Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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マネになりたいという咲良が入部してきて早1週間。
体育祭以降初の週末がやってきた。1日中練習する、長い長い練習である。
「今日も頑張りますっ!」
気合は十分なのだけど。
新マネちゃんこと咲良ゆかはやる気が空回りするタイプであった。
『力抜きなよ』
「はい! いえ、やる気マックスで頑張ります!」
『……』
そのやる気マックスが困るんだけどなあ。
なんていえばいいかなあ、と考えていると『サチさーん』と遠くから呼ばれる。
『じゃあまずはジャグ作って。全部満タンでね』
「わかりました!」
『終わったら、干してたギプスおろしておいて』
「はい!」
とりあえずはこれでやることはあるだろう。
呼ばれた方へ向かうと、リエーフが倉庫の中で手招きをしていた。
『何した?』
「なんもしてないっすよ! タイマー壊れてて動かないから、」
そう言って、不服そうにタイマーを差し出すリエーフ。
いつも何かしらの問題を起こすから、つい『何した』と聞いてしまったので、それは申し訳なく思いつつ。
『どう壊れたの?』
「電源が入らないっす」
『……電池切れ?』
どこのボタンを押しても、うんともすんとも言わないので、思い当たる節を口に出してみると、「あ」と変な声が聞こえてきた。
「そうか、電池切れか!」
『最初に疑うでしょ』
軽くため息をつきつつ、普段なら部室にある電池を取りに行ってもらうのだが、今日は新マネちゃんが来ているので、マネの仕事は私がいなくても進む。ということで、自分で部室へ取りに行くことにする。
『これは私やっとくから、他の準備よろしくー』
「わかりました!」
元気だけは良い。
そして元気のよい返事をする咲良のことを思い出し、なんだか似てるなあ、と。
大丈夫だとは思うけど、一応様子見てから部室に行くことにして、来た道を戻ってドアからひょいと顔を出したところ。
「持っていくから置いてていいぞー」とは山本。
どうやら咲良の手伝いをしてくれているようだ。私には話しかけられないくせに、咲良には話しかけられるのか。自分より年下だからか?かわいいからか?とか考えてみるが答えはわからない。どっちもかな?
「いや、私の仕事なので」
「でも重くて持てないんだろ? いいよ持っていく」
ああ、そうか。
あれくらい小柄になると、ジャグ満タンだと持てないのか。
普段、ちょっと重いなあくらいで普通に持てていたので、気を付けないとなあ、と反省。
「……でも、これくらいできないと、マネなんだし、」
それでも頑なマネちゃんに、山本からまたも予想外の言葉が飛び出る。
「大丈夫だって。サチさん、そんなに怖くねーよ」
え、私?
なんで私?
マネちゃん、私のこと怖いの?
なんか怖いことしたっけ?
「倉木さんに認めてもらえないと、マネになれないし、」
「え、そうなの?」
山本が驚くのも無理はない。だって私も初耳だもの。
そんなこと言った覚えない。
「まだ仮入部だから……」
「そりゃあ、誰でも仮入部期間あるだろ。俺もあったし」
「だから、頑張らないと認めてもらえない、んです」
よくわからないけど、とりあえず私の出る幕はないな、と判断して部室へと向かうことにした。
女の子というのは、何がどう転じるのか、正直よくわからない。複雑怪奇だ。やっぱり、関わらないのが吉だなあ、と。
先ほどのタイマーに電池を取り付けていたところ、「なーんかお困りですか」と声が降ってきた。幼馴染であるところの黒尾鉄朗だ。
『べつにーー』
「頼りになる主将さんが聞いてあげますよ」
『なんでもないよ』
目の前のタイマーに集中すると、ずい、と黒尾の顔が湧き出た。
『うわ』
「うわ、はないでしょーが。傷つきますって」
『言われたいのかと思った』
「で。何があったんですか、サチさん」
強引に話を戻し、黒尾もすぐ隣に腰かけた。体育倉庫の床は、6月といえどまだ少しひんやりする。
『ほんとに、何もなかったよ』
それでやり過ごしたかったのだけど、思いのほか黒尾からの圧がすごくて根負けした。
『……ただ、女の子と付き合うのは難しいな、と』
「ああ、咲良ね」
『黒尾が好きで入ったんだから、黒尾が面倒見てよ』
「いやあ。スーパー完璧マネさんの仕事ぶりを教えるのは、俺にはできません」
『何それ。私そんな完璧? ってか、全然頼りにならないじゃん、主将のくせに』
タイマーに電池を入れて蓋を占める。スイッチを押すと、ピ、と音が鳴っていつも通りのモニターが表示された。やっぱり電池切れなだけじゃん。
「サチさんの完璧ぶりはすごいよ? 他校のマネさんも驚いてるらしいから、幼馴染としては鼻高々ですけどね」
『何それ初耳』
「サチさんの作る他校の攻略ブック、欲しがる学校は多いと思いますけどー」
黒尾がいう攻略ブックとは、夜な夜な他校の動画を見ながら、集めた情報をまとめたノートのこと。中学の現役の頃からのクセというか趣味というか、まあそういうヤツ。
『ほとんど趣味だから、あれは。マネの仕事ではない』
「じゃまあそれは置いておいて。うちの部のこと一人で全部回してるんだから、それもすごいことじゃない?」
『一人では回してないでしょ。程よくみんなをこき使ってます。……で、そんなに褒めて何を企んでるの?』
黒尾の意図がつかめず、そう質問しつつ、思い当たる節が一つだけ。
『ああ、さては焼肉をチャラにしたいのかしら?』
私が出る種目で1位が取れたら、焼き肉をおごる、という取引をつい先週行った。体育祭での取り決めである。そして今日はその焼肉の決行日。
「んなことしませんー。男に二言はないですー」
『じゃあ、なんで』
「純粋に。幼馴染を心配してるんでしょうが。素直に受け取りなさいよ」
さらっと、恥ずかしげもなく、そんなことを口にする。
黒尾ってこういうヤツだよなあ、と。
『……じゃあ、焼肉食べる時に聞いてもらおうかなあ』
「ようやく素直になりましたか。よろしい」
言質を取ったことに満足したのか、電池交換により本来の動きを取り戻したタイマーを拾い上げて、「タイマー、サンキューな」と倉庫を後にする。
「ああ、それと。咲良にはバレーボールのルールとかは教えておくから。ついでに審判もこっちでするし。サチさんはやりたいことやってて良いですよ」
言外に、動画漁りのことを言っている。
いつもは家に帰ってから、夜な夜なやっている、他校の情報集め。
それがこの時間帯にできるのは、とてもありがたい。
『助かります』
黒尾を見習って素直に謝辞を述べると、少しだけ驚いた顔をしてから、クスリと黒尾が笑った。
心配性でお節介で面倒くさい幼馴染は、そんなに嫌いではない。
07黒尾を見習って素直に謝辞を述べてみた
「普段からそれだけ素直なら、ねえ」
『何かご不満でも?』
「いえいえ別に。素直じゃないところも、サチさんっぽくて良き、です」
『ちゃら尾ー』
体育祭以降初の週末がやってきた。1日中練習する、長い長い練習である。
「今日も頑張りますっ!」
気合は十分なのだけど。
新マネちゃんこと咲良ゆかはやる気が空回りするタイプであった。
『力抜きなよ』
「はい! いえ、やる気マックスで頑張ります!」
『……』
そのやる気マックスが困るんだけどなあ。
なんていえばいいかなあ、と考えていると『サチさーん』と遠くから呼ばれる。
『じゃあまずはジャグ作って。全部満タンでね』
「わかりました!」
『終わったら、干してたギプスおろしておいて』
「はい!」
とりあえずはこれでやることはあるだろう。
呼ばれた方へ向かうと、リエーフが倉庫の中で手招きをしていた。
『何した?』
「なんもしてないっすよ! タイマー壊れてて動かないから、」
そう言って、不服そうにタイマーを差し出すリエーフ。
いつも何かしらの問題を起こすから、つい『何した』と聞いてしまったので、それは申し訳なく思いつつ。
『どう壊れたの?』
「電源が入らないっす」
『……電池切れ?』
どこのボタンを押しても、うんともすんとも言わないので、思い当たる節を口に出してみると、「あ」と変な声が聞こえてきた。
「そうか、電池切れか!」
『最初に疑うでしょ』
軽くため息をつきつつ、普段なら部室にある電池を取りに行ってもらうのだが、今日は新マネちゃんが来ているので、マネの仕事は私がいなくても進む。ということで、自分で部室へ取りに行くことにする。
『これは私やっとくから、他の準備よろしくー』
「わかりました!」
元気だけは良い。
そして元気のよい返事をする咲良のことを思い出し、なんだか似てるなあ、と。
大丈夫だとは思うけど、一応様子見てから部室に行くことにして、来た道を戻ってドアからひょいと顔を出したところ。
「持っていくから置いてていいぞー」とは山本。
どうやら咲良の手伝いをしてくれているようだ。私には話しかけられないくせに、咲良には話しかけられるのか。自分より年下だからか?かわいいからか?とか考えてみるが答えはわからない。どっちもかな?
「いや、私の仕事なので」
「でも重くて持てないんだろ? いいよ持っていく」
ああ、そうか。
あれくらい小柄になると、ジャグ満タンだと持てないのか。
普段、ちょっと重いなあくらいで普通に持てていたので、気を付けないとなあ、と反省。
「……でも、これくらいできないと、マネなんだし、」
それでも頑なマネちゃんに、山本からまたも予想外の言葉が飛び出る。
「大丈夫だって。サチさん、そんなに怖くねーよ」
え、私?
なんで私?
マネちゃん、私のこと怖いの?
なんか怖いことしたっけ?
「倉木さんに認めてもらえないと、マネになれないし、」
「え、そうなの?」
山本が驚くのも無理はない。だって私も初耳だもの。
そんなこと言った覚えない。
「まだ仮入部だから……」
「そりゃあ、誰でも仮入部期間あるだろ。俺もあったし」
「だから、頑張らないと認めてもらえない、んです」
よくわからないけど、とりあえず私の出る幕はないな、と判断して部室へと向かうことにした。
女の子というのは、何がどう転じるのか、正直よくわからない。複雑怪奇だ。やっぱり、関わらないのが吉だなあ、と。
先ほどのタイマーに電池を取り付けていたところ、「なーんかお困りですか」と声が降ってきた。幼馴染であるところの黒尾鉄朗だ。
『べつにーー』
「頼りになる主将さんが聞いてあげますよ」
『なんでもないよ』
目の前のタイマーに集中すると、ずい、と黒尾の顔が湧き出た。
『うわ』
「うわ、はないでしょーが。傷つきますって」
『言われたいのかと思った』
「で。何があったんですか、サチさん」
強引に話を戻し、黒尾もすぐ隣に腰かけた。体育倉庫の床は、6月といえどまだ少しひんやりする。
『ほんとに、何もなかったよ』
それでやり過ごしたかったのだけど、思いのほか黒尾からの圧がすごくて根負けした。
『……ただ、女の子と付き合うのは難しいな、と』
「ああ、咲良ね」
『黒尾が好きで入ったんだから、黒尾が面倒見てよ』
「いやあ。スーパー完璧マネさんの仕事ぶりを教えるのは、俺にはできません」
『何それ。私そんな完璧? ってか、全然頼りにならないじゃん、主将のくせに』
タイマーに電池を入れて蓋を占める。スイッチを押すと、ピ、と音が鳴っていつも通りのモニターが表示された。やっぱり電池切れなだけじゃん。
「サチさんの完璧ぶりはすごいよ? 他校のマネさんも驚いてるらしいから、幼馴染としては鼻高々ですけどね」
『何それ初耳』
「サチさんの作る他校の攻略ブック、欲しがる学校は多いと思いますけどー」
黒尾がいう攻略ブックとは、夜な夜な他校の動画を見ながら、集めた情報をまとめたノートのこと。中学の現役の頃からのクセというか趣味というか、まあそういうヤツ。
『ほとんど趣味だから、あれは。マネの仕事ではない』
「じゃまあそれは置いておいて。うちの部のこと一人で全部回してるんだから、それもすごいことじゃない?」
『一人では回してないでしょ。程よくみんなをこき使ってます。……で、そんなに褒めて何を企んでるの?』
黒尾の意図がつかめず、そう質問しつつ、思い当たる節が一つだけ。
『ああ、さては焼肉をチャラにしたいのかしら?』
私が出る種目で1位が取れたら、焼き肉をおごる、という取引をつい先週行った。体育祭での取り決めである。そして今日はその焼肉の決行日。
「んなことしませんー。男に二言はないですー」
『じゃあ、なんで』
「純粋に。幼馴染を心配してるんでしょうが。素直に受け取りなさいよ」
さらっと、恥ずかしげもなく、そんなことを口にする。
黒尾ってこういうヤツだよなあ、と。
『……じゃあ、焼肉食べる時に聞いてもらおうかなあ』
「ようやく素直になりましたか。よろしい」
言質を取ったことに満足したのか、電池交換により本来の動きを取り戻したタイマーを拾い上げて、「タイマー、サンキューな」と倉庫を後にする。
「ああ、それと。咲良にはバレーボールのルールとかは教えておくから。ついでに審判もこっちでするし。サチさんはやりたいことやってて良いですよ」
言外に、動画漁りのことを言っている。
いつもは家に帰ってから、夜な夜なやっている、他校の情報集め。
それがこの時間帯にできるのは、とてもありがたい。
『助かります』
黒尾を見習って素直に謝辞を述べると、少しだけ驚いた顔をしてから、クスリと黒尾が笑った。
心配性でお節介で面倒くさい幼馴染は、そんなに嫌いではない。
07黒尾を見習って素直に謝辞を述べてみた
「普段からそれだけ素直なら、ねえ」
『何かご不満でも?』
「いえいえ別に。素直じゃないところも、サチさんっぽくて良き、です」
『ちゃら尾ー』