寂しがり少女
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風丸視点
時は遡り、ライオコット島に行く前の空港。
見送りに来てくれた雷門サッカー部の面々と話している時の事だった。
「で。結局、風丸は不動さんの事好きなの?」
「…………はぁ!?」
突然のマックスの言葉に思わず大きな声を上げてしまった。
俺の知っている不動という女子は今しがた吹雪に呼ばれ歩いて行った彼女しかいない訳で。
好き?俺が不動のことを??
「え、違うのか?」
俺の反応を見た半田は心底不思議そうな顔をするもんだから、さらに動揺を誘う。
「いや…………えっと」
だけどそれに対して、否定を出来なかった自分が一番理解不能だった。
「えー、違うことはないでしょ、半田は祝勝会の時の風丸のデレっぷり見てなかったの?」
「ああ……」
「なんだよその目は……!!」
祝勝会は確かに不動と話した。
だけどそんな生暖かい視線を貰うような会話なんてしていないはずだ。ただ普通に彼女に対する謝罪をしただけで、それで……………
―『ありがとうございます』
思い出すのは後ろ向きになっていた俺に対して、感謝の言葉を告げる彼女の初めて見たふわりとした柔らかな笑顔で。
その結果。
「~~~ッ………!」
撃沈。
「わー!?風丸さんが急に崩れ落ちたッス!」
「腹痛でヤンスか!?」
「あー、お前ら大丈夫だから!あんまり騒ぐなって!」
「そうだよ、遅い春が訪れただけだし」
その場で顔を手で隠しながらしゃがみ込んでしまえば、頭上から心配する一年生の声とか、それを宥める半田の声とか、マックスの楽しそうにからかう声とか全部聞こえて。
だけど顔を上げて何か言うには、熱くなってしまった頬をどうにかするのが先決だったから俺は動けずにいた。
ちくしょう、なんて騒がしい初恋の自覚なんだ!
+++
付き合えたらいいな。鬼道に許し貰えるような男磨き頑張れよ。とか応援なのか野次なのか分からない言葉を口々に貰った後に飛行機に乗りFFIの開催地ライオコット島に訪れた。
そうだ。この島に来た最大の目的はサッカーをすることなんだ。それだけは気を抜いたらいけない。
キャラバンを止めて目にしたイタリアの代表チームのプレーを見てよりそう思えた。隣で熱意をみなぎらせる円堂がいるのもそう思える要員なのだろう。
「風丸、立向居、オレ達も頑張ろうな!」
「ああ」
「はいっ!」
何て再び発進したキャラバンの中でそう気合を入れ直していると、ふと前の席の女子達の話が耳に入った。
「不動さんはその人の事、大切なんだね」
「そうですね」
話の前後を聞いていなかったからよく分からなかったけれど、不動の声が聞こえてつい耳を傾けてしまい、
「彼の事は好きなので」
ゴンッ
「うっ……!」
その言葉を聞いた瞬間に目の前の座席に額をぶつけた。円堂達からすれば突然の動きだったので驚かれた。
「だ、大丈夫ですか?」
前の席にも振動が伝わったんだろう。心配そうにこちらに声を掛ける不動の声も聞こえて……返事は返したものの無理があるなと我ながら思った。
その後に音無と話してて声を大きくした不動によって「好きな人」の意味合いを勘違いしている事に気づいて酷く安堵した。
「そうか……違うのか…………」
「……風丸、なんかさっきからなんか変だぞ?」
「い、いやっ、何でもないが!!?」
…………こんな相手の一言で一喜一憂するなんて、我ながら情けなくて思わずため息をついた。
「……円堂って好きな奴ができたらどうする?」
「?オレはみんなのこと好きだぞ?」
「ああうん……お前はそういう奴だよな………」
+++
それから、辿り着いたジャパンエリアの宿泊施設。
個室で荷物を整理した後に、夕食の時間が訪れていて食堂に行くために一階へ下りれば玄関の扉が開いた。
「ただいま、風丸くん」
「ただいま戻りました」
「ああ、おかえり。ヒロト、ふど、う……」
買い出しに行ったという話は聞いてたから俺は普通に出迎えようとしたものの、ある一点を見て固まってしまった。
不動とヒロト、それぞれ荷物を片手で持っている。
それについては平等に持ったんだろうなと納得できた。
問題は反対側の手だった。
不動はヒロトと手を繋いでいた。
しかも指と指を絡めたいわゆる『恋人つなぎ』という繋ぎ方をしていて。
「風丸さん?」
「……ッ!あ、いや…………な、仲いいんだな」
じっとその手を見て固まっていると、不審そうに不動に名前を呼ばれて思わず肩が揺れる。それから何とか言葉を捻りだせば、不動が何かを言う前にヒロトがうん、と微笑んだ。
「仲良くなったんだ。ね、明奈ちゃん?」
「へ?ああ……そうですね」
それから握った手を見せるように少し掲げ、不動に向けてわざわざ名前を呼んでいた。彼女は掲げられた手を不思議そうに見てから、ヒロトの問いにこくりと頷いていた。
ヒロトの表情も相まって……何も指摘しなければずっと繋いでそうな雰囲気があって、
「…………不動」
思わず名前を呼んだ。
ただ自分ができたのは荷物を代わりに運んで置くと申し出ることだけで。しかも様々な醜態を見られていたので断られそうになったし、どこまでたっても格好つかない。
「えと、付き添いだったり、荷物持ってくれたり、ありがとうございます……!」
それでも不動は去り際に、ヒロトだけじゃなくて自分にもそう礼を言ってくれて。
……まだ自然でいることに慣れていない、少しだけ照れたような表情を見せて、彼女はパタパタと小走りで去って行った。
「明奈ちゃん、いい子だよね」
「そうだな……」
それから強制的に連れてきたヒロトと買った物を保管室へと置いていると、ヒロトが唐突に呟いた。
本当はさらりと名前を呼んでいることとか、あんな手を繋ぎ方をしたのか、聞きたいことはあったがそんなあからさまな事を言うのも照れ臭く感じてしまって、曖昧に頷くだけにした。
「あと、笑顔が可愛い」
「ぶっ……!」
そんな俺の心情とは正反対にヒロトはさも当然のようにそんな事を言って、思わず吹き出す。
「あれ?風丸くんはそう思わない?」
「い、いや!た、確かに…………か、可愛いなとは思う、けれど……」
俺が吹き出した事で勘違いされそうだったので、慌てて同意するように俺はそう口にした。……思うのと、声に出して言うの全然恥ずかしさが違うな。
顔に熱が集まった感覚につい、手で隠しながらちらりとヒロトを見れば、だよね、と相変わらず涼しい顔だった。
そこで一つの疑問が湧いて、俺は尋ねる。
「ひ、ヒロトは……不動が……」
―好き、なのか……?
一瞬の沈黙。そしてヒロトの出した答えは。
「…………どうなんだろ。ちょっと分からないかな」
酷く曖昧なものだった。
「分からないって……」
「仲間としては好きって答えられるけれど、風丸くんの言う意味合いではハッキリ言えなくて……」
「いやっ……別に俺は…………」
「隠さなくていいって。明奈ちゃんと手と繋いでる時の風丸くんの目。凄かったから」
緑川風に言うと目は口程に物を言うってね。と笑うヒロトだったが、そんな指摘をされるまで自分がどんな目でヒロトを見ていたかなんて気づかない事に申し訳なさが募った。
「……すまん」
恋人同士ならともかく、片想いの奴がやることではないだろう。
ため息をついて謝れば律儀だね、とヒロトは可笑しそうに肩を揺らした。
「俺、明奈ちゃんには笑ってほしいって思うんだ」
そして改めてヒロトはそう言った。
彼女を思い浮かべているであろうその表情はとても優しく、ファンの女子が見たら顔を真っ赤にするんだろうな、なんて。
「……無理ばかりして、苦しんでいる所も、寂しそうな所も見てたから余計そう思ってしまうんだと思う」
「それは……少し、分かるかもしれない」
ヒロトが不動とどんな仲なのか詳しくは知らないけれど、彼女を思って話すヒロトの気持ちは共感できるものだった。
選考試合の時に姿を見せた時の不動は真・帝国の時とはまた雰囲気が変わっていた。他人を寄せ付けようしない鋭さはありながらも、ふと見せる寂しそうな顔を見て、胸が苦しくなったのを覚えている。
「この感情が恋によるものかは分からないけれど、明奈ちゃんは俺にとって特別な子には変わりない」
胸に手を当てて目を閉じていたヒロトは、だから、と目を開いた。
「この気持ちの正体を知るためにいろいろ行動しようかなって」
そう語るヒロトはどこか楽しそうで、自分の気持ちを探すのを楽しんでいるように見えて、それはエイリア学園の呪縛から解放されて、サッカーを楽しんでいる表情と同じだ。
「そう……か」
俺には、自覚がないだけで恋だと思ってしまった。
……いや、実際のヒロトの思いは、ヒロトしか分からないけれど。
「風丸くんは?」
「え?」
「明奈ちゃんのこと好き?」
「えっ、あ……」
改めて聞かれて、俺はたじろぐ。
分かってるだろう、と言いたかったけれどヒロトの目を見て、その言葉も言えずに引っ込んだ。
ちゃんと、言うべきなんだろう。
「俺は……」
思い浮かべるのは、最近の不動のことで。
韓国戦を経て、チームとのわだかまりが解けてからの不動は、無理をしてたんだろう素っ気ない態度を改めて、以前よりも周りとの会話を増やそうと頑張っているようだった。
そんな風に歩み寄ろうとする不動から目が離せなくて……兄妹と話している時に見せる柔らかな笑みが可愛く思えて……。
俺の隣で、笑ってほしいなと思った。
「ああ。……好きだ」
俺は、不動が……不動明奈が、好きなんだ。
それは空港で指摘された時よりもしっかりとした自覚だった。
自分でもあの時みた笑顔の珍しさからそんな錯覚を抱いていたんじゃないか?という疑心暗鬼を解消された気がする。
「じゃあお互い、頑張ろうね」
そんな俺を見て、ヒロトは穏やかに微笑んだ。
「……方法はちゃんと考えろよ」
「え?手を繋ぐのは友達同士でもやらない?」
「友達同士はあんな繋ぎ方はしないだろ!」
「でも、明奈ちゃん嫌がらなかったよ?」
「いや、まぁそれは…………」
「……羨ましい?」
「~~っヒロト!」
時は遡り、ライオコット島に行く前の空港。
見送りに来てくれた雷門サッカー部の面々と話している時の事だった。
「で。結局、風丸は不動さんの事好きなの?」
「…………はぁ!?」
突然のマックスの言葉に思わず大きな声を上げてしまった。
俺の知っている不動という女子は今しがた吹雪に呼ばれ歩いて行った彼女しかいない訳で。
好き?俺が不動のことを??
「え、違うのか?」
俺の反応を見た半田は心底不思議そうな顔をするもんだから、さらに動揺を誘う。
「いや…………えっと」
だけどそれに対して、否定を出来なかった自分が一番理解不能だった。
「えー、違うことはないでしょ、半田は祝勝会の時の風丸のデレっぷり見てなかったの?」
「ああ……」
「なんだよその目は……!!」
祝勝会は確かに不動と話した。
だけどそんな生暖かい視線を貰うような会話なんてしていないはずだ。ただ普通に彼女に対する謝罪をしただけで、それで……………
―『ありがとうございます』
思い出すのは後ろ向きになっていた俺に対して、感謝の言葉を告げる彼女の初めて見たふわりとした柔らかな笑顔で。
その結果。
「~~~ッ………!」
撃沈。
「わー!?風丸さんが急に崩れ落ちたッス!」
「腹痛でヤンスか!?」
「あー、お前ら大丈夫だから!あんまり騒ぐなって!」
「そうだよ、遅い春が訪れただけだし」
その場で顔を手で隠しながらしゃがみ込んでしまえば、頭上から心配する一年生の声とか、それを宥める半田の声とか、マックスの楽しそうにからかう声とか全部聞こえて。
だけど顔を上げて何か言うには、熱くなってしまった頬をどうにかするのが先決だったから俺は動けずにいた。
ちくしょう、なんて騒がしい初恋の自覚なんだ!
+++
付き合えたらいいな。鬼道に許し貰えるような男磨き頑張れよ。とか応援なのか野次なのか分からない言葉を口々に貰った後に飛行機に乗りFFIの開催地ライオコット島に訪れた。
そうだ。この島に来た最大の目的はサッカーをすることなんだ。それだけは気を抜いたらいけない。
キャラバンを止めて目にしたイタリアの代表チームのプレーを見てよりそう思えた。隣で熱意をみなぎらせる円堂がいるのもそう思える要員なのだろう。
「風丸、立向居、オレ達も頑張ろうな!」
「ああ」
「はいっ!」
何て再び発進したキャラバンの中でそう気合を入れ直していると、ふと前の席の女子達の話が耳に入った。
「不動さんはその人の事、大切なんだね」
「そうですね」
話の前後を聞いていなかったからよく分からなかったけれど、不動の声が聞こえてつい耳を傾けてしまい、
「彼の事は好きなので」
ゴンッ
「うっ……!」
その言葉を聞いた瞬間に目の前の座席に額をぶつけた。円堂達からすれば突然の動きだったので驚かれた。
「だ、大丈夫ですか?」
前の席にも振動が伝わったんだろう。心配そうにこちらに声を掛ける不動の声も聞こえて……返事は返したものの無理があるなと我ながら思った。
その後に音無と話してて声を大きくした不動によって「好きな人」の意味合いを勘違いしている事に気づいて酷く安堵した。
「そうか……違うのか…………」
「……風丸、なんかさっきからなんか変だぞ?」
「い、いやっ、何でもないが!!?」
…………こんな相手の一言で一喜一憂するなんて、我ながら情けなくて思わずため息をついた。
「……円堂って好きな奴ができたらどうする?」
「?オレはみんなのこと好きだぞ?」
「ああうん……お前はそういう奴だよな………」
+++
それから、辿り着いたジャパンエリアの宿泊施設。
個室で荷物を整理した後に、夕食の時間が訪れていて食堂に行くために一階へ下りれば玄関の扉が開いた。
「ただいま、風丸くん」
「ただいま戻りました」
「ああ、おかえり。ヒロト、ふど、う……」
買い出しに行ったという話は聞いてたから俺は普通に出迎えようとしたものの、ある一点を見て固まってしまった。
不動とヒロト、それぞれ荷物を片手で持っている。
それについては平等に持ったんだろうなと納得できた。
問題は反対側の手だった。
不動はヒロトと手を繋いでいた。
しかも指と指を絡めたいわゆる『恋人つなぎ』という繋ぎ方をしていて。
「風丸さん?」
「……ッ!あ、いや…………な、仲いいんだな」
じっとその手を見て固まっていると、不審そうに不動に名前を呼ばれて思わず肩が揺れる。それから何とか言葉を捻りだせば、不動が何かを言う前にヒロトがうん、と微笑んだ。
「仲良くなったんだ。ね、明奈ちゃん?」
「へ?ああ……そうですね」
それから握った手を見せるように少し掲げ、不動に向けてわざわざ名前を呼んでいた。彼女は掲げられた手を不思議そうに見てから、ヒロトの問いにこくりと頷いていた。
ヒロトの表情も相まって……何も指摘しなければずっと繋いでそうな雰囲気があって、
「…………不動」
思わず名前を呼んだ。
ただ自分ができたのは荷物を代わりに運んで置くと申し出ることだけで。しかも様々な醜態を見られていたので断られそうになったし、どこまでたっても格好つかない。
「えと、付き添いだったり、荷物持ってくれたり、ありがとうございます……!」
それでも不動は去り際に、ヒロトだけじゃなくて自分にもそう礼を言ってくれて。
……まだ自然でいることに慣れていない、少しだけ照れたような表情を見せて、彼女はパタパタと小走りで去って行った。
「明奈ちゃん、いい子だよね」
「そうだな……」
それから強制的に連れてきたヒロトと買った物を保管室へと置いていると、ヒロトが唐突に呟いた。
本当はさらりと名前を呼んでいることとか、あんな手を繋ぎ方をしたのか、聞きたいことはあったがそんなあからさまな事を言うのも照れ臭く感じてしまって、曖昧に頷くだけにした。
「あと、笑顔が可愛い」
「ぶっ……!」
そんな俺の心情とは正反対にヒロトはさも当然のようにそんな事を言って、思わず吹き出す。
「あれ?風丸くんはそう思わない?」
「い、いや!た、確かに…………か、可愛いなとは思う、けれど……」
俺が吹き出した事で勘違いされそうだったので、慌てて同意するように俺はそう口にした。……思うのと、声に出して言うの全然恥ずかしさが違うな。
顔に熱が集まった感覚につい、手で隠しながらちらりとヒロトを見れば、だよね、と相変わらず涼しい顔だった。
そこで一つの疑問が湧いて、俺は尋ねる。
「ひ、ヒロトは……不動が……」
―好き、なのか……?
一瞬の沈黙。そしてヒロトの出した答えは。
「…………どうなんだろ。ちょっと分からないかな」
酷く曖昧なものだった。
「分からないって……」
「仲間としては好きって答えられるけれど、風丸くんの言う意味合いではハッキリ言えなくて……」
「いやっ……別に俺は…………」
「隠さなくていいって。明奈ちゃんと手と繋いでる時の風丸くんの目。凄かったから」
緑川風に言うと目は口程に物を言うってね。と笑うヒロトだったが、そんな指摘をされるまで自分がどんな目でヒロトを見ていたかなんて気づかない事に申し訳なさが募った。
「……すまん」
恋人同士ならともかく、片想いの奴がやることではないだろう。
ため息をついて謝れば律儀だね、とヒロトは可笑しそうに肩を揺らした。
「俺、明奈ちゃんには笑ってほしいって思うんだ」
そして改めてヒロトはそう言った。
彼女を思い浮かべているであろうその表情はとても優しく、ファンの女子が見たら顔を真っ赤にするんだろうな、なんて。
「……無理ばかりして、苦しんでいる所も、寂しそうな所も見てたから余計そう思ってしまうんだと思う」
「それは……少し、分かるかもしれない」
ヒロトが不動とどんな仲なのか詳しくは知らないけれど、彼女を思って話すヒロトの気持ちは共感できるものだった。
選考試合の時に姿を見せた時の不動は真・帝国の時とはまた雰囲気が変わっていた。他人を寄せ付けようしない鋭さはありながらも、ふと見せる寂しそうな顔を見て、胸が苦しくなったのを覚えている。
「この感情が恋によるものかは分からないけれど、明奈ちゃんは俺にとって特別な子には変わりない」
胸に手を当てて目を閉じていたヒロトは、だから、と目を開いた。
「この気持ちの正体を知るためにいろいろ行動しようかなって」
そう語るヒロトはどこか楽しそうで、自分の気持ちを探すのを楽しんでいるように見えて、それはエイリア学園の呪縛から解放されて、サッカーを楽しんでいる表情と同じだ。
「そう……か」
俺には、自覚がないだけで恋だと思ってしまった。
……いや、実際のヒロトの思いは、ヒロトしか分からないけれど。
「風丸くんは?」
「え?」
「明奈ちゃんのこと好き?」
「えっ、あ……」
改めて聞かれて、俺はたじろぐ。
分かってるだろう、と言いたかったけれどヒロトの目を見て、その言葉も言えずに引っ込んだ。
ちゃんと、言うべきなんだろう。
「俺は……」
思い浮かべるのは、最近の不動のことで。
韓国戦を経て、チームとのわだかまりが解けてからの不動は、無理をしてたんだろう素っ気ない態度を改めて、以前よりも周りとの会話を増やそうと頑張っているようだった。
そんな風に歩み寄ろうとする不動から目が離せなくて……兄妹と話している時に見せる柔らかな笑みが可愛く思えて……。
俺の隣で、笑ってほしいなと思った。
「ああ。……好きだ」
俺は、不動が……不動明奈が、好きなんだ。
それは空港で指摘された時よりもしっかりとした自覚だった。
自分でもあの時みた笑顔の珍しさからそんな錯覚を抱いていたんじゃないか?という疑心暗鬼を解消された気がする。
「じゃあお互い、頑張ろうね」
そんな俺を見て、ヒロトは穏やかに微笑んだ。
「……方法はちゃんと考えろよ」
「え?手を繋ぐのは友達同士でもやらない?」
「友達同士はあんな繋ぎ方はしないだろ!」
「でも、明奈ちゃん嫌がらなかったよ?」
「いや、まぁそれは…………」
「……羨ましい?」
「~~っヒロト!」