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こちら、お礼のネームレス主人公ssでございます!!!楽しんでいただけたら幸いです!!!

『ガキ大将』

「お姉ちゃ~ん」

夏休み、友達と駄菓子屋から公園までの道のりをしゃべりながら歩いていたら、近所に住んでる男の子が泣きながらこっちに駆けてきた。

「どうしたのかな?」

となりの友達が目線を合わせるようにしゃがんで聞くと、その子は手に持った小っちゃな水鉄砲をぎゅっと握りしめてわんわん泣きはじめた。

「うわっ!ちょっと大丈夫だから泣かないで!」












慌ててさっき買ったばっかりのアメをあげたり、頭を撫でてあげたり、二人していろいろやって、なんとかその子は落ち着いてくれた。

よかった、と胸をなでおろしたところで、さっきはなんで泣いていたの?と改めて聞いてみると、その子は、口いっぱいにお菓子をため込みながらふがふが話してくれた。

私にはその子の言ってることがちょっとよく分からなかったけど、弟と妹がたくさんいる友達は「多分、どっかの六年生の子達に水鉄砲で遊ぶからって追い出されたのがイヤだった」ってことなんじゃないかなって言う。

私も友達みたいにとなりにしゃがんで、「そうなの?」って聞いてみると、その子は「うん、うん」って勢いよく何度もうなずいた。

「ねえ、私もしかしてヨシ君達のせいなんじゃないかなって思うんだけど、どう思う?」

友達が私のTシャツの裾を引っ張って、こっそりそう言ってきた。

ヨシ君…たしかとなりの小学校の子で、私達と同じ六年生だっけ。あと、乱暴な男子のリーダー格だってうわさも聞いたことある…

「うーん、たしかに犯人はヨシ君かもしれないね」

「でしょ?どうしよう、この子のためになんとか言ってあげようと思ってたけど、もし犯人がヨシ君だったら…ちょっと怖いね」

ちょっと、なんて言っているけど友達は少し涙目になってて、ぎゅっと私の服を掴んでた。

「大丈夫だよ。ヨシ君でもなんとかなるよ!…そうだ!」

「え?どうしたの?」

「あのね、いいこと思いついたんだ。協力してくれないかな?」

「え?なあに?」

「あのね」

今度は私が友達の耳に顔を近づけてないしょ話をした。














「え!?ちょっとそれまずいんじゃないかな?」

「大丈夫だって!ねえ!その水鉄砲貸してくれない?」

そう言って、私はいつの間にか後ろで私達のお菓子を勝手にぱくついていたその子に話しかけた。













「ねえ、ちょっといい?」

私は心配そうに腕を引っ張ってくる友達に「平気だって」と笑って、公園の水飲み場の周りでギャーギャー騒いでいる男子達に声をかけた。

「なんだよお前」

そうしたら、真ん中で一番調子に乗っていた、私よりも頭一個分とちょっと大きくて目つきの悪い男子が不機嫌そうに返事をした。

多分この子がうわさのヨシ君だ。

「となりの小学校の六年。それよりさ、水鉄砲、私も混ぜてよ」

借りてきた水鉄砲を見せてそう聞くと、ヨシ君はニヤニヤと意地の悪そうな笑顔になった。

「お前が?いいけど、んな小っせー水鉄砲でしかも女だろ?後悔しても知らねえぜ?」

ヨシ君は自分で言いながら周りの男子達とゲラゲラ笑いだした。

いまだ!

「スキあり!」

「おわっ!!!」

ヨシ君の顔面にばっちり水鉄砲が命中した。











「お前!ヨシ君に何すんだよ!女のクセに生意気だぞ!」

さっきまでバカみたいにゲラゲラ笑っていた男子達が、ならないクセに拳をぐっ、ぐっと握りながら私の周りを取り囲むように集まってきた。

「ヨシ君、あんな女ギッタギタにしてやろうぜ」

その中の一人がヨシ君のところへ駆け寄って声をかける。










「うう、痛え…目が、痛え」

「え!?ヨシ君どうしたの!?おい!ヨシ君がなんかおかしいぞ!!!」

ヨシ君のとなりに走ってきた子が急に大声を出すものだから、私を取り囲んで物騒なことを言ってた男子達も、私のことそっちのけで「なんだよ」ってヨシ君の周りに集まりはじめた。

それでも、ヨシ君は「痛え…」ってうずくまったままだった。

そのうちに、男子の中の一人が「このままじゃヨシ君の目、見えなくなっちゃったりするんじゃねえか?」なんて真っ青な顔で言いだして、ざわざわとみんな不安そうな顔になっていった。

「いや、そんなわけないじゃん。これ見てよ」

さすがにまずいかなって思っておずおずと水鉄砲を開けて私はみんなに近づいていった。

だけど、みんな私の話を聞くどころじゃないって、大慌てで半べそかいてるヨシ君を連れて公園から出て行ってしまった。











「行っちゃった…ただのオレンジジュースだから大丈夫だって言おうとしたのに」

近くの水飲み場に残ったオレンジジュースを捨てながら走り去るヨシ君達を見送っていたら、離れたところで隠れて見ていた二人が飛び出してきた。

「アイツら追い払っちゃうなんてすごいよ!ありがとう!お姉ちゃん!」

「本当にね!すごかった!でも…心配だったんだよ!無茶なことして…なんにもされなくてよかった…」

「心配かけてごめん…あ、水鉄砲ありがとうね」

「どういたしまして!お姉ちゃん!」












あの後、ジュースを入れた水鉄砲はとんでもなくベタベタになっていて、洗っても洗っても全然きれいにならなかった。友達に手伝ってもらって結構頑張ったけど、ぴかぴかにするのにすっごく時間がかかって、気づいたらもう帰らないといけない時間になっていた。

なんとかきれいにした水鉄砲を返して、お家までの短い帰り道を「散々だったね」なんて覚えたての言葉でお互いに肩を落としながら帰ってきたら、お母さんがカンカンに怒って待っていた。











「一丁目の奥さんに聞いたわよ。あんたって子は…暴力はダメだっていつもいつも言ってるでしょ!!!」

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