Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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ある日の部活帰り。
隣には黒尾ではなく研磨が歩いていて、黒尾と2人とか黒尾と研磨と3人というのはよくあるけど、研磨と2人というのは実は珍しい。そしてそれが何日か続いている。
『最近黒尾忙しそうだよね~』
「そうだね」
『黒尾がいたらいたでうるさいけど、いないといないで、変な感じだよね~』
「ふーん」
昔から研磨は私以上に人に興味がない。
『あれかな、ついに黒尾にも春が?』
「春?」
『ほら、誰かと付き合うとか』
つい先日、黒尾の口から思い人がいることを聞いたせいか、そっちの方向にしか考えが行かない。
「……違うんじゃない」
『え、そお? 黒尾、結構モテるらしいけど』
「それはそうだけど。……はあ」
不意にため息をつかれた。何も言わないけど、「ほんとわかってないね」とでも言いたげなため息に、少しむっとする。確かに、私よりも研磨の方が黒尾と距離が近いけど。けども。
『研磨くんは何が言いたいんですかー?』
「……別に」
『ちょっと、会話をあきらめないでよ』
また軽くため息をつかれたので、しばらく黙っていると、しかし会話はまだ続いていたらしい。
「……サチの言う、クロに春が来たってなったら、こういうことは増えると思う」
『こういうこと?』
「クロがいなくて、おれとサチが一緒に帰るとか」
『……そっか、たしかに』
「サチは、それでいいの?」
『うーん、』
黒尾とはずっと一緒にいたから、黒尾がいないことは想像がつかない。
でも、それに慣れないといけないんだなあ、と思った。
『考えたことなかったけど……ちょっと寂しいね』
素直に答えれば、研磨が嬉しそうに笑った。
「今日は素直だね」
『何その顔。生意気』
「はいはい」
そういえば、と研磨が続ける。
「合宿の日、ケーキ何味がいい? クロから聞いとけって連絡来た」
『ええ、またやるの、あれ?』
「やらないわけにもいかないんでしょ」
『梟谷の猿杙の誕生日もあるから、でしょ。わかってますよー黒尾から何度も言われてるから』
「で、何味?」
『んーじゃあチョコ』
サチって案外甘いの好きだよね、とボソっと付け加えられる。
『基本なんでも食べるからなあ。研磨は好き嫌い多いよね』
「……あと、プレゼントも聞いておけって」
好き嫌いについてはスルーらしい。
だからといって、私もその話題を広げるつもりはないので、スルーされたことをスルーする。
『せめて3択とかにしてほしい。ケーキ何味、みたいにさ』
返事はなかったが、スマホをポチポチしているので、おそらく黒尾にでもメールを返しているのだろう。本当にこの会話はお使いのようだ。
「リップ、ハンドクリーム、ポーチ」
『……どれも使わないなあ。しいて言うならポーチか』
「花柄、キャラクター、無地」
『無地』
「何色?」
『ん~青系』
「……”でしょうね”、だって」
『わかってるなら聞くな! って返信しといて。ってか、私に直接メールすればよくない?』
「それは、サチが携帯見ないからじゃないの」
『た、確かに……』
最後に携帯を開いたのはいつだろうか。そもそも今日、持ってきてたっけ? いや、それよりも、充電いつした?
「ちなみに、クロからは、サチに連絡したけど3日くらい返信がないからって最初に来てたよ」
3日は見ていないことがわかったところで、我が家に到着した。
ところで、学校からの帰り道だと、研磨や黒尾の家の方が近いので、自然な流れで家まで送ってくれたことになる。黒尾と3人の時は、研磨は先に家に帰って黒尾が送ってくれるのが日常になっていたのだけど。
黒尾がいないと研磨が送ってくれるらしい。よくできた幼馴染たちである。女の子扱いは少し照れくさいけど。自然とやってくれるからありがたい。
『研磨、送ってくれてありがと』
「……べつに。クロに言われただけだから」
『黒尾に?』
「ほら、これ」
〈 サチのこと、家まで送ってやって 〉
確かに黒尾からのメールであった。
私の心配する前に、自分の心配しなよ、と思う。そんなんじゃ、好きな人にはいつまでたっても振り向いてもらえないのでは?と。
『じゃ、黒尾にもありがとうって言っておいて~』
「……それこそ自分でやりなよ」
言い終わらないうちに、研磨は自分の家の方へと歩き始めてしまった。あの様子では、お礼はしてくれないかもしれない。でもわざわざメールするのもなあ。
うだうだ考えているうちに、また携帯電話を開くことを忘れてしまった。いわずもがな、充電も忘れたことになる。
19黒尾のいない日
To:黒尾
From:研磨
サチが寂しいってさ
隣には黒尾ではなく研磨が歩いていて、黒尾と2人とか黒尾と研磨と3人というのはよくあるけど、研磨と2人というのは実は珍しい。そしてそれが何日か続いている。
『最近黒尾忙しそうだよね~』
「そうだね」
『黒尾がいたらいたでうるさいけど、いないといないで、変な感じだよね~』
「ふーん」
昔から研磨は私以上に人に興味がない。
『あれかな、ついに黒尾にも春が?』
「春?」
『ほら、誰かと付き合うとか』
つい先日、黒尾の口から思い人がいることを聞いたせいか、そっちの方向にしか考えが行かない。
「……違うんじゃない」
『え、そお? 黒尾、結構モテるらしいけど』
「それはそうだけど。……はあ」
不意にため息をつかれた。何も言わないけど、「ほんとわかってないね」とでも言いたげなため息に、少しむっとする。確かに、私よりも研磨の方が黒尾と距離が近いけど。けども。
『研磨くんは何が言いたいんですかー?』
「……別に」
『ちょっと、会話をあきらめないでよ』
また軽くため息をつかれたので、しばらく黙っていると、しかし会話はまだ続いていたらしい。
「……サチの言う、クロに春が来たってなったら、こういうことは増えると思う」
『こういうこと?』
「クロがいなくて、おれとサチが一緒に帰るとか」
『……そっか、たしかに』
「サチは、それでいいの?」
『うーん、』
黒尾とはずっと一緒にいたから、黒尾がいないことは想像がつかない。
でも、それに慣れないといけないんだなあ、と思った。
『考えたことなかったけど……ちょっと寂しいね』
素直に答えれば、研磨が嬉しそうに笑った。
「今日は素直だね」
『何その顔。生意気』
「はいはい」
そういえば、と研磨が続ける。
「合宿の日、ケーキ何味がいい? クロから聞いとけって連絡来た」
『ええ、またやるの、あれ?』
「やらないわけにもいかないんでしょ」
『梟谷の猿杙の誕生日もあるから、でしょ。わかってますよー黒尾から何度も言われてるから』
「で、何味?」
『んーじゃあチョコ』
サチって案外甘いの好きだよね、とボソっと付け加えられる。
『基本なんでも食べるからなあ。研磨は好き嫌い多いよね』
「……あと、プレゼントも聞いておけって」
好き嫌いについてはスルーらしい。
だからといって、私もその話題を広げるつもりはないので、スルーされたことをスルーする。
『せめて3択とかにしてほしい。ケーキ何味、みたいにさ』
返事はなかったが、スマホをポチポチしているので、おそらく黒尾にでもメールを返しているのだろう。本当にこの会話はお使いのようだ。
「リップ、ハンドクリーム、ポーチ」
『……どれも使わないなあ。しいて言うならポーチか』
「花柄、キャラクター、無地」
『無地』
「何色?」
『ん~青系』
「……”でしょうね”、だって」
『わかってるなら聞くな! って返信しといて。ってか、私に直接メールすればよくない?』
「それは、サチが携帯見ないからじゃないの」
『た、確かに……』
最後に携帯を開いたのはいつだろうか。そもそも今日、持ってきてたっけ? いや、それよりも、充電いつした?
「ちなみに、クロからは、サチに連絡したけど3日くらい返信がないからって最初に来てたよ」
3日は見ていないことがわかったところで、我が家に到着した。
ところで、学校からの帰り道だと、研磨や黒尾の家の方が近いので、自然な流れで家まで送ってくれたことになる。黒尾と3人の時は、研磨は先に家に帰って黒尾が送ってくれるのが日常になっていたのだけど。
黒尾がいないと研磨が送ってくれるらしい。よくできた幼馴染たちである。女の子扱いは少し照れくさいけど。自然とやってくれるからありがたい。
『研磨、送ってくれてありがと』
「……べつに。クロに言われただけだから」
『黒尾に?』
「ほら、これ」
〈 サチのこと、家まで送ってやって 〉
確かに黒尾からのメールであった。
私の心配する前に、自分の心配しなよ、と思う。そんなんじゃ、好きな人にはいつまでたっても振り向いてもらえないのでは?と。
『じゃ、黒尾にもありがとうって言っておいて~』
「……それこそ自分でやりなよ」
言い終わらないうちに、研磨は自分の家の方へと歩き始めてしまった。あの様子では、お礼はしてくれないかもしれない。でもわざわざメールするのもなあ。
うだうだ考えているうちに、また携帯電話を開くことを忘れてしまった。いわずもがな、充電も忘れたことになる。
19黒尾のいない日
To:黒尾
From:研磨
サチが寂しいってさ