桂さんを頼んだぞ」
と、桂の仲間の一人が私に向かってそう叫んだ、隊服を着ていないのによく分かったななんて思いながら声がした方向に目をやると桂の仲間達は真剣な顔付きでこちらを見ていた、自分達の大将を利害の一致とは言え敵に預けるのだ、さぞかし恐ろしい行為だろう
しかし正直な所今は真選組としてでは無く、高杉の友人としてこの船にいるので捕まえる気なんてさらさらなかった、が、それは言ってはいけないし知られてはいけない事だ、その事実を隠すように私は
「今回だけは全員見逃すよ、安心しろ」
と、言って桂の仲間達に向けて手を振った、真剣な表情から少し安堵の表情に変わったのを確認して、私は再び桂の後を追う、少しスピードを飛ばすとすぐに桂の後ろ姿が見えた
そのまま桂に追い付いて横に並び、私達は一度目を合わせた後同じ方向を見つめて、高杉に追い付いたら真っ先になんて言ってやろうかと考えながら走る
桂に何か声を掛けようかと思い口を開いた時、私達の背後で二人分の足音が聞こえた、この状況で私達に付いて行く様に走る二人組と言ったらあの二人しかいない、桂もそれに気付いた様で私達は慌てて自分達の背後を振り返った、そこにはやはり予想通り新八と神楽が真剣な表情で前を向いて走っていた
「おまえら……!!」
「新八、神楽!!」
思わず声を掛けると二人は真剣な表情のまま私達の方を向いた、二人の真剣な表情を見てしまってはこのまま帰れなんて言える訳が無い、この二人はしっかりと覚悟して今走っているのだからそれを無下にするのは失礼だ
「ここまで来たら最後まで付き合いますからね!」
「ヅラァ、花無為ィ、帰ったらなんかおごるアル!!」
そう言う二人の言葉を聞いて私は心做しか自分の口角が上がるのを感じた、正直な所怪我をさせては銀時に示しがつかないが頼りになるのは確かなので一緒に来てくれるだけでも心強い味方だと思う
くれぐれも無理はしないようにと二人に伝えようとした時だった、桂と私の足元に鉛玉が飛んで来た、思わず足を止めて刀に手をかけて前を見回す、こんな場面で鉛玉だなんて飛ばす輩は一人しかいないだろう
「晋助様のところへはいかせないっス」
「悪いがフェミニストといえど鬼になることもあります、綿密に立てた計画…コレを台無しにされるのが一番腹たつコンチキショー」
やはり予想通り来島また子と武市変平太が角からゆっくりと現れた、銃口が真っ直ぐこちらに向けられているので私は思わず新八と神楽を自分の背に隠した、流れ弾でも当たったら大変だ
桂は舌打ちをしながら刀に手をかけた、私は既に刀の鍔を親指で押し上げていつでも抜ける様にしている、来島また子の拳銃には少々手を焼くだろうが桂と一緒なら問題ないだろう、そう思い二人を物陰に待機させようとした時だった
「ヅラぁ、花無為ィ、私酢昆布一年分と"渡る世間は鬼しかいねェコノヤロー"DVD全巻ネ、あっあと定春のエサ」
「僕、お通ちゃんのニューアルバムと写真集とバーゲンダッシュアイス100個お願いします…あっやっぱ1000個」
「あっズルイネ!じゃ私も酢昆布十年分!!」
そう言い合いながら二人は私達の前に出てくる、新八が刀に手をかけているのと、神楽が拳をパキパキと鳴らしているのを見て二人が何をしようとしているのか容易に想像できる
「おい何を!!」
「何してんだ二人共ッ!!」
「「早く行けェボケェ!!」」
桂と一緒に二人に叫ぶが、早く行けと足蹴にされてしまった、しかしここで、はいそうですかと言う事を聞けるほど私達は愚か者ではない、いくらあの新八でも、いくら夜兎族の神楽でも、鬼兵隊の幹部でもある来島また子と武市変平太と戦わせるのは無茶すぎるので、やる気満々の二人を落ち着かせるために声を掛ける
「待ってくれ!!」
「お前達に何かあったら俺達は銀時に合わす顔がない!!」
桂と一緒に二人をどうにか引き止めようとするが来島また子と武市変平太は既に二人をやる気だ、どうすれば新八と神楽を引き止める事ができるのだろうと考えていたが
「何言ってるアルか!!」
「そのヘンテコな髪型と、病院抜け出した事言って、笑ってもらえ!!」
そう言うが早いか二人は駆け出して行き、新八は刀を武市変平太に、神楽は飛び蹴りを来島また子に食らわせた、こうして二対二の戦闘が始まってしまった、止めようにもきっと新八と神楽は止めさせてくれないだろう
思わず桂の方に目を向けると桂は少し葛藤していた様だが刀にかけていた手を離した、どうやらここは二人に任せるようだ、私も少々心配だが二人なら大丈夫だろうと思い刀を鞘に押し込んだ
「……先を急ぐぞ」
「うん……新八!!神楽!!無理はするなよ!!」
桂の言葉に頷いて二人に声をかけた後私達は再び走り出した、ここまで来たら何がなんでも高杉を説得しようと考えながら走り続ける、それは桂も同じな様で先程よりも決心した表情で走っていた