鳥肉食べたい 尾形百之助夢
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ドン…
あの音!もしかして百之助!?
山中に聞こえるくらい大きな銃の音に立ち上がると、私はせっかくたくさん摘んだ花も全部放り出して音のする方に駆けた。
「百之助ー!」
先の方がつん、と鋭くなっている草をかきわけて坂を駆け上がると、やっぱりそこには獲物の首をがっしりと掴む百之助が立っていた。
土埃でくすんだ白い首からはぽたぽた赤と黒が混ざったような色の血が垂れて、百之助の足の近くにまだら模様を作っていた。
「莉緒」
こちらに気付いた百之助の声は、息が荒いままでちょっとだけ弾んでいるように聞こえる。
「ちょうどいい。このとり肉、一緒に食べないか?」
「うん!食べる!!!ありがとう、百之助!」
目の前に差し出されたとり肉をぎゅっと抱き締めるように受け取ろうとすると、百之助は「服が汚れる」なんて意地悪言って、ひょい、とまた持ち上げてしまった。
大好きな百之助が獲ってくれた大好きなとり肉なんだからそんなの全然気にしないのに。
「そんな顔をするな。行くぞ」
むっと眉毛を寄せた百之助は、銃を肩にかけると、空いた手で私の腕を引っ張った。
「うん!」
ちょっと違うけど、まるで百之助が手を繋いでくれたみたいで嬉しくって、私は百之助を追い越してぐんぐん走った。
「はやくはやく!とり肉、一緒に食べよう!」
一瞬目を丸くして、されるがままになっていた百之助だったけど、すぐにいつもみたくフンって得意げに鼻を鳴らしてみせた。
「食いしん坊」
「百之助だって同じくらい食べるじゃん!」
「そうだな。お前が男だったら俺の2倍は食べていたっておかしくないな」
「そ、そんなことないもん!!!」
「ははっ」
「そういえばお前、なんで山にいた?」
百之助に譲ってもらった最後の1個に口をつけたところだったから「ほあ?」って変な声が出ちゃった。
口いっぱいのとり肉を急いで噛んで飲み込むと、私は脂でベタベタになった口を着物の袖で拭って答えた。
「花を摘みにきたの!この山のお花、雪のように白くてすっごくきれいでしょ!」
「花?」
私の袖の中をじろりと見ると、百之助は不思議そうな顔をしてゆっくり首を傾げた。
「いっぱい摘んだんだけどね、銃の音がしたから百之助だーって思って全部置いてきちゃった!」
そう言うと、百之助はちょっと固まって、それからふい、と顔を逸らした。
「…お前、本当に食い意地だけは立派だな」
「はんっ」と息を吐いて言う百之助にむっときて、私は大声を上げて怒鳴った。
「そんなんじゃないもん!たしかにとり肉は大好きだけどそれだけじゃないもん!」
「どうだかな」
顔を逸らしたままの百之助は笑っているのかふるりと肩を揺らした。
なんだかそれが気に食わなくて、私は立ち上がってまだぷるぷる震えている百之助を見下ろした。
「なによ馬鹿にして…初めて会った時、百之助、食わず嫌いの意地っ張りだったくせに!」
「どういう意味だ?」
振り向いた百之助の声はすごく冷たくて、顔は表情が分からないくらい固まっていた。
でも、おかしいなって思うけど気のせいかもって思う自分もいて、結局いつもの調子でむうっとした顔を作って続けちゃった。
「それは…だってそうでしょ!山に捨てるって言って、百之助、とり肉を持っていこうとしてたじゃん!あれって百之助が食わず嫌いの意地っ張りってことでしょ!」
言い終わってはあはあ息を荒くしている私をそのままの表情でしばらく見ると、百之助は「ははあっ」と大きく口を開けて笑った。
「そうだったらよかったのにな」
あの百之助が…私が何をしたってずっと大人みたいに落ち着いていた百之助が笑っている。
口の端を歪めて、苦しそうに腹を抱えて、大きな声を上げて…
私の知っている他の人だっておかしいことがあったらそんな風に笑うのに、百之助のその姿は不思議で、なんだか怖かった。
なにが「よかった」なの?こんなに美味しいとり肉を食わず嫌いしていたなんてすっごく悲しいことだよ。
私は目の前の百之助が笑い終わるまでただ縮こまって見ていることしかできなかった。
あの音!もしかして百之助!?
山中に聞こえるくらい大きな銃の音に立ち上がると、私はせっかくたくさん摘んだ花も全部放り出して音のする方に駆けた。
「百之助ー!」
先の方がつん、と鋭くなっている草をかきわけて坂を駆け上がると、やっぱりそこには獲物の首をがっしりと掴む百之助が立っていた。
土埃でくすんだ白い首からはぽたぽた赤と黒が混ざったような色の血が垂れて、百之助の足の近くにまだら模様を作っていた。
「莉緒」
こちらに気付いた百之助の声は、息が荒いままでちょっとだけ弾んでいるように聞こえる。
「ちょうどいい。このとり肉、一緒に食べないか?」
「うん!食べる!!!ありがとう、百之助!」
目の前に差し出されたとり肉をぎゅっと抱き締めるように受け取ろうとすると、百之助は「服が汚れる」なんて意地悪言って、ひょい、とまた持ち上げてしまった。
大好きな百之助が獲ってくれた大好きなとり肉なんだからそんなの全然気にしないのに。
「そんな顔をするな。行くぞ」
むっと眉毛を寄せた百之助は、銃を肩にかけると、空いた手で私の腕を引っ張った。
「うん!」
ちょっと違うけど、まるで百之助が手を繋いでくれたみたいで嬉しくって、私は百之助を追い越してぐんぐん走った。
「はやくはやく!とり肉、一緒に食べよう!」
一瞬目を丸くして、されるがままになっていた百之助だったけど、すぐにいつもみたくフンって得意げに鼻を鳴らしてみせた。
「食いしん坊」
「百之助だって同じくらい食べるじゃん!」
「そうだな。お前が男だったら俺の2倍は食べていたっておかしくないな」
「そ、そんなことないもん!!!」
「ははっ」
「そういえばお前、なんで山にいた?」
百之助に譲ってもらった最後の1個に口をつけたところだったから「ほあ?」って変な声が出ちゃった。
口いっぱいのとり肉を急いで噛んで飲み込むと、私は脂でベタベタになった口を着物の袖で拭って答えた。
「花を摘みにきたの!この山のお花、雪のように白くてすっごくきれいでしょ!」
「花?」
私の袖の中をじろりと見ると、百之助は不思議そうな顔をしてゆっくり首を傾げた。
「いっぱい摘んだんだけどね、銃の音がしたから百之助だーって思って全部置いてきちゃった!」
そう言うと、百之助はちょっと固まって、それからふい、と顔を逸らした。
「…お前、本当に食い意地だけは立派だな」
「はんっ」と息を吐いて言う百之助にむっときて、私は大声を上げて怒鳴った。
「そんなんじゃないもん!たしかにとり肉は大好きだけどそれだけじゃないもん!」
「どうだかな」
顔を逸らしたままの百之助は笑っているのかふるりと肩を揺らした。
なんだかそれが気に食わなくて、私は立ち上がってまだぷるぷる震えている百之助を見下ろした。
「なによ馬鹿にして…初めて会った時、百之助、食わず嫌いの意地っ張りだったくせに!」
「どういう意味だ?」
振り向いた百之助の声はすごく冷たくて、顔は表情が分からないくらい固まっていた。
でも、おかしいなって思うけど気のせいかもって思う自分もいて、結局いつもの調子でむうっとした顔を作って続けちゃった。
「それは…だってそうでしょ!山に捨てるって言って、百之助、とり肉を持っていこうとしてたじゃん!あれって百之助が食わず嫌いの意地っ張りってことでしょ!」
言い終わってはあはあ息を荒くしている私をそのままの表情でしばらく見ると、百之助は「ははあっ」と大きく口を開けて笑った。
「そうだったらよかったのにな」
あの百之助が…私が何をしたってずっと大人みたいに落ち着いていた百之助が笑っている。
口の端を歪めて、苦しそうに腹を抱えて、大きな声を上げて…
私の知っている他の人だっておかしいことがあったらそんな風に笑うのに、百之助のその姿は不思議で、なんだか怖かった。
なにが「よかった」なの?こんなに美味しいとり肉を食わず嫌いしていたなんてすっごく悲しいことだよ。
私は目の前の百之助が笑い終わるまでただ縮こまって見ていることしかできなかった。