Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
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梟谷での2日間の合宿が終わり、暑い夏のある日。
練習終わりの夕方、近くの公園で対人パスをするのは、練習が早く終わる週末の日常である。相手はもちろんサチで、研磨は付き合ってくれない。
「そういや、最近咲良どうした?」
会話のタネは、ここ最近不可思議な行動をしている音駒の1年マネ。
『あー、なんかかおりんと画策しているみたい』
梟谷での合宿以降、練習終わりに尾行したり、休憩時間や昼休みにクラスを覗いて監視したり、という具合である。ここ最近は、サチを知る人物にサチのことを聞きまわっているとの証言もある。もちろん本人は、サチにばれていることを知らない。サチとほぼ一緒にいる俺にもばれていると気が付きはしないようだ。
「画策ねえ……」
そういえば、7月末~8月はじめに毎年開かれる森然高校での合宿は、サチの誕生日が重なる。となれば、咲良の不可思議な行動は、サチの好みのリサーチということか。梟谷の雀田と画策しているとなれば、十中八九そうだろう。
一昨年は誕生日事態忘れてたし、昨年は成功とはいえない。
『目的はよくわかんないけど、害はないから放っておいてる』
そこで、ボールが変な方向へ飛ぶ。
「わり、少し力入った」
『うん、公園狭いから力抜いてよねー』
言いながらボールを拾いに行くサチが、不意に変なことを口にする。
『そういや、黒尾、好きな人いるんだって?』
「……は?」
『告白されて、好きな人がいるって断ってるんでしょ?』
確かにそうだけども。何故それを知っている。
「どうした、いきなり。今までそんなこと興味なかったじゃねーか」
人の色恋沙汰など、聞くことすらなかったはずだ。そして聞いて覚えておくこともないのではないだろうか。というか、「人の色恋沙汰」ではなく、「自分の色恋沙汰」に関してもである。
『黒尾が言ったんじゃん、夜久か海が証人だって』
梟谷の合宿での一コマである。あまりにサチが俺のことを異性として見ないので、ほんの少しの反抗心とでも言おうか。
「律儀に証言を聞いてきたわけねえ。相変わらずそういう所だけは素直だな」
『何、なんか文句いった?』
「いえいえ。俺がサチさんに文句なんて言わないですよ」
『ふーん?』
「で、サチさんは俺の好きな人が気になる、と」
『別に気になるわけじゃない。ただ、』
「ただ?」
『好きな人いるのに、こういう風に私に付き合ってたら、ほら。勘違いされたら困るじゃない』
「……」
客観的に自分たちの姿を見ることはできるらしい。恋愛沙汰に関する知識ゼロかと思っていたが、その考えは少し改めておこう。
『あ。その顔は、そんなこと考えてなかったー、って後悔中?』
ケラケラと笑うので、「違うわ」と否定することは忘れない。
「そもそも、サチさんに考えてもらわなくとも、こっちには盛大な作戦があるから別にいいんですー」
『勝算あるんだ?』
「そりゃあ……今後次第、かな」
目の前にいる思い人を見つめながら答えたのだが、本人は全く気が付かない。
『なんじゃそら。好青年、高身長の黒尾さんはモテるんじゃなかったの』
「んー。なんてか、そういう武器は通用しないんだよねえ」
『ええ、そんな人いる?』
自分のことを完全に棚に上げているようで、思わず顔がほころんでしまう。
『まあ、黒尾さんは顔がねえ。胡散臭い』
「へいへい。そうでしたね」
『まあでも。……面倒見がいいし、優しいから、それを知らない人がいるとは、かわいそうだねえ』
「っ、」
たまにくるデレの部分は、なんというか心臓に悪い。もう少し緩急を緩めてほしい。
『あ、黒尾照れてる』
「うるせえです」
『たまにかわいい』
「うるせえ」
しつこいので、今度は故意にボールを打つ力を強めてみる。しかし予想済みだったのか、サチはそれをキレイに上げる。
『まだまだサチさんには敵いませんねえ』
ニヤニヤするサチを他所に、上がったボールを打たずに腕に回収する。
「暗くなってきたし、そろそろ帰るぞー」
『そうかそうか。敵わないなら帰るしかないもんね』
「ちげーよ! 暗いとボール見えないでしょ」
『はいはい。そういうことにしてあげる』
その辺に雑多に置いていた、カバンやら飲み物やらを回収して、家までの帰り道をのんびりと歩く。俺だけではなく、サチもこの時間を惜しんでいるような、そんな錯覚を覚える速度で。
『私が教えてあげようか』
「ん?」
『黒尾の片思いの人に、黒尾のいい所を』
ブツブツ言っているサチを横目に、なーんもわかってないんだよなあ、とため息。
俺のいい所を教えてあげるって、
「……誰にだよ」
思わず漏れてしまった考えは、しっかりサチに聞かれる。
『さすがに誰かはわかんないから、教えてもらわないと困る』
「……絶対教えませーン」
『いい案だと思ったんだけどなあ』
しかしそれ以上には興味はないようで、残りの帰り道は他愛もない話をポツポツしながら。
「黒尾せんぱーい」
部活の休憩中、音駒のもう一人のマネージャーであるところの咲良に呼び止められた。
「おう、咲良。どうかしたか?」
以前は、俺にあこがれて入部したとか言って、追っかけのようなことをされていたが、今は完全にサチの後を追いかけることに専念しているようで、付きまとわれることはキレイさっぱりなくなった。
「ちょっといい案を考えたんですけど、」
そう言って周りをきょろきょろする。そして、話しても大丈夫と判断したのか、それでもなお、周りには聞こえない声で
「サチ先輩の誕生日の件で、相談したいことがあるんです」と。
「サチ先輩をリサーチしていた結果がついに出た?」
「え、なぜそれを…?」
尾行していたことを気づかれていないと本当に思っていたらしい。
「まあまあ。で、うちの頼れるマネージャーさんはどんな提案があるのかな?」
「サチ先輩って、物欲ないじゃないですか」
「そうねえ、」
「でも、バレーボールは大好き。バレーボールのグッズとかも考えたけど、それはなんか違う気がして。だから、バレーボールをみんなでやるのはどうかと思って。試合形式で」
へえ。
今まで、プレゼントばかり考えていたが、確かにそういうのはありかもしれない。というかサチなら絶対そっちの方が良い。
「練習の後に、って思ったんですけど。……でも自主練の時間減っちゃうし、やっぱ微妙ですかね、」
さっきまでの自信に満ちた勢いは、急に下降する。
「サチ先輩の誕生日、森然合宿に重なっちゃうから、そこでやるのが一番いいかなって思ったんですけど。……あ、じゃあ、招待状だけ渡して、後日、とか、―――」
「いや。やろう。日程は他校にも確認するとして、サチのスパイクもサーブも強烈だしコースついてくるから、守備の練習ってことにすれば、やる気ない連中も参加するだろうし、」
やる気ない連中とはいわずもがなリエーフのことである。スパイクの練習ばかりやりたがって、守備は敬遠しがちである。守りの音駒で、それではいただけない。
しかし、試合形式ってことにして、サチ主役の―――サチが楽しむための―――練習とするならば、ネットは女子用の高さになるし、そうなれば男子側の制限をつけなければならない。つまり、自然とレシーブの練習になるだろう。というかそうなるようにルール作りをしよう。
「ほんとですか!? 良かった~、絶対サチ先輩喜んでくれると思うんですよね」
「よし。じゃ、いろいろと打ち合わせが必要だな。日程とか確認するから、改めて話すか。……サチ先輩には内緒でな」
「はいっ!」
ここからしばらくは、部活前後でサチからコソコソとすることが増えるのだった。
18新マネちゃんの策略その2
サチ『研磨、黒尾の好きな人って誰だと思う?』
研磨「……ロングでキレイ系でバレーに興味がある子って前に言ってたよ」
サチ『ああ、それ、真面目なヤツだったの?』
研磨「そうなんじゃない」
サチ『でもそれだけじゃ、突き止めるのは難しいな』
練習終わりの夕方、近くの公園で対人パスをするのは、練習が早く終わる週末の日常である。相手はもちろんサチで、研磨は付き合ってくれない。
「そういや、最近咲良どうした?」
会話のタネは、ここ最近不可思議な行動をしている音駒の1年マネ。
『あー、なんかかおりんと画策しているみたい』
梟谷での合宿以降、練習終わりに尾行したり、休憩時間や昼休みにクラスを覗いて監視したり、という具合である。ここ最近は、サチを知る人物にサチのことを聞きまわっているとの証言もある。もちろん本人は、サチにばれていることを知らない。サチとほぼ一緒にいる俺にもばれていると気が付きはしないようだ。
「画策ねえ……」
そういえば、7月末~8月はじめに毎年開かれる森然高校での合宿は、サチの誕生日が重なる。となれば、咲良の不可思議な行動は、サチの好みのリサーチということか。梟谷の雀田と画策しているとなれば、十中八九そうだろう。
一昨年は誕生日事態忘れてたし、昨年は成功とはいえない。
『目的はよくわかんないけど、害はないから放っておいてる』
そこで、ボールが変な方向へ飛ぶ。
「わり、少し力入った」
『うん、公園狭いから力抜いてよねー』
言いながらボールを拾いに行くサチが、不意に変なことを口にする。
『そういや、黒尾、好きな人いるんだって?』
「……は?」
『告白されて、好きな人がいるって断ってるんでしょ?』
確かにそうだけども。何故それを知っている。
「どうした、いきなり。今までそんなこと興味なかったじゃねーか」
人の色恋沙汰など、聞くことすらなかったはずだ。そして聞いて覚えておくこともないのではないだろうか。というか、「人の色恋沙汰」ではなく、「自分の色恋沙汰」に関してもである。
『黒尾が言ったんじゃん、夜久か海が証人だって』
梟谷の合宿での一コマである。あまりにサチが俺のことを異性として見ないので、ほんの少しの反抗心とでも言おうか。
「律儀に証言を聞いてきたわけねえ。相変わらずそういう所だけは素直だな」
『何、なんか文句いった?』
「いえいえ。俺がサチさんに文句なんて言わないですよ」
『ふーん?』
「で、サチさんは俺の好きな人が気になる、と」
『別に気になるわけじゃない。ただ、』
「ただ?」
『好きな人いるのに、こういう風に私に付き合ってたら、ほら。勘違いされたら困るじゃない』
「……」
客観的に自分たちの姿を見ることはできるらしい。恋愛沙汰に関する知識ゼロかと思っていたが、その考えは少し改めておこう。
『あ。その顔は、そんなこと考えてなかったー、って後悔中?』
ケラケラと笑うので、「違うわ」と否定することは忘れない。
「そもそも、サチさんに考えてもらわなくとも、こっちには盛大な作戦があるから別にいいんですー」
『勝算あるんだ?』
「そりゃあ……今後次第、かな」
目の前にいる思い人を見つめながら答えたのだが、本人は全く気が付かない。
『なんじゃそら。好青年、高身長の黒尾さんはモテるんじゃなかったの』
「んー。なんてか、そういう武器は通用しないんだよねえ」
『ええ、そんな人いる?』
自分のことを完全に棚に上げているようで、思わず顔がほころんでしまう。
『まあ、黒尾さんは顔がねえ。胡散臭い』
「へいへい。そうでしたね」
『まあでも。……面倒見がいいし、優しいから、それを知らない人がいるとは、かわいそうだねえ』
「っ、」
たまにくるデレの部分は、なんというか心臓に悪い。もう少し緩急を緩めてほしい。
『あ、黒尾照れてる』
「うるせえです」
『たまにかわいい』
「うるせえ」
しつこいので、今度は故意にボールを打つ力を強めてみる。しかし予想済みだったのか、サチはそれをキレイに上げる。
『まだまだサチさんには敵いませんねえ』
ニヤニヤするサチを他所に、上がったボールを打たずに腕に回収する。
「暗くなってきたし、そろそろ帰るぞー」
『そうかそうか。敵わないなら帰るしかないもんね』
「ちげーよ! 暗いとボール見えないでしょ」
『はいはい。そういうことにしてあげる』
その辺に雑多に置いていた、カバンやら飲み物やらを回収して、家までの帰り道をのんびりと歩く。俺だけではなく、サチもこの時間を惜しんでいるような、そんな錯覚を覚える速度で。
『私が教えてあげようか』
「ん?」
『黒尾の片思いの人に、黒尾のいい所を』
ブツブツ言っているサチを横目に、なーんもわかってないんだよなあ、とため息。
俺のいい所を教えてあげるって、
「……誰にだよ」
思わず漏れてしまった考えは、しっかりサチに聞かれる。
『さすがに誰かはわかんないから、教えてもらわないと困る』
「……絶対教えませーン」
『いい案だと思ったんだけどなあ』
しかしそれ以上には興味はないようで、残りの帰り道は他愛もない話をポツポツしながら。
「黒尾せんぱーい」
部活の休憩中、音駒のもう一人のマネージャーであるところの咲良に呼び止められた。
「おう、咲良。どうかしたか?」
以前は、俺にあこがれて入部したとか言って、追っかけのようなことをされていたが、今は完全にサチの後を追いかけることに専念しているようで、付きまとわれることはキレイさっぱりなくなった。
「ちょっといい案を考えたんですけど、」
そう言って周りをきょろきょろする。そして、話しても大丈夫と判断したのか、それでもなお、周りには聞こえない声で
「サチ先輩の誕生日の件で、相談したいことがあるんです」と。
「サチ先輩をリサーチしていた結果がついに出た?」
「え、なぜそれを…?」
尾行していたことを気づかれていないと本当に思っていたらしい。
「まあまあ。で、うちの頼れるマネージャーさんはどんな提案があるのかな?」
「サチ先輩って、物欲ないじゃないですか」
「そうねえ、」
「でも、バレーボールは大好き。バレーボールのグッズとかも考えたけど、それはなんか違う気がして。だから、バレーボールをみんなでやるのはどうかと思って。試合形式で」
へえ。
今まで、プレゼントばかり考えていたが、確かにそういうのはありかもしれない。というかサチなら絶対そっちの方が良い。
「練習の後に、って思ったんですけど。……でも自主練の時間減っちゃうし、やっぱ微妙ですかね、」
さっきまでの自信に満ちた勢いは、急に下降する。
「サチ先輩の誕生日、森然合宿に重なっちゃうから、そこでやるのが一番いいかなって思ったんですけど。……あ、じゃあ、招待状だけ渡して、後日、とか、―――」
「いや。やろう。日程は他校にも確認するとして、サチのスパイクもサーブも強烈だしコースついてくるから、守備の練習ってことにすれば、やる気ない連中も参加するだろうし、」
やる気ない連中とはいわずもがなリエーフのことである。スパイクの練習ばかりやりたがって、守備は敬遠しがちである。守りの音駒で、それではいただけない。
しかし、試合形式ってことにして、サチ主役の―――サチが楽しむための―――練習とするならば、ネットは女子用の高さになるし、そうなれば男子側の制限をつけなければならない。つまり、自然とレシーブの練習になるだろう。というかそうなるようにルール作りをしよう。
「ほんとですか!? 良かった~、絶対サチ先輩喜んでくれると思うんですよね」
「よし。じゃ、いろいろと打ち合わせが必要だな。日程とか確認するから、改めて話すか。……サチ先輩には内緒でな」
「はいっ!」
ここからしばらくは、部活前後でサチからコソコソとすることが増えるのだった。
18新マネちゃんの策略その2
サチ『研磨、黒尾の好きな人って誰だと思う?』
研磨「……ロングでキレイ系でバレーに興味がある子って前に言ってたよ」
サチ『ああ、それ、真面目なヤツだったの?』
研磨「そうなんじゃない」
サチ『でもそれだけじゃ、突き止めるのは難しいな』