寂しがり少女
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FFIアジア予選決勝戦、当日。
キャラバンでの移動の途中で飛鷹さんと因縁があるらしい不良に道を阻まれ、残ろうとした飛鷹さんだったけれど、彼を慕う不良仲間の助太刀に入ったことで、イナズマジャパンは誰一人欠けることなく試合会場に辿り着く。
《さあ、いよいよ始まります!フットボールフロンティアインターナショナル、アジア予選決勝戦!日本代表『イナズマジャパン』が激突するのは、アジア最強と呼び声も高い韓国代表『ファイアードラゴン』!
世界への切符を手に入れるのは、果たしてどちらのチームか!?》
そしてフロンティアスタジアムの観客席は今まで一番の盛り上がりを見せていて、グラウンドへと入るなり沢山の歓声を浴びることになった。
「ほら、明奈さん。円陣組みますよ!」
「いいよ私は……ちょっ……!」
いつも通り、仲良く円陣を組んでいる彼らを待とうとしたものの虎丸くんに腕を引っ張られて断る暇もなく私も輪の中へと入れられた。
「みんな、いよいよ決勝戦だ!絶対に勝って、世界に行くぞ!」
円堂さんの呼びかけにおおー!と拳を突き上げて気合いを入れるイナズマジャパン。
「元気そうだね。それでこそ、全力で倒す価値があるというものだ」
「あ、アフロディ!?」
そこで赤いユニフォームの男子ー対戦相手である『ファイアードラゴン』の選手ーに話しかけられ、その人物の正体に円堂さんが声を上げる。
そこにいたのは、かつて世宇子中のキャプテンであるアフロディさんだった。
「やっと会えたね」
「長くて退屈したぜ。決勝戦までの道のりは」
「ガゼル!?」
「バーンまでもが、何故ここに!?」
また、彼の背後から登場した2人の選手にも周りは衝撃を与えたようだった。……アフロディさんはともかく後者の人は私は知らないけれど、基山さんや緑川さんが反応していることからエイリア学園の人なんだろう。
アフロディさんにガセル改め涼野風介、バーン改め南雲晴矢の3人は共に韓国代表選手としてイナズマジャパンと対峙することになる。
日本人なのになぜ?という周りの疑問を浮かべるも、すぐに当人が答えた。
アフロディさんは韓国と日本のハーフだったらしい、そんな彼直々にスカウトをしたのが、涼野さんと南雲さんらしい。
さらに、ファイアードラゴンのキャプテンは韓国で有名な司令塔であるチェ・チャンスウもいる。
「初めまして、イナズマジャパンのみなさん。いい試合にしましょう」
「ああ!」
アフロディさんに紹介され、一歩前に出て挨拶をするチャンスウ。一見すれば穏やかな笑みを浮かべているが、読めない雰囲気は噂通りだと納得する。
決勝となると、どの相手も一筋縄ではいかなさそうだなと思いながら息を吐いていると。
「久しぶりだね。明奈ちゃん」
さっきまで円堂さん達と話していたはずのアフロディさんが目の前にいて、笑みを浮かべていた。
「……どうも」
まさか、話しかけられるとは思ってなかったので一瞬ポカンとした後に軽く頭を下げる。
「ふふっ、忘れてると思った?」
「…………だいぶ前の事だったので」
顔に出ていたらしい。アフロディさんは口元に手を当ててくすくすと笑いながらの指摘に、私は目線を逸らしながら答える。
「今大会唯一の女子選手として君の名前を見た時は驚いたよ。サポートはしてくれたけれど、ボールを蹴っている姿は見たことなかったから」
サポートという言葉に咄嗟に私はアフロディさんの顔を見る。
だけど、彼はもう過去の事として乗り越えている事は一目瞭然で……円堂さん達のやり取りを見るに和解だってできているのだろう。
「自由になった君と戦える事を楽しみにしているよ」
「自由…………」
そう言って手を伸ばすアフロディさん。だけど、私はぼんやりとその手を眺めるだけで、何もできなかった。
今の私のどこが自由と言えるのだろうか。
「?……明奈ちゃん?」
「お前が不動明奈?」
小首を傾げるアフロディさんの横に並んだ赤髪の人に話しかけられた。南雲さん、だったかな。すぐ近くには白髪の涼野さんの姿もあって彼もこちらを見ている。
「そうですが…………」
「今大会唯一の女子選手って聞いたからどんな奴かと思えば、こーんな小さい奴かよ」
「……はぁ」
……初対面のはずなのに、ズバリとそんな事を言う南雲さん。その表情は暗に女子選手である私を認めていないというもので。
外野ではなく対戦相手にそういった態度を取られるのは始めて(そもそも基本がベンチだったので話しかけられる事がなかった)なので思わず生返事を返してしまった。
分かりやすい男女差別だけど……まぁBWで活躍もできていない自分の責任なので怒りはしない。
それだけイナズマジャパンとの全力の試合を楽しみにしてたんだろうと思った。
「南雲、あまり明奈ちゃんを甘く見ない方がいいよ」
そんな南雲さんをやんわりと窘めるアフロディさん。
「何ていったって、彼女はあの鬼道くんと「失礼します」
だけど、その続きを聞きたくなくて、私は声を上げて遮ってそれからさっさとその場から背を向けた。
鬼道有人と兄妹だから、なんて言いたかったのだろうかあの人は。
鬼道さんと血のつながりがあるからって優秀じゃないことなんて、嫌というほど思い知らされているんだ。
……アフロディさんもそれを知っているんだったら、私が兄にした事も分かっているはずなのに、何で私に普通に話しかけられるんだ。
つくづくあの人の考えている事は、分かりにくい。
男女の差を詰られても何も思わなかったのに、あの人の名前を出た瞬間に冷静でいられない自分に、ストレッチをしながらため息をついていると。
「明奈」
背後から名前を呼ばれて、私は立ち上がって顔を向ければ鬼道さんがこちらをじっと見ていた。
「……この試合は、みんなの力を合わさないと勝てない試合だと思っている。だからお前も」
静かに言葉を掛ける鬼道さんの表情は真面目なもので、私へと手を差し伸べてくれる。
「どうせ私は今日も出番無しなんだ、放っておけよ」
その手を取る、なんて到底できずに吐き出したのはそんな言葉。
「せいぜい頑張って下さいね。天才ゲームメーカー様」
「……ああ」
最後ににっこり笑いかけてそう伝えるも鬼道さんは怒る様子もなく、返事を返したかと思えばそのまま赤いマントを揺らして私から離れていった。
その様子を久遠監督が見ていた事に気づかずに、私は再びため息をついた。
キャラバンでの移動の途中で飛鷹さんと因縁があるらしい不良に道を阻まれ、残ろうとした飛鷹さんだったけれど、彼を慕う不良仲間の助太刀に入ったことで、イナズマジャパンは誰一人欠けることなく試合会場に辿り着く。
《さあ、いよいよ始まります!フットボールフロンティアインターナショナル、アジア予選決勝戦!日本代表『イナズマジャパン』が激突するのは、アジア最強と呼び声も高い韓国代表『ファイアードラゴン』!
世界への切符を手に入れるのは、果たしてどちらのチームか!?》
そしてフロンティアスタジアムの観客席は今まで一番の盛り上がりを見せていて、グラウンドへと入るなり沢山の歓声を浴びることになった。
「ほら、明奈さん。円陣組みますよ!」
「いいよ私は……ちょっ……!」
いつも通り、仲良く円陣を組んでいる彼らを待とうとしたものの虎丸くんに腕を引っ張られて断る暇もなく私も輪の中へと入れられた。
「みんな、いよいよ決勝戦だ!絶対に勝って、世界に行くぞ!」
円堂さんの呼びかけにおおー!と拳を突き上げて気合いを入れるイナズマジャパン。
「元気そうだね。それでこそ、全力で倒す価値があるというものだ」
「あ、アフロディ!?」
そこで赤いユニフォームの男子ー対戦相手である『ファイアードラゴン』の選手ーに話しかけられ、その人物の正体に円堂さんが声を上げる。
そこにいたのは、かつて世宇子中のキャプテンであるアフロディさんだった。
「やっと会えたね」
「長くて退屈したぜ。決勝戦までの道のりは」
「ガゼル!?」
「バーンまでもが、何故ここに!?」
また、彼の背後から登場した2人の選手にも周りは衝撃を与えたようだった。……アフロディさんはともかく後者の人は私は知らないけれど、基山さんや緑川さんが反応していることからエイリア学園の人なんだろう。
アフロディさんにガセル改め涼野風介、バーン改め南雲晴矢の3人は共に韓国代表選手としてイナズマジャパンと対峙することになる。
日本人なのになぜ?という周りの疑問を浮かべるも、すぐに当人が答えた。
アフロディさんは韓国と日本のハーフだったらしい、そんな彼直々にスカウトをしたのが、涼野さんと南雲さんらしい。
さらに、ファイアードラゴンのキャプテンは韓国で有名な司令塔であるチェ・チャンスウもいる。
「初めまして、イナズマジャパンのみなさん。いい試合にしましょう」
「ああ!」
アフロディさんに紹介され、一歩前に出て挨拶をするチャンスウ。一見すれば穏やかな笑みを浮かべているが、読めない雰囲気は噂通りだと納得する。
決勝となると、どの相手も一筋縄ではいかなさそうだなと思いながら息を吐いていると。
「久しぶりだね。明奈ちゃん」
さっきまで円堂さん達と話していたはずのアフロディさんが目の前にいて、笑みを浮かべていた。
「……どうも」
まさか、話しかけられるとは思ってなかったので一瞬ポカンとした後に軽く頭を下げる。
「ふふっ、忘れてると思った?」
「…………だいぶ前の事だったので」
顔に出ていたらしい。アフロディさんは口元に手を当ててくすくすと笑いながらの指摘に、私は目線を逸らしながら答える。
「今大会唯一の女子選手として君の名前を見た時は驚いたよ。サポートはしてくれたけれど、ボールを蹴っている姿は見たことなかったから」
サポートという言葉に咄嗟に私はアフロディさんの顔を見る。
だけど、彼はもう過去の事として乗り越えている事は一目瞭然で……円堂さん達のやり取りを見るに和解だってできているのだろう。
「自由になった君と戦える事を楽しみにしているよ」
「自由…………」
そう言って手を伸ばすアフロディさん。だけど、私はぼんやりとその手を眺めるだけで、何もできなかった。
今の私のどこが自由と言えるのだろうか。
「?……明奈ちゃん?」
「お前が不動明奈?」
小首を傾げるアフロディさんの横に並んだ赤髪の人に話しかけられた。南雲さん、だったかな。すぐ近くには白髪の涼野さんの姿もあって彼もこちらを見ている。
「そうですが…………」
「今大会唯一の女子選手って聞いたからどんな奴かと思えば、こーんな小さい奴かよ」
「……はぁ」
……初対面のはずなのに、ズバリとそんな事を言う南雲さん。その表情は暗に女子選手である私を認めていないというもので。
外野ではなく対戦相手にそういった態度を取られるのは始めて(そもそも基本がベンチだったので話しかけられる事がなかった)なので思わず生返事を返してしまった。
分かりやすい男女差別だけど……まぁBWで活躍もできていない自分の責任なので怒りはしない。
それだけイナズマジャパンとの全力の試合を楽しみにしてたんだろうと思った。
「南雲、あまり明奈ちゃんを甘く見ない方がいいよ」
そんな南雲さんをやんわりと窘めるアフロディさん。
「何ていったって、彼女はあの鬼道くんと「失礼します」
だけど、その続きを聞きたくなくて、私は声を上げて遮ってそれからさっさとその場から背を向けた。
鬼道有人と兄妹だから、なんて言いたかったのだろうかあの人は。
鬼道さんと血のつながりがあるからって優秀じゃないことなんて、嫌というほど思い知らされているんだ。
……アフロディさんもそれを知っているんだったら、私が兄にした事も分かっているはずなのに、何で私に普通に話しかけられるんだ。
つくづくあの人の考えている事は、分かりにくい。
男女の差を詰られても何も思わなかったのに、あの人の名前を出た瞬間に冷静でいられない自分に、ストレッチをしながらため息をついていると。
「明奈」
背後から名前を呼ばれて、私は立ち上がって顔を向ければ鬼道さんがこちらをじっと見ていた。
「……この試合は、みんなの力を合わさないと勝てない試合だと思っている。だからお前も」
静かに言葉を掛ける鬼道さんの表情は真面目なもので、私へと手を差し伸べてくれる。
「どうせ私は今日も出番無しなんだ、放っておけよ」
その手を取る、なんて到底できずに吐き出したのはそんな言葉。
「せいぜい頑張って下さいね。天才ゲームメーカー様」
「……ああ」
最後ににっこり笑いかけてそう伝えるも鬼道さんは怒る様子もなく、返事を返したかと思えばそのまま赤いマントを揺らして私から離れていった。
その様子を久遠監督が見ていた事に気づかずに、私は再びため息をついた。