番外編
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タイムオーバー
36の前の話。ギャグ
選考試合当日、代表候補生達は一足先にイナズマジャパンのユニフォームに袖を通すことになった。
円堂が率いるAチームは青を基調としたファーストユニフォーム。鬼道率いるBチームは白を基調としたセカンドユニフォーム。
それらが試合前の準備場所となっていた体育館で、段ボールの中に用意されており、選手は各々日本代表のユニフォームに目を輝かせはしゃいだり、着心地を確かめていた。
「すいません、Mサイズのユニフォームってまだ残ってますか」
「ん?あるよー」
Bチームの集まっている方では、明奈が一度選んだユニフォームのサイズが合わずに尋ねれば、すぐ近くにいた緑川が返事をして、段ボールにある該当サイズのユニフォームを明奈に手渡す。
「ありがとうございます」
それを両手で受け取りながら軽く頭を下げる明奈に、緑川は内心驚きながらも笑顔で返事を返す。
緑川は明奈に関して鬼道と“兄弟”ということぐらいしか知らなかった。
ただ“兄弟”というわりには鬼道を明らかに避けているなと帝国学園で行った特訓で感じたが、詳しいことは分からずじまいだ。
なので、彼は周りの選手と同じように同じ日本代表を目指す選手として接していた。
「Mサイズって不動にはちょっと大きくない?大丈夫?」
「え?ああ……」
既にユニフォームを着ていた緑川は人懐っこい笑みを浮かべて、明奈に話しかけた。話しかけられると思っていなかったらしい明奈は目を丸くしてユニフォームを脱ごうとしてた手を一回止める。
「サラシをしてるので、窮屈にならないために一応大きいサイズにしようかと」
「サラシって……随分渋いな。まあでも備えあれば憂いなしって言うしね」
明奈そう答えながらすぐに動きを再開して、最初に着たユニフォームを脱いだ。
それからさっきより大きいサイズに着替えている際に、言葉通りに白い包帯でサラシをしている明奈を見た緑川はふと、違和感を感じて首を傾げる。
「サラシってその位置だったっけ?普通巻くならお腹周りとかじゃない?」
「腹……?そこに巻いても意味ないと思いますが……」
緑川の指摘したのはサラシの巻いている場所だった。
緑川は腹部のサラシを想像してたのに対して明奈は胸部に巻かれていた。
だが、明奈にとってはその指摘が予想外で不可解そうに眉を寄せながら、新しく着たユニフォームを捲ってサラシの位置を何となく確認していた。
「ん?」
何となく話が噛み合っていないな、と気づいた緑川が首を傾げた時だった。
ドサッ
緑川の耳に何かが落ちる音が聞こえ、振り返れば今体育館に着たらしい風丸が立っていた。風丸は自身のスポーツバックを落としても拾わずに固まっている様子に緑川は不思議に思いながらも挨拶しようと腕を上げた。
「おー、風丸。おは「わああああああ!!??」よう!?」
「えっ……!?」
緑川の目の前に突風が吹き、ハッと気づいた時には明奈が吹き飛ばされていた。
……というのは比喩であり、実際は風丸が明奈の前まで走って行き、手首を掴んでそのまま明奈を引っ張り、体育館の出入り口の扉を開けてすぐに明奈追い出したかと思えば、速攻で閉じる。
一切無駄のない素早い動きは、まさに疾風DFの名に恥じぬ動きだ。
「俺らが着替え終わるまで体育館に入るなよ!!!いいな!!!?」
「え……はぁ……?」
扉を押さえつけながら、凄まじい勢いで言いつける風丸と対照的に、扉越しの明奈は状況が分かっておらず生返事を返していた。
「風丸……?」
「おまっ、緑川……!いや、まぁ……知らないのも仕方ないけど……!」
状況が分かっていないのは緑川も同じだ。きょとんと首を傾げる緑川を見た風丸は怒鳴りつけようとしたのを、何とか止めて頭を抱える。
ますます緑川の頭の上にあるクエスチョンマークが増えそうなる前に風丸は苦い顔をしながら緑川に耳打ちをする。
「あいつ……不動は…………マネージャーの音無と双子で……鬼道の妹なんだ」
「……………………え?」
風丸の言葉を緑川が飲み込むまで、たっぷり時間をかけてそれから。
「えええええええ!!!???」
驚きの声を体育館いっぱいに響かせた。
まさか、マネージャーが双子だったなんて、鬼道にもう一人妹がいたなんて。いやなによりも……!!
「不動って女子だったの!!??」
そもそも不動が女子だと思っていなかった緑川はその事実が一番の衝撃だった。
どっからどう見ても女子だろ……と風丸は呟きながら頭に手を当ててため息をつく。
「え、いやだって女子にしては…………いったぁ!!」
胸が……と緑川が呟けば、風丸に無言で頭を叩かれた。
念のために言っておくが、緑川に下心はない。
ただ、自分の周りにいた女子に比べたら、明奈の胸囲は男子と大差なかった。だから性別に気づかなかったというのが、緑川の言い分だ。
失礼なことには変わりないので風丸にこうして叩かれたのだが。
「いたた…………あっ」
涙目で叩かれた頭を擦っている最中、ふと緑川は思い出す。
自分が不動を男子だと思い込んでいる故に、サラシ姿も見ていたことを。
だが実際は鬼道の妹の下着(?)姿を眺めていた、という事実に気づき、緑川はさっと顔を青くした。
「……オレ、鬼道に殺されるじゃん!!!助けて風丸~!!」
「いやだ。不動の性別見抜けなかったお前が悪い」
あの兄妹は明奈側が避けているだけで、鬼道は彼女を気に掛けていることはこの数日の練習でも知っている緑川は風丸に助けを求めるが、その返答はあまりにも冷たかった。
「サラシって上半身全体に巻いた方がいいのかな……」
締め付けられるの好きじゃないんだけどなぁ、とそんな体育館の騒ぎも露知らず明奈は独り言ちていた。