夜の帰り道1章
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明日はテスト当日ということもあり、今日のホームルームは先生の演説にいつも以上に熱が入っていたものの、手短に済まされた。昨日のように待ち合わせに遅れれば、前田に何をされるかわからないとヒヤヒヤしていたからすごく助かる。
礼をして先生が出ていくのを見送ってからすぐに予め用意していたカバンを持って誰よりも早く教室を出た。
ほとんど人気のない校内を早歩きで移動して目的の部室前に辿り着いた。弾んだ息を整えるよりも先に、まず窓から部室の中の時計を確認する。時計の針は、少なく見積もったっていつも前田と合流している時間よりも十分は前を指していた。
安堵のため息を吐いて、私は部室の壁に背中を預けた。
部室の壁に寄り掛かったまま教科書をめくっていると、ふいに「小宮」と声を掛けられた。視線を声のした方へ持ち上げると、髪が乱れ、下着の白いTシャツがうっすら透けて見えるほど汗をかいている前田が立っていた。息が少し苦しいのか口は声を掛けた勢いで、小さく開いたままだ。
「授業中に千葉と遊んでたのバレて説教されて遅くなった。んな暑い中待たせちまってわるかったな」
「ここ日陰で意外に涼しいから大丈夫だよ。それよりも千葉と何したの」
そう聞いた途端に前田の肩は大きく跳ね、今までしっかりと合わせていた目もあらぬ方へ向けられた。
「あー、その、なんだ。それはだな」
「エロい単語縛りの絵しりとりだよ」
またもやビクッという擬音語が聞こえそうなくらい大きく肩を跳ねさせている前田の背後から、さんざん説教をされて不貞腐れているのかいつもよりやや不機嫌そうに後頭部を掻きむしりながら千葉が歩いてきた。
前田はこちらに向かって歩いてくる千葉に向かって走り、「バカ、なんでんなこと言うんだよ」と腹パンを食らわせる。私にわからないように声を押し殺して、自分の体の陰に隠れるように腹パンしているつもりのようだが、はっきり聞こえたし、しっかりと見えた。
「痛え」とうずくまる千葉をほったらかして前田は私に駆け寄ってきて「違えんだ」と意味の分からない言い訳を並べ始めた。
「いや、べつに私に関係ないんだから言い訳する必要なくない。でも授業中にそういうことするのはやめた方がいいと思うよ」
まだ何か言いたいことがあるのか前田は少し唇を尖らせて不服そうに「おう」とだけ答えた。
前田が答えたのを確認してから、はっきりと「千葉もだから」と言うと、前田の後ろで我関せずとでもいうようにニヤニヤしながら成り行きを見ていた千葉もバツの悪そうな顔になった。
注意をしたら黙り込んでしまった二人を見ていたら、このままじゃどんどん帰りづらい雰囲気になるなと思って注意した側としてはすごく話しかけづらいけれど私は二人に声を掛けることにした。
「じゃあ、もう帰るよ。じゃあね。千葉」
「おう。じゃあな小宮」
ついさっきまでは気まずそうにしていたのに、千葉は何事も無かったかのように手を振ってくれた。
千葉に手を振り返して私は前田と校門の方へ歩きはじめた。
「ちょっと待て」
数歩歩いたあたりで千葉に大声で呼び止められた。
立ち止って振り向くと千葉がなにやら興奮した様子で駆け寄ってきた。
「なんだよ、お前ら両想いになったのかよ」
千葉はいつになく目を輝かせてそう聞いてくる。
「は。両想いじゃないよ。私は前田のこと好きじゃないし」
私の答えを聞いた瞬間、千葉はげらげらと腹を抱えてこれでもかというくらい笑い出した。
「じゃあ前田の片想いのままか。ぶはっ。これはケッサクだぜ」
「ああん。なんでそうなるんだよ千葉ァ」
「なんでって、そりゃあ前田が小宮のことが好きだってわかりやすすぎるからだよ。他の女子マネもいんのに小宮にばっかり構いに行ってよォ、小学生か。あんまりわかりやすいもんだからあの辰巳でも気づいてんだぜ」
千葉は持っているカバンをバシバシ叩きながら時々笑いが堪えきれなくなって詰まりながらも大声でそう言った。
いつもからかってくる前田がいじられているのを見るのはスカッとするしおもしろいんだけれど、自分もかなり関係していることだからなんだか複雑な気分だ。
実は前に部員全員でなかなか進展しないから二人きりにしたことがあるだとか、からかいすぎて私に避けられていた時はしょぼくれて前田が全然喋れなくなっていただとか千葉の話はそのまま全然止まらなくて、ついに前田は「この野郎」とまた千葉の腹めがけて拳を大きく振った。普通に躱されていたけれど。
「小宮が見てんぞ。そんなことしていいのか。え」
「べつに、いまさらだろうが」
ニヤニヤしながらのぞき込んでくる千葉を手で乱暴に突っぱねながら前田はそう呟いた。
「そうかよ。じゃあ、大好きな莉緒ちゃんとのデート頑張れよ。慶彦ちゃん」
そう言って千葉はまだニヤニヤ笑いながら前田の背中をバシバシ叩いて校門の方へ走り去っていった。
千葉のあの様子じゃあきっと次の部活までには部員のほとんど全員に今日、私と前田が一緒に帰ったって伝わっちゃうんだろうなあと思うとなんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
礼をして先生が出ていくのを見送ってからすぐに予め用意していたカバンを持って誰よりも早く教室を出た。
ほとんど人気のない校内を早歩きで移動して目的の部室前に辿り着いた。弾んだ息を整えるよりも先に、まず窓から部室の中の時計を確認する。時計の針は、少なく見積もったっていつも前田と合流している時間よりも十分は前を指していた。
安堵のため息を吐いて、私は部室の壁に背中を預けた。
部室の壁に寄り掛かったまま教科書をめくっていると、ふいに「小宮」と声を掛けられた。視線を声のした方へ持ち上げると、髪が乱れ、下着の白いTシャツがうっすら透けて見えるほど汗をかいている前田が立っていた。息が少し苦しいのか口は声を掛けた勢いで、小さく開いたままだ。
「授業中に千葉と遊んでたのバレて説教されて遅くなった。んな暑い中待たせちまってわるかったな」
「ここ日陰で意外に涼しいから大丈夫だよ。それよりも千葉と何したの」
そう聞いた途端に前田の肩は大きく跳ね、今までしっかりと合わせていた目もあらぬ方へ向けられた。
「あー、その、なんだ。それはだな」
「エロい単語縛りの絵しりとりだよ」
またもやビクッという擬音語が聞こえそうなくらい大きく肩を跳ねさせている前田の背後から、さんざん説教をされて不貞腐れているのかいつもよりやや不機嫌そうに後頭部を掻きむしりながら千葉が歩いてきた。
前田はこちらに向かって歩いてくる千葉に向かって走り、「バカ、なんでんなこと言うんだよ」と腹パンを食らわせる。私にわからないように声を押し殺して、自分の体の陰に隠れるように腹パンしているつもりのようだが、はっきり聞こえたし、しっかりと見えた。
「痛え」とうずくまる千葉をほったらかして前田は私に駆け寄ってきて「違えんだ」と意味の分からない言い訳を並べ始めた。
「いや、べつに私に関係ないんだから言い訳する必要なくない。でも授業中にそういうことするのはやめた方がいいと思うよ」
まだ何か言いたいことがあるのか前田は少し唇を尖らせて不服そうに「おう」とだけ答えた。
前田が答えたのを確認してから、はっきりと「千葉もだから」と言うと、前田の後ろで我関せずとでもいうようにニヤニヤしながら成り行きを見ていた千葉もバツの悪そうな顔になった。
注意をしたら黙り込んでしまった二人を見ていたら、このままじゃどんどん帰りづらい雰囲気になるなと思って注意した側としてはすごく話しかけづらいけれど私は二人に声を掛けることにした。
「じゃあ、もう帰るよ。じゃあね。千葉」
「おう。じゃあな小宮」
ついさっきまでは気まずそうにしていたのに、千葉は何事も無かったかのように手を振ってくれた。
千葉に手を振り返して私は前田と校門の方へ歩きはじめた。
「ちょっと待て」
数歩歩いたあたりで千葉に大声で呼び止められた。
立ち止って振り向くと千葉がなにやら興奮した様子で駆け寄ってきた。
「なんだよ、お前ら両想いになったのかよ」
千葉はいつになく目を輝かせてそう聞いてくる。
「は。両想いじゃないよ。私は前田のこと好きじゃないし」
私の答えを聞いた瞬間、千葉はげらげらと腹を抱えてこれでもかというくらい笑い出した。
「じゃあ前田の片想いのままか。ぶはっ。これはケッサクだぜ」
「ああん。なんでそうなるんだよ千葉ァ」
「なんでって、そりゃあ前田が小宮のことが好きだってわかりやすすぎるからだよ。他の女子マネもいんのに小宮にばっかり構いに行ってよォ、小学生か。あんまりわかりやすいもんだからあの辰巳でも気づいてんだぜ」
千葉は持っているカバンをバシバシ叩きながら時々笑いが堪えきれなくなって詰まりながらも大声でそう言った。
いつもからかってくる前田がいじられているのを見るのはスカッとするしおもしろいんだけれど、自分もかなり関係していることだからなんだか複雑な気分だ。
実は前に部員全員でなかなか進展しないから二人きりにしたことがあるだとか、からかいすぎて私に避けられていた時はしょぼくれて前田が全然喋れなくなっていただとか千葉の話はそのまま全然止まらなくて、ついに前田は「この野郎」とまた千葉の腹めがけて拳を大きく振った。普通に躱されていたけれど。
「小宮が見てんぞ。そんなことしていいのか。え」
「べつに、いまさらだろうが」
ニヤニヤしながらのぞき込んでくる千葉を手で乱暴に突っぱねながら前田はそう呟いた。
「そうかよ。じゃあ、大好きな莉緒ちゃんとのデート頑張れよ。慶彦ちゃん」
そう言って千葉はまだニヤニヤ笑いながら前田の背中をバシバシ叩いて校門の方へ走り去っていった。
千葉のあの様子じゃあきっと次の部活までには部員のほとんど全員に今日、私と前田が一緒に帰ったって伝わっちゃうんだろうなあと思うとなんだかどっと疲れが押し寄せてきた。