寂しがり少女
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いつまでも昔の事を引き摺ってんじゃねぇっ!!
私たちは人形でも、作品でもねぇんだよっ!!」
そのまま兄が足に乗せているボールに向かい、兄が倒れるのも構わず、スライディングを仕掛けて無理矢理ボールを奪った。
「ッ明奈……!?」
地面に倒れてしまった兄に名前を呼ばれるも無視して、ボールを足元へ。
それからチームKへの牽制のため、前髪を掻き上げて強く睨めば相手連中は面白いくらい狼狽えた。
今日ばかり自分の目つきが悪くて良かったと思った瞬間だ。
「ふ、不動……。お前、自分の兄に何を……」
「そうだよ!私は鬼道有人の妹だ!……だけど、私は妹として守られたくてこの場にいる訳じゃない!」
戸惑ったように顔をひきつらせている佐久間さんを一瞥して、私は兄を見下ろして胸に手を置いた。
「影山なんて関係ない!!私は、貴方と一緒に戦いたかったからここにいるんだよ!守られるんじゃなくて、肩を並べてサッカーをしたいんだよっ!!
貴方は私のお兄ちゃんなんでしょ!?私の考えてることぐらい分かってよ……!!」
ぶつけたのは、先日キャプテンに話した兄に伝えたいと思っていた本音だった。
本当はこんな理不尽を、感情任せに怒鳴り散らす予定なんかじゃなくて、もうちょっと話すことをまとめるつもりで…………つくづく、私はサッカーでしか強気になれない。
だけど、止める気なんてない。
「それと……いつまでも鬼道鬼道って見苦しいぜ、影山!」
私が睨みつけるのは兄の動揺の元凶である影山だった。
「挙句の果てに、兄を引き込むためにデモーニオにこんな真似事させやがって……ふざけんのも大概にしろよ……」
デモーニオに鬼道有人のプレーを模倣させているのは、兄ちゃんの動揺を誘うためだろう。
兄だけじゃなくデモーニオすらも作品と呼ぶ目の前の男に湧き上がるのは純粋な怒りだ。
「テメェの目的なんざどうでもいい。何であれ、絶対に阻止してやる……!!」
影山に私が見えてるのかどうか知らないけれど、私は口角を歪めて宣言した(敵味方問わず短い悲鳴を上げられたけれど無視だ。選手にはフェアプレーをしてるんだし少しぐらい口が悪いことぐらい許して欲しい)
啖呵を切った後、ボールを足元に置いたまま振り返りまだ倒れている兄を見下ろした。
「で、兄ちゃんはどうする?影山の作品に戻る?それとも……」
「オレは人形でも、作品でもない!」
そう立ち上がる兄を見て私はボールを譲れば、兄ちゃんはいつものしっかりとした足取りでボールを持った。
「力を貸してくれ、明奈!佐久間!オレ達の手で影山を倒すんだっ!!」
「鬼道!」
「兄ちゃんっ」
兄が言う『オレ達』の中に、自分が入っていることが嬉しかった。
それから佐久間さんと頷き合って、兄の後ろについて走り出した。
兄を主軸とした佐久間さんとの連携は上手くハマり、チームK陣内へと攻め込んだ。
そして兄は佐久間さんへとボールを上げれば、それを見たネッロが追いかけてきた。
「止める!」
「バーカ!こっちだっ!」
「っ!?」
だけどそのボールは佐久間さんじゃなく、私に向けたものだ。
空中で軌道を変え、私の足元へと来たボールをセンタリング。そのボールを受け取ったのはアルデナさんだった。
「決める!」
「……フッ」
フィディオさんのオーバーヘッドシュートはパワーもコントロールも申し分ない威力のはずだった。
なのに、GKのインディゴは余裕のある表情を浮かべ、そのシュートを両手で軽々と止めた。
「なんなんだ、コイツらは……。これほどの実力を持つプレイヤーがイタリアのどこに隠れていたんだ……?」
……隠れていた?
即席の混合チームと言えど、世界代表の選手であるこちらと渡り合うチームKの実力に目を見開いて驚いているアルデナさん。私も引っかかる点があったけれど、試合中には聞けないなと私はカウンターを予想して走った。
インディゴは予想通り、そのままデモーニオにボールを回した。後ろから追いかけていると、私の存在に気づいたデモーニオが口角を上げる。
「お前たちのような二流品が総帥の作品だっただと?悪い冗談だ!」
「っ……!はぁぁっ!!」
スライディングをかけるものの、デモーニオはボールごとジャンプをして避けられた。
止めきれずにカウンター攻撃をされ、アルデナさんが慌てて指示を出すものの間に合わない。
「俺たちチームKこそ、総帥の理想!究極のチーム!!」
デモーニオはゴール前に止まり、そして……
「そしてこれが究極のシュートだ!」
腕を高く挙げた彼の手は人差し指と親指で丸の形を作っていて、その指を口に当て―指笛を吹いた。
その一連の動きは酷く見覚えがあるものだった。
「「っ!?」」
「あれは……!」
それは佐久間さんや兄も同じで、思わず動きを止めている間にも地面から現れたら黒く目だけが赤いペンギンがデモーニオの振り上げた右足へと噛みついた。
「 “皇帝ペンギンX” !!」
そんな赤黒いエネルギーを纏った必殺シュートはキャプテンの必殺技も間に合わずに彼ごとゴールへと突き刺さった。
チームKへ先制点が入った。
だけど、そんなことよりも私と兄ちゃんはその場から動けなかった。
「今の技は……」
「 “皇帝ペンギン1号” ……?」
「いや。威力はそれ以上だ……!それ以上なのに、あいつは……!」
エイリア石の力を借りて撃ったことのある禁断の技の名を出せば、佐久間さんが声を震わせて否定した。
……限界まで撃った人だ。その恐ろしさをより知っている。だからこそ目の前のデモーニオが信じられないのだろう。
そう、必殺技を放ったデモーニオ自身、痛がる様子もなく余裕綽々とした表情で腰に手を当てていた。
「フンッ。打つだけで消耗する未完成な技と一緒にするな」
そして、自らが究極だと言い放つデモーニオ。その揺るぎない自信と勝ちへの執念。
「私はこのチームで世界の頂点を極め、全てのサッカーを否定し、破壊する!」
チームKの実力に圧倒され、固まったまま冷や汗を流す私達を嘲笑うかのように影山が声を上げた。
「お前たちは決別した過去に、未来を破壊されるのだ!」
+++
あれからすぐに前半終了のホイッスルが鳴り、先制点を許したまま迎えたハーフタイム。
「明奈」
「……ありがとう、兄ちゃん」
私は兄から手渡されたタオルを受け取りながらついぼんやりと考える。
今のデモーニオに対して、私が感じたのは既視感だった。
影山の元にいるという共通点からか、真・帝国学園の時の自分自身と重なった。影山に縋るために周りに対して攻撃をしていた私。
デモーニオがあの時の私なら、今の自分はあの時の兄ちゃん、とでも言うべきだろうか。
……兄ちゃんも、こんな気持ちだった?
目の前に兄がいたことから、思わず聞いてしまいそうになった口を慌てて噤んだ。
「どうした?」
「っ何でもない」
そんな態度に訝しげな視線を送られるも、誤魔化すようにタオルを頭の上に被せて一度ベンチへと座らせてもらった。
真帝国の時、私は兄妹に嫌われたかった。だから嫌な態度で突き放した。今考えるとあまりにも単純だ。
私と違ってデモーニオのあの態度は演技ではなく、本心かもしれない。
それでも……デモーニオに二流品と蔑まれても、やっぱり私の中に占めるのは笑顔で手を伸ばしてくれた彼で…………嫌いになんかなれなかった。
目の前にいる大切な人へ、声が届かない事がひたすらに苦しかった。
「…………よしっ」
一度目を閉じて大きく深呼吸をした私は、頭に掛けていたタオルを外して立ち上がった。
それから目当ての選手を探し出し、声を掛ける。
「アルデナさん」
「フドウ?」
キャプテンと話していたオルフェウスのキャプテンであるアルデナさんは不思議そうにこちらを見た。質問をするという前置きを置いてから私は改めて疑問を口にした。
「FFI開催時、イタリア代表を決める選考試合には、彼ら……チームKの選手はいなかったんですか?」
「え?……いや、いなかったよ」
アルデナさんはちらりとチームKのベンチを一瞥してから、しっかりと頷いた。
「……なるほど。…………だから隠れていた、か」
「どうしたんだ?不動」
チームKの成り立ちの予想を何となく立てていると、そんな私達のやり取りをポカンと見ていたキャプテンに声を掛けられる。
「ちょっとチームKのプレーに違和感を感じたので……」
「あの、帝国学園にそっくりなフォーメーションのことか?」
「はい……試合には直接関係ないことかもしれませんけど……私は、デモーニオをそのままにしておきたくなくて……」
デモーニオのプレーは兄のプレーの上位互換だと影山は言っていた。
だけど、そもそも人のプレーを真似る事なんてそう易々とできるとは思えない。……普通なら。
「分かった。……だったらそっちの事は任せた!」
「はい」
影山のサッカーを許せず、それにより傷つく選手を見たくない。
真帝国学園の時から変わらないキャプテンは、私の意思を汲んで笑顔で頷いてくれて、私も応えるように頷いた。
私はチームKの選手への違和感の正体を探るために腕を組んで考え込んでいると。
「フドウは……」
「アルデナさん?」
アルデナさんに声を掛けられて顔を上げる。彼はぎゅっと眉を寄せて、どこか苦しそうに私を見ていた。
「友達だと言っていた彼にあんな酷いこと言われたのに、まだ好き、なのか?」
その表情と言葉はこちらを心配するものだった。
自分達の大事な試合なのに、食堂で一度話したぐらいの私の心配もしてくれるなんていい人なんだろうな、と改めて思いながら私は不意に右手を見て、軽く握る。
「私の気持ちは変わりません。振り向いてくれないのなら、振り向くまで名前を呼び続けるだけです」
かつて兄妹が私にそうしてくれたように。
「……そっか」
その意思を伝えれば、アルデナさんは目を大きく見開いてそれから静かに微笑んだ。食堂で見た笑みよりもなんだかぐっと大人びた笑みに見えて……少し不思議に思った。
私たちは人形でも、作品でもねぇんだよっ!!」
そのまま兄が足に乗せているボールに向かい、兄が倒れるのも構わず、スライディングを仕掛けて無理矢理ボールを奪った。
「ッ明奈……!?」
地面に倒れてしまった兄に名前を呼ばれるも無視して、ボールを足元へ。
それからチームKへの牽制のため、前髪を掻き上げて強く睨めば相手連中は面白いくらい狼狽えた。
今日ばかり自分の目つきが悪くて良かったと思った瞬間だ。
「ふ、不動……。お前、自分の兄に何を……」
「そうだよ!私は鬼道有人の妹だ!……だけど、私は妹として守られたくてこの場にいる訳じゃない!」
戸惑ったように顔をひきつらせている佐久間さんを一瞥して、私は兄を見下ろして胸に手を置いた。
「影山なんて関係ない!!私は、貴方と一緒に戦いたかったからここにいるんだよ!守られるんじゃなくて、肩を並べてサッカーをしたいんだよっ!!
貴方は私のお兄ちゃんなんでしょ!?私の考えてることぐらい分かってよ……!!」
ぶつけたのは、先日キャプテンに話した兄に伝えたいと思っていた本音だった。
本当はこんな理不尽を、感情任せに怒鳴り散らす予定なんかじゃなくて、もうちょっと話すことをまとめるつもりで…………つくづく、私はサッカーでしか強気になれない。
だけど、止める気なんてない。
「それと……いつまでも鬼道鬼道って見苦しいぜ、影山!」
私が睨みつけるのは兄の動揺の元凶である影山だった。
「挙句の果てに、兄を引き込むためにデモーニオにこんな真似事させやがって……ふざけんのも大概にしろよ……」
デモーニオに鬼道有人のプレーを模倣させているのは、兄ちゃんの動揺を誘うためだろう。
兄だけじゃなくデモーニオすらも作品と呼ぶ目の前の男に湧き上がるのは純粋な怒りだ。
「テメェの目的なんざどうでもいい。何であれ、絶対に阻止してやる……!!」
影山に私が見えてるのかどうか知らないけれど、私は口角を歪めて宣言した(敵味方問わず短い悲鳴を上げられたけれど無視だ。選手にはフェアプレーをしてるんだし少しぐらい口が悪いことぐらい許して欲しい)
啖呵を切った後、ボールを足元に置いたまま振り返りまだ倒れている兄を見下ろした。
「で、兄ちゃんはどうする?影山の作品に戻る?それとも……」
「オレは人形でも、作品でもない!」
そう立ち上がる兄を見て私はボールを譲れば、兄ちゃんはいつものしっかりとした足取りでボールを持った。
「力を貸してくれ、明奈!佐久間!オレ達の手で影山を倒すんだっ!!」
「鬼道!」
「兄ちゃんっ」
兄が言う『オレ達』の中に、自分が入っていることが嬉しかった。
それから佐久間さんと頷き合って、兄の後ろについて走り出した。
兄を主軸とした佐久間さんとの連携は上手くハマり、チームK陣内へと攻め込んだ。
そして兄は佐久間さんへとボールを上げれば、それを見たネッロが追いかけてきた。
「止める!」
「バーカ!こっちだっ!」
「っ!?」
だけどそのボールは佐久間さんじゃなく、私に向けたものだ。
空中で軌道を変え、私の足元へと来たボールをセンタリング。そのボールを受け取ったのはアルデナさんだった。
「決める!」
「……フッ」
フィディオさんのオーバーヘッドシュートはパワーもコントロールも申し分ない威力のはずだった。
なのに、GKのインディゴは余裕のある表情を浮かべ、そのシュートを両手で軽々と止めた。
「なんなんだ、コイツらは……。これほどの実力を持つプレイヤーがイタリアのどこに隠れていたんだ……?」
……隠れていた?
即席の混合チームと言えど、世界代表の選手であるこちらと渡り合うチームKの実力に目を見開いて驚いているアルデナさん。私も引っかかる点があったけれど、試合中には聞けないなと私はカウンターを予想して走った。
インディゴは予想通り、そのままデモーニオにボールを回した。後ろから追いかけていると、私の存在に気づいたデモーニオが口角を上げる。
「お前たちのような二流品が総帥の作品だっただと?悪い冗談だ!」
「っ……!はぁぁっ!!」
スライディングをかけるものの、デモーニオはボールごとジャンプをして避けられた。
止めきれずにカウンター攻撃をされ、アルデナさんが慌てて指示を出すものの間に合わない。
「俺たちチームKこそ、総帥の理想!究極のチーム!!」
デモーニオはゴール前に止まり、そして……
「そしてこれが究極のシュートだ!」
腕を高く挙げた彼の手は人差し指と親指で丸の形を作っていて、その指を口に当て―指笛を吹いた。
その一連の動きは酷く見覚えがあるものだった。
「「っ!?」」
「あれは……!」
それは佐久間さんや兄も同じで、思わず動きを止めている間にも地面から現れたら黒く目だけが赤いペンギンがデモーニオの振り上げた右足へと噛みついた。
「 “皇帝ペンギンX” !!」
そんな赤黒いエネルギーを纏った必殺シュートはキャプテンの必殺技も間に合わずに彼ごとゴールへと突き刺さった。
チームKへ先制点が入った。
だけど、そんなことよりも私と兄ちゃんはその場から動けなかった。
「今の技は……」
「 “皇帝ペンギン1号” ……?」
「いや。威力はそれ以上だ……!それ以上なのに、あいつは……!」
エイリア石の力を借りて撃ったことのある禁断の技の名を出せば、佐久間さんが声を震わせて否定した。
……限界まで撃った人だ。その恐ろしさをより知っている。だからこそ目の前のデモーニオが信じられないのだろう。
そう、必殺技を放ったデモーニオ自身、痛がる様子もなく余裕綽々とした表情で腰に手を当てていた。
「フンッ。打つだけで消耗する未完成な技と一緒にするな」
そして、自らが究極だと言い放つデモーニオ。その揺るぎない自信と勝ちへの執念。
「私はこのチームで世界の頂点を極め、全てのサッカーを否定し、破壊する!」
チームKの実力に圧倒され、固まったまま冷や汗を流す私達を嘲笑うかのように影山が声を上げた。
「お前たちは決別した過去に、未来を破壊されるのだ!」
+++
あれからすぐに前半終了のホイッスルが鳴り、先制点を許したまま迎えたハーフタイム。
「明奈」
「……ありがとう、兄ちゃん」
私は兄から手渡されたタオルを受け取りながらついぼんやりと考える。
今のデモーニオに対して、私が感じたのは既視感だった。
影山の元にいるという共通点からか、真・帝国学園の時の自分自身と重なった。影山に縋るために周りに対して攻撃をしていた私。
デモーニオがあの時の私なら、今の自分はあの時の兄ちゃん、とでも言うべきだろうか。
……兄ちゃんも、こんな気持ちだった?
目の前に兄がいたことから、思わず聞いてしまいそうになった口を慌てて噤んだ。
「どうした?」
「っ何でもない」
そんな態度に訝しげな視線を送られるも、誤魔化すようにタオルを頭の上に被せて一度ベンチへと座らせてもらった。
真帝国の時、私は兄妹に嫌われたかった。だから嫌な態度で突き放した。今考えるとあまりにも単純だ。
私と違ってデモーニオのあの態度は演技ではなく、本心かもしれない。
それでも……デモーニオに二流品と蔑まれても、やっぱり私の中に占めるのは笑顔で手を伸ばしてくれた彼で…………嫌いになんかなれなかった。
目の前にいる大切な人へ、声が届かない事がひたすらに苦しかった。
「…………よしっ」
一度目を閉じて大きく深呼吸をした私は、頭に掛けていたタオルを外して立ち上がった。
それから目当ての選手を探し出し、声を掛ける。
「アルデナさん」
「フドウ?」
キャプテンと話していたオルフェウスのキャプテンであるアルデナさんは不思議そうにこちらを見た。質問をするという前置きを置いてから私は改めて疑問を口にした。
「FFI開催時、イタリア代表を決める選考試合には、彼ら……チームKの選手はいなかったんですか?」
「え?……いや、いなかったよ」
アルデナさんはちらりとチームKのベンチを一瞥してから、しっかりと頷いた。
「……なるほど。…………だから隠れていた、か」
「どうしたんだ?不動」
チームKの成り立ちの予想を何となく立てていると、そんな私達のやり取りをポカンと見ていたキャプテンに声を掛けられる。
「ちょっとチームKのプレーに違和感を感じたので……」
「あの、帝国学園にそっくりなフォーメーションのことか?」
「はい……試合には直接関係ないことかもしれませんけど……私は、デモーニオをそのままにしておきたくなくて……」
デモーニオのプレーは兄のプレーの上位互換だと影山は言っていた。
だけど、そもそも人のプレーを真似る事なんてそう易々とできるとは思えない。……普通なら。
「分かった。……だったらそっちの事は任せた!」
「はい」
影山のサッカーを許せず、それにより傷つく選手を見たくない。
真帝国学園の時から変わらないキャプテンは、私の意思を汲んで笑顔で頷いてくれて、私も応えるように頷いた。
私はチームKの選手への違和感の正体を探るために腕を組んで考え込んでいると。
「フドウは……」
「アルデナさん?」
アルデナさんに声を掛けられて顔を上げる。彼はぎゅっと眉を寄せて、どこか苦しそうに私を見ていた。
「友達だと言っていた彼にあんな酷いこと言われたのに、まだ好き、なのか?」
その表情と言葉はこちらを心配するものだった。
自分達の大事な試合なのに、食堂で一度話したぐらいの私の心配もしてくれるなんていい人なんだろうな、と改めて思いながら私は不意に右手を見て、軽く握る。
「私の気持ちは変わりません。振り向いてくれないのなら、振り向くまで名前を呼び続けるだけです」
かつて兄妹が私にそうしてくれたように。
「……そっか」
その意思を伝えれば、アルデナさんは目を大きく見開いてそれから静かに微笑んだ。食堂で見た笑みよりもなんだかぐっと大人びた笑みに見えて……少し不思議に思った。