寂しがり少女
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何かあったら連絡してくれ、と鬼瓦刑事から連絡先を貰って事情聴取はとりあえず終了した。……と言ってもまだ入院は続いていたけれど、真・帝国学園の人を呼び出す時間は確保できた。
流石八人全員で来る訳にはいかない、と病室に来たのは三人であとの五人は二台の携帯電話のテレビ通話を駆使して話を聞いてくれるらしい。……最近の携帯はすごいなぁと目座さんの説明を聞きながら思った。
「真・帝国学園に関して、危ない目に遭わせて申し訳ございませんでした」
足と肩の怪我はとっくに治った私は立ち上がって、全員が見えるように真正面から頭を下げた。
「後、数多くの嫌な態度を取ったり、潜水艦の中という不自由な生活強いたり、その他にも多大なご迷惑を……」
「ねぇ」
年上に対する正しい謝り方なんか分からないなりに、とにかく必死に謝る私に冷たい声が降りかかる。
無視をするわけにもいかないので、恐る恐る顔を上げれば病室にいる側である小鳥遊さんがこちらを見ていた。
「何、その話し方」
「え?」
「確かに。あのオラオラ口調どうしたんだよ」
同意するのはテレビ電話の方にいる弥谷さん。他のみんなも私の話し方に違和感を感じているみたいだった。
一応入院患者だから、と日柄さんに座るように促されて私はベットに腰掛けながら説明をした。
「えっと、あれは皆さん年が上だから舐められたくないから学んだというか……移動中に不良漫画読みまくりました…………」
「漫画読んだだけでああなるかぁ?」
「キャプテン、世間知らずっぽいし知らない知識はすぐに吸収しちゃうんじゃない」
「……確かに」
「な、何の話してるんですか……?」
首を傾げる弥谷さんに日柄さんの考察をしてそれに同意する郷院さんという、テレビ電話先でよく分からない盛り上がり方をしていて、首を傾げる。
もう一台の電話先である竺和さんと、帯屋さんから気にするなと首を横に振られた。呆れているように見えたのは気のせいじゃないと思う。
「……」
「?小鳥遊さん……?」
いつの間にか小鳥遊さんがすぐ近くに来て私を見下ろしていた。眉を寄せて苛立ちを隠そうとしない表情に、やっぱりあの口調ムカついてたのかと考えていると、
「むぎゅっ」
突然私の頬を手を伸ばしたかと思えば、その手で両頬を挟まれた。
「た、たかにゃひひゃん……?」
「…………忍」
「んぅ?」
上手く喋れないなりに名前を呼べば手を離されたかと思えば、小鳥遊さんはポツリと自分の名前を言った。
…………呼べ、ということだろうか。
「忍さん?」
「は?」
「し、忍ちゃん……!」
恐る恐る呼べば、首を傾げられ再び手を伸ばされたので私は慌てて別の呼び方をすれば、小鳥遊さ……忍ちゃんの手は自分の太ももの横に戻っていく。
「……まあいいわ。あとこれから敬語もナシよ。分かったわね」
「は……う、うん」
意外と押しが強いらしい彼女の言われるがまま頷けば、忍ちゃんは鼻を鳴らして得意げに笑った。
私は挟まれて変な感じになった頬に触れながら、彼女の笑顔を思い出す。笑ったことはもちろん……彼女の素直な笑顔を見るのが初めてだったことに気づいたからだ。
……仮にもキャプテンだったくせに。私は選手の事を見ていなかった。
「小鳥遊の事、怒ってやんなよ」
黙り込んだ私が不機嫌になったと勘違いした比得さんは宥めるように告げて、ニヤリと笑った……化粧のせいでより楽しそうに見える。
「アイツ、お前と一番最初に友達になりたくて必死だったんだからな」
「ともだち……」
「もちろん、小鳥遊だけじゃなくて俺たちの総意だ」
目座さんにまでそう言われて、私にとっては慣れない言葉にどういう反応をすればいいか分からなくなってしまう。
(ちなみに比得さんは忍ちゃんから肩を殴られて崩れ落ちていた。女の子つよい)
「……なんで…………」
私と友達になりたい、なんて理由がちっとも浮かばずに私は足をベットに投げ出しながらポツリと呟く。
影山のところにいた時の自分に言うのだったら取り入ろうとしてるんだろうなと理解はできた。けれど何もなくなった自分に価値なんて……
「アンタに救われたからよ」
俯きそうになる顔を支えるように頬に手を添えるのは忍ちゃんだった。さっきみたいに脅かすためではない事は手つきの優しさで分かった。
「私をスカウトした時のこと、覚えている?」
忍ちゃんにそう尋ねられて、私は思いだそうと記憶を辿っていると、それよりも早くに彼女は口を開いた。
「"サッカーをするのに男も女も関係ない。私はお前の実力を買ってるんだ。だから来い"
アンタはそう言ったのよ。……嬉しかった。ずっと女だからって理由だけで見下されてサッカーも出来なかった自分を認めてくれたみたいで」
「……私が言われて嬉しかったから同じ事言ったんだと思う」
「ふぅん。…………それって兄貴?」
「……また別の人」
忍ちゃんと言葉を交わすことで幼少期に会った彼の存在と、それから今目の前にいる彼らをスカウトした時のやり取りを思い出す。
雷門との戦いに必死すぎて、今の今まで忘れていた。
「そう、だったね……」
佐久間さんと源田さんを除く真・帝国イレブンは、実力は十分にあるのにそれぞれの事情でサッカーを公にできない者達の集まりだった。
それはチームメイトとの不和だったり、部の顧問の嫌がらせだったり、家庭の事情だったり……その当時の私は実力しか見てなかったので丸め込んで引き入れた気がする。
「救いになってるなんて、考えたことなかった……」
「だろうな」
「顔見たら分かる」
零れ出た本音を茶化された。……驚いていないという事は、私がそんな返答をするという事も分かったうえで、伝えたんだろう。
そんなどうしようもないはずの私を彼らは助けてくれた。
「……けて、」
「ん」
「助けてくれて、ありがとう」
頬に添えてくれている忍ちゃんの手に触れて、全員の顔を見回して私はやっと潜水艦で自分を助けてくれたことに対する礼を口にできた。
上手く笑えているか分からないけれど、助かってよかった、と思っていることを伝わったらなと思った。
流石八人全員で来る訳にはいかない、と病室に来たのは三人であとの五人は二台の携帯電話のテレビ通話を駆使して話を聞いてくれるらしい。……最近の携帯はすごいなぁと目座さんの説明を聞きながら思った。
「真・帝国学園に関して、危ない目に遭わせて申し訳ございませんでした」
足と肩の怪我はとっくに治った私は立ち上がって、全員が見えるように真正面から頭を下げた。
「後、数多くの嫌な態度を取ったり、潜水艦の中という不自由な生活強いたり、その他にも多大なご迷惑を……」
「ねぇ」
年上に対する正しい謝り方なんか分からないなりに、とにかく必死に謝る私に冷たい声が降りかかる。
無視をするわけにもいかないので、恐る恐る顔を上げれば病室にいる側である小鳥遊さんがこちらを見ていた。
「何、その話し方」
「え?」
「確かに。あのオラオラ口調どうしたんだよ」
同意するのはテレビ電話の方にいる弥谷さん。他のみんなも私の話し方に違和感を感じているみたいだった。
一応入院患者だから、と日柄さんに座るように促されて私はベットに腰掛けながら説明をした。
「えっと、あれは皆さん年が上だから舐められたくないから学んだというか……移動中に不良漫画読みまくりました…………」
「漫画読んだだけでああなるかぁ?」
「キャプテン、世間知らずっぽいし知らない知識はすぐに吸収しちゃうんじゃない」
「……確かに」
「な、何の話してるんですか……?」
首を傾げる弥谷さんに日柄さんの考察をしてそれに同意する郷院さんという、テレビ電話先でよく分からない盛り上がり方をしていて、首を傾げる。
もう一台の電話先である竺和さんと、帯屋さんから気にするなと首を横に振られた。呆れているように見えたのは気のせいじゃないと思う。
「……」
「?小鳥遊さん……?」
いつの間にか小鳥遊さんがすぐ近くに来て私を見下ろしていた。眉を寄せて苛立ちを隠そうとしない表情に、やっぱりあの口調ムカついてたのかと考えていると、
「むぎゅっ」
突然私の頬を手を伸ばしたかと思えば、その手で両頬を挟まれた。
「た、たかにゃひひゃん……?」
「…………忍」
「んぅ?」
上手く喋れないなりに名前を呼べば手を離されたかと思えば、小鳥遊さんはポツリと自分の名前を言った。
…………呼べ、ということだろうか。
「忍さん?」
「は?」
「し、忍ちゃん……!」
恐る恐る呼べば、首を傾げられ再び手を伸ばされたので私は慌てて別の呼び方をすれば、小鳥遊さ……忍ちゃんの手は自分の太ももの横に戻っていく。
「……まあいいわ。あとこれから敬語もナシよ。分かったわね」
「は……う、うん」
意外と押しが強いらしい彼女の言われるがまま頷けば、忍ちゃんは鼻を鳴らして得意げに笑った。
私は挟まれて変な感じになった頬に触れながら、彼女の笑顔を思い出す。笑ったことはもちろん……彼女の素直な笑顔を見るのが初めてだったことに気づいたからだ。
……仮にもキャプテンだったくせに。私は選手の事を見ていなかった。
「小鳥遊の事、怒ってやんなよ」
黙り込んだ私が不機嫌になったと勘違いした比得さんは宥めるように告げて、ニヤリと笑った……化粧のせいでより楽しそうに見える。
「アイツ、お前と一番最初に友達になりたくて必死だったんだからな」
「ともだち……」
「もちろん、小鳥遊だけじゃなくて俺たちの総意だ」
目座さんにまでそう言われて、私にとっては慣れない言葉にどういう反応をすればいいか分からなくなってしまう。
(ちなみに比得さんは忍ちゃんから肩を殴られて崩れ落ちていた。女の子つよい)
「……なんで…………」
私と友達になりたい、なんて理由がちっとも浮かばずに私は足をベットに投げ出しながらポツリと呟く。
影山のところにいた時の自分に言うのだったら取り入ろうとしてるんだろうなと理解はできた。けれど何もなくなった自分に価値なんて……
「アンタに救われたからよ」
俯きそうになる顔を支えるように頬に手を添えるのは忍ちゃんだった。さっきみたいに脅かすためではない事は手つきの優しさで分かった。
「私をスカウトした時のこと、覚えている?」
忍ちゃんにそう尋ねられて、私は思いだそうと記憶を辿っていると、それよりも早くに彼女は口を開いた。
「"サッカーをするのに男も女も関係ない。私はお前の実力を買ってるんだ。だから来い"
アンタはそう言ったのよ。……嬉しかった。ずっと女だからって理由だけで見下されてサッカーも出来なかった自分を認めてくれたみたいで」
「……私が言われて嬉しかったから同じ事言ったんだと思う」
「ふぅん。…………それって兄貴?」
「……また別の人」
忍ちゃんと言葉を交わすことで幼少期に会った彼の存在と、それから今目の前にいる彼らをスカウトした時のやり取りを思い出す。
雷門との戦いに必死すぎて、今の今まで忘れていた。
「そう、だったね……」
佐久間さんと源田さんを除く真・帝国イレブンは、実力は十分にあるのにそれぞれの事情でサッカーを公にできない者達の集まりだった。
それはチームメイトとの不和だったり、部の顧問の嫌がらせだったり、家庭の事情だったり……その当時の私は実力しか見てなかったので丸め込んで引き入れた気がする。
「救いになってるなんて、考えたことなかった……」
「だろうな」
「顔見たら分かる」
零れ出た本音を茶化された。……驚いていないという事は、私がそんな返答をするという事も分かったうえで、伝えたんだろう。
そんなどうしようもないはずの私を彼らは助けてくれた。
「……けて、」
「ん」
「助けてくれて、ありがとう」
頬に添えてくれている忍ちゃんの手に触れて、全員の顔を見回して私はやっと潜水艦で自分を助けてくれたことに対する礼を口にできた。
上手く笑えているか分からないけれど、助かってよかった、と思っていることを伝わったらなと思った。