寂しがり少女
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終わらせたかった私の命は、私がスカウトした選手達によって救われることになった。
後から聞けばあの後陸についてから、小鳥遊さん達が刑事に話しをつけたらしく、雷門の選手に見つかることなく愛媛の病院へと送ってもらったらしい。
私が目を覚ましたのは病院に運ばれた三日後の早朝。
交代制で私が目を覚ますのを待っていたらしく、私が起きた時には竺和さんがいて、慌てて医師を呼びに行っていた。そんなに慌て方をする人だったんだとぽかんとしながら眺めていた。
真・帝国の人達には私が目を覚ました時に連絡をしたらしいけれど、検査を受けなくてはいけないらしく、彼らとの話す機会はまた後日ということになった。
昼過ぎぐらいに検査が終わり、再び病院のベットへと寝転んでいると兄をヘリで助けてくれた刑事さんがやって来た。
私が目を覚ましたから事情聴取、ということだろう。
体調も悪くないことから、二つ返事で了承して、影山の情報を答えた……と言っても、私は彼の言われた事を淡々とこなしていたいわゆる裏方で、触れていたのは様々な選手のデータであり、彼の悪事の詳細を知っている訳ではない。
それでも、話してくれるだけで助かると礼を言われてしまった。そんなことで感謝されるとは思ってなくて、私は上手く反応できなかったに違いない。
しばらくは治療をしながらの事情聴取の日々が続いた。だけど、実のところ事情聴取というより警察側のエイリア学園の調査について聞く時間の方が多かった。
……私がつけていたペンダントの力も預かって調査しているらしく、その付いていた石の現状の解析結果もこっそりと教えてもらった。
自身で実感した通り、あの石は身体能力の向上(佐久間さん以上に禁断の技を多発したくせに、五体満足なのはそのおかげだろう)、そして他者の考えを支配できる力を持つものだった。
だけどその持っている者自身の人格を歪ませる、攻撃性の高いものに変える恐ろしい力があるのだと、デメリットについても聞かされる。それは影山からは教わらなかったけれど、身をもって分かっていたことだった。
さらにそのデメリットは、当人の精神面にも大きく影響を与えるのだろうと私は思った。兄の真相を知ってからの自分はまるで自分じゃないように感じる事も少なくはなかったから。
じゃないと大事な資料を床にバラまくなんて、いつもの自分ならしない。
でも……
例えそれらが石の力だとしても、だ。
「……それでも、私のやった事がなくなるわけじゃない」
「本心でやった訳ではないだろう。そう自分を責めるな」
身につけていた者として感じた事を話している途中に呟けば、メモを取っていた刑事さんは筆を止めて目を合わせてそう言ってくれた。
お前だけの責任じゃない。そう伝えたいからわざわざ教えてくれたんだろうなと察しても、これだけは素直に頷けなかった。
刑事さん……いや、鬼瓦刑事がここまで世話を焼くのは事情聴取初日のことが関係しているのだろう。
必死になりすぎたせいであまり覚えていないけれど、私が目を覚ましたのを確認した鬼瓦刑事が、真っ先に兄妹へ連絡を取ろうとしているのを見て私は必死に頭を下げたらしい。
ー『お願いしますっ!!兄や妹に私が生きてるなんて言わないでくださいっ!!私の存在は優しい彼らを傷つける!!私は死んだほうがいいんだっ!!!』
自分の生存をどうにか隠したい。冷静になった今でも思っている事だ。
そんな懇願に対して鬼瓦刑事は首を縦に振ってくれなかった。
ー『お前さんみたいな子供が、死んだほうがいい、なんて悲しい事言うな』
なんて、なぜか傷ついた顔をして大きな手でぐしゃぐしゃと乱暴に私の頭を撫でるだけで。何で分かってくれないんだよと怒鳴りつけても、頷いてはくれなかったらしい。
結局、ちゃんと目を覚ました時にその件に関しては、折衷案として兄達に聞かれても現在調査中だと濁してもらうことになっていた。
警察側も潜水艦から姿を消した影山の捜索のために時間を使っていたので、私が地元の病院へ運ばれる事をまだ雷門の中学生達に言えていなかったのが幸いした。
ちなみに私の意識がハッキリとしてから、その懇願に対してと潜水艦で自分の命を粗末にしようとした事を重ね重ね怒られた。
大人に感情任せに怒鳴られるのは初めてと言ってもいいぐらいで普通に怖かった。半泣きになった所で先生が来て慌てて止められたのはここだけの話だ。
それからは、兄妹のことについて考えているとあまり冷静になれない自覚があるので、他のことを考えるように努めるようにしている。
警察との事情聴取と、病院側の検査。それとカウンセラーの先生と話。今日もそれらを終わらして、それから訪れる就寝時間。
怪我のせいで体も何も動かせず、数時間大人と喋ったぐらいじゃ眠気来るわけない。
仰向けになってぼーと天井を見てから体を横に向けて、月明かりに照らされている窓を何となく見ていると、
窓は締め切ったはずなのに窓辺のカーテンが揺れていることに気づいた。
「こんばんは、不動さん」
気づいたら窓辺に黒いサッカーボールを持った橙色のジャケットを羽織っている男子……グランさんがいた。
「怪我、大丈夫?」
エイリアボールのワープ機能を使って忍び込んだにも関わらず、グランさんはまるで見舞いに来た人のように私の心配をする。
「……これぐらい、何ともない」
リアクションを取る気力もない私はそんなグランさんを眺めながらポツリと答える。
……怪我自体は、佐久間さんや源田さんの傷に比べれば大したことはない。この入院の主な原因だってペンダントの力の方だった。
「……んだよ、嘲笑いにもきたのか?」
「そんな意地が悪いことしないよ」
「じゃあなんだ……本当に私を拾いに来たとか?」
グランさんへの喧嘩口調は抜けきれていない事に内心苦笑しながら、私は体を起こして彼を見る。するとグランさんは私の傍まで歩いてきて、手を伸ばした。
「そうだよ、って言ったらどうする?」
グランさんは笑っている。だけど笑っていない。そんな表情で彼の意思はまるで読み取れない。
「馬鹿だろ」
けれど私にはもう関係ないことだ。
ふっと笑ったあとにベットへと寝転がり、彼へ背を向けて転がる。……少し肩が痛かったけれど、それでも顔を見せたくなかった。
彼に拾われた所で、そこが居場所となることで、一人になりたくない思いから私はまた、ボールを蹴らなくてはいけないのだろうか。また、彼らと戦わないといけないのだろうか。
だとしたら、もう沢山だ。
「しばらく、サッカーはしたくない」
ポツリ。と静かな病室にそんな声がいやに響いた。
もう、だれも傷つけたくない。
傷つきたくない。
そんな気持ちで呟いた本音。
ただの願望で、敗者の私に拒否権なんて存在しないくせに足掻いた言葉。
いや……そもそもこんなペンダントの力もない私を拾った所でどうするつもりなんだ。サッカーじゃなくて宇宙人の実験材料にでもされるのか?
「……そっか」
しばらく沈黙が続いたかと思えば、短く言葉を発するグランさん。
なのに、いつもと違ってそれは感情が込められていて、
「ごめんね」
それは私に対する申し訳なさを滲ませた声で彼は謝った。
「……はぁ……!?」
慌てて体を起こしてそちらを見たけれど、そこには最初から何もなかったかのように窓があるだけでグランさんの姿はない。
謝った?あのグランさんが??
なんで??
いくら考えてもやっぱり宇宙人の思考なんて分からない私は、きっとさっきのグランさんは夢だったんだろうと結論に辿り着いて私は目を閉じてもう一度眠ることにした。
「うん、もうじき帰るよ。だからそんなに怒らないでよ、ウルビダ」
「え?ああ、あの子のことはもういいんだ」
「エイリア石の力を使っても再起は厳しそうだしね」
「……そういうことにしておくよ、不動さん」
後から聞けばあの後陸についてから、小鳥遊さん達が刑事に話しをつけたらしく、雷門の選手に見つかることなく愛媛の病院へと送ってもらったらしい。
私が目を覚ましたのは病院に運ばれた三日後の早朝。
交代制で私が目を覚ますのを待っていたらしく、私が起きた時には竺和さんがいて、慌てて医師を呼びに行っていた。そんなに慌て方をする人だったんだとぽかんとしながら眺めていた。
真・帝国の人達には私が目を覚ました時に連絡をしたらしいけれど、検査を受けなくてはいけないらしく、彼らとの話す機会はまた後日ということになった。
昼過ぎぐらいに検査が終わり、再び病院のベットへと寝転んでいると兄をヘリで助けてくれた刑事さんがやって来た。
私が目を覚ましたから事情聴取、ということだろう。
体調も悪くないことから、二つ返事で了承して、影山の情報を答えた……と言っても、私は彼の言われた事を淡々とこなしていたいわゆる裏方で、触れていたのは様々な選手のデータであり、彼の悪事の詳細を知っている訳ではない。
それでも、話してくれるだけで助かると礼を言われてしまった。そんなことで感謝されるとは思ってなくて、私は上手く反応できなかったに違いない。
しばらくは治療をしながらの事情聴取の日々が続いた。だけど、実のところ事情聴取というより警察側のエイリア学園の調査について聞く時間の方が多かった。
……私がつけていたペンダントの力も預かって調査しているらしく、その付いていた石の現状の解析結果もこっそりと教えてもらった。
自身で実感した通り、あの石は身体能力の向上(佐久間さん以上に禁断の技を多発したくせに、五体満足なのはそのおかげだろう)、そして他者の考えを支配できる力を持つものだった。
だけどその持っている者自身の人格を歪ませる、攻撃性の高いものに変える恐ろしい力があるのだと、デメリットについても聞かされる。それは影山からは教わらなかったけれど、身をもって分かっていたことだった。
さらにそのデメリットは、当人の精神面にも大きく影響を与えるのだろうと私は思った。兄の真相を知ってからの自分はまるで自分じゃないように感じる事も少なくはなかったから。
じゃないと大事な資料を床にバラまくなんて、いつもの自分ならしない。
でも……
例えそれらが石の力だとしても、だ。
「……それでも、私のやった事がなくなるわけじゃない」
「本心でやった訳ではないだろう。そう自分を責めるな」
身につけていた者として感じた事を話している途中に呟けば、メモを取っていた刑事さんは筆を止めて目を合わせてそう言ってくれた。
お前だけの責任じゃない。そう伝えたいからわざわざ教えてくれたんだろうなと察しても、これだけは素直に頷けなかった。
刑事さん……いや、鬼瓦刑事がここまで世話を焼くのは事情聴取初日のことが関係しているのだろう。
必死になりすぎたせいであまり覚えていないけれど、私が目を覚ましたのを確認した鬼瓦刑事が、真っ先に兄妹へ連絡を取ろうとしているのを見て私は必死に頭を下げたらしい。
ー『お願いしますっ!!兄や妹に私が生きてるなんて言わないでくださいっ!!私の存在は優しい彼らを傷つける!!私は死んだほうがいいんだっ!!!』
自分の生存をどうにか隠したい。冷静になった今でも思っている事だ。
そんな懇願に対して鬼瓦刑事は首を縦に振ってくれなかった。
ー『お前さんみたいな子供が、死んだほうがいい、なんて悲しい事言うな』
なんて、なぜか傷ついた顔をして大きな手でぐしゃぐしゃと乱暴に私の頭を撫でるだけで。何で分かってくれないんだよと怒鳴りつけても、頷いてはくれなかったらしい。
結局、ちゃんと目を覚ました時にその件に関しては、折衷案として兄達に聞かれても現在調査中だと濁してもらうことになっていた。
警察側も潜水艦から姿を消した影山の捜索のために時間を使っていたので、私が地元の病院へ運ばれる事をまだ雷門の中学生達に言えていなかったのが幸いした。
ちなみに私の意識がハッキリとしてから、その懇願に対してと潜水艦で自分の命を粗末にしようとした事を重ね重ね怒られた。
大人に感情任せに怒鳴られるのは初めてと言ってもいいぐらいで普通に怖かった。半泣きになった所で先生が来て慌てて止められたのはここだけの話だ。
それからは、兄妹のことについて考えているとあまり冷静になれない自覚があるので、他のことを考えるように努めるようにしている。
警察との事情聴取と、病院側の検査。それとカウンセラーの先生と話。今日もそれらを終わらして、それから訪れる就寝時間。
怪我のせいで体も何も動かせず、数時間大人と喋ったぐらいじゃ眠気来るわけない。
仰向けになってぼーと天井を見てから体を横に向けて、月明かりに照らされている窓を何となく見ていると、
窓は締め切ったはずなのに窓辺のカーテンが揺れていることに気づいた。
「こんばんは、不動さん」
気づいたら窓辺に黒いサッカーボールを持った橙色のジャケットを羽織っている男子……グランさんがいた。
「怪我、大丈夫?」
エイリアボールのワープ機能を使って忍び込んだにも関わらず、グランさんはまるで見舞いに来た人のように私の心配をする。
「……これぐらい、何ともない」
リアクションを取る気力もない私はそんなグランさんを眺めながらポツリと答える。
……怪我自体は、佐久間さんや源田さんの傷に比べれば大したことはない。この入院の主な原因だってペンダントの力の方だった。
「……んだよ、嘲笑いにもきたのか?」
「そんな意地が悪いことしないよ」
「じゃあなんだ……本当に私を拾いに来たとか?」
グランさんへの喧嘩口調は抜けきれていない事に内心苦笑しながら、私は体を起こして彼を見る。するとグランさんは私の傍まで歩いてきて、手を伸ばした。
「そうだよ、って言ったらどうする?」
グランさんは笑っている。だけど笑っていない。そんな表情で彼の意思はまるで読み取れない。
「馬鹿だろ」
けれど私にはもう関係ないことだ。
ふっと笑ったあとにベットへと寝転がり、彼へ背を向けて転がる。……少し肩が痛かったけれど、それでも顔を見せたくなかった。
彼に拾われた所で、そこが居場所となることで、一人になりたくない思いから私はまた、ボールを蹴らなくてはいけないのだろうか。また、彼らと戦わないといけないのだろうか。
だとしたら、もう沢山だ。
「しばらく、サッカーはしたくない」
ポツリ。と静かな病室にそんな声がいやに響いた。
もう、だれも傷つけたくない。
傷つきたくない。
そんな気持ちで呟いた本音。
ただの願望で、敗者の私に拒否権なんて存在しないくせに足掻いた言葉。
いや……そもそもこんなペンダントの力もない私を拾った所でどうするつもりなんだ。サッカーじゃなくて宇宙人の実験材料にでもされるのか?
「……そっか」
しばらく沈黙が続いたかと思えば、短く言葉を発するグランさん。
なのに、いつもと違ってそれは感情が込められていて、
「ごめんね」
それは私に対する申し訳なさを滲ませた声で彼は謝った。
「……はぁ……!?」
慌てて体を起こしてそちらを見たけれど、そこには最初から何もなかったかのように窓があるだけでグランさんの姿はない。
謝った?あのグランさんが??
なんで??
いくら考えてもやっぱり宇宙人の思考なんて分からない私は、きっとさっきのグランさんは夢だったんだろうと結論に辿り着いて私は目を閉じてもう一度眠ることにした。
「うん、もうじき帰るよ。だからそんなに怒らないでよ、ウルビダ」
「え?ああ、あの子のことはもういいんだ」
「エイリア石の力を使っても再起は厳しそうだしね」
「……そういうことにしておくよ、不動さん」