寂しがり少女
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お兄ちゃんは鬼道家の養子になったらしい。
その家は名家らしく、跡継ぎが欲しいという理由から引き取りが決まったその日に別れの挨拶もそこそこに施設を出ていってしまった。
それから意図的なのか、偶然なのか分からないけれど、とんとん拍子に私と春奈の引き取り先も決まり、私は不動家、春奈は音無家へ迎え入れられる事になった。
兄ちゃんとの突然の別れにも整理がつけられないまま、さらに私達もバラバラになる事実に春奈は完全に塞ぎ込んでしまいついに引き取り日が明日へと迫った今日。就寝時間前に私は春奈がいる部屋へと訪れた。
「春奈」
ベットの隅っこで膝を抱えている妹の名前を呼べば顔を上げたものの、すぐに目を逸らして俯いてしまう。
私は春奈のすぐ横に座って静かに見守ること数分、ぽつりと春奈が口を開いた。
「うそつき」
ぐすっと鼻の啜る音が聞こえる。
「やくそく、したのに、ずっと一緒にいようって……お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、うそついた……」
ずっと一緒にいよう。
それは両親が亡くなった日に兄妹三人で約束したことだった。
両親に置いて行かれ、捨てられたと泣く春奈を抱きしめながら兄が約束して、私も一緒に口にした約束。
小さく震えながら絞り出される涙声に泣いてるのは明白で、私まで視界がぼやけそうになるのを何とか耐えて春奈を抱きしめた。
「ごめんね、春奈」
ぎゅうと抱きしめる腕に力が入ってしまう。
「約束破ってごめん。でもね、お姉ちゃんもお兄ちゃんも春奈の事を大切に思っているし、忘れたりなんか絶対しないよ」
春奈だって本気で私達を責めたい訳ではない。今まで三人一緒が当たり前だったのに急にバラバラになるのは不安で怖いんだ。
私だって同じだ。だけど、お兄ちゃんがいない今、双子だけど春奈の姉としてできるだけ妹を不安を取り除いてあげたかった。
私は、ぎゅっと奥歯を噛みしめて何とか笑顔を作って妹を励ます。
「お手紙とか、お電話とかするし、小学生になったら会いに行くから待ってて」
ね?と優しく語りかければ春奈はゆるゆると顔を上げる。泣きすぎて真っ赤になった目に冷やしてあげないとなと思いながら頭を撫でていると、
「……お姉ちゃん、迷子になるから先生に一人で外に行っちゃダメって言われてたのに、お家にこれる?」
「むっ……」
痛い所を突かれた。同時に思い出すのは先生に頼まれ、何人かと一緒に近くのスーパーまでおつかいに行った時、気づけば周りに人がいなくて兄に見つけてもらうまで町中をさまよってしまった苦い記憶だ。
(余談だがその後おつかいメンバーに選ばれる事はなかったし、外に行く時には絶対先生か兄妹と手を繋ぐようになった)
「じゃあ……中学生!中学生になったら行く!この時には方向オンチも治ってる……はず!」
自分の将来に期待しながらそう声を上げる。中学生、なんてまだ幼稚園児の自分には未知の世界だけれど。
「ふふっ、そうかなー」
「!春奈、笑ったぁ!」
くすくすと笑ってくれたのが嬉しくて思わず抱きしめれば勢い余ってベットに転がる形となる。それから顔を合わせた私達はどちらともなく笑ってからぎゅうと抱きしめ合う。
「どんなに離れてても、お姉ちゃんは春奈が大好きだよ」
「……うん。はるなも、お姉ちゃん大好き」
笑顔でそう伝えれば、すっかり涙が引っ込んだ春奈が小さく笑って頷いた。
それからしばらく話していたけれど、泣き疲れたのか春奈は間もなくして寝息を立て始める。そんな妹に掛け布団をかけながら私も隣に寝転がった。
誰が悪いかなんて話ではない。むしろ施設にずっといるより新しい家族に引き取られた方が幸せだという事は分かっている。だけど、実の家族と離れ離れになる寂しさは簡単にはなくならないだろう。
「……音無家の人が優しい人でありますように」
私にできることと言えば、そう願いながら春奈の頭を撫でる事ぐらいだった。
その家は名家らしく、跡継ぎが欲しいという理由から引き取りが決まったその日に別れの挨拶もそこそこに施設を出ていってしまった。
それから意図的なのか、偶然なのか分からないけれど、とんとん拍子に私と春奈の引き取り先も決まり、私は不動家、春奈は音無家へ迎え入れられる事になった。
兄ちゃんとの突然の別れにも整理がつけられないまま、さらに私達もバラバラになる事実に春奈は完全に塞ぎ込んでしまいついに引き取り日が明日へと迫った今日。就寝時間前に私は春奈がいる部屋へと訪れた。
「春奈」
ベットの隅っこで膝を抱えている妹の名前を呼べば顔を上げたものの、すぐに目を逸らして俯いてしまう。
私は春奈のすぐ横に座って静かに見守ること数分、ぽつりと春奈が口を開いた。
「うそつき」
ぐすっと鼻の啜る音が聞こえる。
「やくそく、したのに、ずっと一緒にいようって……お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、うそついた……」
ずっと一緒にいよう。
それは両親が亡くなった日に兄妹三人で約束したことだった。
両親に置いて行かれ、捨てられたと泣く春奈を抱きしめながら兄が約束して、私も一緒に口にした約束。
小さく震えながら絞り出される涙声に泣いてるのは明白で、私まで視界がぼやけそうになるのを何とか耐えて春奈を抱きしめた。
「ごめんね、春奈」
ぎゅうと抱きしめる腕に力が入ってしまう。
「約束破ってごめん。でもね、お姉ちゃんもお兄ちゃんも春奈の事を大切に思っているし、忘れたりなんか絶対しないよ」
春奈だって本気で私達を責めたい訳ではない。今まで三人一緒が当たり前だったのに急にバラバラになるのは不安で怖いんだ。
私だって同じだ。だけど、お兄ちゃんがいない今、双子だけど春奈の姉としてできるだけ妹を不安を取り除いてあげたかった。
私は、ぎゅっと奥歯を噛みしめて何とか笑顔を作って妹を励ます。
「お手紙とか、お電話とかするし、小学生になったら会いに行くから待ってて」
ね?と優しく語りかければ春奈はゆるゆると顔を上げる。泣きすぎて真っ赤になった目に冷やしてあげないとなと思いながら頭を撫でていると、
「……お姉ちゃん、迷子になるから先生に一人で外に行っちゃダメって言われてたのに、お家にこれる?」
「むっ……」
痛い所を突かれた。同時に思い出すのは先生に頼まれ、何人かと一緒に近くのスーパーまでおつかいに行った時、気づけば周りに人がいなくて兄に見つけてもらうまで町中をさまよってしまった苦い記憶だ。
(余談だがその後おつかいメンバーに選ばれる事はなかったし、外に行く時には絶対先生か兄妹と手を繋ぐようになった)
「じゃあ……中学生!中学生になったら行く!この時には方向オンチも治ってる……はず!」
自分の将来に期待しながらそう声を上げる。中学生、なんてまだ幼稚園児の自分には未知の世界だけれど。
「ふふっ、そうかなー」
「!春奈、笑ったぁ!」
くすくすと笑ってくれたのが嬉しくて思わず抱きしめれば勢い余ってベットに転がる形となる。それから顔を合わせた私達はどちらともなく笑ってからぎゅうと抱きしめ合う。
「どんなに離れてても、お姉ちゃんは春奈が大好きだよ」
「……うん。はるなも、お姉ちゃん大好き」
笑顔でそう伝えれば、すっかり涙が引っ込んだ春奈が小さく笑って頷いた。
それからしばらく話していたけれど、泣き疲れたのか春奈は間もなくして寝息を立て始める。そんな妹に掛け布団をかけながら私も隣に寝転がった。
誰が悪いかなんて話ではない。むしろ施設にずっといるより新しい家族に引き取られた方が幸せだという事は分かっている。だけど、実の家族と離れ離れになる寂しさは簡単にはなくならないだろう。
「……音無家の人が優しい人でありますように」
私にできることと言えば、そう願いながら春奈の頭を撫でる事ぐらいだった。