夜の帰り道1章
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「みんな注目!」
そう大声を上げてクラス委員長が教壇に立つ。
ホームルーム中なんだし、言われなくたって皆あなたに注目してるよ、と心の中で悪態をつきながらも、一応私は姿勢を正した。
教壇から席についているクラスメイトをぐるっと見回すと、委員長は満足げに頷き、続ける。
「厳正なる投票の結果、10月末の文化祭のウチの出し物が決定しました!」
委員長の言葉に沸き立つクラスメイト達。
それを「静かにっ!」の一言で鎮めると、委員長はオホン!とわざとらしい咳払いをした。
「我がクラスの出し物はあ~…」
もったいぶって溜めに溜める委員長に内心イラつきつつも、私も固唾を飲んで発表を待つ。
事前準備の少ない出し物、事前準備の少ない出し物…
欲を言えば当日のシフトにも入らなくていい出し物になれ~…!
お化け屋敷、メイド喫茶、迷路だけは絶対嫌…!!!
「我がクラスの出し物は、舞台『眠れる森の美女』に決定しました!!!」
「うおおおおおおお!!!やったー!!!」
「キャー!!!めっちゃ楽しみ!!!」
宝くじでも当たったのかというくらい大盛り上がりのクラスメイトをよそに、私は頭を抱えて机に突っ伏した。
劇…これは絶対選ばれないって思ってたのに…!盲点だった…!
終わった…部活休みまくり決定だこれは…
項垂れたままの私を置いてけぼりにして、そのままホームルームは進んでいく。
混乱とショックで固まった頭で理解できたのは、クラスで一番かわいいハナちゃんと、お調子者のハマケンが主役になった、というところまでだ。
ハナちゃんのお姫様役はともかく、ハマケンの王子様には需要ないでしょ…
「はい!じゃあ台本配っていくよ~!前から後ろに回して~!」
ピンクの表紙が付けられたペラッペラの台本を山ほど抱えて、委員長が呼び掛ける。
苦笑いのミヤちゃんから回ってきたそれを受け取ると、私も周りの皆に倣ってページを捲ってみた。
やたらとラブシーンが多いことを除けば内容はごく普通の『眠れる森の美女』のようだ。正直言ってちょっと拍子抜けした。クラスの内輪ネタでもなんでもいいから少しくらい変な話にしてアレンジした方が面白いと思うのに…
主要キャストが全て決定して、なんとなく盛り上がりきれなくなった空気感の中、そのほかの役割分担に移る。
私はヒメちゃんとミヤちゃんと一緒の小道具係になった。
紙吹雪や舞台セットに飾るバラの造花をかなり大量に作らないといけないのは面倒だけど、舞台に立つことにならなかっただけよかったとしよう。
ほっと胸を撫でおろして、私はヒメちゃんとミヤちゃんと共に小道具係の子達の輪に混ざった。
山のようにたくさんのバラを作って、やっと放課後。体育館に入ると、皆がコートの準備をしながら楽しそうに喋っていた。
練習が始まる前に皆が話している光景は特に珍しいわけでもないけれど、今日の皆はソワソワしているようなワクワクしているような不思議な感じがする。
これも文化祭効果?
クラスのためにって大変な準備をこなさないといけないのは嫌だけど、こういう雰囲気は結構好きだ。
早速近くにいたさとちゃんに声を掛けようとコートに足を踏み入れたところで、ポン、と肩を叩かれた。
「小宮」
振り向くと、前田がいつものようにニヤニヤ笑っていた。
一瞬ムカつきかけたけど、この顔も文化祭効果なのかもしれない。
「なに?」と聞き返すと、前田は私の隣に並んだ。
「なあ、小宮のとこの出し物は何になった?俺のクラスはやきそばの屋台になったぜ」
「私のクラスは劇をやるよ。『眠れる森の美女』」
クラスで出し物を決めた時は面倒臭いのに当たった、と心底がっかりしたけれど、いざ口に出してみると不思議と楽しい気分になってきた。
「マジで!?お前何の役やんだよ!?もしかしてお姫様だったりして!?」
ウチのクラスの劇に興味津々、と言った様子でやけにテンションを上げて聞いてくる前田に悪い気はしない。「違う 違う!」と前田の言葉をもったいぶって制すると、私は説明を続けた。
「お姫様はハナちゃんがやるの。で、王子はハマケン。ハマケンの王子はアレだけど、ハナちゃんのお姫様はきっとすごいよ!衣装係の子が張り切っててさ」
「…あー、ハナちゃん、ってあの有名なヤツか。あのめっちゃモテてるヤツ。確かにアイツ、かわいい顔してるよな。話したことねえけど、アイツのお姫様役はちょっと気になるかもな」
「でしょ!ドレスもね、ラストで着るウエディングドレスと2着用意するらしいからそれも注目だよ!」
前田が共感してくれたのが嬉しくて、身を乗り出してそう答えると、なぜか前田はハッとした顔をして「やべっ」と口に出した。
「え?なに?どうしたの前田?」
聞き返すと、前田はなぜかバツが悪そうに顔を歪めた。
「あー…小宮」
「だからなに?」
「その、なんだ。ウチのクラスのやきそば1個驕ってやるよ。当日取り置きな」
「なにそれ?どういう風の吹き回しよ?」
突然の申し出に何か裏があるのではないか、と疑いの目を向ける。
前田はその視線にビクッと身体を強張らせ、こちらから目を逸らす。
「お、おう、まあ、そんな深い意味ねえよ。日頃のお詫び…というかお礼、みたいなヤツ?」
なぜだか気まずそうにそう言う前田に不信感は残るけど、何か良からぬことを思い付いた時の前田はもっと堂々としているし、これは言葉通りの意味なんだろうな。まあ、それなら、そのやきそば、喜んで貰っちゃっても平気だよね!
「ふーん、まあ、前田には普段から迷惑掛けられてるもんね。分かった。そういうことならありがたく受け取っとく!前田も意外といいとこあるじゃん」
「ま、まあな」
複雑な顔をして頷く前田が気にならないわけじゃないけど、そんなことよりやきそばだ!やきそば一食分キープできたってことは、文化祭当日の地獄のお昼争奪戦に参加しなくて済む!
私は上機嫌でもう一度前田に「ありがとう」を言って、練習の準備に向かった。
タダでやきそば…なんかツイてるなあ!
そう大声を上げてクラス委員長が教壇に立つ。
ホームルーム中なんだし、言われなくたって皆あなたに注目してるよ、と心の中で悪態をつきながらも、一応私は姿勢を正した。
教壇から席についているクラスメイトをぐるっと見回すと、委員長は満足げに頷き、続ける。
「厳正なる投票の結果、10月末の文化祭のウチの出し物が決定しました!」
委員長の言葉に沸き立つクラスメイト達。
それを「静かにっ!」の一言で鎮めると、委員長はオホン!とわざとらしい咳払いをした。
「我がクラスの出し物はあ~…」
もったいぶって溜めに溜める委員長に内心イラつきつつも、私も固唾を飲んで発表を待つ。
事前準備の少ない出し物、事前準備の少ない出し物…
欲を言えば当日のシフトにも入らなくていい出し物になれ~…!
お化け屋敷、メイド喫茶、迷路だけは絶対嫌…!!!
「我がクラスの出し物は、舞台『眠れる森の美女』に決定しました!!!」
「うおおおおおおお!!!やったー!!!」
「キャー!!!めっちゃ楽しみ!!!」
宝くじでも当たったのかというくらい大盛り上がりのクラスメイトをよそに、私は頭を抱えて机に突っ伏した。
劇…これは絶対選ばれないって思ってたのに…!盲点だった…!
終わった…部活休みまくり決定だこれは…
項垂れたままの私を置いてけぼりにして、そのままホームルームは進んでいく。
混乱とショックで固まった頭で理解できたのは、クラスで一番かわいいハナちゃんと、お調子者のハマケンが主役になった、というところまでだ。
ハナちゃんのお姫様役はともかく、ハマケンの王子様には需要ないでしょ…
「はい!じゃあ台本配っていくよ~!前から後ろに回して~!」
ピンクの表紙が付けられたペラッペラの台本を山ほど抱えて、委員長が呼び掛ける。
苦笑いのミヤちゃんから回ってきたそれを受け取ると、私も周りの皆に倣ってページを捲ってみた。
やたらとラブシーンが多いことを除けば内容はごく普通の『眠れる森の美女』のようだ。正直言ってちょっと拍子抜けした。クラスの内輪ネタでもなんでもいいから少しくらい変な話にしてアレンジした方が面白いと思うのに…
主要キャストが全て決定して、なんとなく盛り上がりきれなくなった空気感の中、そのほかの役割分担に移る。
私はヒメちゃんとミヤちゃんと一緒の小道具係になった。
紙吹雪や舞台セットに飾るバラの造花をかなり大量に作らないといけないのは面倒だけど、舞台に立つことにならなかっただけよかったとしよう。
ほっと胸を撫でおろして、私はヒメちゃんとミヤちゃんと共に小道具係の子達の輪に混ざった。
山のようにたくさんのバラを作って、やっと放課後。体育館に入ると、皆がコートの準備をしながら楽しそうに喋っていた。
練習が始まる前に皆が話している光景は特に珍しいわけでもないけれど、今日の皆はソワソワしているようなワクワクしているような不思議な感じがする。
これも文化祭効果?
クラスのためにって大変な準備をこなさないといけないのは嫌だけど、こういう雰囲気は結構好きだ。
早速近くにいたさとちゃんに声を掛けようとコートに足を踏み入れたところで、ポン、と肩を叩かれた。
「小宮」
振り向くと、前田がいつものようにニヤニヤ笑っていた。
一瞬ムカつきかけたけど、この顔も文化祭効果なのかもしれない。
「なに?」と聞き返すと、前田は私の隣に並んだ。
「なあ、小宮のとこの出し物は何になった?俺のクラスはやきそばの屋台になったぜ」
「私のクラスは劇をやるよ。『眠れる森の美女』」
クラスで出し物を決めた時は面倒臭いのに当たった、と心底がっかりしたけれど、いざ口に出してみると不思議と楽しい気分になってきた。
「マジで!?お前何の役やんだよ!?もしかしてお姫様だったりして!?」
ウチのクラスの劇に興味津々、と言った様子でやけにテンションを上げて聞いてくる前田に悪い気はしない。「違う 違う!」と前田の言葉をもったいぶって制すると、私は説明を続けた。
「お姫様はハナちゃんがやるの。で、王子はハマケン。ハマケンの王子はアレだけど、ハナちゃんのお姫様はきっとすごいよ!衣装係の子が張り切っててさ」
「…あー、ハナちゃん、ってあの有名なヤツか。あのめっちゃモテてるヤツ。確かにアイツ、かわいい顔してるよな。話したことねえけど、アイツのお姫様役はちょっと気になるかもな」
「でしょ!ドレスもね、ラストで着るウエディングドレスと2着用意するらしいからそれも注目だよ!」
前田が共感してくれたのが嬉しくて、身を乗り出してそう答えると、なぜか前田はハッとした顔をして「やべっ」と口に出した。
「え?なに?どうしたの前田?」
聞き返すと、前田はなぜかバツが悪そうに顔を歪めた。
「あー…小宮」
「だからなに?」
「その、なんだ。ウチのクラスのやきそば1個驕ってやるよ。当日取り置きな」
「なにそれ?どういう風の吹き回しよ?」
突然の申し出に何か裏があるのではないか、と疑いの目を向ける。
前田はその視線にビクッと身体を強張らせ、こちらから目を逸らす。
「お、おう、まあ、そんな深い意味ねえよ。日頃のお詫び…というかお礼、みたいなヤツ?」
なぜだか気まずそうにそう言う前田に不信感は残るけど、何か良からぬことを思い付いた時の前田はもっと堂々としているし、これは言葉通りの意味なんだろうな。まあ、それなら、そのやきそば、喜んで貰っちゃっても平気だよね!
「ふーん、まあ、前田には普段から迷惑掛けられてるもんね。分かった。そういうことならありがたく受け取っとく!前田も意外といいとこあるじゃん」
「ま、まあな」
複雑な顔をして頷く前田が気にならないわけじゃないけど、そんなことよりやきそばだ!やきそば一食分キープできたってことは、文化祭当日の地獄のお昼争奪戦に参加しなくて済む!
私は上機嫌でもう一度前田に「ありがとう」を言って、練習の準備に向かった。
タダでやきそば…なんかツイてるなあ!