寂しがり少女
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宿福の二階の普段は使っていない大広間で女子は着替えるらしい。
部屋には主催者側であるイギリスの人達が用意してくれたらしい数種類ものドレスやアクセサリー、靴が用意されていて、先に部屋の中にいた秋さんと冬花さんも楽しそうに選んでいた。
そんな自分にはキラキラと眩しすぎる空間に足を踏み入れることを躊躇うも構わず春奈に背中を押され、それから――
「似合ってるよお姉ちゃん!」
「うん、すっごく素敵ね……!」
「春奈ちゃんが選んだ髪飾りも、明奈ちゃんの雰囲気にピッタリ」
「ほ、本当ですか……?」
春奈だけでなく、秋さんや冬花さんも私の着替えを手伝ってくれて、ドレスアップを終えた私の姿を見て笑顔で褒めてくれていた。
ちなみに春奈が何着か選んでくれたドレスの中で何とか自分が着れそうなものを選べたかと思えば、化粧だったり、ヘアーアレンジだったり、香水選びだったり……何をするにもオシャレって時間がかかるんだなと学びを得たのはここだけの話だ。
「ほら、鏡見て確認してみてよ!」
「わわっ、ヒール慣れてないんだから引っ張らないでー」
自分の人生で無縁だった服装に落ち着かずむずむずとしていると、春奈は私の手を引いて姿見の前へと連れて行った。たたらを踏みながらも何とかその前へと立って鏡で自分の姿を確認する。
「わぁ……」
鏡の中の私は、呆けた顔をして何度か瞬きをしていた。
私の着ているのはオフショルダー?という肩が出ている薄紫色(正式な色の名前も教えてもらったけれど、忘れた)のドレスに髪には春奈が選んでくれた青い花の髪飾り。
さらにその髪は冬花さんにコテで巻いてもらって毛先がふわふわとしていたり、秋さんがしてくれた化粧も派手すぎないもののしっかり雰囲気が変わっていて、本当に自分なのかと思ってしまうほどだった。
「すごい…………」
「ね?ドレス着てよかったでしょ?」
私の様子を見ていた春奈が顔を覗き込んでにっこりと微笑む。
……本当、彼女には敵わないな。
「……たまには、いいかもね」
照れを誤魔化すように髪を耳に掛けながら、私は笑みを浮かべた。
それからマネージャー達の着替えも手伝って(どれが似合うか、とかは私はあまり分からなかったので専ら補助だけをした。唯一、春奈のネックレスは私が選んだけれど)、女子全員のドレスアップが無事に終わり楽しそうに感想を言い合っている。
オシャレとか詳しくない私から見ても、マネージャー達のドレス姿は文句無しに可愛かった。
「そろそろ男の子達も着替え終わっただろうし、行きましょうか」
それから秋さんが部屋にある時計を見ながらそう言われたので、私達は一階で着替えているらしい男子と合流することになる。……よしっ!
「どうしたの明奈ちゃん」
「緊張しないため、考え方を変えようかと思って」
一階に行くまでの道中で気合を入れてギュッと拳を握る私に、冬花さんが首を傾げたのでそう答えた。本当は頬を叩きたかったけれど、化粧が崩れそうだし我慢だ。
「考え方?」
「今から私が行くのは親善パーティーじゃない。相手チームの偵察です」
相手チームを知るための偵察で、ドレスコードが必要だからそうしている。だから男子にいくらドレスを見られても、恥ずかしいものじゃない……!
うん。大丈夫だ。サッカーの事を考えれば羞恥心もなんとかなりそうだ。
「そうなの?」
「そうです!」
不思議そうに首を傾げる冬花さんに私は深く頷いた。
「みんな、用意はできた?」
一階のエントランスホールにはパーティーの準備ができた男子達が談笑をしていたものの、秋さんの声に全員の視線がドレスを身にまとったマネージャーへと向いた。普段から可愛い人達の可愛い姿だ。頬を赤らめる男子も少なくはない。
「うわ~。可愛いです!」
「き、綺麗でヤンス~!」
「ちょっと、そんなにジロジロ見ないでくださいよ」
立向居くんや栗松くんからの褒め言葉に、春奈は照れくさそうに頬を赤らめて返答し、同じく秋さんや冬花さんも照れてはいたけれど、嬉しそうだった。
「へぇ、思ったより似合ってんじゃねえか」
「「「え?思ったより?」」」
そんな中、ヒロトさんが止めようとしていたけれど間に合わず、デリカシーのないことを言った綱海さんに女子たちの冷たい視線が突き刺さった。
「あはは、悪い悪い。ついつい思った事を言っちまってよ……!」
「フォローになってないぞ」
まずいと思ったのか顔を青くして謝るけれど、見当違いな言葉だったのか兄ちゃんに冷静につっこまれていた。
……という様子を、私は咄嗟に階段上の壁に身を潜めて眺めていた。
理由は簡単。
「や、やっぱ無理だ…………」
あの場に姿見せるの恥ずかしい……!!!
偵察のため、という建前は一階にいる男子達の存在によって綺麗に吹き飛んだ。
そんな私にあるのは普段一緒にサッカーをしている人達に、こんな姿を見せるという恥ずかしさだけで……男勝り、とまでは言わないけれど女子らしくはないと自負はしているからこんな格好を見せる不安もあった。
……別にイナズマジャパンの人は見てくれが悪くても貶したりはしないだろうけれど……!!
「ってお姉ちゃん!何隠れてんのー!!」
「い、今行くって……!!」
うんうん唸っていたけれど、春奈に呼ばれて私は慌てて返事をする。……このままじゃ春奈に引っ張られるのも時間の問題だ。
私は覚悟を決め階段を降り、男子達の前に姿を表せば視線が集まるのを感じた。……こんなことならマネージャーと一緒に降りて隠れとけばよかったと後悔してももう遅い。
私はなるべく視線を無視するように階段を降りようと両手で手すりを持って、一段ずつ下りていると、
「ぷっ。生まれたての小鹿みたいになってんぞ、不動」
「つ、綱海さん!失礼ですよっ」
その様子を見ていたらしく吹き出した綱海さんと、それに小声で注意する立向居くんの声が聞こえた。……綱海さんはデリカシーを海に置いてきたのか??
「ヒールに慣れてないだけです!!……うわっ!?」
あと数段で終わるということもあって、綱海さんを睨んだのがいけなかった。私は軽くバランスを崩して床へ転びそうになったものの。
トンッ
「あ、わっ……」
目の前の男子が私を支えてくれたおかげで、難を逃れた。
「あ、ありがとうございます。風丸さん」
顔を上げればその相手がタキシードに身を包んだ風丸さんだと分かり、お礼を伝える。
「…………」
「?風丸さん?」
だけど、風丸さんはぼーっとした様子で私の顔をじっと見つめていて何も喋らなかった。
「風丸さーん」
パタパタと彼の顔の前で手を振るものの、反応はない。……頬も赤いし、もしかしてまた調子が悪いのだろうか。
「風丸くん。明奈ちゃんに見惚れるのは分かるけれど無視はダメだよ」
「ヒロトさん」
「……あッ!わ、わるいっ不動!!」
どうしようと首を捻っていると、ヒロトさんが風丸さんにそっと耳打ちをして伝えてくれたんだろう。風丸さんはやっとこちらに気づいてそれから大袈裟に謝られた。
……元気そうだし体調不良ではない、のか?
「明奈ちゃん、すっごく可愛いね、似合ってる」
「えっ、あ……ど、どうも」
あわあわしている風丸さんの様子を不思議に思っていると、ヒロトさんににこりと笑いかけられてそう褒められる。
あまりにストレートな褒め言葉に私も一瞬固まりそうになったけれど、何とか礼を絞り出せばヒロトさんは楽しそうに目を細めた。ちゃんと話すようになって気づいたけれど、ヒロトさんってよく笑う人なんだな。新しい発見だ。
「分かります!いつもと違ってお姉さんって感じがして素敵ですね!」
「普段からお姉さんだけど?……まぁ、ありがとう。虎丸くんもかっこいいよ」
「わぁ……!ありがとうございます!」
ヒロトさんの言葉に笑顔で頷くのは虎丸くんだ。褒めてはくれたから礼は言うけれど……前々から思っていたけれど虎丸くん、私の事年上扱いしてないな。褒められて喜ぶ姿は年相応で可愛いのに。
褒めてくれつつも、いつも通りに接してくれる彼らに先ほど感じていた緊張も解れた私は、談笑しながらも改めてざっと周りを見回してみる。
男子達のタキシードもイギリス代表の人が用意してくれたらしく、それぞれ着こなしていた。彼らのファンの女子が見たら黄色い悲鳴、とやらが上がりそうだな、なんて思うぐらいには似合っている。
その中で、ふと私はみんなの中心であるあの人がいないことに気づいた。
「あれ?円堂くんは?」
秋さんも気づいたのか、周りを見回している。
男子達もそういえば……と不思議そうに顔を見合わせていた。
部屋には主催者側であるイギリスの人達が用意してくれたらしい数種類ものドレスやアクセサリー、靴が用意されていて、先に部屋の中にいた秋さんと冬花さんも楽しそうに選んでいた。
そんな自分にはキラキラと眩しすぎる空間に足を踏み入れることを躊躇うも構わず春奈に背中を押され、それから――
「似合ってるよお姉ちゃん!」
「うん、すっごく素敵ね……!」
「春奈ちゃんが選んだ髪飾りも、明奈ちゃんの雰囲気にピッタリ」
「ほ、本当ですか……?」
春奈だけでなく、秋さんや冬花さんも私の着替えを手伝ってくれて、ドレスアップを終えた私の姿を見て笑顔で褒めてくれていた。
ちなみに春奈が何着か選んでくれたドレスの中で何とか自分が着れそうなものを選べたかと思えば、化粧だったり、ヘアーアレンジだったり、香水選びだったり……何をするにもオシャレって時間がかかるんだなと学びを得たのはここだけの話だ。
「ほら、鏡見て確認してみてよ!」
「わわっ、ヒール慣れてないんだから引っ張らないでー」
自分の人生で無縁だった服装に落ち着かずむずむずとしていると、春奈は私の手を引いて姿見の前へと連れて行った。たたらを踏みながらも何とかその前へと立って鏡で自分の姿を確認する。
「わぁ……」
鏡の中の私は、呆けた顔をして何度か瞬きをしていた。
私の着ているのはオフショルダー?という肩が出ている薄紫色(正式な色の名前も教えてもらったけれど、忘れた)のドレスに髪には春奈が選んでくれた青い花の髪飾り。
さらにその髪は冬花さんにコテで巻いてもらって毛先がふわふわとしていたり、秋さんがしてくれた化粧も派手すぎないもののしっかり雰囲気が変わっていて、本当に自分なのかと思ってしまうほどだった。
「すごい…………」
「ね?ドレス着てよかったでしょ?」
私の様子を見ていた春奈が顔を覗き込んでにっこりと微笑む。
……本当、彼女には敵わないな。
「……たまには、いいかもね」
照れを誤魔化すように髪を耳に掛けながら、私は笑みを浮かべた。
それからマネージャー達の着替えも手伝って(どれが似合うか、とかは私はあまり分からなかったので専ら補助だけをした。唯一、春奈のネックレスは私が選んだけれど)、女子全員のドレスアップが無事に終わり楽しそうに感想を言い合っている。
オシャレとか詳しくない私から見ても、マネージャー達のドレス姿は文句無しに可愛かった。
「そろそろ男の子達も着替え終わっただろうし、行きましょうか」
それから秋さんが部屋にある時計を見ながらそう言われたので、私達は一階で着替えているらしい男子と合流することになる。……よしっ!
「どうしたの明奈ちゃん」
「緊張しないため、考え方を変えようかと思って」
一階に行くまでの道中で気合を入れてギュッと拳を握る私に、冬花さんが首を傾げたのでそう答えた。本当は頬を叩きたかったけれど、化粧が崩れそうだし我慢だ。
「考え方?」
「今から私が行くのは親善パーティーじゃない。相手チームの偵察です」
相手チームを知るための偵察で、ドレスコードが必要だからそうしている。だから男子にいくらドレスを見られても、恥ずかしいものじゃない……!
うん。大丈夫だ。サッカーの事を考えれば羞恥心もなんとかなりそうだ。
「そうなの?」
「そうです!」
不思議そうに首を傾げる冬花さんに私は深く頷いた。
「みんな、用意はできた?」
一階のエントランスホールにはパーティーの準備ができた男子達が談笑をしていたものの、秋さんの声に全員の視線がドレスを身にまとったマネージャーへと向いた。普段から可愛い人達の可愛い姿だ。頬を赤らめる男子も少なくはない。
「うわ~。可愛いです!」
「き、綺麗でヤンス~!」
「ちょっと、そんなにジロジロ見ないでくださいよ」
立向居くんや栗松くんからの褒め言葉に、春奈は照れくさそうに頬を赤らめて返答し、同じく秋さんや冬花さんも照れてはいたけれど、嬉しそうだった。
「へぇ、思ったより似合ってんじゃねえか」
「「「え?思ったより?」」」
そんな中、ヒロトさんが止めようとしていたけれど間に合わず、デリカシーのないことを言った綱海さんに女子たちの冷たい視線が突き刺さった。
「あはは、悪い悪い。ついつい思った事を言っちまってよ……!」
「フォローになってないぞ」
まずいと思ったのか顔を青くして謝るけれど、見当違いな言葉だったのか兄ちゃんに冷静につっこまれていた。
……という様子を、私は咄嗟に階段上の壁に身を潜めて眺めていた。
理由は簡単。
「や、やっぱ無理だ…………」
あの場に姿見せるの恥ずかしい……!!!
偵察のため、という建前は一階にいる男子達の存在によって綺麗に吹き飛んだ。
そんな私にあるのは普段一緒にサッカーをしている人達に、こんな姿を見せるという恥ずかしさだけで……男勝り、とまでは言わないけれど女子らしくはないと自負はしているからこんな格好を見せる不安もあった。
……別にイナズマジャパンの人は見てくれが悪くても貶したりはしないだろうけれど……!!
「ってお姉ちゃん!何隠れてんのー!!」
「い、今行くって……!!」
うんうん唸っていたけれど、春奈に呼ばれて私は慌てて返事をする。……このままじゃ春奈に引っ張られるのも時間の問題だ。
私は覚悟を決め階段を降り、男子達の前に姿を表せば視線が集まるのを感じた。……こんなことならマネージャーと一緒に降りて隠れとけばよかったと後悔してももう遅い。
私はなるべく視線を無視するように階段を降りようと両手で手すりを持って、一段ずつ下りていると、
「ぷっ。生まれたての小鹿みたいになってんぞ、不動」
「つ、綱海さん!失礼ですよっ」
その様子を見ていたらしく吹き出した綱海さんと、それに小声で注意する立向居くんの声が聞こえた。……綱海さんはデリカシーを海に置いてきたのか??
「ヒールに慣れてないだけです!!……うわっ!?」
あと数段で終わるということもあって、綱海さんを睨んだのがいけなかった。私は軽くバランスを崩して床へ転びそうになったものの。
トンッ
「あ、わっ……」
目の前の男子が私を支えてくれたおかげで、難を逃れた。
「あ、ありがとうございます。風丸さん」
顔を上げればその相手がタキシードに身を包んだ風丸さんだと分かり、お礼を伝える。
「…………」
「?風丸さん?」
だけど、風丸さんはぼーっとした様子で私の顔をじっと見つめていて何も喋らなかった。
「風丸さーん」
パタパタと彼の顔の前で手を振るものの、反応はない。……頬も赤いし、もしかしてまた調子が悪いのだろうか。
「風丸くん。明奈ちゃんに見惚れるのは分かるけれど無視はダメだよ」
「ヒロトさん」
「……あッ!わ、わるいっ不動!!」
どうしようと首を捻っていると、ヒロトさんが風丸さんにそっと耳打ちをして伝えてくれたんだろう。風丸さんはやっとこちらに気づいてそれから大袈裟に謝られた。
……元気そうだし体調不良ではない、のか?
「明奈ちゃん、すっごく可愛いね、似合ってる」
「えっ、あ……ど、どうも」
あわあわしている風丸さんの様子を不思議に思っていると、ヒロトさんににこりと笑いかけられてそう褒められる。
あまりにストレートな褒め言葉に私も一瞬固まりそうになったけれど、何とか礼を絞り出せばヒロトさんは楽しそうに目を細めた。ちゃんと話すようになって気づいたけれど、ヒロトさんってよく笑う人なんだな。新しい発見だ。
「分かります!いつもと違ってお姉さんって感じがして素敵ですね!」
「普段からお姉さんだけど?……まぁ、ありがとう。虎丸くんもかっこいいよ」
「わぁ……!ありがとうございます!」
ヒロトさんの言葉に笑顔で頷くのは虎丸くんだ。褒めてはくれたから礼は言うけれど……前々から思っていたけれど虎丸くん、私の事年上扱いしてないな。褒められて喜ぶ姿は年相応で可愛いのに。
褒めてくれつつも、いつも通りに接してくれる彼らに先ほど感じていた緊張も解れた私は、談笑しながらも改めてざっと周りを見回してみる。
男子達のタキシードもイギリス代表の人が用意してくれたらしく、それぞれ着こなしていた。彼らのファンの女子が見たら黄色い悲鳴、とやらが上がりそうだな、なんて思うぐらいには似合っている。
その中で、ふと私はみんなの中心であるあの人がいないことに気づいた。
「あれ?円堂くんは?」
秋さんも気づいたのか、周りを見回している。
男子達もそういえば……と不思議そうに顔を見合わせていた。