寂しがり少女
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「貴女の家族……鬼道くんと音無さんもそう思っているから貴女を探しているんじゃないかしら」
ガタンッと反射的に私は立ち上がってしまった。そして瞳子さんを呆然と眺めるが、彼女は涼しい顔をしてコーヒーに口を付けている。
「探し、てる……?なんで、まさか……!」
「……座ったら教えるわ」
思い当たる節に詰め寄ろうとした矢先にそう言われて、はっと周りを見渡せばいきなり立ち上がった自分に周りの客や店員が訝しげに見ていて私は慌てて席へと戻った。
「鬼瓦刑事から貴女の事は聞いていたけれど、口外はしていないわ」
そのタイミングで瞳子さんから聞かされた話を察するに、雷門周りの大人には自分の生存は知られているんだろう。……だから瞳子さんとも会うことになったんだろうし。
だったら誰が……そこまで考えて、そもそもそんな考えが無駄だと察した。
「鬼道くんは聡い子だから、自分で気づいたのでしょうね」
瞳子さんは私が分かってるのに気づきながらそう口にした。
調査中、なんて誤魔化し彼に通じる訳ないのに……!入院初日の回らない頭で失念していたと舌打ちをしてももう遅い。
「なんで……」
私は呆然と呟きながら、机の上に置いた手をぎゅうと握った。
「なんでだよ……!」
握る手にさらに力が入るのが分かった。
これが、恨み言でも吐いてくれるのなら私は喜んで姿を現していただろう。だけど、瞳子さんとの会話から、そうではないことは分かってしまって、ますます分からなくなってしまう。
嫌いになってくれないのなら、せめて忘れてほしいから隠したのに……なんで、わざわざ…………。
「実際に聞いてみるしかないでしょうね」
私の疑問に答える人なんて今この場にいない、と瞳子さんに突きつけられてつい背筋が伸びる。そんな私を他所に瞳子さんは鞄を開けたかと思えば、一枚の白い封筒を取り出して差し出してきた。
その封筒には“響木正剛”と力強く書かれていた。
「響木さんに貴女に会いに行くと伝えた時に、その手紙を渡すように頼まれたの」
何を書いているか私も分からないわ、と手渡されるけれど今の気分じゃ開封して確かめようという気になれずに眺めることしかできない。
今の雷門の監督に会いに行くという口実で、兄妹と会うべき…………なんだろうか。
でも…………
「会ったところで…………」
また、大切な家族を傷つけるだけかもしれない。
そう思うと決断ができずに封筒を触ってごにょごにょと唇を動かすことしかできない。
「そうね……とりあえず」
ふと瞳子さんが別の方向を見ていることに気づいて、私もそちらに視線を向ける。
「お待たせいたしました。ミニバニラアイスとチョコレートパフェになります」
「ひとまず今はデザートを楽しみましょう」
同時に、店員が二つのサイズ違いのデザートを乗せてやってきた。瞳子さんが小さく笑って提案する声を聞きながら、すっかり忘れていたデザートをポカンと見上げる。
「バニラアイスから失礼します」
店員が先に私が頼んだアイスを机に置こうとしたので、咄嗟に受け取ろうと返事をしようとする。
「はい。パフェは彼女に」
「え……?」
「はいっ、こちらチョコレートパフェになります」
だけど何故かアイスは瞳子さんに持ってかれて、代わりに彼女が頼んだはずのパフェが私の目の前に鎮座していた。
「あの……」
ごゆっくり、と笑顔の店員が去ってから瞳子さんに声を掛けるものの、彼女は私にパフェ用の長いスプーンを差し出しながら微笑んだ。
「パフェ、食べたかったんでしょ」
子供が我慢しないの。と言う瞳子さんはまるで幼い子供に諭すような口調だった。
その姿が私に世話を焼いてくれる忍ちゃんに少しだけ重なって、何も言えなくなってしまう。
……確かに、写真に写るパフェ美味しそうだなぁと思った。けれど値段を見て奢ってもらう申し訳なさから諦めて一番安価なアイスにしたはずだ。
それを見てたのも一瞬だったはずなのに…………瞳子さんはそれに気づいてわざわざ自分が食べるという体で頼んでくれて、こうして交換してくれたんだ。
「すい……ありがとう、ございます」
謝るのは違う気がして、おずおずとお礼を言いながらスプーンを受け取れば瞳子さんは気にしないで、と小さく笑った。
それから、私はグラスから落とさないように恐る恐る一番上に乗っているチョコアイスを掬って、その隣にある生クリームを乗せて口に入れる。
「美味しい……!」
口の中に溢れる甘さ控えめのアイスと生クリームの組み合わせの美味しさに声が思わず漏れた。
それからしばらく無言で私は初めて食べるパフェの美味しさを噛み締めながらスプーンを動かしていた。
やっぱり店のプロが作ったから美味しいのかな。味は劣るかもしれないけれど、家でも作ってみたいな……でもこんな美味しいもの一人で食べるの勿体ないな……明王さんってこういう甘い物食べるかな。アイスは前に食べてるの見たけれど…………。
上手く作れたら真帝国のみんなに振る舞うのもいいかもしれない、なんて考えならがパフェの奥の柔らかいチョコ(チョコムースという名称らしい)とコーヒーゼリーと一緒に食べていると、ふと視線に気づいて、顔を上げる。
そこにはとっくにアイスを食べ終えた瞳子さんが、私を微笑ましそうに見ていた。
「……何ですか」
そんな柔らかい視線に自分がパフェではしゃいでいる一部始終を見られていることに気づいて、気恥ずかしさから少し声がぶっきらぼうになってしまった。
「ふふっ、ごめんなさい」
対する瞳子さんは謝罪をしてからただ……と微笑む。
「貴女とこうして喫茶店でお茶していることが鬼道くん達にバレたら怒られるかもしれないわね」
「……?……そんなことで怒ったりしないと思いますよ」
喫茶店なんて、私の環境が特殊だっただけで普通ならそんなに珍しい場所でもないだろう。
兄の方は……家柄的に少し分からないけれど、春奈が引っ張って連れて行ってそうだと思った。
彼が渋っても、きっと引っ張ってでも連れていくのだろうと想像できて自然と頬が緩む。
……兄妹を思い出して、こんな穏やかな気分になるのは久々だった。
パフェの効果、なのかな。
「あ、でもこんな美味しいパフェを独り占めするのはズルいかもしれませんね」
「羨まれるのはそっちじゃなくて…………いえ、私が言うべき事じゃないわね」
「?」
ガタンッと反射的に私は立ち上がってしまった。そして瞳子さんを呆然と眺めるが、彼女は涼しい顔をしてコーヒーに口を付けている。
「探し、てる……?なんで、まさか……!」
「……座ったら教えるわ」
思い当たる節に詰め寄ろうとした矢先にそう言われて、はっと周りを見渡せばいきなり立ち上がった自分に周りの客や店員が訝しげに見ていて私は慌てて席へと戻った。
「鬼瓦刑事から貴女の事は聞いていたけれど、口外はしていないわ」
そのタイミングで瞳子さんから聞かされた話を察するに、雷門周りの大人には自分の生存は知られているんだろう。……だから瞳子さんとも会うことになったんだろうし。
だったら誰が……そこまで考えて、そもそもそんな考えが無駄だと察した。
「鬼道くんは聡い子だから、自分で気づいたのでしょうね」
瞳子さんは私が分かってるのに気づきながらそう口にした。
調査中、なんて誤魔化し彼に通じる訳ないのに……!入院初日の回らない頭で失念していたと舌打ちをしてももう遅い。
「なんで……」
私は呆然と呟きながら、机の上に置いた手をぎゅうと握った。
「なんでだよ……!」
握る手にさらに力が入るのが分かった。
これが、恨み言でも吐いてくれるのなら私は喜んで姿を現していただろう。だけど、瞳子さんとの会話から、そうではないことは分かってしまって、ますます分からなくなってしまう。
嫌いになってくれないのなら、せめて忘れてほしいから隠したのに……なんで、わざわざ…………。
「実際に聞いてみるしかないでしょうね」
私の疑問に答える人なんて今この場にいない、と瞳子さんに突きつけられてつい背筋が伸びる。そんな私を他所に瞳子さんは鞄を開けたかと思えば、一枚の白い封筒を取り出して差し出してきた。
その封筒には“響木正剛”と力強く書かれていた。
「響木さんに貴女に会いに行くと伝えた時に、その手紙を渡すように頼まれたの」
何を書いているか私も分からないわ、と手渡されるけれど今の気分じゃ開封して確かめようという気になれずに眺めることしかできない。
今の雷門の監督に会いに行くという口実で、兄妹と会うべき…………なんだろうか。
でも…………
「会ったところで…………」
また、大切な家族を傷つけるだけかもしれない。
そう思うと決断ができずに封筒を触ってごにょごにょと唇を動かすことしかできない。
「そうね……とりあえず」
ふと瞳子さんが別の方向を見ていることに気づいて、私もそちらに視線を向ける。
「お待たせいたしました。ミニバニラアイスとチョコレートパフェになります」
「ひとまず今はデザートを楽しみましょう」
同時に、店員が二つのサイズ違いのデザートを乗せてやってきた。瞳子さんが小さく笑って提案する声を聞きながら、すっかり忘れていたデザートをポカンと見上げる。
「バニラアイスから失礼します」
店員が先に私が頼んだアイスを机に置こうとしたので、咄嗟に受け取ろうと返事をしようとする。
「はい。パフェは彼女に」
「え……?」
「はいっ、こちらチョコレートパフェになります」
だけど何故かアイスは瞳子さんに持ってかれて、代わりに彼女が頼んだはずのパフェが私の目の前に鎮座していた。
「あの……」
ごゆっくり、と笑顔の店員が去ってから瞳子さんに声を掛けるものの、彼女は私にパフェ用の長いスプーンを差し出しながら微笑んだ。
「パフェ、食べたかったんでしょ」
子供が我慢しないの。と言う瞳子さんはまるで幼い子供に諭すような口調だった。
その姿が私に世話を焼いてくれる忍ちゃんに少しだけ重なって、何も言えなくなってしまう。
……確かに、写真に写るパフェ美味しそうだなぁと思った。けれど値段を見て奢ってもらう申し訳なさから諦めて一番安価なアイスにしたはずだ。
それを見てたのも一瞬だったはずなのに…………瞳子さんはそれに気づいてわざわざ自分が食べるという体で頼んでくれて、こうして交換してくれたんだ。
「すい……ありがとう、ございます」
謝るのは違う気がして、おずおずとお礼を言いながらスプーンを受け取れば瞳子さんは気にしないで、と小さく笑った。
それから、私はグラスから落とさないように恐る恐る一番上に乗っているチョコアイスを掬って、その隣にある生クリームを乗せて口に入れる。
「美味しい……!」
口の中に溢れる甘さ控えめのアイスと生クリームの組み合わせの美味しさに声が思わず漏れた。
それからしばらく無言で私は初めて食べるパフェの美味しさを噛み締めながらスプーンを動かしていた。
やっぱり店のプロが作ったから美味しいのかな。味は劣るかもしれないけれど、家でも作ってみたいな……でもこんな美味しいもの一人で食べるの勿体ないな……明王さんってこういう甘い物食べるかな。アイスは前に食べてるの見たけれど…………。
上手く作れたら真帝国のみんなに振る舞うのもいいかもしれない、なんて考えならがパフェの奥の柔らかいチョコ(チョコムースという名称らしい)とコーヒーゼリーと一緒に食べていると、ふと視線に気づいて、顔を上げる。
そこにはとっくにアイスを食べ終えた瞳子さんが、私を微笑ましそうに見ていた。
「……何ですか」
そんな柔らかい視線に自分がパフェではしゃいでいる一部始終を見られていることに気づいて、気恥ずかしさから少し声がぶっきらぼうになってしまった。
「ふふっ、ごめんなさい」
対する瞳子さんは謝罪をしてからただ……と微笑む。
「貴女とこうして喫茶店でお茶していることが鬼道くん達にバレたら怒られるかもしれないわね」
「……?……そんなことで怒ったりしないと思いますよ」
喫茶店なんて、私の環境が特殊だっただけで普通ならそんなに珍しい場所でもないだろう。
兄の方は……家柄的に少し分からないけれど、春奈が引っ張って連れて行ってそうだと思った。
彼が渋っても、きっと引っ張ってでも連れていくのだろうと想像できて自然と頬が緩む。
……兄妹を思い出して、こんな穏やかな気分になるのは久々だった。
パフェの効果、なのかな。
「あ、でもこんな美味しいパフェを独り占めするのはズルいかもしれませんね」
「羨まれるのはそっちじゃなくて…………いえ、私が言うべき事じゃないわね」
「?」