夜の帰り道1章
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「そういえばさ」
「なんだよ」
「私のノートにあんなに落書きしてあったけどちゃんと勉強したの?」
「は?どうしたんだよいきなり。やったに決まってンだろ」
テストの答え合わせをしている流れでそう聞くと、やっぱり前田はわかりやすく慌てて食い気味にそう答えてきた。
「じゃあ、ちゃんと勉強したみたいだしこのノートに書いてあることくらい余裕でわかるよね」
言いながら国語のノートをカバンから取り出してパラパラ見えるように捲ってみると前田は、
「あ?なんでそんなん答えなきゃなんねえんだよ」
と面倒くさそうに顔を歪めながら言ってきた。
予想に反してこちらの挑発に乗ってこない前田に少し驚きながらも、なら、と私はさらに前田を煽ってみた。
「べつに答えられないならいいよ。聞かないであげるから。わからないなら仕方ないしね」
「は?わかるわ。なんでも聞いてみろよ」
そんな風に挑発してみると前田はそう鼻息も荒く意気込んできた。
煽っておいてなんだけど前田って結構単純だな。
前田を国語のテストをネタにしていじってやろうという目的がバレるかもしれないと、そう考えて危うく吹き出しそうになるのをぐっと堪えて、私はいかにも真剣そうな表情でノートに書き写された問題を読み上げた。
「じゃあ、第一問目、二段落目のヒロミの気持ちは?」
「ヒロミの気持ち、あーっと、あれだろ?あれ」
前田は指で頭をかいてそんなことをブツブツ呟きながら、考え込みはじめた。
やっぱりちゃんと勉強してなかったんだな。
私はまた笑ってしまいそうになるのをなんとか抑えて、真面目な表情を作って前田から顔を逸らすように前を向いた。
「わかった。父ちゃんの意見が気にくわなくてムカついてる、だ」
「正解」
得意げにちょっと澄まして前を向いた矢先、前田がパッと目を輝かせてこちらにすごい勢いで向き直り、自信満々にそう正解を言っててきた。答え方はひどいと思うけど。
前田の答えが間違っていたなら「間違ってるよ。やっぱりちゃんと勉強してなかったんでしょ」っていじれたのに。答え方がひどいってだけじゃ言い返される。
悔しくなってつい前田の方を睨みつけたら、そんな私の気持ちを見透かしているのか、前田は「な?ちゃんと勉強したっつったろ?」と先ほどとは打って変わってニヤニヤと自慢げに胸を張ってこちらを見下ろしてきた。ほんとムカつく。
こうなったらノートに書いてないようなとことん難しい問題ばっかり出してやる。
私は当初の「からかってきた仕返しに前田を国語のテストをネタにいじってやる」という目的も忘れて前田に難しい問題をひたすら出し続けた。
あのまま家に着いて別れるまでの間、思いつく限り難しい問題を前田に出し続けてみたけれど、なんだかんだほとんど正解か惜しい回答をされて、その上「明日のテストは得意教科ばっかりだから余裕」とかなんとか腹立たしいことまで言われてしまった。
もう得意教科のテストは今日までで終わっちゃったし、明日のテストは苦手科目も先生がすごく難しくするって宣言してた物理のテストもあるのに。それに、あんなに落書きばっかりしておいてなんで昨日の今日でこんなに答えられるようになるのよ。ムカつく。
私は自室の机に手に持ったノートを投げつけた。
ノートを投げた勢いのままにカバンを床に置いてそのまま寝っ転がったところで、前田にノートいっぱいに書き込まれた落書きのことを不意に思い出した。
あのマヌケな落書き、ノートから全部消してやろう。
私は勢いよく立ち上がって、さっき机に投げたノートを取り上げた。
パサリ
取り上げたノートから何かが渇いた音を立てて滑り落ちてきた。
「なにこれ」
床に落ちた何かを拾ってみると、それはぐちゃぐちゃに折られたノートかメモ帳の切れ端のようだった。
「こんなもの挟んでいたかな?」
手の中のぐちゃぐちゃな紙を見ているうちに最近クラスで流行ってる呪いの手紙とかいう噂を思い出して、前田のしわざだなと余計に腹を立てながらも、私はめちゃくちゃに付けられた折り目を丁寧に開いていった。
するとそこには「この手紙を受け取った人は一週間以内に他の三人に回さないと不幸になる」とかしょうもない内容なんかではなく、明日の物理のテストで出そうなところが紙いっぱいに書かれていた。
よく読んでみると、字はやたら大きくて汚いし、ガタガタに斜めってるし、文章はやたら堅い。だけど、私の苦手なところも、先生が授業中にニヤニヤしながら説明してきたやたら難しい応用問題も詳しい解説が分かりやすく書かれていた。
前田のクセに。
辰巳の目を盗んで夜な夜なこの小さな紙に前田が自分の戦利品の写しをびっしり書き込む姿を思い浮かべてクスっと笑ってしまいながら私はその紙についた折り目を両手でそっと伸ばした。
でも、ありがとう前田。
私はそのままその小さな物理対策ノートを片手に机に向かった。
「なんだよ」
「私のノートにあんなに落書きしてあったけどちゃんと勉強したの?」
「は?どうしたんだよいきなり。やったに決まってンだろ」
テストの答え合わせをしている流れでそう聞くと、やっぱり前田はわかりやすく慌てて食い気味にそう答えてきた。
「じゃあ、ちゃんと勉強したみたいだしこのノートに書いてあることくらい余裕でわかるよね」
言いながら国語のノートをカバンから取り出してパラパラ見えるように捲ってみると前田は、
「あ?なんでそんなん答えなきゃなんねえんだよ」
と面倒くさそうに顔を歪めながら言ってきた。
予想に反してこちらの挑発に乗ってこない前田に少し驚きながらも、なら、と私はさらに前田を煽ってみた。
「べつに答えられないならいいよ。聞かないであげるから。わからないなら仕方ないしね」
「は?わかるわ。なんでも聞いてみろよ」
そんな風に挑発してみると前田はそう鼻息も荒く意気込んできた。
煽っておいてなんだけど前田って結構単純だな。
前田を国語のテストをネタにしていじってやろうという目的がバレるかもしれないと、そう考えて危うく吹き出しそうになるのをぐっと堪えて、私はいかにも真剣そうな表情でノートに書き写された問題を読み上げた。
「じゃあ、第一問目、二段落目のヒロミの気持ちは?」
「ヒロミの気持ち、あーっと、あれだろ?あれ」
前田は指で頭をかいてそんなことをブツブツ呟きながら、考え込みはじめた。
やっぱりちゃんと勉強してなかったんだな。
私はまた笑ってしまいそうになるのをなんとか抑えて、真面目な表情を作って前田から顔を逸らすように前を向いた。
「わかった。父ちゃんの意見が気にくわなくてムカついてる、だ」
「正解」
得意げにちょっと澄まして前を向いた矢先、前田がパッと目を輝かせてこちらにすごい勢いで向き直り、自信満々にそう正解を言っててきた。答え方はひどいと思うけど。
前田の答えが間違っていたなら「間違ってるよ。やっぱりちゃんと勉強してなかったんでしょ」っていじれたのに。答え方がひどいってだけじゃ言い返される。
悔しくなってつい前田の方を睨みつけたら、そんな私の気持ちを見透かしているのか、前田は「な?ちゃんと勉強したっつったろ?」と先ほどとは打って変わってニヤニヤと自慢げに胸を張ってこちらを見下ろしてきた。ほんとムカつく。
こうなったらノートに書いてないようなとことん難しい問題ばっかり出してやる。
私は当初の「からかってきた仕返しに前田を国語のテストをネタにいじってやる」という目的も忘れて前田に難しい問題をひたすら出し続けた。
あのまま家に着いて別れるまでの間、思いつく限り難しい問題を前田に出し続けてみたけれど、なんだかんだほとんど正解か惜しい回答をされて、その上「明日のテストは得意教科ばっかりだから余裕」とかなんとか腹立たしいことまで言われてしまった。
もう得意教科のテストは今日までで終わっちゃったし、明日のテストは苦手科目も先生がすごく難しくするって宣言してた物理のテストもあるのに。それに、あんなに落書きばっかりしておいてなんで昨日の今日でこんなに答えられるようになるのよ。ムカつく。
私は自室の机に手に持ったノートを投げつけた。
ノートを投げた勢いのままにカバンを床に置いてそのまま寝っ転がったところで、前田にノートいっぱいに書き込まれた落書きのことを不意に思い出した。
あのマヌケな落書き、ノートから全部消してやろう。
私は勢いよく立ち上がって、さっき机に投げたノートを取り上げた。
パサリ
取り上げたノートから何かが渇いた音を立てて滑り落ちてきた。
「なにこれ」
床に落ちた何かを拾ってみると、それはぐちゃぐちゃに折られたノートかメモ帳の切れ端のようだった。
「こんなもの挟んでいたかな?」
手の中のぐちゃぐちゃな紙を見ているうちに最近クラスで流行ってる呪いの手紙とかいう噂を思い出して、前田のしわざだなと余計に腹を立てながらも、私はめちゃくちゃに付けられた折り目を丁寧に開いていった。
するとそこには「この手紙を受け取った人は一週間以内に他の三人に回さないと不幸になる」とかしょうもない内容なんかではなく、明日の物理のテストで出そうなところが紙いっぱいに書かれていた。
よく読んでみると、字はやたら大きくて汚いし、ガタガタに斜めってるし、文章はやたら堅い。だけど、私の苦手なところも、先生が授業中にニヤニヤしながら説明してきたやたら難しい応用問題も詳しい解説が分かりやすく書かれていた。
前田のクセに。
辰巳の目を盗んで夜な夜なこの小さな紙に前田が自分の戦利品の写しをびっしり書き込む姿を思い浮かべてクスっと笑ってしまいながら私はその紙についた折り目を両手でそっと伸ばした。
でも、ありがとう前田。
私はそのままその小さな物理対策ノートを片手に机に向かった。