Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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例によって、またまたコンビニへと向かう途中である。森然高校での合宿2日目の夜。
今日のサチの誕生日サプライズは滞りなく進んだ。
ケーキは研磨に確認を取ってもらったので、そちらはもちろん何の問題もなく。
最大の難関は、誕生日プレゼントだったのだが、”バースデイマッチforサチ”と銘打って進めたプレゼントは、サチも予想外だったらしく、何度も打ち合わせを詰めて作成したルールを一通り眺め、『嬉しい』と。
それを聞いた咲良のはしゃいだ様子と嬉しそうな顔は、もしかするとあの場にいた誰かのハートを射抜いたかもしれないし、射抜いていないかもしれない。
バースデイマッチ以外にも、主に他校のマネージャー陣からプレゼントをされ―――お菓子や紅茶等の消耗品が多かった―――、賑わいを見せていた。
俺も用意していたのだが、楽しそうなサチを見ていると、マネ同士の会話を割って切り出すこともできず。かといってみんなの前で渡すのは嫌だった。
どうしたものかと渡すタイミングを見計らっていたところ、サチから『コンビニ行きたい』と願ってもない申し出があり、今に至る。
「今日もアイス?」
『さすがに今日はいらない』
「たらふくケーキ食べたしな」
『そうそう』
飲み物でも買うのかな、と適当に考えていたら、サチから爆弾発言。
『別にコンビニじゃなくても、2人で話せればどこでもいいんだけど』
「えっと……どういう意味?」
それは、嬉しく思っていいヤツ?
いやいやいや、あのサチさんだよ。恋愛には興味のないサチさんがいうことだから、そんなはずはないでしょ。
いやでも、今日のこの日(サチの誕生日)に、2人で話したいとか、意味深ではないか。
早くなる鼓動に、しかし表情だけはポーカーフェイスを気取る。
『明日の試合、なんかいろいろ考えてくれたんでしょ? そのお礼が言いたくて』
ああ、そうですよねー。サチの言葉に他意はなかった。いつも通りの結果である。
『みんなとバレーやってみたかったから、結構楽しみ』
そういや確かに高校に入ってから、サチと試合形式でバレーをしたことはなかった。レシーブ練習とか対人パスとかを手伝ってもらうことはあったが、最近はデータ整理や敵情視察&情報収集が忙しく、練習自体に参加することはあまりなかったように思う。
「あー、でも、試合は咲良が考えたし、咲良が主体で動いてくれて準備したから―――」
『知ってる。かおりんが教えてくれた』
「そ? さすがにカワイイ後輩の手柄を横取りしちゃ、男の名が廃るってな」
『胡散臭い顔してるけど、そういう所はエライ』
「胡散臭いは余計ですー」
コンビニの手前に公園があったので、そこの東屋に腰かけた。サチもまだ話に付き合ってくれるらしく、何も言わずに隣に腰かける。東屋以外はただっぴろい砂利の広場しかなく、ボールでも持ってくれば少し打ち合いができただろうか。
「ま、お礼は明日、楽しんだ後にしてくださいよ」
『それもそうか』
会話が途切れると、風が吹く音が耳に入った。なんの虫かはわからないが鳴き声も聞こえる。時間がゆったりと流れている気がした。
「ところでサチさん。俺からのプレゼントも受け取ってくれますか?」
『なに、改まって』
先ほど慌てて尻ポケットに突っ込んだ包みを手渡す。しわになってしまったのは申し訳ないが、中身は問題ないはずだ。
『あれ、ポーチじゃないの?』
「ポーチ?」
『なんか研磨が、チョコレートのケーキを探ってきたときに、ポーチを選んだんだけど』
よくわからないが、大きさ的に違うと判断したらしい。開けていい?と断りが入ったので、どうぞと頷くと、サチにしては丁寧に包みを開いた。
『シュシュ?』
「あーそんな名前だったな、確か」
正直、髪飾りの中でそれぞれ違いや名前まで把握できていない。
サチの長い髪は、いつも一つに結わってあるが、髪飾り的なものはつけておらず、黒紺茶のゴムでまとめてあるだけだと気が付いた。それが主な理由だ。
『青と……赤?』
青は、サチがよく身に着けているから、おそらく好きな色なのだろうと思って。あと、研磨がリサーチをしてくれたのもある。
赤は、
「音駒のユニフォームと同じ色。試合の時はこっちつけて欲しいな、なんて思いまして」
『……』
無言の時間は居心地が悪く、後頭部をガシガシしたり、東屋の屋根裏を見上げたり。それほど時間は経っていないのだが、長く経ったように感じられたころ。
『ど?』
いつの間にか、赤色のそれで髪を結わってくれていたらしい。暗くて良くは見えないが、近くの外灯の明かりでうっすらと雰囲気はわかる。
「よくお似合いですヨ」
『赤はあまり身に着けないけど。ユニフォームと同じ色と言われたら、付けるしかない』
その言葉が照れ隠しなのは、暗くて顔が見えなくてもよくわかった。
髪飾りをすぐにつけてくれたことは嬉しい誤算である。
「青は普段使いでどうぞ」
独占欲は強い方だと思う。
飾り気のないサチが、ある日から毎日髪飾りを付けるようになれば、変に勘違いしてくれるかもしれない。他の男が恋愛目的でサチに声をかけることが少しでも減らせればいい。これが副産物的な理由である。あくまで主な理由は、サチがしゃれた髪飾りを持っていなかったから、である。
『気に入ったからつける』
「そりゃあ楽しみ」
『……ありがと』
照れ隠しで少し早口になるのは、もうお決まりになっていて、そういう所がたまらなくカワイイと思う。
サチの頭をガシガシと撫でれば、軽く腕をはじかれた。少しむっとした表情がまたカワイイ。
結局その後、コンビニで財布に優しいアイスクリームを買ったのはここだけの話。
次の日、サチの後ろ姿には、赤いワンポイントがあった。もちろん、昨夜渡したシュシュである。昨日までは主に黒・紺・茶の何かしらのゴムしかつけていなかったから、やはり目立っていた。加えて本人も言っていたが、普段サチが赤を身に着けることはほとんどなく新鮮な感じだ。とても似合っている。
「さっちーのシュシュ、すごくカワイイじゃん。黒尾でしょ?」
休憩中に、梟谷マネの雀田が近寄ってきて、ニヤニヤとそんなことを言う。
「まあね。何でも似合うし」
「でもなんて言って渡したの? さっちーが自然につけるなんて珍しい」
「音駒のユニフォームと同じ色って」
「ああ、なるほどねえ。さっちー、音駒のジャージは派手だからって着ないもんね」
さっちー嬉しかっただろうなあ、と続けられたので、思わず「なんで」と聞き返す。
「マネからしたら、部員からチームの一員みたいなプレゼントもらったら嬉しいよ」
「そういうもん?」
「だって、私たちは選手にはなれない。いなくてもチームは回るしなあ、ってたまに思うもん」
「……へえ」
マネの気持ちについて、深く考えたことはなかった。
サチもそういう気持ちがあったのだろうか。
たしかに、マネがいなくても練習はできるし、試合にも出られる。でも、サチがいることで練習に専念できるようになったし、練習内容はより濃密になったし、何より他校の情報の質が向上した。
私情を加えるなら、部活がより楽しい時間ともなっている。
「わかってないなあ。さっちーは余計そうじゃない? 中学の話もなんとなくだけど木兎と赤葦から聞いた」
「ああ、あれね。胸糞悪いよな」
「ほんと。さっちーよく頑張ったよね」
「笑ってて欲しいよな。何も考えず、純粋に笑ってほしい」
願いにも似た思いを吐露したところ、返事がないので雀田を見る。すげーニヤニヤしていた。
「黒尾さーん。笑ってるさっちーが好きなの?」
「まあ、嫌いなヤツはいないだろ」
「へえ。じゃあほかに好きなところが? 黒尾がさっちーのこと好きなのはみんな知ってるけど、なんで好きなのか詳しく聞いたことなかったなあと思いまして」
「それは胸の内に秘めておくので言いません」
「女子かよ」
「男子です」
「ヘタレかよ」
「音駒の頼れる主将です」
ちぇ、と言いながら、しかし本気で聞き出す気はなかったようで、また仕事へと戻っていく。
そういやもうずいぶん片思いしているなあ、とサチとの思い出を振り返った。
22ユニフォームと同じ色
咲良「サチ先輩、それすっごくカワイイです」
サチ「そ? ちょっと派手じゃない?」
咲良「いえもう、全然っ! 似合いすぎて、もっと早く見たかったです」
咲良(たぶん黒尾先輩が渡したんだろうなあ。黒尾先輩ナイス)
今日のサチの誕生日サプライズは滞りなく進んだ。
ケーキは研磨に確認を取ってもらったので、そちらはもちろん何の問題もなく。
最大の難関は、誕生日プレゼントだったのだが、”バースデイマッチforサチ”と銘打って進めたプレゼントは、サチも予想外だったらしく、何度も打ち合わせを詰めて作成したルールを一通り眺め、『嬉しい』と。
それを聞いた咲良のはしゃいだ様子と嬉しそうな顔は、もしかするとあの場にいた誰かのハートを射抜いたかもしれないし、射抜いていないかもしれない。
バースデイマッチ以外にも、主に他校のマネージャー陣からプレゼントをされ―――お菓子や紅茶等の消耗品が多かった―――、賑わいを見せていた。
俺も用意していたのだが、楽しそうなサチを見ていると、マネ同士の会話を割って切り出すこともできず。かといってみんなの前で渡すのは嫌だった。
どうしたものかと渡すタイミングを見計らっていたところ、サチから『コンビニ行きたい』と願ってもない申し出があり、今に至る。
「今日もアイス?」
『さすがに今日はいらない』
「たらふくケーキ食べたしな」
『そうそう』
飲み物でも買うのかな、と適当に考えていたら、サチから爆弾発言。
『別にコンビニじゃなくても、2人で話せればどこでもいいんだけど』
「えっと……どういう意味?」
それは、嬉しく思っていいヤツ?
いやいやいや、あのサチさんだよ。恋愛には興味のないサチさんがいうことだから、そんなはずはないでしょ。
いやでも、今日のこの日(サチの誕生日)に、2人で話したいとか、意味深ではないか。
早くなる鼓動に、しかし表情だけはポーカーフェイスを気取る。
『明日の試合、なんかいろいろ考えてくれたんでしょ? そのお礼が言いたくて』
ああ、そうですよねー。サチの言葉に他意はなかった。いつも通りの結果である。
『みんなとバレーやってみたかったから、結構楽しみ』
そういや確かに高校に入ってから、サチと試合形式でバレーをしたことはなかった。レシーブ練習とか対人パスとかを手伝ってもらうことはあったが、最近はデータ整理や敵情視察&情報収集が忙しく、練習自体に参加することはあまりなかったように思う。
「あー、でも、試合は咲良が考えたし、咲良が主体で動いてくれて準備したから―――」
『知ってる。かおりんが教えてくれた』
「そ? さすがにカワイイ後輩の手柄を横取りしちゃ、男の名が廃るってな」
『胡散臭い顔してるけど、そういう所はエライ』
「胡散臭いは余計ですー」
コンビニの手前に公園があったので、そこの東屋に腰かけた。サチもまだ話に付き合ってくれるらしく、何も言わずに隣に腰かける。東屋以外はただっぴろい砂利の広場しかなく、ボールでも持ってくれば少し打ち合いができただろうか。
「ま、お礼は明日、楽しんだ後にしてくださいよ」
『それもそうか』
会話が途切れると、風が吹く音が耳に入った。なんの虫かはわからないが鳴き声も聞こえる。時間がゆったりと流れている気がした。
「ところでサチさん。俺からのプレゼントも受け取ってくれますか?」
『なに、改まって』
先ほど慌てて尻ポケットに突っ込んだ包みを手渡す。しわになってしまったのは申し訳ないが、中身は問題ないはずだ。
『あれ、ポーチじゃないの?』
「ポーチ?」
『なんか研磨が、チョコレートのケーキを探ってきたときに、ポーチを選んだんだけど』
よくわからないが、大きさ的に違うと判断したらしい。開けていい?と断りが入ったので、どうぞと頷くと、サチにしては丁寧に包みを開いた。
『シュシュ?』
「あーそんな名前だったな、確か」
正直、髪飾りの中でそれぞれ違いや名前まで把握できていない。
サチの長い髪は、いつも一つに結わってあるが、髪飾り的なものはつけておらず、黒紺茶のゴムでまとめてあるだけだと気が付いた。それが主な理由だ。
『青と……赤?』
青は、サチがよく身に着けているから、おそらく好きな色なのだろうと思って。あと、研磨がリサーチをしてくれたのもある。
赤は、
「音駒のユニフォームと同じ色。試合の時はこっちつけて欲しいな、なんて思いまして」
『……』
無言の時間は居心地が悪く、後頭部をガシガシしたり、東屋の屋根裏を見上げたり。それほど時間は経っていないのだが、長く経ったように感じられたころ。
『ど?』
いつの間にか、赤色のそれで髪を結わってくれていたらしい。暗くて良くは見えないが、近くの外灯の明かりでうっすらと雰囲気はわかる。
「よくお似合いですヨ」
『赤はあまり身に着けないけど。ユニフォームと同じ色と言われたら、付けるしかない』
その言葉が照れ隠しなのは、暗くて顔が見えなくてもよくわかった。
髪飾りをすぐにつけてくれたことは嬉しい誤算である。
「青は普段使いでどうぞ」
独占欲は強い方だと思う。
飾り気のないサチが、ある日から毎日髪飾りを付けるようになれば、変に勘違いしてくれるかもしれない。他の男が恋愛目的でサチに声をかけることが少しでも減らせればいい。これが副産物的な理由である。あくまで主な理由は、サチがしゃれた髪飾りを持っていなかったから、である。
『気に入ったからつける』
「そりゃあ楽しみ」
『……ありがと』
照れ隠しで少し早口になるのは、もうお決まりになっていて、そういう所がたまらなくカワイイと思う。
サチの頭をガシガシと撫でれば、軽く腕をはじかれた。少しむっとした表情がまたカワイイ。
結局その後、コンビニで財布に優しいアイスクリームを買ったのはここだけの話。
次の日、サチの後ろ姿には、赤いワンポイントがあった。もちろん、昨夜渡したシュシュである。昨日までは主に黒・紺・茶の何かしらのゴムしかつけていなかったから、やはり目立っていた。加えて本人も言っていたが、普段サチが赤を身に着けることはほとんどなく新鮮な感じだ。とても似合っている。
「さっちーのシュシュ、すごくカワイイじゃん。黒尾でしょ?」
休憩中に、梟谷マネの雀田が近寄ってきて、ニヤニヤとそんなことを言う。
「まあね。何でも似合うし」
「でもなんて言って渡したの? さっちーが自然につけるなんて珍しい」
「音駒のユニフォームと同じ色って」
「ああ、なるほどねえ。さっちー、音駒のジャージは派手だからって着ないもんね」
さっちー嬉しかっただろうなあ、と続けられたので、思わず「なんで」と聞き返す。
「マネからしたら、部員からチームの一員みたいなプレゼントもらったら嬉しいよ」
「そういうもん?」
「だって、私たちは選手にはなれない。いなくてもチームは回るしなあ、ってたまに思うもん」
「……へえ」
マネの気持ちについて、深く考えたことはなかった。
サチもそういう気持ちがあったのだろうか。
たしかに、マネがいなくても練習はできるし、試合にも出られる。でも、サチがいることで練習に専念できるようになったし、練習内容はより濃密になったし、何より他校の情報の質が向上した。
私情を加えるなら、部活がより楽しい時間ともなっている。
「わかってないなあ。さっちーは余計そうじゃない? 中学の話もなんとなくだけど木兎と赤葦から聞いた」
「ああ、あれね。胸糞悪いよな」
「ほんと。さっちーよく頑張ったよね」
「笑ってて欲しいよな。何も考えず、純粋に笑ってほしい」
願いにも似た思いを吐露したところ、返事がないので雀田を見る。すげーニヤニヤしていた。
「黒尾さーん。笑ってるさっちーが好きなの?」
「まあ、嫌いなヤツはいないだろ」
「へえ。じゃあほかに好きなところが? 黒尾がさっちーのこと好きなのはみんな知ってるけど、なんで好きなのか詳しく聞いたことなかったなあと思いまして」
「それは胸の内に秘めておくので言いません」
「女子かよ」
「男子です」
「ヘタレかよ」
「音駒の頼れる主将です」
ちぇ、と言いながら、しかし本気で聞き出す気はなかったようで、また仕事へと戻っていく。
そういやもうずいぶん片思いしているなあ、とサチとの思い出を振り返った。
22ユニフォームと同じ色
咲良「サチ先輩、それすっごくカワイイです」
サチ「そ? ちょっと派手じゃない?」
咲良「いえもう、全然っ! 似合いすぎて、もっと早く見たかったです」
咲良(たぶん黒尾先輩が渡したんだろうなあ。黒尾先輩ナイス)