寂しがり少女
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「ん……っ!」
目を覚まして、一番最初に視界に入った木製の天井をぼんやりと眺めて数秒後、潜水艦でも病院でもない場所にここはどこだと慌てて起き上がった。
「あ……そうだった、私…………」
そして見回した部屋の内装を見て思い出した。
私は昨日から不動さん……じゃなくて明王さんの家のマンションに引き取られたことを。
リビングのソファーに眠ったはずなのに、私がいるのは自室のベットだった。……明王さんが運んでくれたんだろう。
時計を見れば時刻は9時を回ろうとしていて、こんなに長い時間眠ったの久しぶりかもと体を伸ばしてから私はベットから降りた。
もしかしたら仕事で不在かもしれないという予想に反して、身支度をしてからリビングへと向かえば、明王さんは椅子に座っていて、私が入ってきた事に気づいて振り返ってこちらを向く。
「はよ」
「お、おはよう」
……朝の挨拶を交わすなんて、久々だな。なんて思いながらリビングへと入れば明王さんは椅子から立ち上がった。
「よし、行くか」
「え?」
部屋に運んでくれた礼を言おうとした矢先にそう言われて首を傾げると、不動さんはにぃと不敵な笑みを浮かべる。
「朝飯とお前の修業道具買いに」
朝食を駅までの道中のバーガー屋で済ませて(明王さんはバーガーを食べていたけど、私は食べきれる自信がなかったのでパンケーキを頼めば驚かれた)、電車に揺られてやってきたのはたくさんの小売店が立ち並ぶ所謂ショッピングモールだった。
「広い……」
「おい、はぐれるなよ」
初めて訪れる場所に思わず周りを見回していると、隣を歩いていた明王さんにそう釘を刺される。心外だなと思った数分後、迷子防止に手を握られることになった。
「……子供っぽい」
「中一なんて、まだガキだよバーカ。気づけばふらふら歩きやがって」
握られた方の腕を見ながら異を唱えるが、鼻で笑われただけだった。
明王さんの足が止まった所で目的地に着いたのか、と私は顔を上げて目の前の店を見た。
そこは文房具や小物などが売っている雑貨屋だった。
「ここで生活に必要な物買って来い」
「……明王さんは来ないの?」
「こんなかわいー店に男が入れるとでも?」
別行動なのかと思わず明王さんを見るけれどげんなりとした顔をされた。そこで私は改めて店内を見れば確かにその雑貨屋は女子向けとして桃色と白を基調にした可愛らしい内装ということに気づく。
……確かにこの店に明王さんがいるのはミスマッチかも。
「見てみたい気もするけど……いてっ」
ただ想像すると面白くて、手で緩む口元を隠したけれどバレバレだったのか軽く小突かれて、それから目の前に茶色の封筒を差し出された。
「金はこの封筒に入ってる。上手にやり繰りしろよ、明奈ちゃん」
その封筒を受け取り、中身を確認すると確かに数枚のお札が入っているのが分かった。無くさないようにジャージの内ポケットに入れておこう。
それから雑貨屋の両隣の店ぐらいなら好きに買い物していい事と、買い物が終わったら雑貨屋の前のソファーで待ってろ。絶対待ってろ、勝手に動くな。なんて念を押して明王さんは私の修業道具を買うとか何とかで一度別れることになった。……何の修業をさせられるんだ。
明王さんと別れた後に、とりあえず雑貨屋に足を踏み入れたけれど……似合わないと明王さんに笑った私も大概に場違いかもしれないと苦笑してしまった。
一通り店を回って文房具として欲しいものはあったけれどデザインが自分に合わずに断念するものばかりで、どうしようかと考える。
店に入った手前、何も買わずに出るのもマナー違反な気がするし……それに、私が女子だからってわざわざこの店を探し出してくれた明王さんにも申し訳ない気持ちもある。
私が可愛いものが似合う女子だったらなと歩いている矢先にふと視界に入ったものに私の意識は持っていかれて、つい手に取って眺めていると。
「プレゼントをお探しですか?」
「えっ」
底抜けに明るい声にパッと顔を上げると、営業スマイルを浮かべた店員が私に話しかけていた。
忍ちゃんから服屋で話しかけてくる店員の厄介さは聞いたことあるけれど、雑貨屋でもあるのかよと人見知りな自分は思ってしまうけれど態度には出さないよう、愛想笑いを浮かべて適当に話を合わせることにする。
「彼女さんにですか?」
「……ああ。まぁ……」
ニコニコと愛想のいい店員にそう尋ねられ、そこで店の雰囲気に合ってない自分が話しかけられたのか分かった。
私を男子だと思っていて、彼女のプレゼント選びで迷っているように見えたからだろう……だからこんな微笑ましさを隠さない視線をもらうのか。
ため息をつきたい気持ちをこらえながら私は店員の話に耳を傾ける。
「そちらの髪飾り、春モチーフの新作で人気なんですよ」
私が足を止めたのはアクセサリー売り場で、手に取ったのは髪飾りだった。
春らしい桜が付いているピン止めだ。明るい桃色の桜の花弁は実物よりは大きいけれど、きっとその方が可愛らしく映えるのだろう。
青い髪のあの子にも、似合う……のかな。
「……自分は……あんまりオシャレとかそういうの、よく分からないけれど喜んでくれますかね」
「もちろんですよ!」
一般的なオシャレなんて分からずに思わず聞いてみれば、即答された。
「彼女さんを想って贈るプレゼントなんですから、きっと喜んでくれますよ!」
両想いの彼氏彼女と信じ切っているからこその無責任な言葉だ。……いや仕事なんだから社交辞令なんだろうけれど、それを感じさせないなんて流石だなと思う。
「……そうだと嬉しいですね」
だから私も都合よく、その言葉に乗ることにした。
「は?お前買った物それだけ?」
「え?うん」
買い物を済ませた私はソファーに座って明王さんを待つこと数時間後、大袋と小さい紙袋をそれぞれ手に持っている明王さんがやってきたかと思えば何故か目を丸くして私の買い物袋を見ていた。
雑貨屋で買い物を済ませた後に私が向かったのは、雑貨屋の隣の服屋。
帽子が欲しくて入ったものの、それ以外にもワゴンセールで安価で売られていたシャツとかジャージを購入したことを説明しながら買った時にタグを外してもらった紺色の帽子を被ってみせる。
今住んでいるマンションも、ここのモールも、元々住んでいた場所からは離れているけれど、それでも自分の顔を隠すものが欲しかった。
まぁ、打倒エイリア学園のため多忙な彼らとそう易々と会わないとは思うけれど…………念のためだ。
「普通女ってもっと買い物するもんじゃねぇの……ワゴンセールって……しかもメンズ服屋…………引き取り時の荷物の少なさから薄々察してたけど、やっぱ物欲死んでんじゃねぇか」
「明王さん?」
被り心地を確かめている間に明王さんが額に手を当てながらどこか遠い目をして何かぶつぶつと呟いていて、首を傾げつつも彼の方の買い物の中身も気になったので指摘した。
「結局、明王さんは何を買ったの?」
「…………本当、勝手に買っててよかったわ。これ餞別」
額から手を離して、どこか安堵した様子の明王さんから小さい紙袋を手渡されて、中身を見ればさらに小さい箱が入っていてそれを手に取る。箱の正面に写っている写真は確かに、携帯電話だった。
「……えっ!?」
「お前の携帯」
勢いよく顔を上げる私を楽しそうに見ながら笑みを浮かべる明王さんを見て、私は再び紙袋の中の携帯に目を向ける。それは白色のシンプルな携帯だった。
影山にいた頃に持っていた携帯電話は今頃海の底だろう。……その携帯もその前に何度か壊してしまってからメールと電話ぐらいしか使用許可降りなかったけど。
そんな携帯に不慣れな私が新しく携帯を持つことに抵抗感があって、思わずその紙袋を明王さんに突き返す。
「い、いらない……!私携帯なくても大丈夫だから!」
「お前が大丈夫でもこっちが困るんだよ。つーかもう契約してるから返品は不可だぞ」
なのに明王さんは受け取ることはせずに、そんな説明をしてもう私の所有物になったことを教えてくる。
「これでお友達とも連絡すればいいだろ」
「それは……っ、そう、だけど…………」
気軽に友達との電話できる、という言葉に思い出すのは携帯を使いこなす真帝国のみんなで。そんな魅力的な使い方に思わず判断が鈍った所で明王さんは私に紙袋を持たせた。
「……ありがとうございます。…………壊さないように、頑張る」
「携帯なんて早々に壊れねぇだろ」
改めて紙袋を受け取って礼を言ってからそう意気込むと、明王さんは冗談だと思われたのかケラケラ笑われた。……中学生になってから影山に渡された携帯が三台ほど犠牲になっているという話は黙っておこう。
「で、本命はこっち」
思わぬプレゼントにむずむずとした感覚になっていると、次に大きい方の袋の中身を見せられた。
そこにあったのはフライパンとか鍋とかまな板……キッチン用品ということは一目で分かる。
確かに思い返せばマンションの台所、やかんぐらいしかなかったなと思い出した。
そして修業道具、という言葉からこれは自分のために用意されたものだと察して、携帯の時とは真逆の微妙な顔で明王さんを見てしまうとニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべてきた。
「自立したいっつーなら料理ぐらいはできねぇとな」
「……料理なんてしたことない」
「安心しろ、料理本だって買った」
遠回しに抵抗しようとしても、その袋の奥から出された初心者向けの料理本に本格的に逃げ場がなくなってついため息をついてしまった。
目を覚まして、一番最初に視界に入った木製の天井をぼんやりと眺めて数秒後、潜水艦でも病院でもない場所にここはどこだと慌てて起き上がった。
「あ……そうだった、私…………」
そして見回した部屋の内装を見て思い出した。
私は昨日から不動さん……じゃなくて明王さんの家のマンションに引き取られたことを。
リビングのソファーに眠ったはずなのに、私がいるのは自室のベットだった。……明王さんが運んでくれたんだろう。
時計を見れば時刻は9時を回ろうとしていて、こんなに長い時間眠ったの久しぶりかもと体を伸ばしてから私はベットから降りた。
もしかしたら仕事で不在かもしれないという予想に反して、身支度をしてからリビングへと向かえば、明王さんは椅子に座っていて、私が入ってきた事に気づいて振り返ってこちらを向く。
「はよ」
「お、おはよう」
……朝の挨拶を交わすなんて、久々だな。なんて思いながらリビングへと入れば明王さんは椅子から立ち上がった。
「よし、行くか」
「え?」
部屋に運んでくれた礼を言おうとした矢先にそう言われて首を傾げると、不動さんはにぃと不敵な笑みを浮かべる。
「朝飯とお前の修業道具買いに」
朝食を駅までの道中のバーガー屋で済ませて(明王さんはバーガーを食べていたけど、私は食べきれる自信がなかったのでパンケーキを頼めば驚かれた)、電車に揺られてやってきたのはたくさんの小売店が立ち並ぶ所謂ショッピングモールだった。
「広い……」
「おい、はぐれるなよ」
初めて訪れる場所に思わず周りを見回していると、隣を歩いていた明王さんにそう釘を刺される。心外だなと思った数分後、迷子防止に手を握られることになった。
「……子供っぽい」
「中一なんて、まだガキだよバーカ。気づけばふらふら歩きやがって」
握られた方の腕を見ながら異を唱えるが、鼻で笑われただけだった。
明王さんの足が止まった所で目的地に着いたのか、と私は顔を上げて目の前の店を見た。
そこは文房具や小物などが売っている雑貨屋だった。
「ここで生活に必要な物買って来い」
「……明王さんは来ないの?」
「こんなかわいー店に男が入れるとでも?」
別行動なのかと思わず明王さんを見るけれどげんなりとした顔をされた。そこで私は改めて店内を見れば確かにその雑貨屋は女子向けとして桃色と白を基調にした可愛らしい内装ということに気づく。
……確かにこの店に明王さんがいるのはミスマッチかも。
「見てみたい気もするけど……いてっ」
ただ想像すると面白くて、手で緩む口元を隠したけれどバレバレだったのか軽く小突かれて、それから目の前に茶色の封筒を差し出された。
「金はこの封筒に入ってる。上手にやり繰りしろよ、明奈ちゃん」
その封筒を受け取り、中身を確認すると確かに数枚のお札が入っているのが分かった。無くさないようにジャージの内ポケットに入れておこう。
それから雑貨屋の両隣の店ぐらいなら好きに買い物していい事と、買い物が終わったら雑貨屋の前のソファーで待ってろ。絶対待ってろ、勝手に動くな。なんて念を押して明王さんは私の修業道具を買うとか何とかで一度別れることになった。……何の修業をさせられるんだ。
明王さんと別れた後に、とりあえず雑貨屋に足を踏み入れたけれど……似合わないと明王さんに笑った私も大概に場違いかもしれないと苦笑してしまった。
一通り店を回って文房具として欲しいものはあったけれどデザインが自分に合わずに断念するものばかりで、どうしようかと考える。
店に入った手前、何も買わずに出るのもマナー違反な気がするし……それに、私が女子だからってわざわざこの店を探し出してくれた明王さんにも申し訳ない気持ちもある。
私が可愛いものが似合う女子だったらなと歩いている矢先にふと視界に入ったものに私の意識は持っていかれて、つい手に取って眺めていると。
「プレゼントをお探しですか?」
「えっ」
底抜けに明るい声にパッと顔を上げると、営業スマイルを浮かべた店員が私に話しかけていた。
忍ちゃんから服屋で話しかけてくる店員の厄介さは聞いたことあるけれど、雑貨屋でもあるのかよと人見知りな自分は思ってしまうけれど態度には出さないよう、愛想笑いを浮かべて適当に話を合わせることにする。
「彼女さんにですか?」
「……ああ。まぁ……」
ニコニコと愛想のいい店員にそう尋ねられ、そこで店の雰囲気に合ってない自分が話しかけられたのか分かった。
私を男子だと思っていて、彼女のプレゼント選びで迷っているように見えたからだろう……だからこんな微笑ましさを隠さない視線をもらうのか。
ため息をつきたい気持ちをこらえながら私は店員の話に耳を傾ける。
「そちらの髪飾り、春モチーフの新作で人気なんですよ」
私が足を止めたのはアクセサリー売り場で、手に取ったのは髪飾りだった。
春らしい桜が付いているピン止めだ。明るい桃色の桜の花弁は実物よりは大きいけれど、きっとその方が可愛らしく映えるのだろう。
青い髪のあの子にも、似合う……のかな。
「……自分は……あんまりオシャレとかそういうの、よく分からないけれど喜んでくれますかね」
「もちろんですよ!」
一般的なオシャレなんて分からずに思わず聞いてみれば、即答された。
「彼女さんを想って贈るプレゼントなんですから、きっと喜んでくれますよ!」
両想いの彼氏彼女と信じ切っているからこその無責任な言葉だ。……いや仕事なんだから社交辞令なんだろうけれど、それを感じさせないなんて流石だなと思う。
「……そうだと嬉しいですね」
だから私も都合よく、その言葉に乗ることにした。
「は?お前買った物それだけ?」
「え?うん」
買い物を済ませた私はソファーに座って明王さんを待つこと数時間後、大袋と小さい紙袋をそれぞれ手に持っている明王さんがやってきたかと思えば何故か目を丸くして私の買い物袋を見ていた。
雑貨屋で買い物を済ませた後に私が向かったのは、雑貨屋の隣の服屋。
帽子が欲しくて入ったものの、それ以外にもワゴンセールで安価で売られていたシャツとかジャージを購入したことを説明しながら買った時にタグを外してもらった紺色の帽子を被ってみせる。
今住んでいるマンションも、ここのモールも、元々住んでいた場所からは離れているけれど、それでも自分の顔を隠すものが欲しかった。
まぁ、打倒エイリア学園のため多忙な彼らとそう易々と会わないとは思うけれど…………念のためだ。
「普通女ってもっと買い物するもんじゃねぇの……ワゴンセールって……しかもメンズ服屋…………引き取り時の荷物の少なさから薄々察してたけど、やっぱ物欲死んでんじゃねぇか」
「明王さん?」
被り心地を確かめている間に明王さんが額に手を当てながらどこか遠い目をして何かぶつぶつと呟いていて、首を傾げつつも彼の方の買い物の中身も気になったので指摘した。
「結局、明王さんは何を買ったの?」
「…………本当、勝手に買っててよかったわ。これ餞別」
額から手を離して、どこか安堵した様子の明王さんから小さい紙袋を手渡されて、中身を見ればさらに小さい箱が入っていてそれを手に取る。箱の正面に写っている写真は確かに、携帯電話だった。
「……えっ!?」
「お前の携帯」
勢いよく顔を上げる私を楽しそうに見ながら笑みを浮かべる明王さんを見て、私は再び紙袋の中の携帯に目を向ける。それは白色のシンプルな携帯だった。
影山にいた頃に持っていた携帯電話は今頃海の底だろう。……その携帯もその前に何度か壊してしまってからメールと電話ぐらいしか使用許可降りなかったけど。
そんな携帯に不慣れな私が新しく携帯を持つことに抵抗感があって、思わずその紙袋を明王さんに突き返す。
「い、いらない……!私携帯なくても大丈夫だから!」
「お前が大丈夫でもこっちが困るんだよ。つーかもう契約してるから返品は不可だぞ」
なのに明王さんは受け取ることはせずに、そんな説明をしてもう私の所有物になったことを教えてくる。
「これでお友達とも連絡すればいいだろ」
「それは……っ、そう、だけど…………」
気軽に友達との電話できる、という言葉に思い出すのは携帯を使いこなす真帝国のみんなで。そんな魅力的な使い方に思わず判断が鈍った所で明王さんは私に紙袋を持たせた。
「……ありがとうございます。…………壊さないように、頑張る」
「携帯なんて早々に壊れねぇだろ」
改めて紙袋を受け取って礼を言ってからそう意気込むと、明王さんは冗談だと思われたのかケラケラ笑われた。……中学生になってから影山に渡された携帯が三台ほど犠牲になっているという話は黙っておこう。
「で、本命はこっち」
思わぬプレゼントにむずむずとした感覚になっていると、次に大きい方の袋の中身を見せられた。
そこにあったのはフライパンとか鍋とかまな板……キッチン用品ということは一目で分かる。
確かに思い返せばマンションの台所、やかんぐらいしかなかったなと思い出した。
そして修業道具、という言葉からこれは自分のために用意されたものだと察して、携帯の時とは真逆の微妙な顔で明王さんを見てしまうとニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべてきた。
「自立したいっつーなら料理ぐらいはできねぇとな」
「……料理なんてしたことない」
「安心しろ、料理本だって買った」
遠回しに抵抗しようとしても、その袋の奥から出された初心者向けの料理本に本格的に逃げ場がなくなってついため息をついてしまった。