Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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烏野との練習試合は、烏野10番 の訴えもあり、気づくと3試合も続けていた。
もうそろろ新幹線の時間が危うくなるということで、どうにか練習試合を終わらせ、現在後片付け中である。
それぞれが交流に花を咲かせているようで、あちこちで笑い声が聞こえる。
それなら俺も交流とやらをしてみようかな、と近くにいた烏野のメガネ君に標的を定めた。
犬岡と烏野10番 の、日本語とは似つかない会話に驚きを隠せずにいたようだったので、「高校生の会話じゃねぇなあ」そう声をかけたのだが、こちらを訝しげに見返すだけで返事がない。
「でも君はもう少し高校生らしく、ハシャいでも良いんじゃないの」
「……そういうの苦手なんで」
えーつれない。
試合中も自己主張あんまりなかったからなあ。ってか、つまらさそうにバレーするなあ、とか思ったり。でも、つまらないのにわざわざ部活なんてやらねーよなあ。何かしらの理由があるのかね。
まあでも。
「……”若者”だねえ」
メガネ君をたとえるなら、今のところこれがしっくりくるかなあ、と。
とくに返事は期待していなかったので、そのまま倉庫へモップを取りに行くと、今度は両校の”ガラの悪い”代表が何やら話し込んでいる。
「マネージャーさんの名前、なんて言うんですか」
小声&早口の山本に、
「てめェェェェ! うちの大事な潔…マネージャーにちょっかい出す気か、あああ!?」
と啖呵を切る、烏野レフトのうちの1人。確か名前は、田中、だったか。
しかしそれだけでは足りなかったらしく、「その頭のフサフサした部分しつこく触るぞ、オラァァ!」とまくしたてる。
これに山本はなんて返すのだろうか。少し興味が湧いて、外で黙って聞き耳を立てていると、いっそ清々しい声音で。
「いや。話しかける勇気は無い」
ぶはっ。
思わず笑ってしまい、慌てて口元を抑える。
そんな行為を無に帰すように、聞きなれた声が放たれる。
『いつまでそんな所に突っ立ってんのよ。さぼってないで、片付けしなさいよ』
振り返らずともサチとわかったが、振り返ってその姿を視界に入れる。今日は朝から今までずっと試合していたので、ほとんど話していない。
「さぼるつもりはなかったんですけどー。中が楽しそうで、入れなかったんですー」
『どうだか』
「ハイハイ。サチさんは俺には冷たいよね」
『そお? みんなに等しく冷たくしているハズだけど』
「……それはそれで、どうなの? 優しくしなさいよ」
話しつつ、モップを取るために倉庫に足を踏み入れると、「清水潔子さんだ」と田中が口を開いていた。こちらのことは見えていないのか、または構わないらしい。山本も恥ずかしげもなく「名が体を表している」とか言っている。放っておこう。
『何アレ』
しかしサチの目にはとまったらしい。珍しそうに、しかし近寄らない方が良いと判断したのか、遠目に山本&田中を眺めている。
「烏野のマネさんについて語ってるみたいよー」
『なんじゃそら』
「さあ? あ、そういえば、山本が女子マネからキャーキャー言われたいっつてたぞ」
『いやよ。あの子、話しかけたら逃げていくもの』
「え、じゃあキャーは言ってくれるんですか?」
『別にいいよー。きゃー黒尾カッコイイ~(棒読み)』
心のこもっていない”キャー”に、ですよねーと乾いた笑みを浮かべれば、
『何よその顔。キャーって言えって言ったのはそっちでしょ。アイスクリームね、高いヤツ』
等と、何やら見返りを求めてきた。
「いやいやいや、アイスねだるならもっと心を込めなさいよ。しかもちゃっかり高いヤツとか言ってるし」
しかしツッコミをいれた先にサチの姿はなくて、言い逃げをされたことにそこでようやく気が付いた。まあ、アイスを口実に誘えるから、いい逃げウェルカムなんですけど。なんだか、ねえ。
倉庫から出ようとしたところ、先ほどまで烏野のマネの話題で持ち切りだったガラの悪い2人組が、新しい話題に移ったらしい。いやな予感というか直感がして、またも倉庫の外で聞き耳を立てると、その感が当たる。
「音駒にも美しいマネージャーさんがいるじゃねーか、虎」
「ああ、あの人は、なあ」
「ん? なんて言うんだ、」
「名前くらいなら、いいか。……サチさんだ、倉木サチさん」
「サチさんか。潔子さんとは違った美しさがあるよな」
俺に聞かれているとも知らず、二人で話は続く。
「バレー経験者っぽい気がしたけど、」
「ああ。中学までやってたらしい。黒尾さんのツレだ」
「ナニ!? つつつつ、付き合っ、て、るのか?」
「いや。付き合ってはいないらしい。だが」
「だが?」
「……手を出すのはやめた方が龍之介のためだ」
「お、おれは潔子さん一筋だからっ!」
へえ。わかってるじゃないの、山本。
昔はサチに話しかける練習とか言って、研磨を連れまわしてあーだこーだ言っていたが。
その度に、サチと一緒にモップかけをしたりボールの整備したり、ジュースを賭けて言い合いしたり。俺が狙ってますよアピールを頑張った甲斐があるというもの。
それ以上は聞く必要はないかな、とようやくモップで走り始めた。
「サチさんって言うんすか!!」
今度はどこの誰だ。声のした方を見ると、体育館の真ん中で、モップをかけているサチに話しかける人物。烏野のリベロだ。”守りの音駒でリベロを張っている夜久”に認められている男。
『そうだけど、』
「俺、2年の西谷夕です」
『……うん、知ってる』
「っ! 知っててもらえて光栄っす!」
『いや、さっき自己紹介してたでしょ、』
「はあい、そろそろ体育館しまっちゃうよー。続きは外でしようかー」
その後も止まらなそうな会話に、適当な理由をつけて割って入ると、『うわ、さぼってばっかりのキャプテンがようやく仕事してるー』などと言われる。
「はいはい、西谷も帰る準備しろー」
引きずられていくリベロ君は、「サチさんまた会いましょう!」とめげる様子は全くない。
プレーも会話もまっすぐな感じで、野生児というか”漢”という感じのヤツだなーとその姿を見送る。
「新幹線に遅れますよ、マネージャーさん」
『じゃあこれ片してきてよ。まだ荷物まとめてないんだから』
はい、と持っていたモップを押し付けてくるので、
「さっきの”高いアイスクリーム”、チャラにしてくれるなら別にいいですケド?」
ただでは起きない、というヤツだ。と言っても、おそらく、というか十中八九、サチはアイスをチャラにはしない。
サチこそ、損得勘定で動く第一人者である。
友情も信頼もあったものではない。
『じゃいーや。自分で片す。帰りの新幹線で食べたい』
「ヘイヘイ、お嬢様」
『味は自分で選ぶ』
「心得ておりますヨ」
しかしこの関係性は心地よい。
損得勘定でしか動かないサチ。俺には容赦ない条件を突き付けてくる、遠慮のいらない幼馴染。
いつまでも続くわけではないが、続く間は、こうして馬鹿を言い合っていたいなあ、と。思うわけです。
02損得勘定で動く幼馴染
『研磨ー、黒尾が変な顔してる。面倒見てあげてー』
「えーやだ。それはやっくんにお願いしよ」
「おいおいおい、そこのお二人さん。黒尾さんの面倒もたまにはみなさいよー」
もうそろろ新幹線の時間が危うくなるということで、どうにか練習試合を終わらせ、現在後片付け中である。
それぞれが交流に花を咲かせているようで、あちこちで笑い声が聞こえる。
それなら俺も交流とやらをしてみようかな、と近くにいた烏野のメガネ君に標的を定めた。
犬岡と
「でも君はもう少し高校生らしく、ハシャいでも良いんじゃないの」
「……そういうの苦手なんで」
えーつれない。
試合中も自己主張あんまりなかったからなあ。ってか、つまらさそうにバレーするなあ、とか思ったり。でも、つまらないのにわざわざ部活なんてやらねーよなあ。何かしらの理由があるのかね。
まあでも。
「……”若者”だねえ」
メガネ君をたとえるなら、今のところこれがしっくりくるかなあ、と。
とくに返事は期待していなかったので、そのまま倉庫へモップを取りに行くと、今度は両校の”ガラの悪い”代表が何やら話し込んでいる。
「マネージャーさんの名前、なんて言うんですか」
小声&早口の山本に、
「てめェェェェ! うちの大事な潔…マネージャーにちょっかい出す気か、あああ!?」
と啖呵を切る、烏野レフトのうちの1人。確か名前は、田中、だったか。
しかしそれだけでは足りなかったらしく、「その頭のフサフサした部分しつこく触るぞ、オラァァ!」とまくしたてる。
これに山本はなんて返すのだろうか。少し興味が湧いて、外で黙って聞き耳を立てていると、いっそ清々しい声音で。
「いや。話しかける勇気は無い」
ぶはっ。
思わず笑ってしまい、慌てて口元を抑える。
そんな行為を無に帰すように、聞きなれた声が放たれる。
『いつまでそんな所に突っ立ってんのよ。さぼってないで、片付けしなさいよ』
振り返らずともサチとわかったが、振り返ってその姿を視界に入れる。今日は朝から今までずっと試合していたので、ほとんど話していない。
「さぼるつもりはなかったんですけどー。中が楽しそうで、入れなかったんですー」
『どうだか』
「ハイハイ。サチさんは俺には冷たいよね」
『そお? みんなに等しく冷たくしているハズだけど』
「……それはそれで、どうなの? 優しくしなさいよ」
話しつつ、モップを取るために倉庫に足を踏み入れると、「清水潔子さんだ」と田中が口を開いていた。こちらのことは見えていないのか、または構わないらしい。山本も恥ずかしげもなく「名が体を表している」とか言っている。放っておこう。
『何アレ』
しかしサチの目にはとまったらしい。珍しそうに、しかし近寄らない方が良いと判断したのか、遠目に山本&田中を眺めている。
「烏野のマネさんについて語ってるみたいよー」
『なんじゃそら』
「さあ? あ、そういえば、山本が女子マネからキャーキャー言われたいっつてたぞ」
『いやよ。あの子、話しかけたら逃げていくもの』
「え、じゃあキャーは言ってくれるんですか?」
『別にいいよー。きゃー黒尾カッコイイ~(棒読み)』
心のこもっていない”キャー”に、ですよねーと乾いた笑みを浮かべれば、
『何よその顔。キャーって言えって言ったのはそっちでしょ。アイスクリームね、高いヤツ』
等と、何やら見返りを求めてきた。
「いやいやいや、アイスねだるならもっと心を込めなさいよ。しかもちゃっかり高いヤツとか言ってるし」
しかしツッコミをいれた先にサチの姿はなくて、言い逃げをされたことにそこでようやく気が付いた。まあ、アイスを口実に誘えるから、いい逃げウェルカムなんですけど。なんだか、ねえ。
倉庫から出ようとしたところ、先ほどまで烏野のマネの話題で持ち切りだったガラの悪い2人組が、新しい話題に移ったらしい。いやな予感というか直感がして、またも倉庫の外で聞き耳を立てると、その感が当たる。
「音駒にも美しいマネージャーさんがいるじゃねーか、虎」
「ああ、あの人は、なあ」
「ん? なんて言うんだ、」
「名前くらいなら、いいか。……サチさんだ、倉木サチさん」
「サチさんか。潔子さんとは違った美しさがあるよな」
俺に聞かれているとも知らず、二人で話は続く。
「バレー経験者っぽい気がしたけど、」
「ああ。中学までやってたらしい。黒尾さんのツレだ」
「ナニ!? つつつつ、付き合っ、て、るのか?」
「いや。付き合ってはいないらしい。だが」
「だが?」
「……手を出すのはやめた方が龍之介のためだ」
「お、おれは潔子さん一筋だからっ!」
へえ。わかってるじゃないの、山本。
昔はサチに話しかける練習とか言って、研磨を連れまわしてあーだこーだ言っていたが。
その度に、サチと一緒にモップかけをしたりボールの整備したり、ジュースを賭けて言い合いしたり。俺が狙ってますよアピールを頑張った甲斐があるというもの。
それ以上は聞く必要はないかな、とようやくモップで走り始めた。
「サチさんって言うんすか!!」
今度はどこの誰だ。声のした方を見ると、体育館の真ん中で、モップをかけているサチに話しかける人物。烏野のリベロだ。”守りの音駒でリベロを張っている夜久”に認められている男。
『そうだけど、』
「俺、2年の西谷夕です」
『……うん、知ってる』
「っ! 知っててもらえて光栄っす!」
『いや、さっき自己紹介してたでしょ、』
「はあい、そろそろ体育館しまっちゃうよー。続きは外でしようかー」
その後も止まらなそうな会話に、適当な理由をつけて割って入ると、『うわ、さぼってばっかりのキャプテンがようやく仕事してるー』などと言われる。
「はいはい、西谷も帰る準備しろー」
引きずられていくリベロ君は、「サチさんまた会いましょう!」とめげる様子は全くない。
プレーも会話もまっすぐな感じで、野生児というか”漢”という感じのヤツだなーとその姿を見送る。
「新幹線に遅れますよ、マネージャーさん」
『じゃあこれ片してきてよ。まだ荷物まとめてないんだから』
はい、と持っていたモップを押し付けてくるので、
「さっきの”高いアイスクリーム”、チャラにしてくれるなら別にいいですケド?」
ただでは起きない、というヤツだ。と言っても、おそらく、というか十中八九、サチはアイスをチャラにはしない。
サチこそ、損得勘定で動く第一人者である。
友情も信頼もあったものではない。
『じゃいーや。自分で片す。帰りの新幹線で食べたい』
「ヘイヘイ、お嬢様」
『味は自分で選ぶ』
「心得ておりますヨ」
しかしこの関係性は心地よい。
損得勘定でしか動かないサチ。俺には容赦ない条件を突き付けてくる、遠慮のいらない幼馴染。
いつまでも続くわけではないが、続く間は、こうして馬鹿を言い合っていたいなあ、と。思うわけです。
02損得勘定で動く幼馴染
『研磨ー、黒尾が変な顔してる。面倒見てあげてー』
「えーやだ。それはやっくんにお願いしよ」
「おいおいおい、そこのお二人さん。黒尾さんの面倒もたまにはみなさいよー」