Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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『弁当、取りに行ける?』
昼前に業者の人から連絡が入ったらしく、しかし時間帯的に私の順番だったので、そう聞かれた。
「はい、行ってきます」
飛び出したところ、『ちょっと待って』と呼び止められる。
「一人じゃ持って来れないでしょうが」
「く、ろお先輩」
『2人で行けるー?』
「まあ大丈夫でしょう。黒尾さん頑張りますよー」
「ほら行くぞ」と黒尾先輩が続ける。弁当取りに行くって、地味な仕事で不服だったけど。黒尾先輩と二人で行けるなら役得だ。ラッキー。
ニマニマしてしまうのを必死に抑えつつ―――たぶん抑えられてなかったけど―――受け降り場所へと急ぐ。
「サチ先輩、苦手なの?」
「いえ、苦手なんてそんな。……でも、完璧すぎて、私のこと使えないって思ってるんだろうなあ、って」
「そお? あれは、そんな裏のあるヤツじゃないよ?」
「……」
わかっていたことだけど、黒尾先輩が倉木さんの肩を持つのはイヤ。
だから黒尾先輩には倉木さんのこと話題にしないようにしているのに、黒尾先輩が口にする話題はいつもいつも倉木さん関係のことばかり。
だからだろうか。
知らない人の、知らない声が耳に届いた。
「あいつ、まだ黒尾にくっついてんの? しかもマネって。相変わらずだよねー」
え。倉木さんのことじゃん。
そう思って、それとなく声のした方を見ると、私服姿のおそらく高校生くらいの人たちが話していた。
階段を上っていく姿を捉えたところで、先を歩く黒尾先輩から名前を呼ばれたので、興味は湧いたものの、黒尾先輩の方へと向かった。
「あれ覚えてる? 中学の頃さあ、黒尾のこと鉄朗って呼んでたの」
「ああ、あったねえ。ダサいって言ったらすぐ辞めてさ」
「そんなんで辞めるなら、最初から幼馴染アピールするなってのー」
弁当を持って行ってすぐ、階段を追いかけてそれっぽい人を探せば、階段から比較的近い所に座っていた。
まだ倉木さんの悪口大会は継続中のようだ。
黒尾先輩は倉木さんのことサチって呼ぶのに、倉木さんが黒尾って呼ぶのは、そういう過去があったんだなーって。
何しにここに来たのかはわからないけど、でもなんか気になってここに来た。音駒のバレー部はみんな倉木さんの悪口なんか言わない、むしろ頼りっぱなしでさえある。だから、かもしれない。倉木さんのマイナスポイント、知りたい。
「黒尾も黒尾よね、あんなヤツのどこがいいのか。よく面倒見てるわ」
「中学の時に告白した子、みんな”好きな子いるから”って断られたんだっけ?」
「幼馴染、そんないいですかね~。倉木みたいな幼馴染なら、私は願い下げだけど」
「あははは、確かに。愛想ないしねー」
「さっき遠くにいたから見てたけどさ、全然笑わらないのね。なのに男子からチヤホヤされてさあ。満更でもなさそうなの、ウケた」
品のない笑い声がそのあたりに響いている。
会話の内容の割に、この二人から聞けた倉木さんのマイナスポイントは愛想が悪いということだけ。そんなのこちとら知っている。
これ以上聞いてても得るものはないかな。
踵をかえそうとしたところ。
「もしさあ、倉木と鉢合わせしたら、どんな顔するのかな?」
「えー、泣いちゃうんじゃない?」
「ちょっと、やりすぎないでよ? 中学の時も危なかったんだから」
「大丈夫でしょ、あいつ愛想悪くて友達いないし。相談する相手いないって」
へえ。何かあったんだ、中学で。
でも一度戻ろう。あんまり長くベンチを開けるのは良くないだろう。
いろいろと考えを巡らせながら階段を下りて音駒の陣地に戻る。
愛想が悪いのは昔からなんだなー。
あの感じじゃ、いじめられてた? 中学?
あの人たちは黒尾先輩のこと好きだったのかな?
だから倉木さんのこと悪く思ってる?
中学の時の危なかったってヤツ、なんだろう?
倉木さんには聞けないし、黒尾先輩に聞いたら教えてくれるのかな。
気づけば音駒の陣地に到着していて、「おう、咲良。お前も飯食っとけよ」と誰かに言われた。倉木さんは何してるのかと姿を探すと、黒尾先輩と二人で何やら話し込んでいる。倉木さんお手製のノートを囲んでいるから、次の試合の作戦会議だろうか。
なんでもできる先輩マネ。
その人がいる限りこちらを向いてはくれない思い人。
そんな意図はないことはわかっている。
でも思ってしまうのだ、見せつけられているなあ、って。
私の入る余地ないなあ、って。
だから。
ちょっとした好奇心のようなものが、私の中で打ち勝ってしまったのかもしれない。
「倉木さーん」
黒尾先輩との打ち合わせらしいものが終わったタイミングで声をかけた。
何の疑いもなく、こちらに近づいてくるその人。
「なんか、梟谷の先マネさんが呼んでたんですけど」
『え、かおりんかな? 何て?』
作り話はすぐに思いついて。さらさら口から紡がれる。
「今度の合宿で、こっそり用意したいことがあるって、」
『ええ、何それ? どの辺?』
「あ、こっちです。誰にも聞かれたくないって言ってて」
あの人たちは、きっとあのベンチにまだいるだろうから、そこまで連れて行けばいい。
階段をのぼり、前の方のベンチに座らせればいいかな。と席を探していたら。
「あれ、噂をすれば倉木じゃん」
探していた人物が、目の前に迫っていた。
名前は知らない。
でも倉木さんを追い詰めてくれる人。
09新マネちゃんの策略
ちょっとイタズラしてやろう、そんな軽い気持ちで。あんな大ごとになるとは思ってなくて。
昼前に業者の人から連絡が入ったらしく、しかし時間帯的に私の順番だったので、そう聞かれた。
「はい、行ってきます」
飛び出したところ、『ちょっと待って』と呼び止められる。
「一人じゃ持って来れないでしょうが」
「く、ろお先輩」
『2人で行けるー?』
「まあ大丈夫でしょう。黒尾さん頑張りますよー」
「ほら行くぞ」と黒尾先輩が続ける。弁当取りに行くって、地味な仕事で不服だったけど。黒尾先輩と二人で行けるなら役得だ。ラッキー。
ニマニマしてしまうのを必死に抑えつつ―――たぶん抑えられてなかったけど―――受け降り場所へと急ぐ。
「サチ先輩、苦手なの?」
「いえ、苦手なんてそんな。……でも、完璧すぎて、私のこと使えないって思ってるんだろうなあ、って」
「そお? あれは、そんな裏のあるヤツじゃないよ?」
「……」
わかっていたことだけど、黒尾先輩が倉木さんの肩を持つのはイヤ。
だから黒尾先輩には倉木さんのこと話題にしないようにしているのに、黒尾先輩が口にする話題はいつもいつも倉木さん関係のことばかり。
だからだろうか。
知らない人の、知らない声が耳に届いた。
「あいつ、まだ黒尾にくっついてんの? しかもマネって。相変わらずだよねー」
え。倉木さんのことじゃん。
そう思って、それとなく声のした方を見ると、私服姿のおそらく高校生くらいの人たちが話していた。
階段を上っていく姿を捉えたところで、先を歩く黒尾先輩から名前を呼ばれたので、興味は湧いたものの、黒尾先輩の方へと向かった。
「あれ覚えてる? 中学の頃さあ、黒尾のこと鉄朗って呼んでたの」
「ああ、あったねえ。ダサいって言ったらすぐ辞めてさ」
「そんなんで辞めるなら、最初から幼馴染アピールするなってのー」
弁当を持って行ってすぐ、階段を追いかけてそれっぽい人を探せば、階段から比較的近い所に座っていた。
まだ倉木さんの悪口大会は継続中のようだ。
黒尾先輩は倉木さんのことサチって呼ぶのに、倉木さんが黒尾って呼ぶのは、そういう過去があったんだなーって。
何しにここに来たのかはわからないけど、でもなんか気になってここに来た。音駒のバレー部はみんな倉木さんの悪口なんか言わない、むしろ頼りっぱなしでさえある。だから、かもしれない。倉木さんのマイナスポイント、知りたい。
「黒尾も黒尾よね、あんなヤツのどこがいいのか。よく面倒見てるわ」
「中学の時に告白した子、みんな”好きな子いるから”って断られたんだっけ?」
「幼馴染、そんないいですかね~。倉木みたいな幼馴染なら、私は願い下げだけど」
「あははは、確かに。愛想ないしねー」
「さっき遠くにいたから見てたけどさ、全然笑わらないのね。なのに男子からチヤホヤされてさあ。満更でもなさそうなの、ウケた」
品のない笑い声がそのあたりに響いている。
会話の内容の割に、この二人から聞けた倉木さんのマイナスポイントは愛想が悪いということだけ。そんなのこちとら知っている。
これ以上聞いてても得るものはないかな。
踵をかえそうとしたところ。
「もしさあ、倉木と鉢合わせしたら、どんな顔するのかな?」
「えー、泣いちゃうんじゃない?」
「ちょっと、やりすぎないでよ? 中学の時も危なかったんだから」
「大丈夫でしょ、あいつ愛想悪くて友達いないし。相談する相手いないって」
へえ。何かあったんだ、中学で。
でも一度戻ろう。あんまり長くベンチを開けるのは良くないだろう。
いろいろと考えを巡らせながら階段を下りて音駒の陣地に戻る。
愛想が悪いのは昔からなんだなー。
あの感じじゃ、いじめられてた? 中学?
あの人たちは黒尾先輩のこと好きだったのかな?
だから倉木さんのこと悪く思ってる?
中学の時の危なかったってヤツ、なんだろう?
倉木さんには聞けないし、黒尾先輩に聞いたら教えてくれるのかな。
気づけば音駒の陣地に到着していて、「おう、咲良。お前も飯食っとけよ」と誰かに言われた。倉木さんは何してるのかと姿を探すと、黒尾先輩と二人で何やら話し込んでいる。倉木さんお手製のノートを囲んでいるから、次の試合の作戦会議だろうか。
なんでもできる先輩マネ。
その人がいる限りこちらを向いてはくれない思い人。
そんな意図はないことはわかっている。
でも思ってしまうのだ、見せつけられているなあ、って。
私の入る余地ないなあ、って。
だから。
ちょっとした好奇心のようなものが、私の中で打ち勝ってしまったのかもしれない。
「倉木さーん」
黒尾先輩との打ち合わせらしいものが終わったタイミングで声をかけた。
何の疑いもなく、こちらに近づいてくるその人。
「なんか、梟谷の先マネさんが呼んでたんですけど」
『え、かおりんかな? 何て?』
作り話はすぐに思いついて。さらさら口から紡がれる。
「今度の合宿で、こっそり用意したいことがあるって、」
『ええ、何それ? どの辺?』
「あ、こっちです。誰にも聞かれたくないって言ってて」
あの人たちは、きっとあのベンチにまだいるだろうから、そこまで連れて行けばいい。
階段をのぼり、前の方のベンチに座らせればいいかな。と席を探していたら。
「あれ、噂をすれば倉木じゃん」
探していた人物が、目の前に迫っていた。
名前は知らない。
でも倉木さんを追い詰めてくれる人。
09新マネちゃんの策略
ちょっとイタズラしてやろう、そんな軽い気持ちで。あんな大ごとになるとは思ってなくて。