寂しがり少女
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開会式を終えた次の日の朝。ミーティングルームでマネージャーから本戦ついての説明を改めてされる。
FFI本戦は地区予選で勝った10チームのうち、5チームごとグループAとBに分かれて総当たり 戦が行われる。
その中で勝ち点の多い上位2チームが決勝ラウンドに進出し、合計4チームでの決勝トーナメントが行われるとのことだ。
イナズマジャパンはグループA。対戦相手はイタリア、アルゼンチン、イギリス、アメリカの4国だった。
初戦は2日後、相手はイギリス代表のナイツオブクイーン。
ヨーロッパの中でもトップクラスの実力を持つ強豪だと秋さんは話し、初戦ではあたりたくなかった相手だと目金さんは呟くことから世界レベルというものを感じさせる。
だけど、綱海さんを始めとしてそれに怯むことなく、むしろ「どうせやるなら強い相手だ」と闘志をみなぎらせていて。
「よーし!みんな!!全力でぶつかっていくぞ!!!」
「「「「オオーッ!!」」」」
そしてキャプテンの気合いっぱいの声にみんな拳を高らかに上げて、私もそっと拳を握ってその言葉に頷いた。
ミーティングも終えて、イナズマジャパンは早速練習が始まった。
攻守を交代しての練習中、途中加入でチームに入った佐久間さんの動きは目を見張るもので……兄との連携に対しても全く衰えを感じさせないものだった。
「…………」
走って行く2人の背中をつい目で追っていたけれど、すぐに今は練習中だと思い直し、私は走り出した。
「みんなー!ちょっと集まってー!」
それから程なくして、久遠監督に呼び出されていた秋さんに呼びかけに一同が集まった。
「親善パーティー??」
「ナイツオブクイーンからの招待よ。試合をする前に親睦を深めたいから、今日の6時、ロンドンパレスに正装してきてほしいって」
「せいそう?」
「こんなネクタイをした黒い服のことですよ」
招待状らしい手紙を持った秋さんからの説明に?マークを浮かべる綱海さんに立向居くんが簡潔に説明をする。何を想像したのか綱海さんは露骨に嫌そうな声上げていたけれど。
「ま、当然と言えば当然ですね。なんと言ってもジェントルマンの国なんですから」
目金さんが眼鏡を直しながら言う。紳士的だからこそ対戦相手に敬意を払って親善パーティーというものに誘う、ということらしい。
「……本当に紳士的な意思があるのやら」
精神的な優位を見せつけられているように感じる……ってそれは流石に捻くれすぎか。
「というわけで、時間までに準備してね」
とう言葉で締めくくられ、イナズマジャパンは練習を再開させた。
「虎丸くん、何か掴めた?」
「ううん……それが難しくて…………」
親善パーティーもあるという事で、今日の全体練習は早めに終わった。
キャプテンは何か悩んでいる様子で、立ち去ってしまったのを見るにどこかで個人練習でもしてそうだ。
私はタオルで汗を拭きながらこっそり虎丸くんに聞いてみれば、頭を悩ませているようだった。
「ゼロから作る必殺技って難しいですね」
「それはそうだ。意識すると余計にね」
個々の力を合わせて生み出す“タイガーストーム”とは別の難しさがあるのだろう。個人で戦える武器を作ろうとしている彼に私が言えることと言えば……
「ここは発想の転換で、対戦相手から着想を得るってのはどう?」
「え?対戦相手?」
「そう。ナイツオブクイーン を倒すための剣 、とか?」
「剣…………」
私の言葉に虎丸くんは腕を組んで何か考えていて、その様子を見守っていると。
「虎丸と明奈で何かする気か?」
「「わーー!!?」」
突然背後から話しかけらた声に会話に集中しすぎてた私達は揃って声を上げてしまった。
「何だ……?」
振り返れば目を丸くしてこちらを見ている豪炎寺さんがいた。
「い、いえ!……2人で何かというより虎丸くんが、」
「豪炎寺さんには内緒です!!」
私が言いきる前に虎丸くんが大きめな声を出して遮った。……そういえば豪炎寺さんには秘密って言われてたな。
虎丸くんを見ると案の定、じとりとした視線でこちらを見てきたのでそっと逸らしておいた。
その逸らした視線の先に、冬花さんが秋さんと春奈を呼んでいるのが見えた。
「ん?マネージャー達、どこ行くんだ?」
「着替えじゃないですか」
その姿を見て、首を傾げる綱海さんに私はそう答えた。
「ほら、正装ということは女子はドレスですし、色々時間がかかるのでしょう」
春奈のドレス姿、楽しみだなと思いながら私はタオルを片付けていると、
「……………何ですか?」
「そうだよ。女の子の着替えは時間がかかるものなの」
「春奈?」
私の周りにいた人が私をじっと見ていて、何でこんな注目浴びてるんだと首を傾げているといつの間にか背後に春奈がいた。
彼女はとんと私の両肩に手を置いてそれからにっこりと笑う。
「ってことで!行くよっ、お姉ちゃん!!」
「…………は?」
行くってどこに?と聞けば、春奈はもうっ決まっているでしょ!と腰に手を当てて次の言葉を告げる。
「親善パーティーのためにドレスを選びに行くの!お姉ちゃんは女の子なんだからドレスを着るのは当たり前でしょ?」
「……どれす……」
私は脳内で自分のドレス姿を想像して……それから…………。
「無理無理無理無理!!!」
ダッとその場から逃げた。
「兄ちゃん助けてっ!」
「っと、どうした明奈?」
逃げ先は兄の背中の後ろで、赤いマントに突撃すれば佐久間さんと話していたらしい兄ちゃんは多少前のめりになりながらもこちらを不思議そうに見てくる。
「コラッ、お姉ちゃんっ!逃げないの!」
「お姉ちゃんは男子と同じタキシード着るので大丈夫です!!」
すぐに春奈は追いかけてきて怒られるものの、折れる訳にはいかなくて、私はぎゅうと兄ちゃんのマントを掴みながらそう声を上げる。
「……明奈はドレスを着たくないのか?」
私達の間にいる兄ちゃんは喧嘩の内容を察したのかそう私に尋ねてくる。
「……だって、女子が着る服、慣れてないから……。似合わないだろうし」
自分がシンプルなデザインのメンズ物を好むからか、見知らぬ人からは男子に間違われることも少なくはない(FFIを知っている人には唯一の女子だと目を付けられていたので、逆に間違われなかったけれど)
そんな中性的な見た目の自分が?親善パーティーっていう敵も味方も大勢いる目の前で、あのひらひらなドレスを着る??…………考えただけで恥ずかしさから頬に熱が集まる。
「大丈夫だ。明奈」
「豪炎寺さん……?」
絶対着ないという気持ちのもとに私は兄ちゃんのマントに顔を埋めていると、笑みを浮かべた豪炎寺さんに話しかけられ、
「お前のワンピース姿、似合っていたぞ」
「わーーっ!内緒って言ったじゃないですかぁ……!!」
口を塞ぐことも固まっている時間が長かったのでできずに、恥ずかしさに追い打ちをかけられ、嘆きながら再び兄ちゃんに抱き着いた。
「豪炎寺さんもこう言ってくれてるんだしドレスを着ようよ!大丈夫だって、お姉ちゃんかわいいもん!!」
「かわいくない!」
「お姉ちゃん!」
「いーや!」
「……春奈。好みは人それぞれなんだ。嫌がってる相手に強要するものでもないだろう」
もうお互い、意地になっていたと思う。
それを止めたのはやっぱり私達の喧嘩に挟まれている兄で。私の嫌がり様を察して、春奈にそう言ってくれた。
「……うん、分かった……」
意外にも春奈はあっさりと引き下がり、はぁと小さくため息をついてくるりと背を向けた。
その背中が寂しそうに見えるけれど……スキンケアはともかくドレスを着るのは私にはハードルが高すぎる。今度の休みにおいしいスイーツを奢るので許して欲しい。
「ありがとう。兄ちゃ、」
「……そういえば、こんな天気のいい日だったね」
「ん……?」
助け舟を出してくれた兄へ礼を言おうとした矢先、数歩先を歩いていた春奈がふと空を見上げ、ポツリと呟き思わず視線をそちらに向ける。
「お姉ちゃんと雷門の体育館裏で再会した日も」
ひくり、頬が引きつった。
「…………は、春奈さん?」
だけど春奈は構わず思い出話をするように目を閉じて口を開いた。
「あの時、私はお姉ちゃんと会えてすっごく嬉しかったけど、お姉ちゃんはすぐに逃げちゃって………………私、寂しかったな」
「うぐぅ……!!!!」
寂しそうな声音に思わず胸を抑えながら私はその場で膝をついた。
い、痛い……めちゃくちゃ痛い!!
「そんなお姉ちゃんと仲直りできて、今日は一緒にドレス着られると思って楽しみにしてたのに……お姉ちゃんに着たくないって断られちゃった……悲しいなぁ……」
「あ、えっ…………」
思わず兄を見れば、バッとすごい勢いで視線を逸らされたし、他の男子を見ても気まずげな様子を見せるだけで。
ただただ襲ってくる罪悪感に、演技だとは分かっていても悲しそうな顔をする春奈に、私はすぐに限界を迎えた。
「は、春奈……」
「……なぁに、お姉ちゃん」
私は春奈の傍まで近づき、それからジャージの袖を掴んだ。
「や、やっぱり私、き、着たいかも。……ど…………ドレス」
「わぁ、本当!?」
そしてそう答えた直後、振り返った春奈の顔は悲しそうな顔から一転して花が咲くような笑顔を浮かべ、私に抱き着いてきた。
「さっすがお姉ちゃん!可愛いドレス着ようねっ!!」
「…………ハイ」
春奈との言い合いは彼女の機転の良さによって私の完全敗北に終わった。
……なんて演技力なんだ、とは思いつつも楽しそうな春奈を見てそれを指摘する気なんて起こらず、結局は私は彼女の頭を撫でながら頬を緩ませてしまう。多分ちょっと疲れた笑みだっただろうけれど。
「女子って……強かだな……」
「ああ……オレはまだネタに出来る自信はない」
その傍で眉間に手を当てて唸っている兄ちゃんと、夕香もいつかああなるんだろうか……と独り言ちていた豪炎寺さんがいた。
FFI本戦は地区予選で勝った10チームのうち、5チームごとグループAとBに分かれて
その中で勝ち点の多い上位2チームが決勝ラウンドに進出し、合計4チームでの決勝トーナメントが行われるとのことだ。
イナズマジャパンはグループA。対戦相手はイタリア、アルゼンチン、イギリス、アメリカの4国だった。
初戦は2日後、相手はイギリス代表のナイツオブクイーン。
ヨーロッパの中でもトップクラスの実力を持つ強豪だと秋さんは話し、初戦ではあたりたくなかった相手だと目金さんは呟くことから世界レベルというものを感じさせる。
だけど、綱海さんを始めとしてそれに怯むことなく、むしろ「どうせやるなら強い相手だ」と闘志をみなぎらせていて。
「よーし!みんな!!全力でぶつかっていくぞ!!!」
「「「「オオーッ!!」」」」
そしてキャプテンの気合いっぱいの声にみんな拳を高らかに上げて、私もそっと拳を握ってその言葉に頷いた。
ミーティングも終えて、イナズマジャパンは早速練習が始まった。
攻守を交代しての練習中、途中加入でチームに入った佐久間さんの動きは目を見張るもので……兄との連携に対しても全く衰えを感じさせないものだった。
「…………」
走って行く2人の背中をつい目で追っていたけれど、すぐに今は練習中だと思い直し、私は走り出した。
「みんなー!ちょっと集まってー!」
それから程なくして、久遠監督に呼び出されていた秋さんに呼びかけに一同が集まった。
「親善パーティー??」
「ナイツオブクイーンからの招待よ。試合をする前に親睦を深めたいから、今日の6時、ロンドンパレスに正装してきてほしいって」
「せいそう?」
「こんなネクタイをした黒い服のことですよ」
招待状らしい手紙を持った秋さんからの説明に?マークを浮かべる綱海さんに立向居くんが簡潔に説明をする。何を想像したのか綱海さんは露骨に嫌そうな声上げていたけれど。
「ま、当然と言えば当然ですね。なんと言ってもジェントルマンの国なんですから」
目金さんが眼鏡を直しながら言う。紳士的だからこそ対戦相手に敬意を払って親善パーティーというものに誘う、ということらしい。
「……本当に紳士的な意思があるのやら」
精神的な優位を見せつけられているように感じる……ってそれは流石に捻くれすぎか。
「というわけで、時間までに準備してね」
とう言葉で締めくくられ、イナズマジャパンは練習を再開させた。
「虎丸くん、何か掴めた?」
「ううん……それが難しくて…………」
親善パーティーもあるという事で、今日の全体練習は早めに終わった。
キャプテンは何か悩んでいる様子で、立ち去ってしまったのを見るにどこかで個人練習でもしてそうだ。
私はタオルで汗を拭きながらこっそり虎丸くんに聞いてみれば、頭を悩ませているようだった。
「ゼロから作る必殺技って難しいですね」
「それはそうだ。意識すると余計にね」
個々の力を合わせて生み出す“タイガーストーム”とは別の難しさがあるのだろう。個人で戦える武器を作ろうとしている彼に私が言えることと言えば……
「ここは発想の転換で、対戦相手から着想を得るってのはどう?」
「え?対戦相手?」
「そう。
「剣…………」
私の言葉に虎丸くんは腕を組んで何か考えていて、その様子を見守っていると。
「虎丸と明奈で何かする気か?」
「「わーー!!?」」
突然背後から話しかけらた声に会話に集中しすぎてた私達は揃って声を上げてしまった。
「何だ……?」
振り返れば目を丸くしてこちらを見ている豪炎寺さんがいた。
「い、いえ!……2人で何かというより虎丸くんが、」
「豪炎寺さんには内緒です!!」
私が言いきる前に虎丸くんが大きめな声を出して遮った。……そういえば豪炎寺さんには秘密って言われてたな。
虎丸くんを見ると案の定、じとりとした視線でこちらを見てきたのでそっと逸らしておいた。
その逸らした視線の先に、冬花さんが秋さんと春奈を呼んでいるのが見えた。
「ん?マネージャー達、どこ行くんだ?」
「着替えじゃないですか」
その姿を見て、首を傾げる綱海さんに私はそう答えた。
「ほら、正装ということは女子はドレスですし、色々時間がかかるのでしょう」
春奈のドレス姿、楽しみだなと思いながら私はタオルを片付けていると、
「……………何ですか?」
「そうだよ。女の子の着替えは時間がかかるものなの」
「春奈?」
私の周りにいた人が私をじっと見ていて、何でこんな注目浴びてるんだと首を傾げているといつの間にか背後に春奈がいた。
彼女はとんと私の両肩に手を置いてそれからにっこりと笑う。
「ってことで!行くよっ、お姉ちゃん!!」
「…………は?」
行くってどこに?と聞けば、春奈はもうっ決まっているでしょ!と腰に手を当てて次の言葉を告げる。
「親善パーティーのためにドレスを選びに行くの!お姉ちゃんは女の子なんだからドレスを着るのは当たり前でしょ?」
「……どれす……」
私は脳内で自分のドレス姿を想像して……それから…………。
「無理無理無理無理!!!」
ダッとその場から逃げた。
「兄ちゃん助けてっ!」
「っと、どうした明奈?」
逃げ先は兄の背中の後ろで、赤いマントに突撃すれば佐久間さんと話していたらしい兄ちゃんは多少前のめりになりながらもこちらを不思議そうに見てくる。
「コラッ、お姉ちゃんっ!逃げないの!」
「お姉ちゃんは男子と同じタキシード着るので大丈夫です!!」
すぐに春奈は追いかけてきて怒られるものの、折れる訳にはいかなくて、私はぎゅうと兄ちゃんのマントを掴みながらそう声を上げる。
「……明奈はドレスを着たくないのか?」
私達の間にいる兄ちゃんは喧嘩の内容を察したのかそう私に尋ねてくる。
「……だって、女子が着る服、慣れてないから……。似合わないだろうし」
自分がシンプルなデザインのメンズ物を好むからか、見知らぬ人からは男子に間違われることも少なくはない(FFIを知っている人には唯一の女子だと目を付けられていたので、逆に間違われなかったけれど)
そんな中性的な見た目の自分が?親善パーティーっていう敵も味方も大勢いる目の前で、あのひらひらなドレスを着る??…………考えただけで恥ずかしさから頬に熱が集まる。
「大丈夫だ。明奈」
「豪炎寺さん……?」
絶対着ないという気持ちのもとに私は兄ちゃんのマントに顔を埋めていると、笑みを浮かべた豪炎寺さんに話しかけられ、
「お前のワンピース姿、似合っていたぞ」
「わーーっ!内緒って言ったじゃないですかぁ……!!」
口を塞ぐことも固まっている時間が長かったのでできずに、恥ずかしさに追い打ちをかけられ、嘆きながら再び兄ちゃんに抱き着いた。
「豪炎寺さんもこう言ってくれてるんだしドレスを着ようよ!大丈夫だって、お姉ちゃんかわいいもん!!」
「かわいくない!」
「お姉ちゃん!」
「いーや!」
「……春奈。好みは人それぞれなんだ。嫌がってる相手に強要するものでもないだろう」
もうお互い、意地になっていたと思う。
それを止めたのはやっぱり私達の喧嘩に挟まれている兄で。私の嫌がり様を察して、春奈にそう言ってくれた。
「……うん、分かった……」
意外にも春奈はあっさりと引き下がり、はぁと小さくため息をついてくるりと背を向けた。
その背中が寂しそうに見えるけれど……スキンケアはともかくドレスを着るのは私にはハードルが高すぎる。今度の休みにおいしいスイーツを奢るので許して欲しい。
「ありがとう。兄ちゃ、」
「……そういえば、こんな天気のいい日だったね」
「ん……?」
助け舟を出してくれた兄へ礼を言おうとした矢先、数歩先を歩いていた春奈がふと空を見上げ、ポツリと呟き思わず視線をそちらに向ける。
「お姉ちゃんと雷門の体育館裏で再会した日も」
ひくり、頬が引きつった。
「…………は、春奈さん?」
だけど春奈は構わず思い出話をするように目を閉じて口を開いた。
「あの時、私はお姉ちゃんと会えてすっごく嬉しかったけど、お姉ちゃんはすぐに逃げちゃって………………私、寂しかったな」
「うぐぅ……!!!!」
寂しそうな声音に思わず胸を抑えながら私はその場で膝をついた。
い、痛い……めちゃくちゃ痛い!!
「そんなお姉ちゃんと仲直りできて、今日は一緒にドレス着られると思って楽しみにしてたのに……お姉ちゃんに着たくないって断られちゃった……悲しいなぁ……」
「あ、えっ…………」
思わず兄を見れば、バッとすごい勢いで視線を逸らされたし、他の男子を見ても気まずげな様子を見せるだけで。
ただただ襲ってくる罪悪感に、演技だとは分かっていても悲しそうな顔をする春奈に、私はすぐに限界を迎えた。
「は、春奈……」
「……なぁに、お姉ちゃん」
私は春奈の傍まで近づき、それからジャージの袖を掴んだ。
「や、やっぱり私、き、着たいかも。……ど…………ドレス」
「わぁ、本当!?」
そしてそう答えた直後、振り返った春奈の顔は悲しそうな顔から一転して花が咲くような笑顔を浮かべ、私に抱き着いてきた。
「さっすがお姉ちゃん!可愛いドレス着ようねっ!!」
「…………ハイ」
春奈との言い合いは彼女の機転の良さによって私の完全敗北に終わった。
……なんて演技力なんだ、とは思いつつも楽しそうな春奈を見てそれを指摘する気なんて起こらず、結局は私は彼女の頭を撫でながら頬を緩ませてしまう。多分ちょっと疲れた笑みだっただろうけれど。
「女子って……強かだな……」
「ああ……オレはまだネタに出来る自信はない」
その傍で眉間に手を当てて唸っている兄ちゃんと、夕香もいつかああなるんだろうか……と独り言ちていた豪炎寺さんがいた。