寂しがり少女
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私が稲妻町の最寄り駅だと思って降りた駅はどちらかというと帝国学園の最寄り駅だったらしい。
だから源田先輩に会えたんだろうなと電車に揺られながら、駅名が似ていたから仕方ない、電車にも慣れてなさそうだったし、と慌ててフォローをしてくれた先輩に苦笑いしか返せなかった。
それから今度こそ最寄り駅に着いて、雷雷軒があるらしい商店街まで案内してもらうことになった。
……私が迷わないように、手を繋いで。
「……方向音痴ってどうやったら治るんですかね」
「あれって治るものなのか?」
GKらしいゴツゴツとした大きな手は私の手をすっぽりと収まっている様子を見て、ますます子供っぽいなとは思うけれど、完全な善意でしてくれているので文句は言えない。
それから他愛のない話をしながら(サッカー部関連の話は避けてくれていたのは善意だろう)歩くこと数十分後に、大通りに出れば商店街が見えた。
「あの、もう一人で大丈夫だと思います」
「ん?そうか?」
ここまで行けば最悪歩き回れば見つかるはずだと申し出れば、まぁすぐ見える場所にあるだろうし大丈夫か……と呟いていた源田先輩は分かった、と笑みを浮かべて私の手を離した。
「……ありがとうございました。色々時間をくれて」
「大袈裟だ。俺もたまたま稲妻町に用事があったからついでだ」
私は公園での会話と道案内を含めて頭を下げれば、そう笑ってくれた。……きっと私に気を遣わせないための嘘なんだろうな。
「今度一緒にサッカーできたらいいな」
別れ際、笑顔でそう言ってくれた源田先輩に私は曖昧に笑うことしかできなかった。
賑わっている商店街を店の看板を確認しながら歩いていると『雷雷軒』と書かれていた看板(どうやらそこは中華料理の店らしい)が見えて足を止めた。
それから手紙の文字を確認して、それが目的地の店だと確かめてやっと辿り着いたと一人息をついた。
それから早速店に入ろうとを開けようと引き戸に手をかけるが、鍵がかかっているのかガチャンと音が鳴るだけで開かない。
「……はぁ?」
思わず低い声が出る。
呼ばれたから来たのに不在なんてことある?
定休日があるなら記載しとけよ、私がもう一度ここまで辿り着ける保障なんてないのに……!!
このまま帰るなんて、案内してくれた源田先輩にも申し訳なくて私はどこか裏口的なものがないか店の周りを見回して探していると、
「うちに何か用か」
「っ!?」
背後から低い声が聞こえて、反射的に振り返れば紫のバンダナを巻いてサングラスをしている大柄の男性がいた。
私はその人が過去の雷門の試合データで見た雷門の監督である響木正剛さんだとすぐに気がつく。
「ラーメンでも食いに来たか?」
ただし響木さんの方は眉を寄せていて、店の周りをうろうろとしていた自分を不審そうに見ていた。
「いやちがっ、えと、あの……瞳子さんに、手紙を渡されて……」
私は慌てて瞳子さんから貰った手紙を出すも、どう説明するべきか迷っていると響木さんはニヤリと口端を上げた。
「不動明奈、だな」
「は?」
「待ってたぞ」
そんな反応に、最初から私だと分かったうえで揶揄われたんだと理解した私は思わず舌打ちをしてしまうが、響木さんは笑うだけですんなりと流される。
「ついてこい」
「えっ……ちょっと」
それからすぐに背中を向けて歩き出して、置いてきぼりをくらいそうになって私は慌てて追いかけた。
響木さんについてきて辿り着いたのは商店街の外れにある空き地だった。周りは高いビルが立ち並んでいて少し暗いそこには先約がいた。
「響木さん。お疲れ様です」
「……わぁ」
そこにいたのは紫色のリーゼントが特徴的長身の男子で、漫画でしか見たことのない髪型に声を上げながらその男子が呼んだ響木さんを見れば慣れた調子で話しかけていた。
男子の片足はサッカーボールが置かれていて、個人練習でもしていたんだろう。
「……そいつは?」
響木さんと会話を交わしていた後に、男子の目線が私に向けられる。鋭い目つきは警戒心を隠そうとしないもので、居心地の悪さから思わず帽子を深く被って目線を逸らす。
「お前にサッカーを教えてくれる奴だ」
「「はぁ!?」」
何てことのないように宣う響木さんに思わず声を上げれば目の前の男子ともぴったり重なった。
「あのっ、私はサッカーをするなんて一言も……」
私が響木さんの元へと訪ねたのは、話をするためであって、サッカーをするつもりなんてなかった。
……そもそもボールを蹴ったのだって名前も知らない女の子に付き合ってあげた時ぐらいで、同世代の選手に今更何を――
「……こんなチビにッスか」
「…………」
ちらりと私を一瞥した男子の不満を隠そうとしないその言葉に気づけば体が動いていた。
「っ!?」
私はスライディングで無防備な男子から簡単にボールを奪って、自分の足元へとボールを収める。
「あはっ」
いきなりボールを取られてバランスを崩した男子はどさっと尻餅をついて、視線がずっと低くなったその人を見下ろしながら私は笑った。
「こんなチビに、負ける気分はどう?」
「ってめぇ……」
啞然としていたその人は、私の笑い声にハッとしたかと思えばすぐに立ち上がってこちらを睨みつけてくる。
どうボールを取ろうとするのか観察しようとするが、相手はいつまでたっても動かない……というより、どう動けばいいか分かっていないという感じがする。
「……おいおい」
思わず響木さんの方を見ればこくりと頷かれて、私の予想が当たった事を理解して思わず額に手を当てた。
この人、サッカー初心者だ。
「……飛鷹さん。喧嘩やってた?」
「……なんで分かんだよ」
「蹴る時の癖があるなぁって」
あと見た目が如何にもだし。と心の中で付けたしながら私はリフティングをしながら彼の現在の能力を見ていた。
「さっきは悪かった。お前さえ良ければ俺にサッカーを教えてほしい」
あれから響木さんは店の仕込みがあるとかでさっさと去って行ってしまい、その男子は根は真面目なのか、直々に頭を下げられてしまえば拒否はできずに互いに自己紹介をすることになった。
男子の名前は飛鷹征矢さん。
響木さんに見込まれてサッカーを始めて数週間とのことだ。
ちなみに私が自己紹介するまで男子だと思われていたようで、睨んだ事を詫びられたし何なら物理的に距離を置かれた後になぜか櫛で髪を梳いていた。……女子が嫌いなのか。まあベタベタ触られるよりはマシか。
それから本題であるサッカー指導に早速入り、飛鷹さんにボールを蹴らしてみるが……正直、前に会った女の子の方が上手かったなというのが感想だ。
「おっと」
私は転がってきたボールを見て、道路に出ないように足で受け止める。
「……わりぃ」
ちらりと飛鷹さんを見れば、上手くボールを蹴れなかった苛立ちからか、拳を握り込んで俯いてた。
力が入りすぎている姿にどう声を掛けるべきか少し悩んでから気にしないでください、と声を掛けた。
「一回のミスでそんなイライラしてたらストレスでぶっ倒れますよ」
こんな初歩的な指導なんてした事がないので、上手くアドバイスできているか分からないけれど……まぁ、何事も形からだ。
「今日はここまでだ」
「えっ」
響木さんのその声にハッと周りの景色がいつの間にか橙色に染まっていて、思わず声を上げてしまった。
再び響木さんと話している飛鷹さんを横目に私は端に避けていた帽子を手に取って土を払っていると、
「おい」
いつの間にか自分の荷物をまとめていた飛鷹さんが何かを投げつけてきて受け止めた。
「汗拭かないと、風邪ひくぞ」
それは真っ白なスポーツタオルだった。意識してしまえば流れる汗を無視できずに、私はとりあえず首筋の汗を拭きとった。
「……洗って返します」
「おう。……またな」
なんて私にはぶっきらぼうに告げて、響木さんにはしっかり腰から頭を下げて挨拶をしてから飛鷹さんは空き地を出て行った。
「……はぁ」
私は飛鷹さんから借りたタオル片手にその場に座り込んで大きく息を吸う。……こんなに体を動かしたのは久々だった。
ジャリ、と土を踏む音に視線を上げれば響木さんがすぐ隣に立っていて私の様子を見ていた。
「飛鷹、どうだった」
「……向上心はありまくりだし大丈夫だと思いますよ。……目標ががどこまでかによりますけれど」
「とりあえず世界レベル、だな」
「……響木さんも冗談言うんですね」
私はタオルを首にかけながら響木さんの突拍子のない言葉に笑った。それからその冗談に付き合ってやろうと提案をしてみた。
「……初心者を世界レベルにしたいんだったら私よりちゃんと指導ができて、サッカーの楽しさを教えられる人に頼んだ方がいいんじゃないですか」
それこそ雷門サッカー部の面々とか、さ。
「わっ!?」
そう思っていると不意に響木さんの大きな手が私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてきた。
「ちょっ、なにっ……」
「また飛鷹にサッカー教えてやってくれ。お前もいいリハビリになるだろう」
私の言葉に対して何も返事もなく、わしゃわしゃわしゃと力強く撫でながらそんな事を言う。
リハビリって……これからもサッカーをするかどうかも分からないのに。
そう思いながらも、どこか楽しそうな様子の響木さんの言葉になぜだか私は何も言い返せなかった。
おまけ:【自宅にて】
「明王さん」
「なんだよ、ちょっと話すだけって言いながら夕方7時まで帰らなかった不良妹チャン」
「ゴメンて。それより今日さ、…………生まれて初めてナンパされた」
「……明奈。つくならもうちょっと面白い嘘つけよ……っでぇな!無言で肩殴んな!!」
「だってムカつくリアクションとられたから」
だから源田先輩に会えたんだろうなと電車に揺られながら、駅名が似ていたから仕方ない、電車にも慣れてなさそうだったし、と慌ててフォローをしてくれた先輩に苦笑いしか返せなかった。
それから今度こそ最寄り駅に着いて、雷雷軒があるらしい商店街まで案内してもらうことになった。
……私が迷わないように、手を繋いで。
「……方向音痴ってどうやったら治るんですかね」
「あれって治るものなのか?」
GKらしいゴツゴツとした大きな手は私の手をすっぽりと収まっている様子を見て、ますます子供っぽいなとは思うけれど、完全な善意でしてくれているので文句は言えない。
それから他愛のない話をしながら(サッカー部関連の話は避けてくれていたのは善意だろう)歩くこと数十分後に、大通りに出れば商店街が見えた。
「あの、もう一人で大丈夫だと思います」
「ん?そうか?」
ここまで行けば最悪歩き回れば見つかるはずだと申し出れば、まぁすぐ見える場所にあるだろうし大丈夫か……と呟いていた源田先輩は分かった、と笑みを浮かべて私の手を離した。
「……ありがとうございました。色々時間をくれて」
「大袈裟だ。俺もたまたま稲妻町に用事があったからついでだ」
私は公園での会話と道案内を含めて頭を下げれば、そう笑ってくれた。……きっと私に気を遣わせないための嘘なんだろうな。
「今度一緒にサッカーできたらいいな」
別れ際、笑顔でそう言ってくれた源田先輩に私は曖昧に笑うことしかできなかった。
賑わっている商店街を店の看板を確認しながら歩いていると『雷雷軒』と書かれていた看板(どうやらそこは中華料理の店らしい)が見えて足を止めた。
それから手紙の文字を確認して、それが目的地の店だと確かめてやっと辿り着いたと一人息をついた。
それから早速店に入ろうとを開けようと引き戸に手をかけるが、鍵がかかっているのかガチャンと音が鳴るだけで開かない。
「……はぁ?」
思わず低い声が出る。
呼ばれたから来たのに不在なんてことある?
定休日があるなら記載しとけよ、私がもう一度ここまで辿り着ける保障なんてないのに……!!
このまま帰るなんて、案内してくれた源田先輩にも申し訳なくて私はどこか裏口的なものがないか店の周りを見回して探していると、
「うちに何か用か」
「っ!?」
背後から低い声が聞こえて、反射的に振り返れば紫のバンダナを巻いてサングラスをしている大柄の男性がいた。
私はその人が過去の雷門の試合データで見た雷門の監督である響木正剛さんだとすぐに気がつく。
「ラーメンでも食いに来たか?」
ただし響木さんの方は眉を寄せていて、店の周りをうろうろとしていた自分を不審そうに見ていた。
「いやちがっ、えと、あの……瞳子さんに、手紙を渡されて……」
私は慌てて瞳子さんから貰った手紙を出すも、どう説明するべきか迷っていると響木さんはニヤリと口端を上げた。
「不動明奈、だな」
「は?」
「待ってたぞ」
そんな反応に、最初から私だと分かったうえで揶揄われたんだと理解した私は思わず舌打ちをしてしまうが、響木さんは笑うだけですんなりと流される。
「ついてこい」
「えっ……ちょっと」
それからすぐに背中を向けて歩き出して、置いてきぼりをくらいそうになって私は慌てて追いかけた。
響木さんについてきて辿り着いたのは商店街の外れにある空き地だった。周りは高いビルが立ち並んでいて少し暗いそこには先約がいた。
「響木さん。お疲れ様です」
「……わぁ」
そこにいたのは紫色のリーゼントが特徴的長身の男子で、漫画でしか見たことのない髪型に声を上げながらその男子が呼んだ響木さんを見れば慣れた調子で話しかけていた。
男子の片足はサッカーボールが置かれていて、個人練習でもしていたんだろう。
「……そいつは?」
響木さんと会話を交わしていた後に、男子の目線が私に向けられる。鋭い目つきは警戒心を隠そうとしないもので、居心地の悪さから思わず帽子を深く被って目線を逸らす。
「お前にサッカーを教えてくれる奴だ」
「「はぁ!?」」
何てことのないように宣う響木さんに思わず声を上げれば目の前の男子ともぴったり重なった。
「あのっ、私はサッカーをするなんて一言も……」
私が響木さんの元へと訪ねたのは、話をするためであって、サッカーをするつもりなんてなかった。
……そもそもボールを蹴ったのだって名前も知らない女の子に付き合ってあげた時ぐらいで、同世代の選手に今更何を――
「……こんなチビにッスか」
「…………」
ちらりと私を一瞥した男子の不満を隠そうとしないその言葉に気づけば体が動いていた。
「っ!?」
私はスライディングで無防備な男子から簡単にボールを奪って、自分の足元へとボールを収める。
「あはっ」
いきなりボールを取られてバランスを崩した男子はどさっと尻餅をついて、視線がずっと低くなったその人を見下ろしながら私は笑った。
「こんなチビに、負ける気分はどう?」
「ってめぇ……」
啞然としていたその人は、私の笑い声にハッとしたかと思えばすぐに立ち上がってこちらを睨みつけてくる。
どうボールを取ろうとするのか観察しようとするが、相手はいつまでたっても動かない……というより、どう動けばいいか分かっていないという感じがする。
「……おいおい」
思わず響木さんの方を見ればこくりと頷かれて、私の予想が当たった事を理解して思わず額に手を当てた。
この人、サッカー初心者だ。
「……飛鷹さん。喧嘩やってた?」
「……なんで分かんだよ」
「蹴る時の癖があるなぁって」
あと見た目が如何にもだし。と心の中で付けたしながら私はリフティングをしながら彼の現在の能力を見ていた。
「さっきは悪かった。お前さえ良ければ俺にサッカーを教えてほしい」
あれから響木さんは店の仕込みがあるとかでさっさと去って行ってしまい、その男子は根は真面目なのか、直々に頭を下げられてしまえば拒否はできずに互いに自己紹介をすることになった。
男子の名前は飛鷹征矢さん。
響木さんに見込まれてサッカーを始めて数週間とのことだ。
ちなみに私が自己紹介するまで男子だと思われていたようで、睨んだ事を詫びられたし何なら物理的に距離を置かれた後になぜか櫛で髪を梳いていた。……女子が嫌いなのか。まあベタベタ触られるよりはマシか。
それから本題であるサッカー指導に早速入り、飛鷹さんにボールを蹴らしてみるが……正直、前に会った女の子の方が上手かったなというのが感想だ。
「おっと」
私は転がってきたボールを見て、道路に出ないように足で受け止める。
「……わりぃ」
ちらりと飛鷹さんを見れば、上手くボールを蹴れなかった苛立ちからか、拳を握り込んで俯いてた。
力が入りすぎている姿にどう声を掛けるべきか少し悩んでから気にしないでください、と声を掛けた。
「一回のミスでそんなイライラしてたらストレスでぶっ倒れますよ」
こんな初歩的な指導なんてした事がないので、上手くアドバイスできているか分からないけれど……まぁ、何事も形からだ。
「今日はここまでだ」
「えっ」
響木さんのその声にハッと周りの景色がいつの間にか橙色に染まっていて、思わず声を上げてしまった。
再び響木さんと話している飛鷹さんを横目に私は端に避けていた帽子を手に取って土を払っていると、
「おい」
いつの間にか自分の荷物をまとめていた飛鷹さんが何かを投げつけてきて受け止めた。
「汗拭かないと、風邪ひくぞ」
それは真っ白なスポーツタオルだった。意識してしまえば流れる汗を無視できずに、私はとりあえず首筋の汗を拭きとった。
「……洗って返します」
「おう。……またな」
なんて私にはぶっきらぼうに告げて、響木さんにはしっかり腰から頭を下げて挨拶をしてから飛鷹さんは空き地を出て行った。
「……はぁ」
私は飛鷹さんから借りたタオル片手にその場に座り込んで大きく息を吸う。……こんなに体を動かしたのは久々だった。
ジャリ、と土を踏む音に視線を上げれば響木さんがすぐ隣に立っていて私の様子を見ていた。
「飛鷹、どうだった」
「……向上心はありまくりだし大丈夫だと思いますよ。……目標ががどこまでかによりますけれど」
「とりあえず世界レベル、だな」
「……響木さんも冗談言うんですね」
私はタオルを首にかけながら響木さんの突拍子のない言葉に笑った。それからその冗談に付き合ってやろうと提案をしてみた。
「……初心者を世界レベルにしたいんだったら私よりちゃんと指導ができて、サッカーの楽しさを教えられる人に頼んだ方がいいんじゃないですか」
それこそ雷門サッカー部の面々とか、さ。
「わっ!?」
そう思っていると不意に響木さんの大きな手が私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてきた。
「ちょっ、なにっ……」
「また飛鷹にサッカー教えてやってくれ。お前もいいリハビリになるだろう」
私の言葉に対して何も返事もなく、わしゃわしゃわしゃと力強く撫でながらそんな事を言う。
リハビリって……これからもサッカーをするかどうかも分からないのに。
そう思いながらも、どこか楽しそうな様子の響木さんの言葉になぜだか私は何も言い返せなかった。
おまけ:【自宅にて】
「明王さん」
「なんだよ、ちょっと話すだけって言いながら夕方7時まで帰らなかった不良妹チャン」
「ゴメンて。それより今日さ、…………生まれて初めてナンパされた」
「……明奈。つくならもうちょっと面白い嘘つけよ……っでぇな!無言で肩殴んな!!」
「だってムカつくリアクションとられたから」