Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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昼休み。文化祭が終わっても、なんだかんだとミズキと一緒にいる。
「珍しく長引いているんじゃない?」
ミズキとはこの数か月というか1か月の付き合いなのだが、もっと昔から知り合いだったような、そんな錯覚に陥る。さっぱりしているところもいいし、たまになんか問い詰められるけど、なんというか、私が踏み込んでほしくないと思うところはしっかりよけてくれる。偶然なのか、彼女のもつ才能なのか。後者だとしたら末恐ろしい。
『珍しくってなによ。そんな昔のこと知らないでしょ』
そう、彼女は、”珍しく”なんて使えるほどに私と黒尾の仲を知っているはずがないのだ。
「そんなの、見てたらわかるよ。大抵、黒尾が折れてくれるんでしょ」
『……まあ、そうですけど』
「はは。さっちーわかりやすーい。そういうところがいいんだろうね、黒尾は」
『何がいいのよ。意味がわからない』
「はああ。でもほんとに不憫でならない」
たまにこうして、会話にならないことを言う。よくわからないので、またおひとり妄想モードかな、と聞き流すようにしている。ちなみに、脚本を自ら手掛けるほどのこの人は、文章を書いたり人間観察をしたりするのが好きらしい。だから、おひとり妄想モードに入ることもよくある。
「で。まだ許してあげないの?」
鉄朗のことである。文化祭の前の日に喧嘩した。特に誰かに話すつもりはなかったのだけど、普通に気づかれた。
『別に、許さない気はない』
「じゃあ、話しかけてあげなよ」
『なんで。ひどいこと言ったのは黒尾じゃん』
「……ふーん。まあ、別に私は困らないからいいけど」
『そうそう。別に黒尾と話せなくたって困らないし』
へえ、と疑り深い様子でこちらをニヤニヤと見ている。
「そのくせして、ずいぶん元気がないようだけど?」
『そんなことない』
この言葉が強がりであることは、認める。
実際、そんなことはあった。
文化祭の後には中間テストが控えており―――なんでこんな行事予定にしたのか、この学校の先生はどうかしている―――、いつもならわからないところは黒尾に聞いていた。というか、勝手に教えてくれていた。それが、今回は自力で挑まなければならず、まあ結果はご想像にお任せしますよ。
中間テストがうまくいかないので、ストレス発散に、とバレーボールの動画研究をしていたら、夜明けまで没頭してしまい、この2,3日は寝不足であることこの上ない。
ちなみに、いつもなら黒尾が「夜更かししなさんなよ」とか言って、事前にブレーキをかけてくれている。
『あ、れ。もしかして、黒尾ってけっこうマメに、私のこと世話してる?』
言葉にしたつもりはなかったのだけど、頭と口元がリンクしていなかったらしく、ばっちりミズキに聞かれた。
「ははっ、さっちーようやく気付いたの? 相変わらずかわいいねー」
笑われたことにむっとしつつ、黒尾に対する依存度をもう一度計算してみる。
黒尾が世話好きなのは昔からだけど。
もしかすると、今の私の不調は、”黒尾がいなかったから”なわけで、それって結構まずいのでは?
中間テストがうまくいかないのは、黒尾のせい。
中間テストがうまくいかなくて動画を見始めたのも黒尾のせい。
そしてその動画を見すぎたのも、黒尾のせい。
『……自立する』
「えー、なんで。別にいいじゃん、甘えておきなよ。黒尾も喜ぶんじゃない?」
けらけらと隣で笑う友人に、『そうもいかないの』と一瞥する。
「なんで?」
『黒尾には、好きな子がいるんだって。でも、このまま私の世話ばかり焼いていたら、いつまでたっても進展がないじゃん』
「……へえ、好きな人がねえ」
『びっくりでしょ? そんな様子微塵もないのにねえ』
「そ? 私にはなんとなくわかるけども」
『うそ、ほんとに? だれだれだれ』
「逆に、あんたほんとにわかんないわけ?」
『……はいまったく。というか、恋心がなんなのかすら、ちょっと理解できません』
「まそーですよねー」とこめかみを抑える友人。「ほんと不遇」とぼそりと付け加えられる。
しばらく口元を抑えて、こちらをなめるように見ていたので、なんか妄想タイムかな、と空気を読んでこちらも口をつぐむ。お昼ご飯のお供に買ったリンゴジュースを飲んでいるとようやく、妄想タイムが終わったミズキが口を開いた。なんか眼光が鋭い。
「恋心って、説明するようなものじゃないんだけど、」
以前、かおりんから言われた。
もっと一緒にいたい。付き合ってみたい。この人いいな。
それか、この人がいないと寂しいな。
これが恋らしい。
「ちがうちがう。そうじゃない。それはただの情報の羅列」
うーん、そうだなあ。なんて声が聞こえる。
しばらくうなったのち。
「さっちーが、即答するほどいやだった文化祭の主役を引き受けたのはなんで?」
『……それは、』
まわりに聞き耳を立てている人がいないことを確認する。
『黒尾と夜久に、バレーボールに専念してもらおうと、』
「なんで? 頼まれたの?」
『いや別に』
「じゃあ、みんなで一緒に文化祭準備した方が楽しくない? さっちーだって、黒尾とか夜久とかとバレーボールしたかったんでしょ? 2人にだけ好きにさせて、さっちーだけ頑張るのは違くない?」
確かに言われてみれば。
それまで当たり前だと思っていたので、とっさに質問に返せない。それをミズキも織り込み済みなのか、返事は待ってくれるようだ。
なんで、自分は差し置いて、二人にバレーボールをさせたかったのか。何よりも大好きだったバレーボールを、気づけば自分からは遠ざけている。
鉄朗がバレーボールに専念できるように、と考えていた。
でもそれはなんでだろう。
『……バレーしている、鉄朗が、キラキラしてるから、』
キラキラしているその人を見るのが、好きなのだと思う。自分がプレイしているときはなかった感情。でも、この3年間鉄朗を間近で見ていて、鉄朗がプレイするのを見ることは、楽しいし気持ちいし、ドキドキする。
「じゃあ、もし、その”鉄朗くん”がいなかったら? 他の人でも、その気持ちになった?」
ええ、どうだろう。さっと過去の部活の様子を思い出す。
夜久、海、研磨、山本、リエーフ、……。
『いや、ない。楽しそうだし好きだけど、キラキラは、してない』
「それが、恋じゃない?」
『それが、恋?』
えっとどういうこと? 結局何が恋?
「あとは自分で考えなさーい」
『え、変なところで言い逃げしないでよ』
「こんなのもわかんないんじゃ、現代文のテスト結果が思いやられるわね」
ミズキとの会話を思い出していた。
結局恋とはなんだったのか。つかみかけた気がするが、かすっただけで逃げおおせてしまった。
「さっちーさあ、黒尾と仲直りできてよかったね」
『ん、まあねー』
「黒尾が謝ってくれるの待ってたんだ」
からかわれたことに気がつき、ばっとゴロゴロしていた布団から起き上がる。
『なんでそれを、』
「えー、だって体育館中に響いてたよ。”だって鉄朗が謝ってくれないんだもん”って」
『っ、』
そんな大きな声を出したつもりはない。
でも、かおりんの言葉を裏付けるように、部屋にいたほかのマネたちも、ニヤニヤとしている気がする。
『だって。今回のは100%黒尾が悪い。200%といっても過言ではないくらい、黒尾が悪い』
「はいはい。”鉄朗”は罪な男だねえ、」
わざと黒尾ではなく鉄朗っていうところにまた、冷やかしを感じる。
『考え事してるから邪魔しないで』
そういって布団を上からかぶると、「あ、こもっちゃった」とか言いつつ、放っといてくれるようだ。
一安心しつつ、黒尾との会話を思い返す。
―――サチが交友関係を広げて、んで、俺の知らない新しい世界を見つけたような気がして。置いてかれる気がした。焦りというより、……嫉妬、したのかな。
黒尾でも、そんなことを考えるのだと素直に思った。あの余裕しゃくしゃくの黒尾が、この私に置いて行かれる気がしたのだという。そして、ミズキに嫉妬をした。
黒尾は、私よりも断然、友達が多い。でもその黒尾が、私とミズキの関係性に嫉妬したという。そう思われていることは、ちょっと嬉しい。私と黒尾の関係は、ちゃんと互いに同じくらいの重要性だったということで。
―――大丈夫だよ。……これから先、知らないところに行くのは鉄朗の方で、私じゃない。そして、私は家で鉄朗の進化を見ながら、すごーいってなるんだと思う。
そう返せば、ようやく少し、鉄朗が笑った。
キラキラしている鉄朗は、このまま私を置いて、突っ走っていくのだと思う。勉強もできるし、バレーボールもできるし、人付き合いもできるし。私にはないものばかり持っている。
だから素直にそう褒めたってのに。
「何だよそれ」
顔は笑っているのに、心は笑っていなかった。
何だろうなあ、寂しそうな、虚しそうな、そんな感じだった。
その時の顔が、なんだか忘れられない。
思い出せば出すほど、こちらまで胸を締め付けられるような―――。
「サチ先輩っ!!」
がば、とかぶっていた布団がめくられ、暗かった視界が急に明るくなる。
思わず目を細めて、布団をめくりあげた張本人をにらむ。もちろん咲良だ。
『急になに』
「うわー機嫌悪い。でもそんなこと言ってられません。お客さんですよ」
お客さんて。
でもなんとなく、”お客さん”と言われて突っ立っている人を思い浮かべられて、そして扉に目をやれば予想通りの人なので、ちょっと笑える。
「サチさん、ちょっといい? 少し話しませんか」
なんだかかしこまった、それでいて息を切らしたようすの鉄朗が立っていた。
36クラスメートからの不遇見舞い
あまりにも黒尾が不遇すぎるし。なんというか、今回の喧嘩の一因は私にもあるので。
ちょっとだけ、黒尾に援護射撃。
「珍しく長引いているんじゃない?」
ミズキとはこの数か月というか1か月の付き合いなのだが、もっと昔から知り合いだったような、そんな錯覚に陥る。さっぱりしているところもいいし、たまになんか問い詰められるけど、なんというか、私が踏み込んでほしくないと思うところはしっかりよけてくれる。偶然なのか、彼女のもつ才能なのか。後者だとしたら末恐ろしい。
『珍しくってなによ。そんな昔のこと知らないでしょ』
そう、彼女は、”珍しく”なんて使えるほどに私と黒尾の仲を知っているはずがないのだ。
「そんなの、見てたらわかるよ。大抵、黒尾が折れてくれるんでしょ」
『……まあ、そうですけど』
「はは。さっちーわかりやすーい。そういうところがいいんだろうね、黒尾は」
『何がいいのよ。意味がわからない』
「はああ。でもほんとに不憫でならない」
たまにこうして、会話にならないことを言う。よくわからないので、またおひとり妄想モードかな、と聞き流すようにしている。ちなみに、脚本を自ら手掛けるほどのこの人は、文章を書いたり人間観察をしたりするのが好きらしい。だから、おひとり妄想モードに入ることもよくある。
「で。まだ許してあげないの?」
鉄朗のことである。文化祭の前の日に喧嘩した。特に誰かに話すつもりはなかったのだけど、普通に気づかれた。
『別に、許さない気はない』
「じゃあ、話しかけてあげなよ」
『なんで。ひどいこと言ったのは黒尾じゃん』
「……ふーん。まあ、別に私は困らないからいいけど」
『そうそう。別に黒尾と話せなくたって困らないし』
へえ、と疑り深い様子でこちらをニヤニヤと見ている。
「そのくせして、ずいぶん元気がないようだけど?」
『そんなことない』
この言葉が強がりであることは、認める。
実際、そんなことはあった。
文化祭の後には中間テストが控えており―――なんでこんな行事予定にしたのか、この学校の先生はどうかしている―――、いつもならわからないところは黒尾に聞いていた。というか、勝手に教えてくれていた。それが、今回は自力で挑まなければならず、まあ結果はご想像にお任せしますよ。
中間テストがうまくいかないので、ストレス発散に、とバレーボールの動画研究をしていたら、夜明けまで没頭してしまい、この2,3日は寝不足であることこの上ない。
ちなみに、いつもなら黒尾が「夜更かししなさんなよ」とか言って、事前にブレーキをかけてくれている。
『あ、れ。もしかして、黒尾ってけっこうマメに、私のこと世話してる?』
言葉にしたつもりはなかったのだけど、頭と口元がリンクしていなかったらしく、ばっちりミズキに聞かれた。
「ははっ、さっちーようやく気付いたの? 相変わらずかわいいねー」
笑われたことにむっとしつつ、黒尾に対する依存度をもう一度計算してみる。
黒尾が世話好きなのは昔からだけど。
もしかすると、今の私の不調は、”黒尾がいなかったから”なわけで、それって結構まずいのでは?
中間テストがうまくいかないのは、黒尾のせい。
中間テストがうまくいかなくて動画を見始めたのも黒尾のせい。
そしてその動画を見すぎたのも、黒尾のせい。
『……自立する』
「えー、なんで。別にいいじゃん、甘えておきなよ。黒尾も喜ぶんじゃない?」
けらけらと隣で笑う友人に、『そうもいかないの』と一瞥する。
「なんで?」
『黒尾には、好きな子がいるんだって。でも、このまま私の世話ばかり焼いていたら、いつまでたっても進展がないじゃん』
「……へえ、好きな人がねえ」
『びっくりでしょ? そんな様子微塵もないのにねえ』
「そ? 私にはなんとなくわかるけども」
『うそ、ほんとに? だれだれだれ』
「逆に、あんたほんとにわかんないわけ?」
『……はいまったく。というか、恋心がなんなのかすら、ちょっと理解できません』
「まそーですよねー」とこめかみを抑える友人。「ほんと不遇」とぼそりと付け加えられる。
しばらく口元を抑えて、こちらをなめるように見ていたので、なんか妄想タイムかな、と空気を読んでこちらも口をつぐむ。お昼ご飯のお供に買ったリンゴジュースを飲んでいるとようやく、妄想タイムが終わったミズキが口を開いた。なんか眼光が鋭い。
「恋心って、説明するようなものじゃないんだけど、」
以前、かおりんから言われた。
もっと一緒にいたい。付き合ってみたい。この人いいな。
それか、この人がいないと寂しいな。
これが恋らしい。
「ちがうちがう。そうじゃない。それはただの情報の羅列」
うーん、そうだなあ。なんて声が聞こえる。
しばらくうなったのち。
「さっちーが、即答するほどいやだった文化祭の主役を引き受けたのはなんで?」
『……それは、』
まわりに聞き耳を立てている人がいないことを確認する。
『黒尾と夜久に、バレーボールに専念してもらおうと、』
「なんで? 頼まれたの?」
『いや別に』
「じゃあ、みんなで一緒に文化祭準備した方が楽しくない? さっちーだって、黒尾とか夜久とかとバレーボールしたかったんでしょ? 2人にだけ好きにさせて、さっちーだけ頑張るのは違くない?」
確かに言われてみれば。
それまで当たり前だと思っていたので、とっさに質問に返せない。それをミズキも織り込み済みなのか、返事は待ってくれるようだ。
なんで、自分は差し置いて、二人にバレーボールをさせたかったのか。何よりも大好きだったバレーボールを、気づけば自分からは遠ざけている。
鉄朗がバレーボールに専念できるように、と考えていた。
でもそれはなんでだろう。
『……バレーしている、鉄朗が、キラキラしてるから、』
キラキラしているその人を見るのが、好きなのだと思う。自分がプレイしているときはなかった感情。でも、この3年間鉄朗を間近で見ていて、鉄朗がプレイするのを見ることは、楽しいし気持ちいし、ドキドキする。
「じゃあ、もし、その”鉄朗くん”がいなかったら? 他の人でも、その気持ちになった?」
ええ、どうだろう。さっと過去の部活の様子を思い出す。
夜久、海、研磨、山本、リエーフ、……。
『いや、ない。楽しそうだし好きだけど、キラキラは、してない』
「それが、恋じゃない?」
『それが、恋?』
えっとどういうこと? 結局何が恋?
「あとは自分で考えなさーい」
『え、変なところで言い逃げしないでよ』
「こんなのもわかんないんじゃ、現代文のテスト結果が思いやられるわね」
ミズキとの会話を思い出していた。
結局恋とはなんだったのか。つかみかけた気がするが、かすっただけで逃げおおせてしまった。
「さっちーさあ、黒尾と仲直りできてよかったね」
『ん、まあねー』
「黒尾が謝ってくれるの待ってたんだ」
からかわれたことに気がつき、ばっとゴロゴロしていた布団から起き上がる。
『なんでそれを、』
「えー、だって体育館中に響いてたよ。”だって鉄朗が謝ってくれないんだもん”って」
『っ、』
そんな大きな声を出したつもりはない。
でも、かおりんの言葉を裏付けるように、部屋にいたほかのマネたちも、ニヤニヤとしている気がする。
『だって。今回のは100%黒尾が悪い。200%といっても過言ではないくらい、黒尾が悪い』
「はいはい。”鉄朗”は罪な男だねえ、」
わざと黒尾ではなく鉄朗っていうところにまた、冷やかしを感じる。
『考え事してるから邪魔しないで』
そういって布団を上からかぶると、「あ、こもっちゃった」とか言いつつ、放っといてくれるようだ。
一安心しつつ、黒尾との会話を思い返す。
―――サチが交友関係を広げて、んで、俺の知らない新しい世界を見つけたような気がして。置いてかれる気がした。焦りというより、……嫉妬、したのかな。
黒尾でも、そんなことを考えるのだと素直に思った。あの余裕しゃくしゃくの黒尾が、この私に置いて行かれる気がしたのだという。そして、ミズキに嫉妬をした。
黒尾は、私よりも断然、友達が多い。でもその黒尾が、私とミズキの関係性に嫉妬したという。そう思われていることは、ちょっと嬉しい。私と黒尾の関係は、ちゃんと互いに同じくらいの重要性だったということで。
―――大丈夫だよ。……これから先、知らないところに行くのは鉄朗の方で、私じゃない。そして、私は家で鉄朗の進化を見ながら、すごーいってなるんだと思う。
そう返せば、ようやく少し、鉄朗が笑った。
キラキラしている鉄朗は、このまま私を置いて、突っ走っていくのだと思う。勉強もできるし、バレーボールもできるし、人付き合いもできるし。私にはないものばかり持っている。
だから素直にそう褒めたってのに。
「何だよそれ」
顔は笑っているのに、心は笑っていなかった。
何だろうなあ、寂しそうな、虚しそうな、そんな感じだった。
その時の顔が、なんだか忘れられない。
思い出せば出すほど、こちらまで胸を締め付けられるような―――。
「サチ先輩っ!!」
がば、とかぶっていた布団がめくられ、暗かった視界が急に明るくなる。
思わず目を細めて、布団をめくりあげた張本人をにらむ。もちろん咲良だ。
『急になに』
「うわー機嫌悪い。でもそんなこと言ってられません。お客さんですよ」
お客さんて。
でもなんとなく、”お客さん”と言われて突っ立っている人を思い浮かべられて、そして扉に目をやれば予想通りの人なので、ちょっと笑える。
「サチさん、ちょっといい? 少し話しませんか」
なんだかかしこまった、それでいて息を切らしたようすの鉄朗が立っていた。
36クラスメートからの不遇見舞い
あまりにも黒尾が不遇すぎるし。なんというか、今回の喧嘩の一因は私にもあるので。
ちょっとだけ、黒尾に援護射撃。