Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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エピローグ-Graduation Match-
倉木さんって、あんな風に笑うんだな。いつもと違って生き生きしているし、笑顔が素敵だ。黒尾さんが惚れるのもわかる。というか普通に、かわい―――
「あかあーし。俺のサチさん、そんなに見ないでくださーい」
にゅ、とすぐ近くに黒尾さんの顔が湧き出る。
「今、かわいいって思ったでしょ」
言葉にも態度にも出していないはずなのに、そして周りから自分の表情とか思考を読まれることなどほとんどないのに、この音駒高校の元主将は、目ざとく見つけてやってくる。
「そんなことないですよ」
営業スマイルでそう返せば、「いやいやいや、あの笑顔はかわいいでしょ」と返ってきた。
黒尾さんって、そういうタイプ―――俺の彼女を見るなという独占欲全開タイプではなく、彼女はしっかり褒めてほしいタイプ―――か、と脳内メモをして、意外だな、と思いつつも、慌てて「素敵だと思います」と加えた。そうしたら今度はジト目で口を開く。
「あ、ほらやっぱり見てたんじゃん」
面倒くさい。
そう思ってしまったところで、「面倒くさいヤツだな」と夜久さんが代弁してくれた。
「赤葦、そんなやつ放っておけ。春高終わってからというもの、お花畑の中にずっといんだよ」
「んなことないですー」
「んなことあるだろ。口を開けばサチサチサチ。いい加減、聞き飽きた」
黒尾さんと倉木さんの関係性は、合宿で二人の様子を見かけてすぐに、気づいてしまっていた。黒尾さんの、倉木さんに対する視線とか態度とか声色とか、そういうので、大切な人なんだな、と。倉木さんの方は接点もそこまで多くないし、どう思っているのかわからなかったが、満更でもないような、そんな空気だった。
それが、春高が終わってすぐ。マネたちが「ついに黒尾さんとサチさんが付き合ったらしいよ」と話し込んでいたのを耳にした。どうやら、かおりさん情報らしい。
「何々、なんの話?」
駆け寄ってきたのは木兎さんで、先ほどまで倉木さんと対人パスをやっていたはずだけど、とその人を探すと、ちょうど体育館を出ていくところだった。財布を片手に持っているから、飲み物でも買いに行くのだろうか。
黒尾さんの彼女の倉木さんが、飲み物でも買いに行くみたいですよ。
そう言おうとして、「黒尾さん」と口にしたところで、先ほどまですぐ近くでジト目をしていたその姿は既になく。もう一度倉木さんの方へ視線を向ければ、隣を黒尾さんが歩いていた。何とも楽しそうである。
「黒尾さんと倉木さんの話ですよ」
梟谷の元エースにそう返すと、「さっちー、なんか前より強くなってるよな、」と。
「なーんか練習やってんのかな」
「いやいや、受験生ですよね? さすがに勉強していたのでは?」
そんな木兎さんの違和感に、正解をくれたのはやはり夜久さんで。
「いや。あいつら、息抜きつって、暇さえあればバレーボールしてたぞ。倉木なんか、マネージャーの頃よりもボール触ってたんじゃないか」
呆れた様子で、ため息まじりに。
「……過ぎたことなのでただの興味本位ですが。お二人とも進学希望でしたよね?」
「そうだね、」
とは海さん。
「えーと、結果は、…?」
おそるおそる問えば、「悔しいことにどちらも合格」と夜久さん。しかし言葉に反して、表情は嬉しそうであった。
「あれ、倉木さんって勉強の方はあまり、と認識してたんですけど」
合宿中、何度も宿題が終わっていないと嘆いていた。マネージャー陣営からも、そのようなことをよく耳にしていたので、進学希望と聞いたときには、へえ、と少し驚いたものだ。
「まあ、倉木は地方の大学だからなあ」
「黒尾さんはT大学でしたよね? せっかく付き合い始めたのに、遠距離はしんどいですね」
あの二人ならなおさら。
これまでずっと、すぐ近くで支えあってきたのだから、付き合ったとたんに離れるのはしんどいだろう。そう思っての発言だったが、「ちっちっち、」とすぐ後ろで不快な舌打ちがされた。
ふり返らずともわかる、黒尾さんである。
「詰めが甘いなあ、赤葦くんは」
はあ、としかしニヤニヤしながら黒尾さんが説明を始める。
ちなみに倉木さんは、また木兎さんと打ち合いを始めていた。
「大学は違っても、近くに住めば問題ないでしょーが」
「?」
「いやあ、それとなーく近くの大学に行きたくさせるの、結構大変だったんですから」
さらっと恐ろしいことを言う。
「な、は、えっ?」
さすがに冗談ですよね、と夜久さんと海さんの方を振り返るが、どちらも首を横に振る。
「倉木さんはそれでいいんですか」
「まあ、あいつはやりたいことないから大学行くって言ってたからなあ、」
「……」
「赤葦、もう放っておけ。こいつの相手するだけ疲れるぞ」
そんなところで、「お待たせしましたー」と聞きなれた声がした。
音駒高校の1、2年生の到着であった。
これから、Graduation Matchが開催される。
音駒は以前、森然高校での合宿の際に、バースデイマッチを開催していたわけだが、その続編らしい。なんでも、卒業したらまたやりたい、と倉木さんがこぼし、それをしっかり覚えていた黒尾さんが、音駒と同じ都内にある梟谷を呼んで、開催に至ったようである。
「よし、んじゃあ、やりますか」
音駒高校の元主将であり、煽り上手であったその人が、ようやくその名に恥じない顔をした。
先ほどまでの、それこそお花畑にいるような顔からは想像できない変容ぶりに、思わずくすりと笑ってしまったのだった。
倉木さんって、あんな風に笑うんだな。いつもと違って生き生きしているし、笑顔が素敵だ。黒尾さんが惚れるのもわかる。というか普通に、かわい―――
「あかあーし。俺のサチさん、そんなに見ないでくださーい」
にゅ、とすぐ近くに黒尾さんの顔が湧き出る。
「今、かわいいって思ったでしょ」
言葉にも態度にも出していないはずなのに、そして周りから自分の表情とか思考を読まれることなどほとんどないのに、この音駒高校の元主将は、目ざとく見つけてやってくる。
「そんなことないですよ」
営業スマイルでそう返せば、「いやいやいや、あの笑顔はかわいいでしょ」と返ってきた。
黒尾さんって、そういうタイプ―――俺の彼女を見るなという独占欲全開タイプではなく、彼女はしっかり褒めてほしいタイプ―――か、と脳内メモをして、意外だな、と思いつつも、慌てて「素敵だと思います」と加えた。そうしたら今度はジト目で口を開く。
「あ、ほらやっぱり見てたんじゃん」
面倒くさい。
そう思ってしまったところで、「面倒くさいヤツだな」と夜久さんが代弁してくれた。
「赤葦、そんなやつ放っておけ。春高終わってからというもの、お花畑の中にずっといんだよ」
「んなことないですー」
「んなことあるだろ。口を開けばサチサチサチ。いい加減、聞き飽きた」
黒尾さんと倉木さんの関係性は、合宿で二人の様子を見かけてすぐに、気づいてしまっていた。黒尾さんの、倉木さんに対する視線とか態度とか声色とか、そういうので、大切な人なんだな、と。倉木さんの方は接点もそこまで多くないし、どう思っているのかわからなかったが、満更でもないような、そんな空気だった。
それが、春高が終わってすぐ。マネたちが「ついに黒尾さんとサチさんが付き合ったらしいよ」と話し込んでいたのを耳にした。どうやら、かおりさん情報らしい。
「何々、なんの話?」
駆け寄ってきたのは木兎さんで、先ほどまで倉木さんと対人パスをやっていたはずだけど、とその人を探すと、ちょうど体育館を出ていくところだった。財布を片手に持っているから、飲み物でも買いに行くのだろうか。
黒尾さんの彼女の倉木さんが、飲み物でも買いに行くみたいですよ。
そう言おうとして、「黒尾さん」と口にしたところで、先ほどまですぐ近くでジト目をしていたその姿は既になく。もう一度倉木さんの方へ視線を向ければ、隣を黒尾さんが歩いていた。何とも楽しそうである。
「黒尾さんと倉木さんの話ですよ」
梟谷の元エースにそう返すと、「さっちー、なんか前より強くなってるよな、」と。
「なーんか練習やってんのかな」
「いやいや、受験生ですよね? さすがに勉強していたのでは?」
そんな木兎さんの違和感に、正解をくれたのはやはり夜久さんで。
「いや。あいつら、息抜きつって、暇さえあればバレーボールしてたぞ。倉木なんか、マネージャーの頃よりもボール触ってたんじゃないか」
呆れた様子で、ため息まじりに。
「……過ぎたことなのでただの興味本位ですが。お二人とも進学希望でしたよね?」
「そうだね、」
とは海さん。
「えーと、結果は、…?」
おそるおそる問えば、「悔しいことにどちらも合格」と夜久さん。しかし言葉に反して、表情は嬉しそうであった。
「あれ、倉木さんって勉強の方はあまり、と認識してたんですけど」
合宿中、何度も宿題が終わっていないと嘆いていた。マネージャー陣営からも、そのようなことをよく耳にしていたので、進学希望と聞いたときには、へえ、と少し驚いたものだ。
「まあ、倉木は地方の大学だからなあ」
「黒尾さんはT大学でしたよね? せっかく付き合い始めたのに、遠距離はしんどいですね」
あの二人ならなおさら。
これまでずっと、すぐ近くで支えあってきたのだから、付き合ったとたんに離れるのはしんどいだろう。そう思っての発言だったが、「ちっちっち、」とすぐ後ろで不快な舌打ちがされた。
ふり返らずともわかる、黒尾さんである。
「詰めが甘いなあ、赤葦くんは」
はあ、としかしニヤニヤしながら黒尾さんが説明を始める。
ちなみに倉木さんは、また木兎さんと打ち合いを始めていた。
「大学は違っても、近くに住めば問題ないでしょーが」
「?」
「いやあ、それとなーく近くの大学に行きたくさせるの、結構大変だったんですから」
さらっと恐ろしいことを言う。
「な、は、えっ?」
さすがに冗談ですよね、と夜久さんと海さんの方を振り返るが、どちらも首を横に振る。
「倉木さんはそれでいいんですか」
「まあ、あいつはやりたいことないから大学行くって言ってたからなあ、」
「……」
「赤葦、もう放っておけ。こいつの相手するだけ疲れるぞ」
そんなところで、「お待たせしましたー」と聞きなれた声がした。
音駒高校の1、2年生の到着であった。
これから、Graduation Matchが開催される。
音駒は以前、森然高校での合宿の際に、バースデイマッチを開催していたわけだが、その続編らしい。なんでも、卒業したらまたやりたい、と倉木さんがこぼし、それをしっかり覚えていた黒尾さんが、音駒と同じ都内にある梟谷を呼んで、開催に至ったようである。
「よし、んじゃあ、やりますか」
音駒高校の元主将であり、煽り上手であったその人が、ようやくその名に恥じない顔をした。
先ほどまでの、それこそお花畑にいるような顔からは想像できない変容ぶりに、思わずくすりと笑ってしまったのだった。
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