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「あと30秒。20秒…10秒…5、4、3、2、1…できた!!!」
ガバッと勢いをつけて扉を下ろすと、あの甘くて香ばしい匂いがぶわっと私の顔を包んだ。
あー、やっぱ幸せ~。
出来上がった時のこのいい匂いは作った人の特権だよね!うん。今回も我ながら大成功!
レシピをちょこっとアレンジ!といっても中のチョコチップをレーズンに変えただけだけど。それでも一応、私独自のアレンジではあるわけだからその分、2倍嬉しい大成功だ!
よし!早速アイツもびっくりしちゃうくらいかわいくラッピングするよ!!!
さっすが私!ラッピングまで完璧!よっ!この色オンナ!憎いねこのこのっ…!!!
と、言いたいところだけど、やらかしたー…
いや、だって、まさか駅前の大きなお店で買ったこれまた超大きなプレゼントボックスにも入りきらないことあり得る!?しかもちょお~っと多めに詰めてやろうと思っただけなのに大穴空くとかあり得なくない!?マジ私の1500円返せコラ!!!あー!!!もう!!!結局今年も特大タッパーだし…一応リボン(120円)巻いたけどこれ絶対に誤魔化せてない…もう最悪なんだけど!!!
ずーっとムカムカしたまんま歩いて、ピンポンをドンっと思い切り叩くと、アイツもいつになくムッと顔を顰めて玄関から出てきた。
「遅え」
「いいじゃん10分くらい!今日、予定ないんでしょ?」
一郎の横を通り抜けて勝手に家の中に入ると、一郎はわざと肩をぶつけて私を追い抜かした。
「予定がないからだろ。バカ」
「なにそれ、意味分かんない」
言いながら無理やり前に割って入って一郎の部屋の座布団に飛びつくと、思いっきり足を伸ばしてやった。
「お前なあ…」
そのままごろんと寝っ転がった私にはあ、と1つため息を吐いた一郎は私の足に一発蹴りを入れて隣に腰を下ろした。
私の綺麗でスラーッとした御身脚になにしてくれてんだこの野郎。
「座布団はあげないからね。早い者勝ちだから」
「違えよバカ…ん!」
私のおでこを思いっきり弾くと、一郎はその手をぐっとこちらに突き出した。
こっちは見習いボクサー宮田一郎の馬鹿力で激痛が走っているおでこを押さえるのにいっぱいいっぱいだっていうのに一郎はそんなことお構いなしにぐいぐい手を押し付けてくる。
一郎には人の心はないっていうの!?
「なによこの手はー?」
「プレゼント」
「はあ?」
貰う側だっていうのに生意気にも一郎は堂々と胸を張ってみせた。
なんなのコイツ?さも私が用意しているのが当たり前みたいに…!用意してるけどさあ!!!
「早くしろよ」
「…ない」
「は?」
「感謝が足りない!態度がデカすぎるのよ!!!もっとこう、可愛げみたいなのがあってもいいんじゃないの!?「莉緒からのプレゼント、楽しみにしてたんだぜ。毎年俺のためにありがとうな。愛してるぜ」みたいなさあ!!!ないの!?そういうの!!!」
「莉緒からのプレゼント、楽しみにしてたんだぜ。毎年俺のためにありがとうな。愛してるぜ」
「ちょっとその真顔やめてよ。やだ~、なんか気持ち悪い。顔と言葉が全然合ってない」
「…お前が言えっつったんだろうが」
「そうだけどさ…うーん、やっぱきもい!普段一郎、愛してるとか言わないから変な感じする」
「わけ分かんねえ…それより、ほら、早くプレゼント出せよ。さっきの台詞言えばくれるんだろ?」
「そんなこと言ってないけど!…まあいいや、はい!」
半ばヤケクソになって、私は真っ赤なリボンで飾った特大タッパーを取り出した。
「お前…!それなんだよ…!!!」
見るなり一郎のヤツ、隠しもせず盛大に吹き出しやがった。
「プレゼントだけど?なに?文句ある?」
もう一度一郎に「プレゼント」を押し付けるとまた一郎はブハッと噴出した。
「プレゼント、ね。特大タッパーにリボンで…しかもリボンぐっちゃぐちゃだし」
「な!!!それは、用意してたかわいい箱がダメになっちゃってたまたま…!!!本当だったらもっと女の子っぽいかわいい感じになる予定だったの!!!」
勢いのままにそう叫ぶと、一郎は呆れたように頬を掻いた。
「なに?まだなんかあるの?」
きっと睨みつけると、一郎はふっと笑って長い睫毛を一瞬伏せた。
「からかって悪い。でもこのラッピング、俺は嫌いじゃないぜ。お前らしい」
「…かわいくないって言いたいの?」
言った瞬間、唇にふにっと柔らかいものが触れた。
「え!?ちょ、一郎!?今、キ…!!!」
「これで機嫌直せよ、莉緒」
「な、なに言ってんのよバカ…!!!意味分かんない…!!!私、キス、初めてだったんだよ!?」
ぎゅっと唇を押さえたまま、もごもご文句を言うと、一郎はまたふっと1つ息を吐いて私の肩を引き寄せた。
「…この手はなによ、この手は?」
「去年みたいに逃げられたら困るからな。ただでさえ誰かのせいで今日一緒にいられる時間が無くなってるんだ。これ以上は許さねえよ」
そう言うと一郎は私の髪にこてん、と頭を預けた。
それをゴツン、と頭突きではね除けると、私は顎を押さえて顔を歪めている一郎をまた睨んだ。
「なにさっきのこと根に持ってるのよ。ボクシングだなんだっていつも待ち合わせに遅刻してくる一郎にだけは言われたくない」
「…痛いとこついてくるな。お前は」
顎をまた一撫ですると一郎の方も私を睨んできた。
「なに?」
「俺、今日誕生日だぜ?」
「だからなに?プレゼントはもうあげたでしょ?」
「あれだけじゃ足りねえよ」
「は?…っ!!!」
いつの間にか腰のところにまで下りてきていた一郎の手がするりと腹のくびれをなぞった。
びくっと肩を震えさせる私を見てくくっと小さく笑うと、一郎は私の耳に顔を寄せた。
「なあ莉緒、他は?」
「…他にはなにも用意してない!」
「ふうん。残念だな」
「ひいっ…!!!」
言いながら一郎はあろうことか太ももに手を回してきた。
「わ、分かったよ…。一郎!こっち向いて!!!」
近づいてくる顔を寸でのところで押さえると、一郎はおかしそうに笑って「OK」と言った。
離れ際に頭を撫でられたのが子供扱いされているみたいでなんだか悔しくって、パシン、と叩き落とすと一郎はぷっと吹き出した。
なによ馬鹿にして…一郎だってまだまだ子供じゃない。
「あ」
声を出して口を開いてみせると、一郎もそれに釣られて大きく口を開いた。
咄嗟のことでちょっと頬を染めた一郎がおもしろくって笑い声が漏れる。
「…おい」
「ごめんって。ほら、もう1回口開けて」
「ん。あ」
「ありがと」
大きく口を開けて待っている一郎に、私はカップケーキを1個取って近づけた。
そっと唇に当てると、もぐ、と小さく齧り取られた。
ふわりとほのかに香るバニラとつん、と刺激的なラムレーズンにドキッと心臓が跳ねた。
慌ててちょっと後退ろうとしたら、まだ腰に回されていた手が邪魔をして余計にぺったり一郎にくっついてしまう。
「莉緒、もう一回」
「あ」とまた口を開けて一郎の顔がこちらに迫ってくる。
咄嗟にぎゅっと目を瞑ると、ふっと漏らされた吐息が鼻にかかって、それからまた唇に柔らかいものが触れた。
ガバッと勢いをつけて扉を下ろすと、あの甘くて香ばしい匂いがぶわっと私の顔を包んだ。
あー、やっぱ幸せ~。
出来上がった時のこのいい匂いは作った人の特権だよね!うん。今回も我ながら大成功!
レシピをちょこっとアレンジ!といっても中のチョコチップをレーズンに変えただけだけど。それでも一応、私独自のアレンジではあるわけだからその分、2倍嬉しい大成功だ!
よし!早速アイツもびっくりしちゃうくらいかわいくラッピングするよ!!!
さっすが私!ラッピングまで完璧!よっ!この色オンナ!憎いねこのこのっ…!!!
と、言いたいところだけど、やらかしたー…
いや、だって、まさか駅前の大きなお店で買ったこれまた超大きなプレゼントボックスにも入りきらないことあり得る!?しかもちょお~っと多めに詰めてやろうと思っただけなのに大穴空くとかあり得なくない!?マジ私の1500円返せコラ!!!あー!!!もう!!!結局今年も特大タッパーだし…一応リボン(120円)巻いたけどこれ絶対に誤魔化せてない…もう最悪なんだけど!!!
ずーっとムカムカしたまんま歩いて、ピンポンをドンっと思い切り叩くと、アイツもいつになくムッと顔を顰めて玄関から出てきた。
「遅え」
「いいじゃん10分くらい!今日、予定ないんでしょ?」
一郎の横を通り抜けて勝手に家の中に入ると、一郎はわざと肩をぶつけて私を追い抜かした。
「予定がないからだろ。バカ」
「なにそれ、意味分かんない」
言いながら無理やり前に割って入って一郎の部屋の座布団に飛びつくと、思いっきり足を伸ばしてやった。
「お前なあ…」
そのままごろんと寝っ転がった私にはあ、と1つため息を吐いた一郎は私の足に一発蹴りを入れて隣に腰を下ろした。
私の綺麗でスラーッとした御身脚になにしてくれてんだこの野郎。
「座布団はあげないからね。早い者勝ちだから」
「違えよバカ…ん!」
私のおでこを思いっきり弾くと、一郎はその手をぐっとこちらに突き出した。
こっちは見習いボクサー宮田一郎の馬鹿力で激痛が走っているおでこを押さえるのにいっぱいいっぱいだっていうのに一郎はそんなことお構いなしにぐいぐい手を押し付けてくる。
一郎には人の心はないっていうの!?
「なによこの手はー?」
「プレゼント」
「はあ?」
貰う側だっていうのに生意気にも一郎は堂々と胸を張ってみせた。
なんなのコイツ?さも私が用意しているのが当たり前みたいに…!用意してるけどさあ!!!
「早くしろよ」
「…ない」
「は?」
「感謝が足りない!態度がデカすぎるのよ!!!もっとこう、可愛げみたいなのがあってもいいんじゃないの!?「莉緒からのプレゼント、楽しみにしてたんだぜ。毎年俺のためにありがとうな。愛してるぜ」みたいなさあ!!!ないの!?そういうの!!!」
「莉緒からのプレゼント、楽しみにしてたんだぜ。毎年俺のためにありがとうな。愛してるぜ」
「ちょっとその真顔やめてよ。やだ~、なんか気持ち悪い。顔と言葉が全然合ってない」
「…お前が言えっつったんだろうが」
「そうだけどさ…うーん、やっぱきもい!普段一郎、愛してるとか言わないから変な感じする」
「わけ分かんねえ…それより、ほら、早くプレゼント出せよ。さっきの台詞言えばくれるんだろ?」
「そんなこと言ってないけど!…まあいいや、はい!」
半ばヤケクソになって、私は真っ赤なリボンで飾った特大タッパーを取り出した。
「お前…!それなんだよ…!!!」
見るなり一郎のヤツ、隠しもせず盛大に吹き出しやがった。
「プレゼントだけど?なに?文句ある?」
もう一度一郎に「プレゼント」を押し付けるとまた一郎はブハッと噴出した。
「プレゼント、ね。特大タッパーにリボンで…しかもリボンぐっちゃぐちゃだし」
「な!!!それは、用意してたかわいい箱がダメになっちゃってたまたま…!!!本当だったらもっと女の子っぽいかわいい感じになる予定だったの!!!」
勢いのままにそう叫ぶと、一郎は呆れたように頬を掻いた。
「なに?まだなんかあるの?」
きっと睨みつけると、一郎はふっと笑って長い睫毛を一瞬伏せた。
「からかって悪い。でもこのラッピング、俺は嫌いじゃないぜ。お前らしい」
「…かわいくないって言いたいの?」
言った瞬間、唇にふにっと柔らかいものが触れた。
「え!?ちょ、一郎!?今、キ…!!!」
「これで機嫌直せよ、莉緒」
「な、なに言ってんのよバカ…!!!意味分かんない…!!!私、キス、初めてだったんだよ!?」
ぎゅっと唇を押さえたまま、もごもご文句を言うと、一郎はまたふっと1つ息を吐いて私の肩を引き寄せた。
「…この手はなによ、この手は?」
「去年みたいに逃げられたら困るからな。ただでさえ誰かのせいで今日一緒にいられる時間が無くなってるんだ。これ以上は許さねえよ」
そう言うと一郎は私の髪にこてん、と頭を預けた。
それをゴツン、と頭突きではね除けると、私は顎を押さえて顔を歪めている一郎をまた睨んだ。
「なにさっきのこと根に持ってるのよ。ボクシングだなんだっていつも待ち合わせに遅刻してくる一郎にだけは言われたくない」
「…痛いとこついてくるな。お前は」
顎をまた一撫ですると一郎の方も私を睨んできた。
「なに?」
「俺、今日誕生日だぜ?」
「だからなに?プレゼントはもうあげたでしょ?」
「あれだけじゃ足りねえよ」
「は?…っ!!!」
いつの間にか腰のところにまで下りてきていた一郎の手がするりと腹のくびれをなぞった。
びくっと肩を震えさせる私を見てくくっと小さく笑うと、一郎は私の耳に顔を寄せた。
「なあ莉緒、他は?」
「…他にはなにも用意してない!」
「ふうん。残念だな」
「ひいっ…!!!」
言いながら一郎はあろうことか太ももに手を回してきた。
「わ、分かったよ…。一郎!こっち向いて!!!」
近づいてくる顔を寸でのところで押さえると、一郎はおかしそうに笑って「OK」と言った。
離れ際に頭を撫でられたのが子供扱いされているみたいでなんだか悔しくって、パシン、と叩き落とすと一郎はぷっと吹き出した。
なによ馬鹿にして…一郎だってまだまだ子供じゃない。
「あ」
声を出して口を開いてみせると、一郎もそれに釣られて大きく口を開いた。
咄嗟のことでちょっと頬を染めた一郎がおもしろくって笑い声が漏れる。
「…おい」
「ごめんって。ほら、もう1回口開けて」
「ん。あ」
「ありがと」
大きく口を開けて待っている一郎に、私はカップケーキを1個取って近づけた。
そっと唇に当てると、もぐ、と小さく齧り取られた。
ふわりとほのかに香るバニラとつん、と刺激的なラムレーズンにドキッと心臓が跳ねた。
慌ててちょっと後退ろうとしたら、まだ腰に回されていた手が邪魔をして余計にぺったり一郎にくっついてしまう。
「莉緒、もう一回」
「あ」とまた口を開けて一郎の顔がこちらに迫ってくる。
咄嗟にぎゅっと目を瞑ると、ふっと漏らされた吐息が鼻にかかって、それからまた唇に柔らかいものが触れた。