寂しがり少女
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エイリア学園の傘下といっても、その学園の関係者と関わるのは専らお父さんだけだった。
彼らに関して個人的な感情としては、戦う手段がどうしてサッカーなんだ?と思ったけれど、わざわざ答えを調べる程でもない。
お父さんが従っているから私も従う。それだけだ。
ただ、そんな立場もあって、命令が来たら従わなくてはいけないのが面倒だと思うぐらいで。
「あれ?不動さん」
パチリと瞬きをして目を丸くして、私の名前を呼ぶ橙色のジャケットを羽織った赤髪の男子。彼を前に私はため息をつきたくなる気持ちを抑えて、愛想笑いを作った。
「……迎えに行け、と命令が下ったので来ました」
そして持っていた私も北海道に行く際にも使用した、エイリア学園が生み出した黒いサッカーボールを手渡そうとするけれど、
「そっか。けど俺は大丈夫だからもう帰っても大丈夫だよ」
「は?……おい!」
ボールを一瞥するだけで、その男子は早々に私の横を横切って山道を歩いて行く。
私に彼を追う義理はないにしろ、言う通り動くのも癪に感じて、舌打ちを溢しながら仕方なく彼の後をついていった。
横目で私を見た彼は、すぐに前を向けて口を開いた。
「先日、漫遊寺中にエイリア学園のイプシロン……ああ、エイリア学園のファーストランクチームだよ。それが襲撃してきてね、訪れていた雷門と対戦することになったんだ」
雷門、という言葉に足が止まりそうになるけれど、何でもないように一歩を踏み出した。……一瞬だったし、相手は背を向けてるし、バレてないだろう。
「雷門中のメンバーの中には控えの子なのかな?ずいぶん動きが拙い子も入っていてね。けれどその選手……なんと、イプシロンのキャプテンのシュートを止めたんだ」
なんて言葉だけならさも驚いたようなリアクションをとっているけれど、声のトーンは一切変わっていない。
彼がこんな話をする真意がまるで分らない。やっぱり帰るべきだったと要らない意地を張った数分前の自分を恨んでいる間にも語りは進んでいく。
「それでね、その選手を一生懸命応援している女の子がいてね。雷門のマネージャーだと思うけど」
ふと、彼は足を止めて振り返った。
さらりと赤髪が揺れて、涼しげな目元がこちらを見た。
「そういえば、その子」
そして笑っているのに、笑っていない。そんな笑顔を浮かべて。
ー不動さんに似てたな。
姉妹かな?なんて宣う彼に、
私は反射的に持っていたボールを蹴り込んだ。
シュウウウ……とボールは彼の顔の真横を通り抜けて、摩擦音を立てながら木へとめり込んだ。回転が止んで、そのボールはころころと地面を転がっていく。
「うぜぇ……」
ただ、そんなことどうでもよくて。
私はちっとも表情を変えずにこちらを見る彼を感情のまま、睨みつけた。
「テメェと仲良く世間話をする暇なんざねぇんだよ。マスターランクチーム、キャプテン。グラン様?」
我ながら強引な話の打ち切り方だったという自覚はあった。
だけど、これ以上話してもいいことなんて何一つない確信もあったから睨むだけ睨んでさっさと帰ろうと背を向けようとすれば、
腕を掴まれた。
「あ?……っおい!!」
何故掴まれているか分からなくて、一瞬動きを止めている間にもう片方の腕も掴まれいて、そこで私は、グランさんに両腕を掴まれ見下ろされていることに気づいた。
「……ハッ、こんな下っ端にボール当てられそうになってキレるなんてマスターランクも案外、余裕ねぇんだな」
動揺を悟られないように笑みを浮かべながら、腕を振りほどこうとするけれど、ぴくりとも動かない。
先日、小鳥遊さんにも腕を掴まれたけれど、彼女の手とはまるで違う力に男女の差を思い知らされて苛立ちから歯を食いしばる。
「かわいいね」
「……は、ぁ?」
怒鳴りつけようとした矢先に聞こえたあまりにも場違いな言葉に、抵抗も忘れてグランさんの顔を見てしまった。
相変わらず本心の見えない笑顔を浮かべながら彼はうん、やっぱり、と納得したように何度か頷いて、嬉しそうに目を細めた。
「不動さんってうさぎに似てかわいいね」
「……うさぎ…………」
その言葉に脳裏に浮かぶのは、あの人達と行った動物園。
すぐにその記憶打ち消して、彼の言葉の真意を探ろうとするが、理解ができず、グランさんを見る事しかできない。
「知ってる?うさぎって群れで生活する動物だから、孤独だとストレスを感じるらしいよ。ほらよく言うでしょ、うさぎって寂しいと死んじゃうって」
まあ、本当に死ぬわけじゃないけどね。なんてすらすら話す彼は宇宙人のくせに、そんな日本の雑学を知ってるようで。
…………じゃなくて、
「……離せよ」
うさぎについて語るのは勝手にしとけばいい。
だけど、彼の前提を知っている以上もう話は聞きたくない。
耳を塞ぎたいのに、いっそ逃げたいのに腕は掴まれたまま動かない。
青白い細腕のくせに、なんでこんなに力があるんだよ。
「でも警戒心はすっごく強くて、ひとりぼっちが嫌なくせに手を伸ばそうとすると逃げちゃう」
「……ッ離せ!!」
他のものに思考を巡らせようにも真正面から聞こえる声を聞き流せず、私は結局喚くことしかできない。
そんな中、グイッと腕を引き寄せられて、グランさんに顔を覗き込まれ、
「今の不動さんにそっくり」
そう、突き付けてきた。
「ーッ!離せっつってんだろ!!?」
ぐらりと視界が揺れる感覚に襲われけれど、私は崩れ落ちるのを何とか耐える。
だけど、いつまで経っても外れない腕にどうしようもない焦燥感に駆られて、
「もう、放してよ……!!」
今の自分の顔を見せたくなくて、俯いて怒鳴りつけることしかできなかった。
数秒間、辺りが沈黙に包まれてからパッと手首の圧迫感が消える感覚に私は顔を上げた。
グランさんは私から背を向けて数歩歩いた後に屈んで、再びこちらへ歩いてきた。手にはー私がさっき蹴ったー黒いサッカーボール。
「君は俺らと違うんだから、あんまりその力に頼らないほうがいい」
そんな風に話しながら、ちらりと視線を送るのは私の胸元のいつの間にかパーカーの外へと出ていたペンダントで。
「またね」
なんて、軽い挨拶と一緒に呆然と立ち尽くす私の手にそのボールを乗せて、ワープ機能を起動させた。
「ッ!!」
ハッとした時にはサッカーボールは手から落ちて床を転がった。
ただその床には見覚えがあって、周りを見回せば、ここが真・帝国学園の自室だと分かった。
……グランさんに、送ってもらったんだと彼の姿を思い出して、
「ぁああああっ!!!」
目の前が、真っ赤になった。
「っふざけ、やがって……ッ!!!」
感情のまま、周りの物を蹴りつけながら私は拳を握りしめる。
送ってくれる優しい人?いや、違う、あれは自分を格下だと思っているからあんな態度を取れるんだ。
だから私を簡単に押さえつけて、挙句の果てに小動物で例えるなんて悪趣味なことができるんだ……!!
ボールを当てようとした意趣返しだろう。
けど、でも、そもそも向こうが妹の存在を出さなかったら私は……!!
「クソッ……!!」
ガンッと地面に転がる椅子を蹴りつけてところで、段々と冷静さが戻ってきた私は、肩で息をしながら周りを見回した。
部屋は荒れに荒れていた。壁や床が所々凹んでいるし、椅子は倒れてて机の上の資料は床の上に散らばっていて……自業自得とはいえこれを片付けのは億劫だ。
「……私って、こんな暴力的だったっけ」
握りすぎたせいだろう、手を見れば爪が食い込んだのか手の平には血が滲んでいた。
……逆に、グランさんに掴まれたはずの手首には何の跡もなくて、あれすらも加減されたんだと思い知らされる。
私はため息をつきながら床に散らばる資料をまとめるために屈んだ。
彼らに関して個人的な感情としては、戦う手段がどうしてサッカーなんだ?と思ったけれど、わざわざ答えを調べる程でもない。
お父さんが従っているから私も従う。それだけだ。
ただ、そんな立場もあって、命令が来たら従わなくてはいけないのが面倒だと思うぐらいで。
「あれ?不動さん」
パチリと瞬きをして目を丸くして、私の名前を呼ぶ橙色のジャケットを羽織った赤髪の男子。彼を前に私はため息をつきたくなる気持ちを抑えて、愛想笑いを作った。
「……迎えに行け、と命令が下ったので来ました」
そして持っていた私も北海道に行く際にも使用した、エイリア学園が生み出した黒いサッカーボールを手渡そうとするけれど、
「そっか。けど俺は大丈夫だからもう帰っても大丈夫だよ」
「は?……おい!」
ボールを一瞥するだけで、その男子は早々に私の横を横切って山道を歩いて行く。
私に彼を追う義理はないにしろ、言う通り動くのも癪に感じて、舌打ちを溢しながら仕方なく彼の後をついていった。
横目で私を見た彼は、すぐに前を向けて口を開いた。
「先日、漫遊寺中にエイリア学園のイプシロン……ああ、エイリア学園のファーストランクチームだよ。それが襲撃してきてね、訪れていた雷門と対戦することになったんだ」
雷門、という言葉に足が止まりそうになるけれど、何でもないように一歩を踏み出した。……一瞬だったし、相手は背を向けてるし、バレてないだろう。
「雷門中のメンバーの中には控えの子なのかな?ずいぶん動きが拙い子も入っていてね。けれどその選手……なんと、イプシロンのキャプテンのシュートを止めたんだ」
なんて言葉だけならさも驚いたようなリアクションをとっているけれど、声のトーンは一切変わっていない。
彼がこんな話をする真意がまるで分らない。やっぱり帰るべきだったと要らない意地を張った数分前の自分を恨んでいる間にも語りは進んでいく。
「それでね、その選手を一生懸命応援している女の子がいてね。雷門のマネージャーだと思うけど」
ふと、彼は足を止めて振り返った。
さらりと赤髪が揺れて、涼しげな目元がこちらを見た。
「そういえば、その子」
そして笑っているのに、笑っていない。そんな笑顔を浮かべて。
ー不動さんに似てたな。
姉妹かな?なんて宣う彼に、
私は反射的に持っていたボールを蹴り込んだ。
シュウウウ……とボールは彼の顔の真横を通り抜けて、摩擦音を立てながら木へとめり込んだ。回転が止んで、そのボールはころころと地面を転がっていく。
「うぜぇ……」
ただ、そんなことどうでもよくて。
私はちっとも表情を変えずにこちらを見る彼を感情のまま、睨みつけた。
「テメェと仲良く世間話をする暇なんざねぇんだよ。マスターランクチーム、キャプテン。グラン様?」
我ながら強引な話の打ち切り方だったという自覚はあった。
だけど、これ以上話してもいいことなんて何一つない確信もあったから睨むだけ睨んでさっさと帰ろうと背を向けようとすれば、
腕を掴まれた。
「あ?……っおい!!」
何故掴まれているか分からなくて、一瞬動きを止めている間にもう片方の腕も掴まれいて、そこで私は、グランさんに両腕を掴まれ見下ろされていることに気づいた。
「……ハッ、こんな下っ端にボール当てられそうになってキレるなんてマスターランクも案外、余裕ねぇんだな」
動揺を悟られないように笑みを浮かべながら、腕を振りほどこうとするけれど、ぴくりとも動かない。
先日、小鳥遊さんにも腕を掴まれたけれど、彼女の手とはまるで違う力に男女の差を思い知らされて苛立ちから歯を食いしばる。
「かわいいね」
「……は、ぁ?」
怒鳴りつけようとした矢先に聞こえたあまりにも場違いな言葉に、抵抗も忘れてグランさんの顔を見てしまった。
相変わらず本心の見えない笑顔を浮かべながら彼はうん、やっぱり、と納得したように何度か頷いて、嬉しそうに目を細めた。
「不動さんってうさぎに似てかわいいね」
「……うさぎ…………」
その言葉に脳裏に浮かぶのは、あの人達と行った動物園。
すぐにその記憶打ち消して、彼の言葉の真意を探ろうとするが、理解ができず、グランさんを見る事しかできない。
「知ってる?うさぎって群れで生活する動物だから、孤独だとストレスを感じるらしいよ。ほらよく言うでしょ、うさぎって寂しいと死んじゃうって」
まあ、本当に死ぬわけじゃないけどね。なんてすらすら話す彼は宇宙人のくせに、そんな日本の雑学を知ってるようで。
…………じゃなくて、
「……離せよ」
うさぎについて語るのは勝手にしとけばいい。
だけど、彼の前提を知っている以上もう話は聞きたくない。
耳を塞ぎたいのに、いっそ逃げたいのに腕は掴まれたまま動かない。
青白い細腕のくせに、なんでこんなに力があるんだよ。
「でも警戒心はすっごく強くて、ひとりぼっちが嫌なくせに手を伸ばそうとすると逃げちゃう」
「……ッ離せ!!」
他のものに思考を巡らせようにも真正面から聞こえる声を聞き流せず、私は結局喚くことしかできない。
そんな中、グイッと腕を引き寄せられて、グランさんに顔を覗き込まれ、
「今の不動さんにそっくり」
そう、突き付けてきた。
「ーッ!離せっつってんだろ!!?」
ぐらりと視界が揺れる感覚に襲われけれど、私は崩れ落ちるのを何とか耐える。
だけど、いつまで経っても外れない腕にどうしようもない焦燥感に駆られて、
「もう、放してよ……!!」
今の自分の顔を見せたくなくて、俯いて怒鳴りつけることしかできなかった。
数秒間、辺りが沈黙に包まれてからパッと手首の圧迫感が消える感覚に私は顔を上げた。
グランさんは私から背を向けて数歩歩いた後に屈んで、再びこちらへ歩いてきた。手にはー私がさっき蹴ったー黒いサッカーボール。
「君は俺らと違うんだから、あんまりその力に頼らないほうがいい」
そんな風に話しながら、ちらりと視線を送るのは私の胸元のいつの間にかパーカーの外へと出ていたペンダントで。
「またね」
なんて、軽い挨拶と一緒に呆然と立ち尽くす私の手にそのボールを乗せて、ワープ機能を起動させた。
「ッ!!」
ハッとした時にはサッカーボールは手から落ちて床を転がった。
ただその床には見覚えがあって、周りを見回せば、ここが真・帝国学園の自室だと分かった。
……グランさんに、送ってもらったんだと彼の姿を思い出して、
「ぁああああっ!!!」
目の前が、真っ赤になった。
「っふざけ、やがって……ッ!!!」
感情のまま、周りの物を蹴りつけながら私は拳を握りしめる。
送ってくれる優しい人?いや、違う、あれは自分を格下だと思っているからあんな態度を取れるんだ。
だから私を簡単に押さえつけて、挙句の果てに小動物で例えるなんて悪趣味なことができるんだ……!!
ボールを当てようとした意趣返しだろう。
けど、でも、そもそも向こうが妹の存在を出さなかったら私は……!!
「クソッ……!!」
ガンッと地面に転がる椅子を蹴りつけてところで、段々と冷静さが戻ってきた私は、肩で息をしながら周りを見回した。
部屋は荒れに荒れていた。壁や床が所々凹んでいるし、椅子は倒れてて机の上の資料は床の上に散らばっていて……自業自得とはいえこれを片付けのは億劫だ。
「……私って、こんな暴力的だったっけ」
握りすぎたせいだろう、手を見れば爪が食い込んだのか手の平には血が滲んでいた。
……逆に、グランさんに掴まれたはずの手首には何の跡もなくて、あれすらも加減されたんだと思い知らされる。
私はため息をつきながら床に散らばる資料をまとめるために屈んだ。