第十五訓
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壁にもたれて眠っていたためか体が変に凝っていく感覚がして目が覚めた、目覚めとしては最悪だろう、伸びをしつつ凝ってしまった背中や首を解すが上手く解される事は無かった
下手したら湿布に頼るしかないなと思った時、ふと副長が見当たらない事に気が付いた、そもそも私はどれ位寝ていたのだろうか
コキコキと首を動かし解していると不意に襖が開いた、顔を上げるとそこには探していた副長がおにぎりだろうか真っ白い米の塊を数個片手に持って立っていた
「ようやく目を覚ましやがったか」
「あー、すいません、でも副長も悪いですよまさか寝てるなんて」
「起こせばよかったじゃねぇか」
「そのまま同じ台詞を返します」
そう言い合いながらも副長が机に置いたおにぎりに目をやる、形を見た感じ食堂の人が握った物ではないだろう、と言うことは……
「今何時ですか」
「察しの通り、もう日付け変わってる」
副長の言葉を聞いて思わず頭を抱えた、やはり私は軽く寝たつもりが結構な時間寝ていたらしい、具体的に言うと食堂が閉まる時間まで呑気に寝ていたという事だ
そしてこのおにぎりは副長が握った物、大方副長は目を覚ましてから食堂に行き、閉まっている食堂で炊飯器の中の残った米を使って、このおにぎりを作ったと言う感じだろう
せっかく高いのでも奢ってもらおうと思ったのになぜ私は寝てしまったのだろう、夢見もさほどいい物でも無かったのに、あまり覚えてないが確か気分が悪くなるような夢だったと思う
唸りながら目を瞑り髪を掻き上げた、そんな私の目の前に副長はおにぎりを一つズイッと差し出してきた
「わっ!?」
「早く食え」
「……マヨネーズとか入ってないですよね」
「……どうだったか」
副長の言葉に微妙に寒気がしたがここは何だかんだ隊士思いの副長を信じおにぎりを受け取り一口齧った
絶妙な塩加減とほのかな温かさ、そして中の具はシンプルに梅干し、不覚にも美味いと感じた、個人的には梅系の物は好んで食べないがこのおにぎりに関しては梅が合うと思った
マヨネーズは今のところ姿を見せないので残りも安心して食べる事が出来るだろう、そう思いパクパクと勢いよく残りも食べ進める
「どうだ美味いだろう」
「副長にしては、ですけどね」
副長の言葉に頬についた米粒を取りながら答え、少し行儀が悪いが米粒を口に運んでから残り少ない米を食べようとした時
米には似合わない黄色が見えた
「…………」
「どうした花無為?」
「あの……副長、このおにぎり具は梅干しなんですよね?」
「正確には、梅干しおにぎり土方スペシャルだけどな」
副長の聞きなれた単語に思わず持っているおにぎりを握り潰しそうになる、何故梅干しにマヨネーズなのか、シーチキンにマヨネーズならまだ許せたのに何故そのチョイスなのか
運が悪かったようでマヨネーズの姿を見たと同時に口に含んでいたようで、梅干しとは違った酸味が今になって口いっぱいに広がってきた
吐き出しそうになるが、ここで吐き出したら洒落にならないので必死になって飲み込もうとするが喉が受け付けない、私の喉は反抗期になってしまったようで一切この梅干しと米とマヨネーズの謎のハーモニーを奏でる異物を喉から先へは行かせないようにしている
おにぎりを置いて空いた手で口を押さえる、副長はどうしたと声をかけながら私にトドメを刺すかのように目の前で自分の分のおにぎりに追加でマヨネーズをかけ始めた
その光景を見ながらこの物質を飲み込むのは不可能に近い、私は半泣き状態で瞬時に部屋を出て厠へ駆け込んだ、その後の事は言わない方がいいだろう