夜の帰り道1章
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駄菓子屋を出てからニ、三分程歩いたところにある公園の小さなベンチに私たちは腰を下ろした。子供用の小さなベンチなのに前田が、がばっと大きく脚を開いてくるものだからかなり狭い。
別に気にする必要なんてないのに、なんだか妙にさっきのおばちゃんのお節介のことが頭から離れなくて、公園に着いてアイスを食べるまでは気まずいだろうな、なんて思っていたけど、そんなことは全然なくって、むしろ前田と小学生の頃の話でずっと盛り上がりっぱなしだった。
私の足にぺったりとくっつけられている無駄に長い脚に蹴りを一発入れてから、ベンチの下にカバンを滑り込ませると、やけにおとなしい座り方になった前田が「ん」とブルーの袋に包まれたジョリジョリ君を差し出してきたところだった。私は「ありがとー」と暑い中はしゃぎすぎてしまったせいか、だらしなく間延びした声で言いながら、それを受け取った。
小さな水滴の浮かぶパッケージを手でかるく拭ってから、開けようと端に手をかけると、前田も紙袋から自分の分のアイスを取り出すところだった。なんとなく、前田が嬉々として『ホームラン棒』とという文字がいくつも印刷された、野球帽をかぶったのん気な顔の男の子が描かれている銀紙に包まれたアイスを取り出す様子を見ていたら、手に持ってるブルーのアイスはじんわりと汗をかき始めた。
それでも、そのままじっと、前田が銀紙をびりびり破いて、太陽の光を受けて輝いてさえ見える真っ白のアイスに噛り付くのを見ていたら、なんだか前田のアイスの方が自分の、もうぐっしょりと汗をかいたアイスよりもずっとおいしそうに見えてきた。
「前田」
「あんだよ」と大きくかじり取ったアイスを噛みながら前田はこちらを向いた。それでやっと自分が前田のことをアイスを分けてほしいってだけで無意識に呼んじゃったんだって気づいた。
でも、気づいたんだし、いっそ「分けてほしい」って頼んでみようかなと思ってそのままゆっくりと口を開いたところで、もしそんなことを前田に頼んだら?と頭の中で勝手にシュミレーションが始まった。
「ひとくちちょうだい」なんて身長差のせいで上目遣いで頼む私、「いいぜ」なんてニヤニヤ笑いながら食べかけのアイス、それもわざわざご丁寧にかじった方をこちらに向けてを差し出してくる前田。
やばい。これ、言っちゃだめだな。
私はいつの間にか俯いていた顔を勢いよく上げて、「だから、なんだよ」と面倒くさそうに聞いてくる前田に「なんでもない」と食い気味に答えた。
前田は一瞬、不思議そうな顔になったけど、「そうかよ」と短く返して、すぐにまた持っているアイスに噛り付きはじめた。
私も頭の中に浮かんでくる真っ白を追い払うために、目の前の溶けかかったブルーを頭が痛くなるくらいにほおばった。
テストが終わったら絶対ホームラン棒、食べよう。もちろん一人で。
口の中に入った瞬間溶けていった甘ったるい液体を飲み込みながら私はそう決意した。
もうドロドロに溶ける寸前だったジョリジョリ君を一気に食べ終えて、一息ついていると、横で名残惜しそうに木の棒を吸っていた前田が「そろそろ帰るか」と口の中の棒を引き抜いた。
私も「ん」と適当に返事をしてゴミ箱に向かってアイスの棒を放り投げた。けれど前田みたいにゴミ箱の中には入ってくれず、コンっと鈍い音を立てながらゴミ箱に弾かれて地面に落っこちてしまった。
入ったと思ったのにと少しムッとしながらも、私はちゃんと若干砂がくっついちゃった棒を拾い上げてゴミ箱に入れ直した。
横でさっきからずっと「うひゃひゃひゃひゃ」と笑い続けてるヤツには昨日あれだけ困っていた国語のテストのできについて私の家に着くまでの間、じっくりと聞いてやろうと思う。
別に気にする必要なんてないのに、なんだか妙にさっきのおばちゃんのお節介のことが頭から離れなくて、公園に着いてアイスを食べるまでは気まずいだろうな、なんて思っていたけど、そんなことは全然なくって、むしろ前田と小学生の頃の話でずっと盛り上がりっぱなしだった。
私の足にぺったりとくっつけられている無駄に長い脚に蹴りを一発入れてから、ベンチの下にカバンを滑り込ませると、やけにおとなしい座り方になった前田が「ん」とブルーの袋に包まれたジョリジョリ君を差し出してきたところだった。私は「ありがとー」と暑い中はしゃぎすぎてしまったせいか、だらしなく間延びした声で言いながら、それを受け取った。
小さな水滴の浮かぶパッケージを手でかるく拭ってから、開けようと端に手をかけると、前田も紙袋から自分の分のアイスを取り出すところだった。なんとなく、前田が嬉々として『ホームラン棒』とという文字がいくつも印刷された、野球帽をかぶったのん気な顔の男の子が描かれている銀紙に包まれたアイスを取り出す様子を見ていたら、手に持ってるブルーのアイスはじんわりと汗をかき始めた。
それでも、そのままじっと、前田が銀紙をびりびり破いて、太陽の光を受けて輝いてさえ見える真っ白のアイスに噛り付くのを見ていたら、なんだか前田のアイスの方が自分の、もうぐっしょりと汗をかいたアイスよりもずっとおいしそうに見えてきた。
「前田」
「あんだよ」と大きくかじり取ったアイスを噛みながら前田はこちらを向いた。それでやっと自分が前田のことをアイスを分けてほしいってだけで無意識に呼んじゃったんだって気づいた。
でも、気づいたんだし、いっそ「分けてほしい」って頼んでみようかなと思ってそのままゆっくりと口を開いたところで、もしそんなことを前田に頼んだら?と頭の中で勝手にシュミレーションが始まった。
「ひとくちちょうだい」なんて身長差のせいで上目遣いで頼む私、「いいぜ」なんてニヤニヤ笑いながら食べかけのアイス、それもわざわざご丁寧にかじった方をこちらに向けてを差し出してくる前田。
やばい。これ、言っちゃだめだな。
私はいつの間にか俯いていた顔を勢いよく上げて、「だから、なんだよ」と面倒くさそうに聞いてくる前田に「なんでもない」と食い気味に答えた。
前田は一瞬、不思議そうな顔になったけど、「そうかよ」と短く返して、すぐにまた持っているアイスに噛り付きはじめた。
私も頭の中に浮かんでくる真っ白を追い払うために、目の前の溶けかかったブルーを頭が痛くなるくらいにほおばった。
テストが終わったら絶対ホームラン棒、食べよう。もちろん一人で。
口の中に入った瞬間溶けていった甘ったるい液体を飲み込みながら私はそう決意した。
もうドロドロに溶ける寸前だったジョリジョリ君を一気に食べ終えて、一息ついていると、横で名残惜しそうに木の棒を吸っていた前田が「そろそろ帰るか」と口の中の棒を引き抜いた。
私も「ん」と適当に返事をしてゴミ箱に向かってアイスの棒を放り投げた。けれど前田みたいにゴミ箱の中には入ってくれず、コンっと鈍い音を立てながらゴミ箱に弾かれて地面に落っこちてしまった。
入ったと思ったのにと少しムッとしながらも、私はちゃんと若干砂がくっついちゃった棒を拾い上げてゴミ箱に入れ直した。
横でさっきからずっと「うひゃひゃひゃひゃ」と笑い続けてるヤツには昨日あれだけ困っていた国語のテストのできについて私の家に着くまでの間、じっくりと聞いてやろうと思う。