番外編
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繊細なんです、分かってよ
84の裏話。「それって、嫉妬じゃないか?」
「しっと……?」
佐久間さんに対する嫌悪や敵意は決してない、だけど友好的になるには何故か引っ掛かりを感じてしまう……そんな感情を何とか風丸さんに説明すれば彼の口から出てきたのは驚きの言葉だった。
「ああ。不動の話を聞いてると “鬼道と仲が良い” 佐久間に嫉妬しているように聞こえた。……佐久間本人を嫌ってる訳じゃないんだろ?」
「それは……そう、ですが…………」
確かに、私がもやもやとした時には決まって兄ちゃんと佐久間さんが仲良くしていた気がする。
選考試合の集まりに一緒に来た時とか、ライオコット島では何かと2人で過ごしていたりとか……いやそもそも…………真帝国学園に勧誘をする時にも私が当時できなかった『信頼』を見せつけられた時から苛立った記憶がある。
つまり私は…………
「うぅぅぅ…………」
「ふ、不動?」
隣から驚いたような声が聞こえる。だけど私はそれに反応できずにずるずるとその場に蹲ってしまった。
「嫉妬とか……んな感情で、私はあんな態度を…………最悪すぎる……!!」
自分が兄妹と話せなかったからって……兄と仲良しの先輩に嫉妬して、喧嘩吹っ掛けたり話し合いを拒否したり……そう思うと本当に自分が情けなくて、恥ずかしくて、熱くなる顔を両手で隠しながらよく分からない唸り声を出してしまう。
嫉妬なんて、競う中で強い人間に対して弱い人間が感じる感情だけだと思っていた。それ以外に対するものだなんて思いもしなかった。
だけど……風丸さんの話を聞けば聞くほど認めざるを得ない。
兄と仲がいい佐久間さんに、私は嫉妬をしていた。
「……とりあえず、ちゃんと佐久間さんに伝えようと思います」
自分の気持ちの正体が分かったからか、あんなに抱えていたもやもや感がなくなった気がする。
だけどすぐに佐久間さんに嫉妬をしていたという事実を思い知り、結局私は頭を抑えながら小さくため息をついた。……いや、本当にため息をつきたいのは嫉妬も知らない後輩に嫌な態度を繰り返された佐久間さんか。
とりあえず、これ以上拗らせないために変に誤魔化さずに佐久間さんには正直に話そうと決意を固める。……少し、いやかなり恥ずかしいけれど。
「……2人きりで話すのが難しかったら俺も立ち会うよ」
「……すみません」
そんな私の反応を見た風丸さんは苦笑を浮かべて、そう申し出てくれたので私は力なく頷いてお願いすることにした。
「…………なんて謝ろう……」
正直に話すにしたって、嫉妬をしてました。なんて馬鹿正直に言っていいものなのか……さらに彼を不快にさせないかと考えていると、風丸さんはそんな私を見て大袈裟だな、と小さく笑う。
「そんな自分を追い詰めなくても……嫉妬なんて大なり小なり誰だって感じるものだろ」
「え?風丸さんも嫉妬する時あるんですか?」
「まぁ、多少はな」
風丸さんが嫉妬するなんて、想像できなくて肩をすくめて笑う彼に私はポカンとしてしまう。
「それって……サッカー以外でですか?」
「ああ。例えば綱海とか」
「綱海さん?」
風丸さんが出した嫉妬に結びつかなさそうな人の名前に首を捻る。
「綱海みたいに海を自由に泳げたり、サーフィン出来る姿を見たら楽しそうだなぁって思ったり」
「……それって嫉妬なんですか?」
「言っただろ、大なり小なりって」
私が想像しているよりも穏やかな理由を告げられて思わず口を挟むも、風丸さんは少しいたずらっぽく笑うだけだった。
その笑顔は、慣れない感情に戸惑う私の肩の力を抜いてくれようとしているように感じて……事実そんな話を聞いて思わず笑ってしまう余裕ができた。
……頼ってくれて嬉しい、と言ってくれた風丸さんに思い切って相談したけれど話してよかったな。話が話だし、とてもじゃないけど兄ちゃんには言えないし。
「綱海さんのが小さい嫉妬なら、大きい嫉妬?とかもあるんですか?」
綱海さんのことに関しては優しい風丸さんらしい話だなと思いつつもふと気になったことを尋ねてみた。
大小で言うものではないとは思いつつも、あの風丸さんの嫉妬話を聞けるのではという好奇心の方が勝ってしまった。
「……大きい嫉妬か」
風丸さんは腕を組んで、少しだけ顔を俯かせて考えるような素振りを見せたかと思えばちらりとこちらを見て呟いた。
「不動と源田がアイスを一緒に食べてた時とか……」
「え?」
「あ」
風丸さんが出したのはよく知っている先輩の名前と、自分の名前だった。
源田先輩との接点はまだ想像できるけれど、私まで出てくるとは思わず再びポカンとしてしまえば、風丸さんも口を開けたまま目を丸くして固まってしまった。
「風丸さん?」
どうしたんだろうと、名前を呼べば風丸さんの顔はみるみると真っ赤になったかと思えばバッとすごい勢いで彼は自分の手で顔を隠した。
「ちがっ……!今のなし!!聞かなかったことにしてくれ!!」
「えっ!?」
そして片手で前髪で隠れていない顔半分を覆いながら慌てたように声を上げた。
「そ、そんな大袈裟な……」
あれこれ、さっき風丸さんに言われたような?
あの時の私、こんな感じで慌ててたのかな。風丸さんよくあんな爽やかに笑い飛ばしてくれたな。
「不動の嫉妬はいいけど、俺のは駄目だろ……」
うっかり口を滑らした内容が余程恥ずかしかったのか、顔から手を離そうとしない風丸さんからそんな嘆きが少しくぐもって聞こえる。
「いや、私の方が駄目な気がするのですが…………」
話を聞く限りだと私と風丸さんの話じゃ前提が違う気がして呟くも、今の状態の風丸さんには届かなかった。
…………よく分からないけれど、嫉妬にも種類があるらしい。
「――で。結局、その後風丸さん頭抱えちゃって有耶無耶になったんですよね」
「………………」
「風丸さん、そんなに私達がアイスパフェ食べたの羨ましかったのかな……。男子にはスイーツの話ってやっぱり恥ずかしい話題なんですかねぇ」
「俺は何を聞かされてるんだ?」
「…………えぇ……佐久間さんから聞いてきたのに」
風丸さんの言い分の訳(恋愛ポンコツ夢主では表現しきれなかったので追記)
夢主の嫉妬→兄が好きだからこその嫉妬。微笑ましい。
自分の嫉妬→付き合ってないくせに夢主と仲が良い源田に嫉妬。ダメだろ!!!!
夢主は源田くんに嫉妬してたとは気づいてませんが。アイスパフェ食べたくて私達に嫉妬したのか。だからあの時(50.5話参照)話しかけてきたのかな、とか思ってる。
そしてそんな様子を客観的に見ていろいろ察してしまう佐久間くん(今日の被害者)
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