鳥肉食べたい 尾形百之助夢
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「おなか空いた」
ふらふら家から出てくるなり、その場にしゃがみ込むと、我慢していた言葉がすっと出た。
毎日ご飯を食べるのも大変だって母ちゃんが言うくらいなのに、父ちゃんが風邪を引いちゃって畑のお仕事もできなくなっちゃった。
母ちゃんはそれでも、看病の間にやってきては、お家にためてあったご飯をほとんど私にってくれるけど、1人で食べるご飯はなんだか物足りない。
遠くから響く銃の音が足からぶるぶる伝わるたびに、父ちゃんと母ちゃんと囲んでつついた鳥肉のお鍋を思い出してじんわりと目の奥が痛くなった。
「鳥肉…」
…ガー、ガー
うわっ!
急に大きな鳥の鳴き声がしたと思って立ち上がると、辺りはいつの間にか橙色になっていて、てっぺんにあったはずのお日様も山の方に動いていた。
大変!早くお家に入らないと母ちゃんが心配する!
だけど、よだれでべとべとの口をごしごし擦ったその瞬間、目の端っこに、山の方に向かう同じくらいの歳の男の子が映った。
あの子、こんな時間に何してるのかな?
私はその子の方へ走った。
「ねえねえ、何してるの?早く帰らないと母ちゃんが心配するよ!」
数歩先で立ち止まったその子は、じっとこっちを見て、「ああ」とだけ言ってまた山の方にくるりと向き直った。
「だからダメだってば!」
慌ててその子の服を掴むと、その子は、ぎゅっと眉毛をくっつけて私の手を払った。
「俺を心配するような親はいないからまだ帰らなくて平気だ。それよりも早くこいつを捨てに行きたいんだ。だからもう構うな」
言いながらその子は、だらりと下ろされた手を見る。
それにつられて私もその子の手を覗き込む。
「わあ!それ、もしかして鳥肉?」
バッと顔を上げると、その子は一瞬ぴたっと固まったけど、すぐに表情が消えた顔でこくんと頷いた。
「いいなあ!いいなあ!私、鳥肉大好きなんだ!お鍋にしたらすんごくやわらかくなっておいしいの!あなたも鳥肉好き?」
「べつに、好きでも嫌いでもない」
その子はふい、と目を逸らした。
口ではそう言っているけど、その子は手に持った鳥肉を、私が父ちゃんや母ちゃんに叱られた時みたいな顔で見つめている。もしかしたらこの子は鳥肉が大嫌いで、母ちゃんがこのお肉を捌いてるのを見て、ついつい取って来ちゃったのかもしれない。
このままなんてお返事をすればいいのか分からなくなった私は、小さく、「そっかあ」とだけ言った。
「なあ」
「なあに?」
その子に向き直ると、その子はさっきまで私がじいっと見ていた鳥肉をぐいっと目の前に持ち上げた。
「やる。山にまで捨てに行くより、今ここでお前にやった方が楽だ」
「え!?いいの!?」
私は差し出された鳥肉をしっかりつかんで何回も何回も「本当に!?」って聞き返した。
その子は聞くたびにぐっと眉毛を寄せるけど、ちゃんと全部「ああ」と答えてくれた。
嬉しくなって、ぎゅっと貰った鳥肉を抱きしめると、その子に「肉が悪くなる」って取り上げられちゃったけど。
でも、「仕方ないから家まで運んでやる」って言うその子はさっきよりもちょっとだけ優しい顔をしてた。
私は思いっきり大きな声で「ありがとう」を言った。
ふらふら家から出てくるなり、その場にしゃがみ込むと、我慢していた言葉がすっと出た。
毎日ご飯を食べるのも大変だって母ちゃんが言うくらいなのに、父ちゃんが風邪を引いちゃって畑のお仕事もできなくなっちゃった。
母ちゃんはそれでも、看病の間にやってきては、お家にためてあったご飯をほとんど私にってくれるけど、1人で食べるご飯はなんだか物足りない。
遠くから響く銃の音が足からぶるぶる伝わるたびに、父ちゃんと母ちゃんと囲んでつついた鳥肉のお鍋を思い出してじんわりと目の奥が痛くなった。
「鳥肉…」
…ガー、ガー
うわっ!
急に大きな鳥の鳴き声がしたと思って立ち上がると、辺りはいつの間にか橙色になっていて、てっぺんにあったはずのお日様も山の方に動いていた。
大変!早くお家に入らないと母ちゃんが心配する!
だけど、よだれでべとべとの口をごしごし擦ったその瞬間、目の端っこに、山の方に向かう同じくらいの歳の男の子が映った。
あの子、こんな時間に何してるのかな?
私はその子の方へ走った。
「ねえねえ、何してるの?早く帰らないと母ちゃんが心配するよ!」
数歩先で立ち止まったその子は、じっとこっちを見て、「ああ」とだけ言ってまた山の方にくるりと向き直った。
「だからダメだってば!」
慌ててその子の服を掴むと、その子は、ぎゅっと眉毛をくっつけて私の手を払った。
「俺を心配するような親はいないからまだ帰らなくて平気だ。それよりも早くこいつを捨てに行きたいんだ。だからもう構うな」
言いながらその子は、だらりと下ろされた手を見る。
それにつられて私もその子の手を覗き込む。
「わあ!それ、もしかして鳥肉?」
バッと顔を上げると、その子は一瞬ぴたっと固まったけど、すぐに表情が消えた顔でこくんと頷いた。
「いいなあ!いいなあ!私、鳥肉大好きなんだ!お鍋にしたらすんごくやわらかくなっておいしいの!あなたも鳥肉好き?」
「べつに、好きでも嫌いでもない」
その子はふい、と目を逸らした。
口ではそう言っているけど、その子は手に持った鳥肉を、私が父ちゃんや母ちゃんに叱られた時みたいな顔で見つめている。もしかしたらこの子は鳥肉が大嫌いで、母ちゃんがこのお肉を捌いてるのを見て、ついつい取って来ちゃったのかもしれない。
このままなんてお返事をすればいいのか分からなくなった私は、小さく、「そっかあ」とだけ言った。
「なあ」
「なあに?」
その子に向き直ると、その子はさっきまで私がじいっと見ていた鳥肉をぐいっと目の前に持ち上げた。
「やる。山にまで捨てに行くより、今ここでお前にやった方が楽だ」
「え!?いいの!?」
私は差し出された鳥肉をしっかりつかんで何回も何回も「本当に!?」って聞き返した。
その子は聞くたびにぐっと眉毛を寄せるけど、ちゃんと全部「ああ」と答えてくれた。
嬉しくなって、ぎゅっと貰った鳥肉を抱きしめると、その子に「肉が悪くなる」って取り上げられちゃったけど。
でも、「仕方ないから家まで運んでやる」って言うその子はさっきよりもちょっとだけ優しい顔をしてた。
私は思いっきり大きな声で「ありがとう」を言った。
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