第二十訓
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最近ずっと真選組屯所はピリピリとした雰囲気に包まれている、理由は攘夷浪士の動きが過激になってきているからだろうが、正直そんな雰囲気の屯所は居心地が悪く思わず深い溜め息をついてしまうが将軍様の身の安全を考えると仕方のない事だ
「何ッ……高杉が……?」
ただ今屯所内の庭では局長と副長、私と沖田の四人でちょっとした会議が開かれていた、会議と言っても局長は素振りを、沖田はアイマスクを着けて寝転がっている様な緩い会議だ
かく言う私も柱に凭れてタバコを吸っている副長の隣の縁側に座り、少し熱めに煎れたコーヒーを啜っていた
会議の話題は最近の辻斬りの事件と高杉の関係性についてだ、最近江戸では辻斬りが目立っていてこれまでに被害者が大勢出ている、そんな悪質な辻斬りに高杉が関わっていると言う情報は案外早く手に入った
「ああ、間違いない、監察が入手した確かな情報だ……」
局長の言葉に副長がタバコの煙を吐きつつ答える、副長の言葉に局長が明らかに顔をしかめたのが見えた、監察が入手したのなら信憑性は確かだろうと思いつつコーヒーを飲み干す
「高杉か……確か前回は見事にやられやしたっけ、主に花無為さんが」
「うるさいぞ沖田……」
おもむろに起き上がりアイマスクを取りつつ沖田は嫌な笑みを浮かべて私をからかってきた、そんな沖田に冷たい目線を送りつつ黙らせようとした、しかし沖田はヘラヘラと笑っていて副長がそんな沖田に一言ツッコミを入れた
「お前がなっがい便所に行ってたせいでな!!」
器用にタバコを落とさずにそう叫んだが、当の沖田は全く気にしてない様子で逆に副長を煽り続けた
「あれ?おかしいな……その論法で行くと真面目に働いていたどこぞのマヨラーは、俺以上に無能って事になりやしませんかい?」
アイマスクを取り副長に挑発し続ける沖田、生憎副長は頭に血が上りやすいタイプなのでそんな沖田の言葉をスルーする事なんて出来るはずもなく、見事に挑発に乗り副長は刀を沖田に向けて抜刀する、しかし沖田は副長の刀を避けて素早くバズーカを構えた
そんな二人の様子を見て局長は素振りの手を止めて二人の方を見た、ちなみに私は沖田のバズーカの爆発に巻き込まれたくないので靴を履き局長の横に立って二人の様子を見ている、今にもバズーカを打ちそうな沖田と斬りかかりそうな副長を見て局長が溜め息混じりに副長を宥める
「トシ、やめておけ」
「…………」
「…………」
局長の言葉を聞いて副長は潔く刀を下ろした、それを見て沖田も構えていたバズーカを下ろす、そして副長はいつものように気の抜けた雰囲気を戻すように話の話題を高杉に戻した
「攘夷浪士の中で最も過激で危険な男"高杉晋助"……噂じゃ奴は、人斬り似蔵の異名を持つ居合いの達人"岡田似蔵"、紅い弾丸と恐れられる拳銃使いの"来島また子"、変人謀略家として暗躍する"武市変平太"、そして正体は謎に包まれた剣豪"河上万斉"……奴らを中心にあの鬼兵隊を復活させたらしい……」
鬼兵隊のメンバーの情報を険しい表情で話す副長、それを聞いて私は高杉がいよいよ攘夷活動に拍車をかけてきた事が分かり私も眉間にシワが寄ってきてしまう、それは局長も同じなようで硬い表情のまま話を聞いていた
「鬼兵隊?攘夷戦争の時高杉が率いていた義勇軍のことか?」
「えぇ、文字通り鬼の様に強くって……」
「なんでお前が知ってるんだ花無為?」
「……聞いた話ですよ」
局長が鬼兵隊について詳しく聞こうとしていたので思わず口が滑り鬼兵隊を知っている様に話してしまい副長が疑ってきたがすぐに誤魔化した、軽く冷や汗をかいてしまったが副長は特に気にしていない様ですぐに視線を私から局長に戻した
そんな局長は一瞬心配そうに私の方を見たが視線を戻し、副長に今更鬼兵隊がなぜ作られたのか聞き始めた、局長の言葉を聞いて副長は少し考えてから
「恐らく強力な武装集団を作り、クーデターを起すのが奴の狙い……近藤さんアイツは危険だ」
と話して局長に軽く警告した、それを聞いて局長は考えているのか少し唸りながらもまた素振りをするためか前を向きながら口を開く
「分かった……トシ、奴らの情報を集めるのに全力を尽くしてくれ」
「了解だ、それから近藤さん……」
副長に軽く命令を出してから局長はまた素振りを始め、副長は局長の言葉に返事をしたが少し気まずそうに不自然な動きでタバコを吸い、何かに目を背けるように目を瞑りながら言葉を続けた
「素振りは全裸でなくてもいいんじゃねぇか……?」
「同感です副長」
うるさいくらいに掛け声を出しながら木刀を振る局長は初めから全裸にサラシの変態的な格好だったのだ、隣に立っていたが私もずっと局長の下半身を視界に入れないようにしていた
局長の全裸姿は不本意にも何度か見た事あるがこんなにも堂々とされると恥ずかしいと思うこちらがおかしいのかと錯覚しそうになるが、当然そういう訳では無い、誰がどう見ても素振りに全裸はおかしいのだ
いっその事全て脱げばいいのになぜサラシだけは脱がないのか、個人的にはそれが一番疑問だった、変態の考える事は私にはよく分からない、思わず溜め息をついた時
「たっ……大変ですッ!!」
バタバタと忙しない足音が縁側の方から聞こえたのと同時に若干汗をかいた山崎が大きな声を出してこちらに向かって走ってきた、思わず私達三人が山崎の方を一斉に見る
慌てた様な困った様なそんな表情をして山崎は私達のいる縁側の少し手前で急ブレーキをして若干荒い呼吸を繰り返しながら口を開いた
「また辻斬りが出たそうです……!!」
その言葉を聞いた瞬間その場の空気が強ばった、丁度辻斬りと接点のある高杉の話をしていたから尚更だろう、結局その日は辻斬り事件のせいで警備を強化する事になり、私達は江戸を情報収集をすると共に見回りをする事になってしまった