夜の帰り道1章
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「すいません。部室の鍵をお願いします」
「ああ、バレー部の。はいよ、今日試合なんだってね!頑張ってくれよ!今年も全国制覇期待してるからね!」
「はい!ありがとうございます!頑張ります!」
休日でもなぜかこんな朝っぱらから来てる小林から鍵を受け取るなり、私は職員室を後にした。
いつもスカート数センチ折っただけでも気づいてくるし、すごくウザい小林でも応援してもらえると不思議と元気が出る。
今日も一日頑張ろう!
ぎゅっと、鍵を握りしめて、私はさらに部室へと急いだ。
「げ…」
「よう!小宮」
「なんでマネージャーでもないのにこんな朝早くからここにいるのよ?」
顎でどかして鍵を開けながら、背後の前田に声をかける。
「……」
おかしい。いつもならなにか余計なこと言ってくるのに。
「なに?どうしたの?」
ドアに手をかけたまま前田の方へ振り向く。
目が合った前田はすぐに、ふい、と顔を逸らした。
「前田?」
私はそっと鍵を抜き取った。
「小宮」
「なに?」
じりっと肩がドアに擦れる。
「昨日はあんな態度取っちまって悪かった」
「え?」
カラン、と何かが落ちる音がどこか遠くに聞こえる。
私は、ドアノブをぎゅっと握り直して、再び前田をしっかりと見た。
「実は昨日、お前が来る前、タカと坂見台のヤツらが家で祝勝会やってたんだ。それで…本当に悪かった」
そう言い切った前田は、一度口を開きかけて、ぐっと奥歯を噛み締めた。
「前田」
バッグを背負い直した私は、呼びながら一歩踏み出す。
いつも何考えてるんだか分からなくてイライラさせられてばかりなのに、今は前田の気持ちが不思議と分かるような気がした。
「いいよ、べつに謝らなくても。私、全然気にしてなかったし。それに、私も、ライバルだと思ってた相手が県予選出場が決まったってだけで浮かれてるの見たら嫌だろうから」
「…小宮」
「だから、今日も明日も、坂見台戦も1点もやらずに勝って、また全国獲ろう!」
拳を握って一歩踏み出す。もう大丈夫みたいだ。
「なに当たり前のこと言ってんだよ?サポートは頼んだぜ、小宮!」
「もちろん!」
私は、開かれた拳をしっかりと握りしめた。
「よし!じゃあせっかくだし、それ運ぶの手伝ってやるよ!」
「え?ちょっとなによ急に!?」
地面に落ちていた鍵を拾って渡してきたと思ったら、そのまま肩のバッグも取り上げてきたものだから疑いの目で見上げると、前田は、得意げに近くにあったもう一つのバッグも片手で抱え上げてみせた。
「まだイケるな。おい、小宮、他のも持ってやるよ」
「え、でも前田が今持ってるやつも結構重いやつだよ。試合前なんだからあんまり無理なことはしないで」
「なーに言ってんだよ?毎日黒木の厳しいトレーニングに耐えてきたんだぜ?このくらい余裕余裕!」
はんっ、と小馬鹿にするように鼻で笑って、前田は、私が今持ち上げたばっかりの小さなバッグを見下ろす。
ムカつく。私が持ってるやつ、前田が持ってるやつよりもずっと重いのに。
「さすが前田。まあ、でも、そうだよね?この前なんて授業サボって体育館に侵入した上に機材が壊れるほどトレーニング頑張ったんだもんね?そのくらい全然平気だよね?」
さっきまでニヤニヤ、こちらに見せつけるように揺らされていたバッグがピタリと止まった。
「ちょっと待て!なんでお前がそのこと知ってんだよ!?」
「なんでだろうね?それより、そのバッグ、落とさないでよ?中に入ってるの壊したら前田が弁償だからね」
私は、バッグを肩にかけた勢いのまま、前田の脇を通り抜けていった。
「ああ、バレー部の。はいよ、今日試合なんだってね!頑張ってくれよ!今年も全国制覇期待してるからね!」
「はい!ありがとうございます!頑張ります!」
休日でもなぜかこんな朝っぱらから来てる小林から鍵を受け取るなり、私は職員室を後にした。
いつもスカート数センチ折っただけでも気づいてくるし、すごくウザい小林でも応援してもらえると不思議と元気が出る。
今日も一日頑張ろう!
ぎゅっと、鍵を握りしめて、私はさらに部室へと急いだ。
「げ…」
「よう!小宮」
「なんでマネージャーでもないのにこんな朝早くからここにいるのよ?」
顎でどかして鍵を開けながら、背後の前田に声をかける。
「……」
おかしい。いつもならなにか余計なこと言ってくるのに。
「なに?どうしたの?」
ドアに手をかけたまま前田の方へ振り向く。
目が合った前田はすぐに、ふい、と顔を逸らした。
「前田?」
私はそっと鍵を抜き取った。
「小宮」
「なに?」
じりっと肩がドアに擦れる。
「昨日はあんな態度取っちまって悪かった」
「え?」
カラン、と何かが落ちる音がどこか遠くに聞こえる。
私は、ドアノブをぎゅっと握り直して、再び前田をしっかりと見た。
「実は昨日、お前が来る前、タカと坂見台のヤツらが家で祝勝会やってたんだ。それで…本当に悪かった」
そう言い切った前田は、一度口を開きかけて、ぐっと奥歯を噛み締めた。
「前田」
バッグを背負い直した私は、呼びながら一歩踏み出す。
いつも何考えてるんだか分からなくてイライラさせられてばかりなのに、今は前田の気持ちが不思議と分かるような気がした。
「いいよ、べつに謝らなくても。私、全然気にしてなかったし。それに、私も、ライバルだと思ってた相手が県予選出場が決まったってだけで浮かれてるの見たら嫌だろうから」
「…小宮」
「だから、今日も明日も、坂見台戦も1点もやらずに勝って、また全国獲ろう!」
拳を握って一歩踏み出す。もう大丈夫みたいだ。
「なに当たり前のこと言ってんだよ?サポートは頼んだぜ、小宮!」
「もちろん!」
私は、開かれた拳をしっかりと握りしめた。
「よし!じゃあせっかくだし、それ運ぶの手伝ってやるよ!」
「え?ちょっとなによ急に!?」
地面に落ちていた鍵を拾って渡してきたと思ったら、そのまま肩のバッグも取り上げてきたものだから疑いの目で見上げると、前田は、得意げに近くにあったもう一つのバッグも片手で抱え上げてみせた。
「まだイケるな。おい、小宮、他のも持ってやるよ」
「え、でも前田が今持ってるやつも結構重いやつだよ。試合前なんだからあんまり無理なことはしないで」
「なーに言ってんだよ?毎日黒木の厳しいトレーニングに耐えてきたんだぜ?このくらい余裕余裕!」
はんっ、と小馬鹿にするように鼻で笑って、前田は、私が今持ち上げたばっかりの小さなバッグを見下ろす。
ムカつく。私が持ってるやつ、前田が持ってるやつよりもずっと重いのに。
「さすが前田。まあ、でも、そうだよね?この前なんて授業サボって体育館に侵入した上に機材が壊れるほどトレーニング頑張ったんだもんね?そのくらい全然平気だよね?」
さっきまでニヤニヤ、こちらに見せつけるように揺らされていたバッグがピタリと止まった。
「ちょっと待て!なんでお前がそのこと知ってんだよ!?」
「なんでだろうね?それより、そのバッグ、落とさないでよ?中に入ってるの壊したら前田が弁償だからね」
私は、バッグを肩にかけた勢いのまま、前田の脇を通り抜けていった。