寂しがり少女
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あれから私はいつの間にか眠ってしまい、目を覚ました時には空が少し明るくなっていて、部屋にあるデジタル時計を見れば朝の5時と表記されていた。
それから、夕食はともかく風呂にすら入っていないことに気づいて、私は今日の練習に遅れないように準備を始める。
シャワーを浴びて体を清潔にしたところで私は廊下にあったはずの拾い損ねた自分のスポーツバックが、見当たらないことに気づいた。
思い当たる節があるとすれば、と廊下の先へと視線を向けた。
「わっ」
音をたてないように、そっとリビングへと入るけれど思わず声が漏れた。スポーツバックは予想通り机の上に置かれていた。何なら隣に畳まれたタオルや着替えも一緒だ。
それも驚いたけれど、私が何より驚愕したのはソファーにいる人物だ。
ソファーには明王さんが座っていた。
腕を組みながら目を閉じている彼はピクリとも動かなくて……寝ているみたいだ。
明王さんが自室じゃなくてリビングで寝落ちなんて珍しい……なんて吞気に思ったもののすぐに考えを改めた。
もしかして、私が起きるのを待ってくれていた……?
「……っ」
募っていく罪悪感に小さく呻きながら私は、机に置かれたスポーツバックとタオル等を手に取って急いで自室へと戻った。
それから、私の布団を持ち出してリビングへと戻って明王さんにかけた。もう早朝だけど……何もしないのも気まずかったから。
それから、バックがあった場所に私はメモ用紙を一枚置いてリビングを出る。
メモは最初は「ごめんなさい」と書いたけれど、結局「洗濯物ありがとう」という内容に書き直した。
それから、最初に送り出されたよりもずっと早い時間に家を出て、私は雷門中へと向かった。食事の方はこれから朝食もあるしまぁいいかと放っておく。
雷門中についたのは何時もの起床時間より少し早い時間だった。
「おはよう、不動さん」
「……おはよう、ございます」
さっさと部屋に行こうと考えながら合宿所へと近づけば、玄関で掃き掃除している久遠さんと鉢合わせた。
挨拶を交わしながら朝食の時間まで個室にいようとしたものの、あのっ、と久遠さんに呼び止められた。
「……大丈夫?」
「え?」
先ほどまで笑顔だった久遠さんは心配そうに眉を下げて顔を覗き込んでいた。
「不動さん、何だか顔色悪いけれど……」
「…………移動の関係でいつもより早起きしたので眠いだけです。練習に支障はありませんよ」
…………正直、心当たりが多すぎてどれが原因か分からない。
なので一番無難な理由をつけながら私は軽く手を振る。
「そっか……だったら少しでも仮眠を取ったらどうかな?朝食の時間になったら起こしに行くよ」
「え?」
彼女の提案に私はつい声を上げてしまう。……普段は大人しいのに急に行動力がある人だなぁと思いながらも私は首を縦に触れなかった。
「……なんでそんな私に…………私がどんな人間がもうとっくに分かってるでしょう」
流石にもう彼らと兄妹だということはバレているだろう。何なら真帝国の事も耳に挟んでいる可能性だってある。
それがなくても、一人でいるような選手に話しかける久遠さんが分からなくて私はつい呟いた。
「……確かに、不動さんは一人でいることが多いね」
その言葉に彼女は口元に手を当てながら考えるように目を伏せていたけれど、だけど……、と顔を上げた時には笑みを浮かべた。
「悪い子じゃないと思ってるから、怖いと感じたことはないかな。質問に答えてくれたり、ドリンクを渡した時にもお礼を言ってくれるし……」
「……流石に、それぐらいはしますよ」
「悪い子だったらできないと思うよ」
「そうですか……」
別に特別なことはしてないと首を横に振るが、久遠さんは変わらず笑みを浮かべていた。
結局彼女の真意はよく分からないまま別れて私は個室へと帰った。
それから少しだけベットに寝転べば、本当に久遠さんが起こしに来てくれた。
……耳元で目覚まし時計を鳴らすというすごい方法だったけれど。
+++
朝食が終わった後、練習に気合いを入れる面々の前に、アジア予選決勝戦の相手が決まったと目金さんが駆け付けてきた。
韓国対サウジアラビアの準決勝試合。勝ったのは韓国だった。
流石は優勝候補と言うべきか。
「みんな!さっそく必殺技の特訓だ!」
「その必要はない」
決勝の相手が決まり鼓舞するように拳を上げる円堂さんに対して、現れた久遠監督はピシャリと言い放った。
「決勝戦までの三日間は、ここで練習してもらう」
それからグラウンドへ行けば、フィールドはいつの間にか泥が埋められていた。……朝に来た時からそうだったかもしれなかったけれど、見てなかったな。
これに対して、疑問を口にする鬼道さんや連携必殺技の特訓をするべきだと異を唱える風丸さん。
「お前たちは言われた通りにしてればいい」
それでも監督は必殺技の特訓は必要ないと言ったうえで、有無を言わせない雰囲気でそう告げた。
説明も何もない練習メニューに周りは躊躇っている様子だったけれど、最初に豪炎寺さんが足を踏み入れ、それから円堂さんと続けば続々とフィールドへと入っていった。
「お前は入らないのか?」
「…………響木さん」
そんな選手達をぼんやりと眺めていると、いつの間にか響木さんが久遠監督と並んで立っていた。
「こんな事しなくても、監督の意図ぐらい気づきます」
軽く頭を下げてから、私はすぐにフィールドへと視線を向けながら呟いた。
泥は足場も悪く、ボールを蹴るのでさえも一苦労している感じだった。その姿を見て決勝に必要な力を察することができる。
……なんて、昨晩義兄にあんな八つ当たりしたくせに、すぐにサッカー本位になれる自分の頭に呆れてため息をついた。
「……響木さん」
「どうした?」
少し間を開けて、それから響木さんに問いかけた。
「えっと……」
―サッカーを楽しむにはどうすればいいですか?
「……いや、何でもない、です」
なんて、人に聞いても仕方ないよなと軽く首を振って取り消して、久遠監督の前へと歩き出す。
「久遠監督、個人練習してきてもいいですか」
「……許可する」
監督が頷いたのを確認して、私は泥のフィールドから背を向けた。
泥のフィールドでの特訓後、男子達は真っ先に泥汚れを落としに風呂に入ったようで、夕食時の食堂では清潔なジャージで集まっていた。
「……隣いいか」
「…………」
「おい?」
私の隣に座ろうとした飛鷹さんもその一人だけれど…………、
「何で風呂に入ったのに、リーゼントのままなんですか」
石けんの匂いはするのに髪型は鳥のようなリーゼントの髪型を維持している飛鷹さんに思わず指摘するも、別にどうでもいいだろと呆れた顔で返された。
「……最近来ねぇけど、どうした」
それから食事をしながら、ポツリと尋ねる飛鷹さん。主語はなかったけれど言いたい事は何となく分かった。
私は、円堂さんに空き地へと行くように促した日からその場所には行っていなかった。強制的ではなかったにしろ、全く姿を現わさない事を不可解に思ったのだろう。
「別に。……飛鷹さんもそれなりに上手くなったので、コーチはお役御免かと思っただけです」
「もう、来ないのか」
「…………」
来てもいいものだろうか。
飛鷹さんの質問に私ははいもいいえも答えずに俯く。
そうは言っても、サッカーの楽しみを知れていて、技術だって着々と上達している飛鷹さんに私が教えれることなんて、ないのに(私がDFを経験していたらまた違うかもしれないけれど)
それに…………
「…………まぁ、時間ができたら行きますよ」
正直に言うのも憚られたので、私は曖昧に呟きながらフォークを置いて、手を合わせる。
「そうか…………あとな、不動」
「なんですか?」
「話しながらさらっとミニトマトを皿に移すのやめ「ごちそうさまでした」おい!」
どんな環境であっても嫌いなものって嫌いなんだよなぁと思いながら私はさっさとお盆を返却口へと返しに行った。
それから、夕食はともかく風呂にすら入っていないことに気づいて、私は今日の練習に遅れないように準備を始める。
シャワーを浴びて体を清潔にしたところで私は廊下にあったはずの拾い損ねた自分のスポーツバックが、見当たらないことに気づいた。
思い当たる節があるとすれば、と廊下の先へと視線を向けた。
「わっ」
音をたてないように、そっとリビングへと入るけれど思わず声が漏れた。スポーツバックは予想通り机の上に置かれていた。何なら隣に畳まれたタオルや着替えも一緒だ。
それも驚いたけれど、私が何より驚愕したのはソファーにいる人物だ。
ソファーには明王さんが座っていた。
腕を組みながら目を閉じている彼はピクリとも動かなくて……寝ているみたいだ。
明王さんが自室じゃなくてリビングで寝落ちなんて珍しい……なんて吞気に思ったもののすぐに考えを改めた。
もしかして、私が起きるのを待ってくれていた……?
「……っ」
募っていく罪悪感に小さく呻きながら私は、机に置かれたスポーツバックとタオル等を手に取って急いで自室へと戻った。
それから、私の布団を持ち出してリビングへと戻って明王さんにかけた。もう早朝だけど……何もしないのも気まずかったから。
それから、バックがあった場所に私はメモ用紙を一枚置いてリビングを出る。
メモは最初は「ごめんなさい」と書いたけれど、結局「洗濯物ありがとう」という内容に書き直した。
それから、最初に送り出されたよりもずっと早い時間に家を出て、私は雷門中へと向かった。食事の方はこれから朝食もあるしまぁいいかと放っておく。
雷門中についたのは何時もの起床時間より少し早い時間だった。
「おはよう、不動さん」
「……おはよう、ございます」
さっさと部屋に行こうと考えながら合宿所へと近づけば、玄関で掃き掃除している久遠さんと鉢合わせた。
挨拶を交わしながら朝食の時間まで個室にいようとしたものの、あのっ、と久遠さんに呼び止められた。
「……大丈夫?」
「え?」
先ほどまで笑顔だった久遠さんは心配そうに眉を下げて顔を覗き込んでいた。
「不動さん、何だか顔色悪いけれど……」
「…………移動の関係でいつもより早起きしたので眠いだけです。練習に支障はありませんよ」
…………正直、心当たりが多すぎてどれが原因か分からない。
なので一番無難な理由をつけながら私は軽く手を振る。
「そっか……だったら少しでも仮眠を取ったらどうかな?朝食の時間になったら起こしに行くよ」
「え?」
彼女の提案に私はつい声を上げてしまう。……普段は大人しいのに急に行動力がある人だなぁと思いながらも私は首を縦に触れなかった。
「……なんでそんな私に…………私がどんな人間がもうとっくに分かってるでしょう」
流石にもう彼らと兄妹だということはバレているだろう。何なら真帝国の事も耳に挟んでいる可能性だってある。
それがなくても、一人でいるような選手に話しかける久遠さんが分からなくて私はつい呟いた。
「……確かに、不動さんは一人でいることが多いね」
その言葉に彼女は口元に手を当てながら考えるように目を伏せていたけれど、だけど……、と顔を上げた時には笑みを浮かべた。
「悪い子じゃないと思ってるから、怖いと感じたことはないかな。質問に答えてくれたり、ドリンクを渡した時にもお礼を言ってくれるし……」
「……流石に、それぐらいはしますよ」
「悪い子だったらできないと思うよ」
「そうですか……」
別に特別なことはしてないと首を横に振るが、久遠さんは変わらず笑みを浮かべていた。
結局彼女の真意はよく分からないまま別れて私は個室へと帰った。
それから少しだけベットに寝転べば、本当に久遠さんが起こしに来てくれた。
……耳元で目覚まし時計を鳴らすというすごい方法だったけれど。
+++
朝食が終わった後、練習に気合いを入れる面々の前に、アジア予選決勝戦の相手が決まったと目金さんが駆け付けてきた。
韓国対サウジアラビアの準決勝試合。勝ったのは韓国だった。
流石は優勝候補と言うべきか。
「みんな!さっそく必殺技の特訓だ!」
「その必要はない」
決勝の相手が決まり鼓舞するように拳を上げる円堂さんに対して、現れた久遠監督はピシャリと言い放った。
「決勝戦までの三日間は、ここで練習してもらう」
それからグラウンドへ行けば、フィールドはいつの間にか泥が埋められていた。……朝に来た時からそうだったかもしれなかったけれど、見てなかったな。
これに対して、疑問を口にする鬼道さんや連携必殺技の特訓をするべきだと異を唱える風丸さん。
「お前たちは言われた通りにしてればいい」
それでも監督は必殺技の特訓は必要ないと言ったうえで、有無を言わせない雰囲気でそう告げた。
説明も何もない練習メニューに周りは躊躇っている様子だったけれど、最初に豪炎寺さんが足を踏み入れ、それから円堂さんと続けば続々とフィールドへと入っていった。
「お前は入らないのか?」
「…………響木さん」
そんな選手達をぼんやりと眺めていると、いつの間にか響木さんが久遠監督と並んで立っていた。
「こんな事しなくても、監督の意図ぐらい気づきます」
軽く頭を下げてから、私はすぐにフィールドへと視線を向けながら呟いた。
泥は足場も悪く、ボールを蹴るのでさえも一苦労している感じだった。その姿を見て決勝に必要な力を察することができる。
……なんて、昨晩義兄にあんな八つ当たりしたくせに、すぐにサッカー本位になれる自分の頭に呆れてため息をついた。
「……響木さん」
「どうした?」
少し間を開けて、それから響木さんに問いかけた。
「えっと……」
―サッカーを楽しむにはどうすればいいですか?
「……いや、何でもない、です」
なんて、人に聞いても仕方ないよなと軽く首を振って取り消して、久遠監督の前へと歩き出す。
「久遠監督、個人練習してきてもいいですか」
「……許可する」
監督が頷いたのを確認して、私は泥のフィールドから背を向けた。
泥のフィールドでの特訓後、男子達は真っ先に泥汚れを落としに風呂に入ったようで、夕食時の食堂では清潔なジャージで集まっていた。
「……隣いいか」
「…………」
「おい?」
私の隣に座ろうとした飛鷹さんもその一人だけれど…………、
「何で風呂に入ったのに、リーゼントのままなんですか」
石けんの匂いはするのに髪型は鳥のようなリーゼントの髪型を維持している飛鷹さんに思わず指摘するも、別にどうでもいいだろと呆れた顔で返された。
「……最近来ねぇけど、どうした」
それから食事をしながら、ポツリと尋ねる飛鷹さん。主語はなかったけれど言いたい事は何となく分かった。
私は、円堂さんに空き地へと行くように促した日からその場所には行っていなかった。強制的ではなかったにしろ、全く姿を現わさない事を不可解に思ったのだろう。
「別に。……飛鷹さんもそれなりに上手くなったので、コーチはお役御免かと思っただけです」
「もう、来ないのか」
「…………」
来てもいいものだろうか。
飛鷹さんの質問に私ははいもいいえも答えずに俯く。
そうは言っても、サッカーの楽しみを知れていて、技術だって着々と上達している飛鷹さんに私が教えれることなんて、ないのに(私がDFを経験していたらまた違うかもしれないけれど)
それに…………
「…………まぁ、時間ができたら行きますよ」
正直に言うのも憚られたので、私は曖昧に呟きながらフォークを置いて、手を合わせる。
「そうか…………あとな、不動」
「なんですか?」
「話しながらさらっとミニトマトを皿に移すのやめ「ごちそうさまでした」おい!」
どんな環境であっても嫌いなものって嫌いなんだよなぁと思いながら私はさっさとお盆を返却口へと返しに行った。