Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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先週の日曜日から始まったインハイ予選。先週は危なげなく勝ち進み、本日、4試合勝てれば、ベスト4に進出だ。1~4位を決める試合は来週日曜日に持ち越しである。
そんな日曜日。朝体育館へ向かうと、同じ体育館に割り当てられている、梟谷の面々と鉢合わせした。
「お、黒尾じゃん」
「あらあら。半袖半ズボンの木兎さんじゃないですか」
キャブテン同士で挨拶が始まる。
そんな梟谷のキャプテンの横には、2年セッターの赤葦。木兎に上着を着せるべく、なんか頑張っている。
「さっちー、やっほー」
そのさらに横から、梟谷のマネージャーの一人、雀田かおりが手を振っている。梟谷グループの中では、通称かおりんとなっている。気さくで付き合いやすい人だ。
『かおりん、久しぶり』
「あれ、音駒、マネ増えた?」
『増えたよー、1年。カワイイ系』
「あはは、何それ。さっちーもかわいいよ」
なんか普通にお世辞が流れてきたので、とりあえずスルーすることにして、『木兎は今日も元気だね』と話題を逸らす。
「あー、あれねぇ。この時間帯はまだ寒いってのに、上着着ないのよねえ」
『赤葦頑張ってるじゃん、相変わらず』
「放っておけばいいのにねー」
くすくすと陰で揶揄していると、「む、なんか寒気がする!」と突然に上着を着だした渦中の人。結果オーライだ。
『着たよ?』
「着ましたね~」
「あ、あの、」
下から声がした。バレー部では久しくない感覚で、声のした方を見ると、咲良がモジモジと立っていた。
『あ。かおりん、かわいい系マネの咲良』
「よろしくお願いします!」
「ホントだ、かわいい系だね。梟谷の雀田かおりです。あと、向こうにいるのが白福雪絵ね」
すごいなあ、自分で話しかけにくるタイプ。改めて咲良の積極性に感心する。
『そういや、雪ちゃん何してるの?』
「あー、なんか食べすぎちゃったみたいで、バス酔いだって」
『ああ、』
よく食べるキャラとして定着している雪ちゃんこと白福雪絵も相変わらずのようである。
「はーい、マネさんたち、行きますよー」
黒尾の号令で、名残惜しいがしばしのお別れ。
試合が終わったら、毎年夏休みの合宿をするから、そこでまた会うことになるだろう。
「じゃまたね」
『うん。また夏休み』
隣でハテナな咲良には、後で合宿の話をしておかないとな、と脳内メモをした。
『さっきの、夏休みって言うのは、毎年梟谷グループでやってる合宿のことね』
移動中、急に倉木さんからの説明が入った。
でも夏休みまでマネ続けているかわからないから、聞き流してもいいかなーって。
「そりより倉木さん、今日のベンチ、私も入れますか?」
試合のベンチには、マネは一人しか入れないと言っていた。
倉木さんは3年生だけど、3年生は試合に負けたら引退だし、私の今後のためにベンチ経験させてくれるだろうと質問したのだけど。
『咲良、スコアつけられないでしょ、まだ。今回は私が入るよ』
「え、」
『ん?』
「引退する前に、入ってみて実戦踏んだ方が、倉木さんに質問できるかなーって、思ったんですけど」
『引退? あー、そっか。……今の所、私も含めて3年生は、春高まで残る予定だよ』
「ハルコウ……?」
初めて聞くワードに首を傾げれば、『全日本バレーボール高等学校選手権大会のこと』と返ってくる。とりあえず何かしらの試合らしい。
「それをなんで春高って言うんですか?」
『以前まで、春休みにやる大会だったからってことらしいよ。今は3年生が出られるように、1月に開催されてる』
「1月!?」
だいたいの部活は、インハイ予選終われば3年生は引退するものだと思っていた。だから、今マネージャーしながら黒尾先輩に近づいて、インハイ予選終わって3年生が引退したら、私も部活辞めて黒尾先輩とデートしよう。
そういう計画だった。それなのに。
「1月って、まだ半年以上あるじゃないですかっ!」
『そうね。……もちろん、今回のインハイ予選も、全国狙ってるよ』
「……全国!?」
『うちのチーム、冴えない感じだけど、結構強いと思うよ』
「え、でもそれって、”目指せ全国制覇!”的なノリのやつですよね?」
『はは、そう思う? まあ、今回の試合、周りの様子とか見てみなよ』
そう言って、くるりと向きを変え、『受付してくる』と駆けていく。途中、サチさんサチさんと呼び止められるも、端的に処理して何事もなかったかのように受付へと向かう。
なんか、かっこいい。
いやいやいや、そんなはずはない。
私は黒尾先輩に好かれるためにマネになったのであって、同姓のマネにかっこいいという感情を抱いている場合ではない。
そもそも! かっこよくない、認めない!
「どうかしたか?」
一人でブツブツ言いながら頭を激しく振り回していたせいか、夜久先輩から不思議な顔をされる。
「いえ、ちょっと考え事を……」
「そ? じゃあ、テーピングもらえる?」
「はい!」
テーピングは救急箱の中だろうか。救急箱はどこにしまったかを考えながら、手持ちの荷物の上の方を漁る。
あれ、でも救急箱って倉木さん持って行ってなかったっけ?
「倉木さんが持って行ってるかも、です」
「え、マジ? じゃ後にするか、」
その後もカバンの中を漁るが、入っている感じはない。
夜久先輩のほかにもテーピングを巻く人はいるはずだが、みんなほかにできる準備を続けている。
『大会のプログラムもらって来たよー。黒尾、これオーダー表ね』
倉木さんが返ってきた。走ってきたのか、少し息が上がっている。
「おー、倉木、テーピングあるー?」
『え、テーピング? 入ってなかった?』
「こっちのカバン、入ってないです」
事実を伝えると、納得いかないような顔をして、静かにこちらに歩み寄ってくる。
『いつも序盤で使うから、取り出しやすいところに―――』
倉木さんが明けたのは、バックのメインではなく、ポケットのチャック。
私が持っていたバックから、テーピングが現れた。「え、」と思わず驚きの声が漏れる。
「忘れたかと思った、焦ったーー」
とは夜久先輩。
『ゴメンゴメン、ここに入れてるって言っておけばよかったね』
何気ない一コマだったと思う。
テーピング忘れたわけではないし、他に準備することもあったから、準備の順番が変わっただけ。
それだけのことなんだけど、なんというか。
あれ、私何もできないな。って。
なんかそう思ったら、ちょっと落ち込んだ。
『咲良、今日のプログラム。今日の段取り打ち合わせしたいんだけど、今大丈夫?』
「はいっ!」
隅の方で、プログラムを開き、
この試合はどこの高校を確認して。
この間に休憩取って。
弁当の受け取りは、この時間なら誰で。
そんなあたりで異変に気付く。あ、これメモしないといけないヤツ。覚えきれない。
慌ててカバンを漁って筆箱を探すんだけど、そもそも私、昨日の準備の時点で筆箱準備してないのでは?
そしてその考えは当たっていた。
「あ、」
『ん?どうした?』
「えっと、……ペン、忘れて」
いくら、そのうち辞めるって言ってもさあ。
自分で自分のできなさ加減に、嫌気がさした。
些細なことなのかもしれない。でも、倉木さんはそつなくこなせて、私にはできない。
なんか悔しくて、こんなことで。こんなことなのに、うるうると涙があふれてくる。
『ゴメン気づかなくて。はい、これ使―――』
「すみ、ま、せ、」
『えっ、と、……く、黒尾、』
よくわからないけど、倉木さんが慌ててどこかへ行った。
でもすぐに、「どうした?」って優しい声が降ってきて、頭の上に大きな手が降れた。
「何も、できっ、なくてっ、」
見上げたら、やっぱり黒尾先輩で。今までにない優しい顔でこちらを見ていた。
「何もって? いつも練習サポートしてくれてるじゃないの」
言いながら、目線を合わせるようにしゃがみこんで、降ってくる声がすごく近くから聞こえる。
「……テーピングの、場所もっ、わかんなくて、」
「うんうん」
「筆箱も、忘れっ、ちゃうし、……ッ」
よしよし、としばらく黙って頭を撫でてくれて、私が話し終わったのを確認してから、俯く私に視線を合わせるように、顔を覗きこまれた。
「咲良は今日が初試合なんだし、勝手がわからなくて当たり前。それに、忘れ物なんてみんなやるよー? だから、そんな気にしなさんな」
ニッと笑う顔が見える。落ち込んでいた気持ちが少し和らいだ。
かっこいいなあって。
「お、笑った?」
「え?」
「よし、大丈夫そうだな。じゃ、サチ先輩が待ってますよ。ペンはほら、これ使っていいってさ」
差し出されたのは、かわいらしい装飾の3色ボールペンで、黒尾先輩のものではないことが窺える。きっと倉木さんのものだろう。
それに私のことは咲良って苗字なのに、倉木さんのことは”サチ”って呼ぶんだよなあ、ってないものねだりも加わって、跳ねた気持ちはまた落下した。
「あ、りがとう、ございます」
お礼を言って、少し離れて作業をしていた倉木さんの方へ向かった。
08インターハイ予選
いつもは倉木さんに向けられている黒尾先輩の優しさが、私に向いたのが嬉しかったなあ、と。でも一方で、倉木さんは、これをいつも独り占めしてたんだな、とも感じた。
そんな日曜日。朝体育館へ向かうと、同じ体育館に割り当てられている、梟谷の面々と鉢合わせした。
「お、黒尾じゃん」
「あらあら。半袖半ズボンの木兎さんじゃないですか」
キャブテン同士で挨拶が始まる。
そんな梟谷のキャプテンの横には、2年セッターの赤葦。木兎に上着を着せるべく、なんか頑張っている。
「さっちー、やっほー」
そのさらに横から、梟谷のマネージャーの一人、雀田かおりが手を振っている。梟谷グループの中では、通称かおりんとなっている。気さくで付き合いやすい人だ。
『かおりん、久しぶり』
「あれ、音駒、マネ増えた?」
『増えたよー、1年。カワイイ系』
「あはは、何それ。さっちーもかわいいよ」
なんか普通にお世辞が流れてきたので、とりあえずスルーすることにして、『木兎は今日も元気だね』と話題を逸らす。
「あー、あれねぇ。この時間帯はまだ寒いってのに、上着着ないのよねえ」
『赤葦頑張ってるじゃん、相変わらず』
「放っておけばいいのにねー」
くすくすと陰で揶揄していると、「む、なんか寒気がする!」と突然に上着を着だした渦中の人。結果オーライだ。
『着たよ?』
「着ましたね~」
「あ、あの、」
下から声がした。バレー部では久しくない感覚で、声のした方を見ると、咲良がモジモジと立っていた。
『あ。かおりん、かわいい系マネの咲良』
「よろしくお願いします!」
「ホントだ、かわいい系だね。梟谷の雀田かおりです。あと、向こうにいるのが白福雪絵ね」
すごいなあ、自分で話しかけにくるタイプ。改めて咲良の積極性に感心する。
『そういや、雪ちゃん何してるの?』
「あー、なんか食べすぎちゃったみたいで、バス酔いだって」
『ああ、』
よく食べるキャラとして定着している雪ちゃんこと白福雪絵も相変わらずのようである。
「はーい、マネさんたち、行きますよー」
黒尾の号令で、名残惜しいがしばしのお別れ。
試合が終わったら、毎年夏休みの合宿をするから、そこでまた会うことになるだろう。
「じゃまたね」
『うん。また夏休み』
隣でハテナな咲良には、後で合宿の話をしておかないとな、と脳内メモをした。
『さっきの、夏休みって言うのは、毎年梟谷グループでやってる合宿のことね』
移動中、急に倉木さんからの説明が入った。
でも夏休みまでマネ続けているかわからないから、聞き流してもいいかなーって。
「そりより倉木さん、今日のベンチ、私も入れますか?」
試合のベンチには、マネは一人しか入れないと言っていた。
倉木さんは3年生だけど、3年生は試合に負けたら引退だし、私の今後のためにベンチ経験させてくれるだろうと質問したのだけど。
『咲良、スコアつけられないでしょ、まだ。今回は私が入るよ』
「え、」
『ん?』
「引退する前に、入ってみて実戦踏んだ方が、倉木さんに質問できるかなーって、思ったんですけど」
『引退? あー、そっか。……今の所、私も含めて3年生は、春高まで残る予定だよ』
「ハルコウ……?」
初めて聞くワードに首を傾げれば、『全日本バレーボール高等学校選手権大会のこと』と返ってくる。とりあえず何かしらの試合らしい。
「それをなんで春高って言うんですか?」
『以前まで、春休みにやる大会だったからってことらしいよ。今は3年生が出られるように、1月に開催されてる』
「1月!?」
だいたいの部活は、インハイ予選終われば3年生は引退するものだと思っていた。だから、今マネージャーしながら黒尾先輩に近づいて、インハイ予選終わって3年生が引退したら、私も部活辞めて黒尾先輩とデートしよう。
そういう計画だった。それなのに。
「1月って、まだ半年以上あるじゃないですかっ!」
『そうね。……もちろん、今回のインハイ予選も、全国狙ってるよ』
「……全国!?」
『うちのチーム、冴えない感じだけど、結構強いと思うよ』
「え、でもそれって、”目指せ全国制覇!”的なノリのやつですよね?」
『はは、そう思う? まあ、今回の試合、周りの様子とか見てみなよ』
そう言って、くるりと向きを変え、『受付してくる』と駆けていく。途中、サチさんサチさんと呼び止められるも、端的に処理して何事もなかったかのように受付へと向かう。
なんか、かっこいい。
いやいやいや、そんなはずはない。
私は黒尾先輩に好かれるためにマネになったのであって、同姓のマネにかっこいいという感情を抱いている場合ではない。
そもそも! かっこよくない、認めない!
「どうかしたか?」
一人でブツブツ言いながら頭を激しく振り回していたせいか、夜久先輩から不思議な顔をされる。
「いえ、ちょっと考え事を……」
「そ? じゃあ、テーピングもらえる?」
「はい!」
テーピングは救急箱の中だろうか。救急箱はどこにしまったかを考えながら、手持ちの荷物の上の方を漁る。
あれ、でも救急箱って倉木さん持って行ってなかったっけ?
「倉木さんが持って行ってるかも、です」
「え、マジ? じゃ後にするか、」
その後もカバンの中を漁るが、入っている感じはない。
夜久先輩のほかにもテーピングを巻く人はいるはずだが、みんなほかにできる準備を続けている。
『大会のプログラムもらって来たよー。黒尾、これオーダー表ね』
倉木さんが返ってきた。走ってきたのか、少し息が上がっている。
「おー、倉木、テーピングあるー?」
『え、テーピング? 入ってなかった?』
「こっちのカバン、入ってないです」
事実を伝えると、納得いかないような顔をして、静かにこちらに歩み寄ってくる。
『いつも序盤で使うから、取り出しやすいところに―――』
倉木さんが明けたのは、バックのメインではなく、ポケットのチャック。
私が持っていたバックから、テーピングが現れた。「え、」と思わず驚きの声が漏れる。
「忘れたかと思った、焦ったーー」
とは夜久先輩。
『ゴメンゴメン、ここに入れてるって言っておけばよかったね』
何気ない一コマだったと思う。
テーピング忘れたわけではないし、他に準備することもあったから、準備の順番が変わっただけ。
それだけのことなんだけど、なんというか。
あれ、私何もできないな。って。
なんかそう思ったら、ちょっと落ち込んだ。
『咲良、今日のプログラム。今日の段取り打ち合わせしたいんだけど、今大丈夫?』
「はいっ!」
隅の方で、プログラムを開き、
この試合はどこの高校を確認して。
この間に休憩取って。
弁当の受け取りは、この時間なら誰で。
そんなあたりで異変に気付く。あ、これメモしないといけないヤツ。覚えきれない。
慌ててカバンを漁って筆箱を探すんだけど、そもそも私、昨日の準備の時点で筆箱準備してないのでは?
そしてその考えは当たっていた。
「あ、」
『ん?どうした?』
「えっと、……ペン、忘れて」
いくら、そのうち辞めるって言ってもさあ。
自分で自分のできなさ加減に、嫌気がさした。
些細なことなのかもしれない。でも、倉木さんはそつなくこなせて、私にはできない。
なんか悔しくて、こんなことで。こんなことなのに、うるうると涙があふれてくる。
『ゴメン気づかなくて。はい、これ使―――』
「すみ、ま、せ、」
『えっ、と、……く、黒尾、』
よくわからないけど、倉木さんが慌ててどこかへ行った。
でもすぐに、「どうした?」って優しい声が降ってきて、頭の上に大きな手が降れた。
「何も、できっ、なくてっ、」
見上げたら、やっぱり黒尾先輩で。今までにない優しい顔でこちらを見ていた。
「何もって? いつも練習サポートしてくれてるじゃないの」
言いながら、目線を合わせるようにしゃがみこんで、降ってくる声がすごく近くから聞こえる。
「……テーピングの、場所もっ、わかんなくて、」
「うんうん」
「筆箱も、忘れっ、ちゃうし、……ッ」
よしよし、としばらく黙って頭を撫でてくれて、私が話し終わったのを確認してから、俯く私に視線を合わせるように、顔を覗きこまれた。
「咲良は今日が初試合なんだし、勝手がわからなくて当たり前。それに、忘れ物なんてみんなやるよー? だから、そんな気にしなさんな」
ニッと笑う顔が見える。落ち込んでいた気持ちが少し和らいだ。
かっこいいなあって。
「お、笑った?」
「え?」
「よし、大丈夫そうだな。じゃ、サチ先輩が待ってますよ。ペンはほら、これ使っていいってさ」
差し出されたのは、かわいらしい装飾の3色ボールペンで、黒尾先輩のものではないことが窺える。きっと倉木さんのものだろう。
それに私のことは咲良って苗字なのに、倉木さんのことは”サチ”って呼ぶんだよなあ、ってないものねだりも加わって、跳ねた気持ちはまた落下した。
「あ、りがとう、ございます」
お礼を言って、少し離れて作業をしていた倉木さんの方へ向かった。
08インターハイ予選
いつもは倉木さんに向けられている黒尾先輩の優しさが、私に向いたのが嬉しかったなあ、と。でも一方で、倉木さんは、これをいつも独り占めしてたんだな、とも感じた。