短編
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「寒い」
「なんですって?」
「寒いって言ったんです、どうしてこんな。」
「こんな地道なこと、ですか?でも仕事なんだから仕方ないでしょう?」
「だから嫌なんです、何が良くてクリスマスの夜に変装しなきゃいけないんですか。」
「そりゃあ、刑事に対する愚問ですよ名前さん。日時なんて関係ないんですから。むしろ…」
「むしろ変装にはうってつけ、なんていわないでくださいよ…ますます嫌な気分になります。」
「仕方がないでしょう?僕は手駒をできる限り用意したいタイプなんです。」
「だからって、この素性もしれないナンパ男を捕まえろっていうんですか?絶対何も考えてないですよこの狐…」
「いいじゃないですか、クリスマスにちょっと外に出るってだけで気分は高揚するでしょう?」
「…しません。野火丸さんは?」
「しません。」
「じゃあ愚問じゃないですか。」
「では逆に考えましょう。クリスマスで浮き足立つ人間を嘲笑いながら、仕事もできる。一石二鳥です。」
「逆かどうかは分かりませんが、うーん、まあ、クリスマスじゃなかったらこんな格好で外に出れなかったなとは思いますけど…」
「そうでしょうそうでしょう?」
「でも、このコスプレ、本当にする意味あったんですか?」
「もちろんです。真っ赤な服に真っ赤な帽子。これ以上目立つ服装はありません。」
「そうかなあ…」
「それに彼は仕事帰りにこのケーキ屋さんを覗く習性があります。声をかけられるに決まってます。」
「…だからってこんなミニスカじゃなくても。」
「いいじゃないですか、ああ、似合ってますよ。」
「そんなとってつけたような…。しかも電話越しで言われても嬉しくありません。」
「ええ?じゃあ電話越しじゃなかったら嬉しいんですか?」
「え?いや、別に、ええと…」
「ふーん。」
「うわ、今、野火丸さんがしたり顔したのが見えました。」
「ええ、見えたって、それ、僕のことかなり好きじゃないですかー」
「す、好きじゃありません。思い出しただけです。」
「そうですか、こんな熱烈なアピールをしてるのに無視ですかー」
「熱烈って嘘ですね、B班の女の子にもしてるのみたことあります。」
「あら、見られてたんですか。」
「驚くことじゃないでしょ、いろんな女の子にそれらしい事言ってるじゃないですか。」
「わかってないなー名前さん。そんなの情報を集めるために決まってるじゃないですか。本当に好きなのは名前さんだけですよ。」
「あーはいはい、ありがとうございます。人気者の野火丸さんに言ってもらえて嬉しいです。」
「…名前さん。」
「はい?」
「…綺麗ですよ。」
「え…」
「ふっ、ちょろいですね。」
「うわ、ひっかけたんですか。」
「何言ってるんですか、嬉しかったくせに。」
「嘘なので、嬉しくないです。」
「言葉自体が嬉しいでしょう?」
「…はあ。なんだかナンパ男の方が幾分かいい気がしてきました。」
「いやいや結局誠実な人のところに戻るんですって。」
「誠実?誰のこと言ってるんですか?」
「まさか。僕以外あり得ないでしょう?こんなに身を削って働いている僕が誠実じゃないわけないでしょ。」
「(身を削ってるのは本当だから何も言えない…。)あーやっぱり寒いです。生足である必要はなかったんじゃ」
「えー、(生足の名前さんを見たかったからとは言えないですね。)ああ、サンタには生足と決まっているんです。」
「そうなんですか…?」
「もちろん。」
「それにしては真冬なのにあまりにも薄着じゃ。」
「そうですかねえ、」
「…っくしゅん。」
「(咳も可愛いですね。)おやおや風邪ですか?看病してあげないと。」
「…もしかして野火丸さん、わざとじゃないですよね。」
「うん?」
「わざと生足にして、凍えている私を見てほくそ笑んでるとか。」
「そんなわけないじゃないですか。」
「そうかなあ、」
「ああ、もうすぐターゲットが来ます。身を引き締めてくださいね。」
「はい、」
「ああ、名前さん。」
「はい…?」
「風邪なんですから、僕の部屋に来るのは確定ですよ。」
「え、」
「だからナンパ男なんかについてったらダメですからね。」
「(…そんなのずるいに決まってます、)」
Merry Christmas 2021/12/25