寂しがり少女
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「絶対ナイツオブクイーンに勝つんだ!!」
「「「オオー!!」」」
ナイツオブクイーンとの試合当日。私達は朝食前からグラウンドへと集まり、練習をしていた。
誰かの提案という訳でもない。朝飯の前に一人、また一人と外のグラウンドへと足を運び、気づけば全員がいた。
それほど、今日の試合に向けて気合いが入っているということだ。
それから砂浜で個人練習をしていたらしい円堂さん、兄ちゃん、豪炎寺さんが現れた。
それからつい不安を吐露する選手にも円堂さんは笑顔で鼓舞して、そうして拳を突き付ければ、イナズマジャパンはたちまち心を一つにして、元気な声が青空に響かせた。
+++
マネージャーが初戦の勝利を願って作ってくれた朝食を終えて、イナズマジャパンは試合会場となるウミヘビスタジアムに向かうことになった。
そのスタジアムは、ライオコット島の周りにある小島をFFIのために改装したものらしく移動手段は船だった。
そこで私はある一つの事実に気づくことになる。
「うぅ……」
「明奈、大丈夫……ではないな。どう見ても」
私は船という乗り物と相性が悪いらしい。
私の不調にすぐ気づいてくれた兄の肩に寄り添って目を閉じているものの気持ち悪さは抜けそうにない。
「潜水艦は、大丈夫だったのに……」
「潜水艦の内部は揺れない造りになっているからな。地上と左程変わらないんだ」
「そーなんだ……」
「不動、酔った時は目を閉じるより外の景色を見ればマシになるぜ」
兄ちゃんの豆知識に元気なく頷く私の様子を見かねてか、前に座っている土方さんが振り返りながらそう言ってくれた。
弟妹が多いらしい土方さんは何かと面倒見がいいことは最近話すようになってから知れたことだ。
「ありがとうございます……」
「ん?不動酔ったのか?」
そんな彼の言葉を素直に従い、窓の外に広がる水平線を見れば土方さんの隣に座る綱海さんも振り返って私を見た。そして、
「なっさけねぇなー!そんなんじゃ帰りもたないぜ?」
「…………」
いつも通り明るく笑い飛ばしながら追い打ちをかけてきた。
……分かってる綱海さんに悪意なんてないってことは。大丈夫。分かってる。
「……残りの島の移動手段、全部イナズマジェットにならねぇかなぁ……」
「明奈……」
だけどそれを流すほど私も大人になれないというだけだ。だってまだ中学一年生だし。
兄が見事に苦笑いをしているけれどスルーしておこう。
「お、恐ろしいこと言うなよ!!」
私のありったけの恨みを込めた呟きは綱海さんにも聞こえたらしく、サッと顔を青ざめた。
「私、言霊ってあると思うんですよ」
「だーっ、悪かったって!島に着いたらスタジアムまでおぶってやるから!!」
「…………揺れそうだから遠慮します……」
空の旅のトラウマを思い出しているのか、綱海さんはそう声を上げる。だけど綱海さんにおぶってもらっても元気よく走り出しそうだし、ますます酔いが酷くなりそうだと、私は丁重にお断りをしながら兄ちゃんの肩口に頭を置いて、外を眺めた。
「んだよ、不動のやつおぶられるのも酔うのか?」
「……まぁ、歩いたほうが酔いもマシになるしな」
前の席では納得できなさそうな綱海さんの声とそれを苦笑交じりにフォローする土方さんの声が聞こえた。
その後、船内で久遠監督により試合のスターティングメンバーが発表されたが、私の名前は呼ばれずにまたベンチ。
「……不動。これからは酔い止めを服用するように」
「……は……はい…………」
それ以前に監督に自己管理が出来てないということでちゃんと𠮟られるしで散々だった。
+++
スタジアムまでの道のりを歩いている頃には酔いも覚めていつもの調子に戻ることが出来た。流石に試合中すらダウンしている訳にはいかない。
それから辿り着いたウミヘビスタジアム。
ユニフォームに着替えた後に選手入場をすれば実況解説のアナウンスだけでなく、満員の観客席から様々な声援の声が耳に入った。
……最も、観客席にいるほとんどがナイツオブクイーンのサポーターだけど。
「完全にアウェーだぜ、俺たち……」
ナイツオブクイーンの勝利を信じて止まない観客席の様子が見回しながら呆然と風丸さんが呟く。他の人達も口を開けてその熱意に圧倒されていた。
「みんな!リラックスだ。いつも通り、全力を出そう!世界に見せてやろうぜ!俺達の力を!!」
だけど秋さんや冬花さんに元気づけれた円堂さんは緊張が解れたのか、いつも通りの笑みを浮かべて、スタメンの選手にそう声を掛ける。
キャプテンの前向きな言葉に彼らは笑みを浮かべて頷き、それからピッチへと走って行った。飛鷹も櫛で髪型を整えて、気合十分だ。
「お姉ちゃん、もう船酔いは大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
私はベンチに座れば春奈がそう心配そうに聞いてきたので笑顔で頷いた。それから、フィールドに視線を向ける。
「ちゃんと、見るから」
ピッチサイドで行われたコイントス。結果、イナズマジャパンボールで試合は行われる。
「お互いにがんばろう」
「ああ!」
ボールを受け取った円堂さんに対して、エドガーさんは手を差し出せば円堂さんはそれに応じて握手を交わした。
「健闘を祈る」
「!」
何て、言葉を残してエドガーさんはポジションの方へと歩いて行った。あからさまな発言に円堂さんは顔をしかめた。
それはベンチにいる私達の耳にも入っていて、染岡さんと佐久間さんが反応した。
「なんか嫌な感じだぜ」
「ああ。余裕綽々って所がな」
「彼らにとっては勝って当然の相手ですからね。日本は」
先日の親善パーティーがいい例だ。と私は腕を組みながら相手国の気持ちを代弁する。
「勝負は最後までわからないものよ」
だけど秋さんはイナズマジャパンが勝つと信じて、そう告げた。私はその姿を見て、
「……今の秋さん、キャプテンみたい」
「……へ?……ええ!?」
ポツリと思ったことを呟けば秋さんは何故かポポッと頬を赤くして固まってしまった。
……そんなに変な事を言ったか?
「お姉ちゃん……」
「な、なんだよ…………」
不思議に思って周りを見回すものの何故か春奈に残念なものを見るような目で見られた。
腑に落ちずに首を捻るが、フィールドでは正にキックオフが始まりそうだったのでそちらに頭を切り替えて、集中することにした。
ホイッスルが鳴り響き、ついに試合は始まった。
イナズマジャパンはボールを繋ぎ、初手から攻め上がっていたもののゴール手前にパスカットをされる。
その後もイナズマジャパンはナイツオブクイーンに翻弄され、あっという間にゴールへのシュートを許してしまった。
円堂さんはボールを止めるものの、ナイツオブクイーンは余裕綽々の様子で、今のプレーも遊びのようなものだろう。
試合が再開され、兄ちゃんにボールを貰った虎丸くんが攻め上がる。完全にフリーかと思われたけれど鉄兜を被った選手、ランス・ロットンの必殺技 “ストーンプリズン” という石柱の檻に阻まれ、ボールを奪われる。
そしてランスからボールはエドガーさんへと渡った。
「受けてみよ。聖なる騎士の剣 を! “エクスカリバー” !!」
二度目の実際に見るエドガーさんの必殺技。その剣は真っ直ぐとイナズマジャパンのゴールへと突き進むも、壁山くんの “ザ・マウンテン” で威力が半減したことで “怒りの鉄槌” で止めることができた。
「やったっスね、キャプテン!」
「ありがとう、壁山! お前のおかげだ!」
ゴール前ではエクスカリバーを止めれたことを円堂さんと壁山くんは拳を合わせて喜んでいる。
エドガーさんはシュートを止められた事に驚いていたものの、すぐに笑みを浮かべてポジションへと戻って行ったのが目に付き私はそちらへ視線を向けていた。
それから風丸さんのドリブルでイナズマジャパンが攻めようとしていた時だった。
ナイツオブクイーンの監督が指示に、エドガーさんが右手を上げれば選手達のフォーメーションが変わっていく様が見えた。彼らはFWをスルーしていたかと思えばエドガーさんが右手を出せば3人の選手が動き始める。
……これは、
風丸さんはフィリップ・オーウェンを “風神の舞” で突破したものの背後に控えていた選手達にボールを奪い蹴られた。
そのこぼれ球を拾った基山さんがドリブルで攻め上がるものの、エドガーさんを抜かしたと思ったら、たちまち別の選手によってボールを奪われる。
ボールを持った相手に素早く次々と襲い掛かり攻撃を阻止する、それがナイツオブクイーンの必殺タクティクス “アブソリュートナイツ” とエドガーさんは言う。
……確かにボールを繋げられなくてはそもそも、攻撃のしようがない。だからFWはスルーされていたんだろう。
そのタクティクスを機にナイツオブクイーンは一気に攻め上がる。
イナズマジャパンは再び翻弄されてしまい、ゴール前。綱海さんを避けたエドガーさんが鋭いノーマルシュートを撃った。
キャプテンはなんとか両手で止めることができた。
「ナイスセーブ」
「負けてたまるか!」
エドガーさんは相変わらず余裕綽々な態度を崩そうとしない。
「オレ達は、世界一を目指してここに来たんだ!」
けれど、円堂さんのその言葉にエドガーさんの表情が変わった。
「世界一?」
「ああ!その為に激しいアジア予選を勝ち抜いてきたんだ!」
「無理だ」
「なっ……何だと!?」
「君たちは!『世界一』の意味をっ、本当に分かっているのか!?」
円堂さんの言葉を即座に否定したエドガーさんは、イナズマジャパン全員に聞こえるような声量でそう問い質した。
「何!?」
「エンドウ。君の言う世界一とは、自分たちだけのものか?
世界の舞台で戦う代表チームは、自分たちの国の数えきれない人々の夢を託されている。それを裏切る事はできない。その夢を背負って戦うのが代表としての使命だ!」
「代表としての……使命……」
「私たちは、ナイツオブクイーンに選ばれた誇りを胸に戦っている。ただ目の前の高みしか見えていない君たちに、負けるわけにいかない!!」
「っ……!!」
エドガーさんの言葉は一つ一つが重く感じた。
イナズマジャパンだって日本にいる人の思いを背負っている。家族だったり、仲間だったり……形は様々で、それは私だって同じだ。
その思いの捉え方に正解不正解はきっと存在しない。どちらも正解のはずだ。
だけど、エドガーさん……いやイギリス代表の彼らの捉え方は普通じゃ相当なプレッシャーになってのしかかるものだと思った。
そのプレッシャー事態が、彼らの普通だと思うと改めて世界選手のレベルの高さを突き付けられた気がする。
「「「オオー!!」」」
ナイツオブクイーンとの試合当日。私達は朝食前からグラウンドへと集まり、練習をしていた。
誰かの提案という訳でもない。朝飯の前に一人、また一人と外のグラウンドへと足を運び、気づけば全員がいた。
それほど、今日の試合に向けて気合いが入っているということだ。
それから砂浜で個人練習をしていたらしい円堂さん、兄ちゃん、豪炎寺さんが現れた。
それからつい不安を吐露する選手にも円堂さんは笑顔で鼓舞して、そうして拳を突き付ければ、イナズマジャパンはたちまち心を一つにして、元気な声が青空に響かせた。
+++
マネージャーが初戦の勝利を願って作ってくれた朝食を終えて、イナズマジャパンは試合会場となるウミヘビスタジアムに向かうことになった。
そのスタジアムは、ライオコット島の周りにある小島をFFIのために改装したものらしく移動手段は船だった。
そこで私はある一つの事実に気づくことになる。
「うぅ……」
「明奈、大丈夫……ではないな。どう見ても」
私は船という乗り物と相性が悪いらしい。
私の不調にすぐ気づいてくれた兄の肩に寄り添って目を閉じているものの気持ち悪さは抜けそうにない。
「潜水艦は、大丈夫だったのに……」
「潜水艦の内部は揺れない造りになっているからな。地上と左程変わらないんだ」
「そーなんだ……」
「不動、酔った時は目を閉じるより外の景色を見ればマシになるぜ」
兄ちゃんの豆知識に元気なく頷く私の様子を見かねてか、前に座っている土方さんが振り返りながらそう言ってくれた。
弟妹が多いらしい土方さんは何かと面倒見がいいことは最近話すようになってから知れたことだ。
「ありがとうございます……」
「ん?不動酔ったのか?」
そんな彼の言葉を素直に従い、窓の外に広がる水平線を見れば土方さんの隣に座る綱海さんも振り返って私を見た。そして、
「なっさけねぇなー!そんなんじゃ帰りもたないぜ?」
「…………」
いつも通り明るく笑い飛ばしながら追い打ちをかけてきた。
……分かってる綱海さんに悪意なんてないってことは。大丈夫。分かってる。
「……残りの島の移動手段、全部イナズマジェットにならねぇかなぁ……」
「明奈……」
だけどそれを流すほど私も大人になれないというだけだ。だってまだ中学一年生だし。
兄が見事に苦笑いをしているけれどスルーしておこう。
「お、恐ろしいこと言うなよ!!」
私のありったけの恨みを込めた呟きは綱海さんにも聞こえたらしく、サッと顔を青ざめた。
「私、言霊ってあると思うんですよ」
「だーっ、悪かったって!島に着いたらスタジアムまでおぶってやるから!!」
「…………揺れそうだから遠慮します……」
空の旅のトラウマを思い出しているのか、綱海さんはそう声を上げる。だけど綱海さんにおぶってもらっても元気よく走り出しそうだし、ますます酔いが酷くなりそうだと、私は丁重にお断りをしながら兄ちゃんの肩口に頭を置いて、外を眺めた。
「んだよ、不動のやつおぶられるのも酔うのか?」
「……まぁ、歩いたほうが酔いもマシになるしな」
前の席では納得できなさそうな綱海さんの声とそれを苦笑交じりにフォローする土方さんの声が聞こえた。
その後、船内で久遠監督により試合のスターティングメンバーが発表されたが、私の名前は呼ばれずにまたベンチ。
「……不動。これからは酔い止めを服用するように」
「……は……はい…………」
それ以前に監督に自己管理が出来てないということでちゃんと𠮟られるしで散々だった。
+++
スタジアムまでの道のりを歩いている頃には酔いも覚めていつもの調子に戻ることが出来た。流石に試合中すらダウンしている訳にはいかない。
それから辿り着いたウミヘビスタジアム。
ユニフォームに着替えた後に選手入場をすれば実況解説のアナウンスだけでなく、満員の観客席から様々な声援の声が耳に入った。
……最も、観客席にいるほとんどがナイツオブクイーンのサポーターだけど。
「完全にアウェーだぜ、俺たち……」
ナイツオブクイーンの勝利を信じて止まない観客席の様子が見回しながら呆然と風丸さんが呟く。他の人達も口を開けてその熱意に圧倒されていた。
「みんな!リラックスだ。いつも通り、全力を出そう!世界に見せてやろうぜ!俺達の力を!!」
だけど秋さんや冬花さんに元気づけれた円堂さんは緊張が解れたのか、いつも通りの笑みを浮かべて、スタメンの選手にそう声を掛ける。
キャプテンの前向きな言葉に彼らは笑みを浮かべて頷き、それからピッチへと走って行った。飛鷹も櫛で髪型を整えて、気合十分だ。
「お姉ちゃん、もう船酔いは大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
私はベンチに座れば春奈がそう心配そうに聞いてきたので笑顔で頷いた。それから、フィールドに視線を向ける。
「ちゃんと、見るから」
ピッチサイドで行われたコイントス。結果、イナズマジャパンボールで試合は行われる。
「お互いにがんばろう」
「ああ!」
ボールを受け取った円堂さんに対して、エドガーさんは手を差し出せば円堂さんはそれに応じて握手を交わした。
「健闘を祈る」
「!」
何て、言葉を残してエドガーさんはポジションの方へと歩いて行った。あからさまな発言に円堂さんは顔をしかめた。
それはベンチにいる私達の耳にも入っていて、染岡さんと佐久間さんが反応した。
「なんか嫌な感じだぜ」
「ああ。余裕綽々って所がな」
「彼らにとっては勝って当然の相手ですからね。日本は」
先日の親善パーティーがいい例だ。と私は腕を組みながら相手国の気持ちを代弁する。
「勝負は最後までわからないものよ」
だけど秋さんはイナズマジャパンが勝つと信じて、そう告げた。私はその姿を見て、
「……今の秋さん、キャプテンみたい」
「……へ?……ええ!?」
ポツリと思ったことを呟けば秋さんは何故かポポッと頬を赤くして固まってしまった。
……そんなに変な事を言ったか?
「お姉ちゃん……」
「な、なんだよ…………」
不思議に思って周りを見回すものの何故か春奈に残念なものを見るような目で見られた。
腑に落ちずに首を捻るが、フィールドでは正にキックオフが始まりそうだったのでそちらに頭を切り替えて、集中することにした。
ホイッスルが鳴り響き、ついに試合は始まった。
イナズマジャパンはボールを繋ぎ、初手から攻め上がっていたもののゴール手前にパスカットをされる。
その後もイナズマジャパンはナイツオブクイーンに翻弄され、あっという間にゴールへのシュートを許してしまった。
円堂さんはボールを止めるものの、ナイツオブクイーンは余裕綽々の様子で、今のプレーも遊びのようなものだろう。
試合が再開され、兄ちゃんにボールを貰った虎丸くんが攻め上がる。完全にフリーかと思われたけれど鉄兜を被った選手、ランス・ロットンの必殺技 “ストーンプリズン” という石柱の檻に阻まれ、ボールを奪われる。
そしてランスからボールはエドガーさんへと渡った。
「受けてみよ。聖なる騎士の
二度目の実際に見るエドガーさんの必殺技。その剣は真っ直ぐとイナズマジャパンのゴールへと突き進むも、壁山くんの “ザ・マウンテン” で威力が半減したことで “怒りの鉄槌” で止めることができた。
「やったっスね、キャプテン!」
「ありがとう、壁山! お前のおかげだ!」
ゴール前ではエクスカリバーを止めれたことを円堂さんと壁山くんは拳を合わせて喜んでいる。
エドガーさんはシュートを止められた事に驚いていたものの、すぐに笑みを浮かべてポジションへと戻って行ったのが目に付き私はそちらへ視線を向けていた。
それから風丸さんのドリブルでイナズマジャパンが攻めようとしていた時だった。
ナイツオブクイーンの監督が指示に、エドガーさんが右手を上げれば選手達のフォーメーションが変わっていく様が見えた。彼らはFWをスルーしていたかと思えばエドガーさんが右手を出せば3人の選手が動き始める。
……これは、
風丸さんはフィリップ・オーウェンを “風神の舞” で突破したものの背後に控えていた選手達にボールを奪い蹴られた。
そのこぼれ球を拾った基山さんがドリブルで攻め上がるものの、エドガーさんを抜かしたと思ったら、たちまち別の選手によってボールを奪われる。
ボールを持った相手に素早く次々と襲い掛かり攻撃を阻止する、それがナイツオブクイーンの必殺タクティクス “アブソリュートナイツ” とエドガーさんは言う。
……確かにボールを繋げられなくてはそもそも、攻撃のしようがない。だからFWはスルーされていたんだろう。
そのタクティクスを機にナイツオブクイーンは一気に攻め上がる。
イナズマジャパンは再び翻弄されてしまい、ゴール前。綱海さんを避けたエドガーさんが鋭いノーマルシュートを撃った。
キャプテンはなんとか両手で止めることができた。
「ナイスセーブ」
「負けてたまるか!」
エドガーさんは相変わらず余裕綽々な態度を崩そうとしない。
「オレ達は、世界一を目指してここに来たんだ!」
けれど、円堂さんのその言葉にエドガーさんの表情が変わった。
「世界一?」
「ああ!その為に激しいアジア予選を勝ち抜いてきたんだ!」
「無理だ」
「なっ……何だと!?」
「君たちは!『世界一』の意味をっ、本当に分かっているのか!?」
円堂さんの言葉を即座に否定したエドガーさんは、イナズマジャパン全員に聞こえるような声量でそう問い質した。
「何!?」
「エンドウ。君の言う世界一とは、自分たちだけのものか?
世界の舞台で戦う代表チームは、自分たちの国の数えきれない人々の夢を託されている。それを裏切る事はできない。その夢を背負って戦うのが代表としての使命だ!」
「代表としての……使命……」
「私たちは、ナイツオブクイーンに選ばれた誇りを胸に戦っている。ただ目の前の高みしか見えていない君たちに、負けるわけにいかない!!」
「っ……!!」
エドガーさんの言葉は一つ一つが重く感じた。
イナズマジャパンだって日本にいる人の思いを背負っている。家族だったり、仲間だったり……形は様々で、それは私だって同じだ。
その思いの捉え方に正解不正解はきっと存在しない。どちらも正解のはずだ。
だけど、エドガーさん……いやイギリス代表の彼らの捉え方は普通じゃ相当なプレッシャーになってのしかかるものだと思った。
そのプレッシャー事態が、彼らの普通だと思うと改めて世界選手のレベルの高さを突き付けられた気がする。