第二十三訓
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最後の一人を斬り、ついた血を振り落としてから刀を鞘に収める、半分程息の根を止めてしまった事に多少の罪悪感を感じながら私は新八と合流する為に走り出す、その時岡田似蔵に斬られた傷口が痛み出した、思わず痛む脇腹を手で押えてその場にしゃがみ込んでしまう
「うぅ……」
唸り声を上げながら痛みが去るのを待っているとジワジワと傷口を覆っている包帯に生暖かい物が滲んでいくのを感じた、どうやら先程の戦いで傷口が少し開いてしまった様だ、一応気にしつつ戦ったのだが上手くはいかないものだ
念の為着流しに目をやり血が滲んでいないのを確認して私はなるべく開いた傷がこれ以上酷くならない様に歩き始めた、もちろん一刻も早く合流したいので歩くと言っても早足でだ、傷口が再び塞がったら全力で走って新八達を見つける予定だ
何回目かの角を曲がった時、爆発音と共に船が大きく揺れ傾き始めた、予想外の事にバランスを崩して壁にもたれかかってしまう、先程の戦いの最中にも何度か同じ様に船が揺れていたのでどうやらこの船は他の船から攻撃を受けている様だ、高杉は嫌われているのだろうか
船の揺れに顔を顰めながらも通路を進み続けると視界が開けた、若干眩しかったが外は曇っているのでそんなに目は眩まなかった、改めて新八を探そうとした瞬間聞きなれた声が聞こえてきたのでバランスを取りながら声のする方へ向かった、が、早速視界に飛び込んできた異様な光景に私は思わず呆然としてしまった
「んごをををををををを!!」
「何者っスかァ!!オイィぃぃ答えるっス!!」
先程の爆発で大きく傾いた甲板を叫び声を上げながら重力に反して走り続ける三人が見えたのだ、よく見ると走っているのは磔にされている神楽を抱えながら走っている新八と鬼兵隊の来島また子、武市変平太だった
一体どう言う状況なのか飲み込めず呆然と立ち尽くしていると飛んできた瓦礫によって武市変平太が甲板から落ちた、落ちたと言っても船の向きが上向きなので甲板の中心にある部屋に引っかかっているだけだ、ちなみに私はどうやら別の出口から出てきてしまったようで新八達のように重力に反して走らなくても立っていられる
このまま加戦するべきかどうか悩んでいると再び爆発が起きて甲板にいた三人が吹き飛ばされた、思わず駆け寄ろうとした時視界の端で磔にされた状態の神楽が上空に吹き飛ばされ、爆発によって壊れた船の外に投げ出されようとしていた
「新八ィィィィッ!!」
「神楽ちゃ〜〜〜んッ!!」
新八が叫びながら走り出して神楽に手を伸ばした、運良く神楽の手を掴む事が出来たようで神楽は外に落ちずに済んだ、しかし長くは持たないだろう、新八に手を貸すために私も走り出した、傷口が傷もうが開こうが関係ない、神楽の命の危険なのだ
「ふぎぎ……!!」
「新八……ッ!!」
新八が踏ん張っていたが神楽に加えて磔に使われている丸太の重さもある、耐えきれず新八の身体も船の外に落ちそうになった瞬間、私は手を伸ばして新八の着物を掴んだ
「か……花無為さん!?」
「花無為ィ!!」
「遅れてすまないな……」
二人は驚きながら私の方を見て名前を呼ぶ、そんな二人に私は苦笑いをしながら謝り、二人を引き上げる為に立ち上がって踏ん張る、最悪新八だけでも引き上げる事ができれば神楽は新八と二人で引き上げる事が出来るだろう
そう考えながら新八の着物を引き上げて、少しだけ近付いた新八の腕を掴んだ時、再び爆発が起きて船が一際激しく揺れた、バランスを取る為に変に踏ん張ってしまったらしく脇腹の傷口が痛み出し開いてしまったのか血が流れ始めた、思わず呻き声を上げてしまう、二人にこれ以上心配をかける訳にはいかないのに……!!
「花無為さん……血が……!!」
着流しに染み込んできた血を見て新八が息を飲んだ、大丈夫だと言って余裕で微笑みたい所だが現状はそんなに甘くはない、傷口は完全に開いてしまったし二人を引き上げようと力を込めると肉が裂け、その痛みが激痛となって脳に届く
思わず声を上げそうになるのを下唇を噛み締め我慢する、短く呼吸をして痛みを誤魔化しつつ二人を引き上げていく、しかしこうしてモタモタしている間にもこの船は攻撃されて大きな爆発が起きる
「ぅわっ!?」
船が再び激しく揺れて私は完全にバランスを崩してしまい甲板に倒れ込んでしまう、手は離していないが新八がもう限界なのだろう、ブルブルと腕が震えているのが分かった、この状況では二人を引き上げる事は不可能に近いのでは無いかと絶望感が押し寄せてきた、思わず心の中で銀時に謝る、私のせいで二人を死なせてしまうかもしれないと恐怖を感じた時だった
急に背中を誰かに掴まれて勢い良く引き上げられた、もちろん私だけではなく、新八や神楽までもが引き上げられて壊れていない甲板に戻された、思わず二人と顔を見合わせたあと自分の背後を振り返る
「エリザベス!?」
「こんな所まで来てくれたんだね!!」
「流石エリー!!凄いアル!!」
私達三人をこの窮地から助けてくれたのは意外にもエリザベスだった、エリザベスには何から何まで助けて貰っている気がする、お礼を言おうと口を開いた時、"いろいろ用があってな"とプラカードをこちらに見せているエリザベスの背後から微かに殺気を感じた
思わず立ち上がった時エリザベスの影から高杉が姿を現した、新八と神楽も高杉に気付いたようで驚いた様に息を飲んだのが聞こえた、高杉は既に刀を抜いていて明らかにエリザベスを斬ろうとしていた、それを止めようと私も刀を抜くが高杉の方が一手早かった
バシュッと斬れる音が響いてエリザベスの身体は真っ二つに分かれてしまった、驚いた様に口を開けて"!?"と書かれたプラカードを持ったままエリザベスは動かなくなってしまった、パサッ…とエリザベスの頭部に位置する部分が虚しく地面に落ちた