Que Sera, Sera. -ケセラセラ-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そこまで距離が離れているわけではなかったので、すぐに自販機には到着し、しかし2人がいいと言われた割には、道中無言だった。
『何飲む?』
「あ、自分で―――」
『いいよ。1週間迷惑かけたし、好きなの選んで』
「、」
そこでだんまりをしてしまう咲良。そんなに私におごられるのイヤかね?と思いつつ、好きか嫌いかの二択なら返事をもらえるだろうと、『これは? 好き?』と適当に飲み物を指さす。
「あの、サチ先輩」
しかし返ってきたのは返事ではなく私の名前。
そういえば、倉木さんと呼ばれていた気がするが、今日は徹底してサチ先輩、である。と今さらに気が付く。
『ん?』
「あの、えと、」
ああ、飲み物を買う前に話をつけたいのかな。
そう思って、向き直れば、しばらくそわそわしていたが、ばっと顔を上げた。身長差は20㎝ほどになるらしい。
「インハイ予選のとき、中学のチームメイトの人とわざと会わせました。ごめんなさいっ」
勢いに任せて。潔い発言の後、20㎝上を見ていた顔を、また素早く下げた。それはもう低く低く。そして動かない。
視界ではそんな咲良の様子を捉え、しかし頭では咲良の発言の意味を考えていた。
確かにあの時、「なんか、梟谷の先マネさんが呼んでたんですけど」と咲良に呼ばれて2階席まで向かった。そして元チームメイトと出会い、小競り合いになった。ああ、咲良が計画したのかあ、と。まあ、でもそれだけ。それに対してあまり何も思わなかった。
でも、言わなければばれなかったであろうことを、今目の前で紳士に頭を下げる咲良には、好感を持てる。
そして、黒尾との先ほどの会話を思い出した。何も思わない、だけでは今までのまま。チームメイトとして、咲良に向き合わないといけないのだと、思う。
『顔を上げて? ……なんでそんなことしようと思ったの?』
上がった顔は、また涙目になっていたが、必死に涙をこらえているようだった。
「偶然、サチ先輩のこと話してるあの人たちの会話を聞いて。サチ先輩、何でも完璧だから、なんかマイナス面を知れたらいいなって。……ホントに軽い気持ちで、」
でもあんな大ごとに、なるって、思ってなくって。たぶんそう続けたかったんだと思うけど、こらえていた涙が決壊してしまったようで、うまく話せていない。
「あと、黒尾先輩はサチ先輩のことしか見てないから。嫉妬、みたいな気持ちも、ありましたっ」
最後に変なのぶっこんできたけど、まあとりあえずソレは置いておこう。上から順に整理する。
『まず。中学のチームメイトの件は、そこまで気に病むことないよ。中学の頃にイロイロあったのは事実だし、咲良が私に何かしたわけじゃないし』
「でも、私があそこに連れて行かなければ、会わずにすみました」
『……んーそうかな? いずれどこかで会ったんじゃない? それが遅いか早いかの違いだったんじゃないかな。まあでも、今回ああして言い合いできて、私は良かった。おかげで、得るものもあったから』
なおもしゅんとしている咲良に、どうすればいいかな、と考えを巡らせる。ああ、いつも黒尾がやってるヤツ。そうして咲良の頭を優しくポンポンとした。
上目遣いでこちらを見てくるのが可愛いなと。
『次、私は完璧ではない』
「嫌味ですか」
ツッコミのように素早い反応で、少し笑える。
素直に笑ったら、「サチ先輩も笑うことあるんですね」と。
『……ご存じのとおり、苦手なことは、愛想よくふるまう』
「それは、そうですね」
なんか癪に障るが、とりあえずスルーして続ける。
『あとは、ニンジン嫌い。勉強も好きじゃない。携帯電話もあまり見ない』
「え、ちょっと待って。勉強できないんですか?」
『いや、できないとは言ってない。好きではないだけ』
「え、赤点取ったことは?」
『んー赤点はないけど。1年の時に世界史で13点取ったよ』
ウチの学校は、平均点の半分以下が赤点となっている。この世界史の平均点は21点。だから赤点は免れた。
「100点満点ですよね?」
『モチロン』
「ええー。世界史と言えど、それはないですよ、」
『反論は1年の2学期か3学期かのテストの結果が出てからにしてください』
そこまで話して、ようやく咲良が笑った。
黒尾に向けていた、屈託のない笑顔が、今私にも向けられている。
「サチ先輩も、やっぱり人間なんですね」
『宇宙人と思ってたの?』
「完璧すぎて。でも、バレーの中だけの話ですね」
ああ、なんかそのワードはいいな、と思った。
バレーの中だけ。
バレーの中だけは真面目だし、熱中するし、大好きだ。
『あと、黒尾が何て言ったっけ?』
「あと、黒尾先輩はサチ先輩のことしか見てないってヤツです?」
『そうそうそれ。そんなことないから。幼馴染ってだけで、付き合ってるとかもないし、私も興味ないし、だから応援するよ?」
喜ぶかと思ったのに、なんか急に押し黙った。どう話そうか、と考えているかのように。
「黒尾先輩は、あきらめる、というか、別に好きじゃないかなって」
『え、そうなの? あんなに追いかけてたのに』
「うーん、まあはい。なんかほかに追いかけたい人ができたというか」
『ええ、そうなんだ』
黒尾、私がいない間に振られたようだ。ドンマイ、と言葉にはしない。今頃黒尾がくしゃみをしているかもしれないがそれは私のせいだ。
『誰なのかは聞かないけど、』
「え、聞かないんですか?」
『あ、聞く流れ? えーと、どちらの人?』
「教えませーん」
後輩に、遊ばれている気がしなくもない。でも悪くないなあ、と。
『何それ。まいーや』
「サチ先輩、ほんとに人に興味ないですね」
『急に刺された』
「黒尾先輩が言ってました。サチ先輩はあんまり人に興味ないからなあ、って」
『んー、でも興味を持てるように、今訓練中です』
「……黒尾先輩のこと、ホントにどうも思ってないんですか?」
なんでそんなことを咲良が言うのかわからないので、とりあえず『幼馴染とは思っている』と答えておく。
「はあ、黒尾先輩かわいそう」
『え、なんで?』
「どこからどう見ても、黒尾先輩、サチ先輩のこと大事にしてるじゃないですか」
『大事?』
確かに、私が困っているときにはお節介が過ぎるけど。でもそれは私だからではなく、みんなにでしょ? 黒尾とはお節介で世話焼きという代名詞。
「あ、今、”みんなに優しい”でしょとか思ってます?」
『……8割方そう』
「サチ先輩。私、サチ先輩の弱点をもう一つ見つけました。サチ先輩、鈍感すぎ」
言い逃げでもする勢いで、立ち上がると、先ほどの自販機の前で指をさす。
「サチ先輩これがいいです。これ買ってください」
なんかよくわからないけど、とりあえず咲良が元気になったからいいかな。なんか一歩前に進めた気がする。たぶん。
15ケセラセラ~物事は勝手に進む~
「今度恋バナしましょう」
『恋バナなんてやったことないけど』
「教えてあげるから大丈夫です」
『恋バナって教えてもらうものなの?』
『何飲む?』
「あ、自分で―――」
『いいよ。1週間迷惑かけたし、好きなの選んで』
「、」
そこでだんまりをしてしまう咲良。そんなに私におごられるのイヤかね?と思いつつ、好きか嫌いかの二択なら返事をもらえるだろうと、『これは? 好き?』と適当に飲み物を指さす。
「あの、サチ先輩」
しかし返ってきたのは返事ではなく私の名前。
そういえば、倉木さんと呼ばれていた気がするが、今日は徹底してサチ先輩、である。と今さらに気が付く。
『ん?』
「あの、えと、」
ああ、飲み物を買う前に話をつけたいのかな。
そう思って、向き直れば、しばらくそわそわしていたが、ばっと顔を上げた。身長差は20㎝ほどになるらしい。
「インハイ予選のとき、中学のチームメイトの人とわざと会わせました。ごめんなさいっ」
勢いに任せて。潔い発言の後、20㎝上を見ていた顔を、また素早く下げた。それはもう低く低く。そして動かない。
視界ではそんな咲良の様子を捉え、しかし頭では咲良の発言の意味を考えていた。
確かにあの時、「なんか、梟谷の先マネさんが呼んでたんですけど」と咲良に呼ばれて2階席まで向かった。そして元チームメイトと出会い、小競り合いになった。ああ、咲良が計画したのかあ、と。まあ、でもそれだけ。それに対してあまり何も思わなかった。
でも、言わなければばれなかったであろうことを、今目の前で紳士に頭を下げる咲良には、好感を持てる。
そして、黒尾との先ほどの会話を思い出した。何も思わない、だけでは今までのまま。チームメイトとして、咲良に向き合わないといけないのだと、思う。
『顔を上げて? ……なんでそんなことしようと思ったの?』
上がった顔は、また涙目になっていたが、必死に涙をこらえているようだった。
「偶然、サチ先輩のこと話してるあの人たちの会話を聞いて。サチ先輩、何でも完璧だから、なんかマイナス面を知れたらいいなって。……ホントに軽い気持ちで、」
でもあんな大ごとに、なるって、思ってなくって。たぶんそう続けたかったんだと思うけど、こらえていた涙が決壊してしまったようで、うまく話せていない。
「あと、黒尾先輩はサチ先輩のことしか見てないから。嫉妬、みたいな気持ちも、ありましたっ」
最後に変なのぶっこんできたけど、まあとりあえずソレは置いておこう。上から順に整理する。
『まず。中学のチームメイトの件は、そこまで気に病むことないよ。中学の頃にイロイロあったのは事実だし、咲良が私に何かしたわけじゃないし』
「でも、私があそこに連れて行かなければ、会わずにすみました」
『……んーそうかな? いずれどこかで会ったんじゃない? それが遅いか早いかの違いだったんじゃないかな。まあでも、今回ああして言い合いできて、私は良かった。おかげで、得るものもあったから』
なおもしゅんとしている咲良に、どうすればいいかな、と考えを巡らせる。ああ、いつも黒尾がやってるヤツ。そうして咲良の頭を優しくポンポンとした。
上目遣いでこちらを見てくるのが可愛いなと。
『次、私は完璧ではない』
「嫌味ですか」
ツッコミのように素早い反応で、少し笑える。
素直に笑ったら、「サチ先輩も笑うことあるんですね」と。
『……ご存じのとおり、苦手なことは、愛想よくふるまう』
「それは、そうですね」
なんか癪に障るが、とりあえずスルーして続ける。
『あとは、ニンジン嫌い。勉強も好きじゃない。携帯電話もあまり見ない』
「え、ちょっと待って。勉強できないんですか?」
『いや、できないとは言ってない。好きではないだけ』
「え、赤点取ったことは?」
『んー赤点はないけど。1年の時に世界史で13点取ったよ』
ウチの学校は、平均点の半分以下が赤点となっている。この世界史の平均点は21点。だから赤点は免れた。
「100点満点ですよね?」
『モチロン』
「ええー。世界史と言えど、それはないですよ、」
『反論は1年の2学期か3学期かのテストの結果が出てからにしてください』
そこまで話して、ようやく咲良が笑った。
黒尾に向けていた、屈託のない笑顔が、今私にも向けられている。
「サチ先輩も、やっぱり人間なんですね」
『宇宙人と思ってたの?』
「完璧すぎて。でも、バレーの中だけの話ですね」
ああ、なんかそのワードはいいな、と思った。
バレーの中だけ。
バレーの中だけは真面目だし、熱中するし、大好きだ。
『あと、黒尾が何て言ったっけ?』
「あと、黒尾先輩はサチ先輩のことしか見てないってヤツです?」
『そうそうそれ。そんなことないから。幼馴染ってだけで、付き合ってるとかもないし、私も興味ないし、だから応援するよ?」
喜ぶかと思ったのに、なんか急に押し黙った。どう話そうか、と考えているかのように。
「黒尾先輩は、あきらめる、というか、別に好きじゃないかなって」
『え、そうなの? あんなに追いかけてたのに』
「うーん、まあはい。なんかほかに追いかけたい人ができたというか」
『ええ、そうなんだ』
黒尾、私がいない間に振られたようだ。ドンマイ、と言葉にはしない。今頃黒尾がくしゃみをしているかもしれないがそれは私のせいだ。
『誰なのかは聞かないけど、』
「え、聞かないんですか?」
『あ、聞く流れ? えーと、どちらの人?』
「教えませーん」
後輩に、遊ばれている気がしなくもない。でも悪くないなあ、と。
『何それ。まいーや』
「サチ先輩、ほんとに人に興味ないですね」
『急に刺された』
「黒尾先輩が言ってました。サチ先輩はあんまり人に興味ないからなあ、って」
『んー、でも興味を持てるように、今訓練中です』
「……黒尾先輩のこと、ホントにどうも思ってないんですか?」
なんでそんなことを咲良が言うのかわからないので、とりあえず『幼馴染とは思っている』と答えておく。
「はあ、黒尾先輩かわいそう」
『え、なんで?』
「どこからどう見ても、黒尾先輩、サチ先輩のこと大事にしてるじゃないですか」
『大事?』
確かに、私が困っているときにはお節介が過ぎるけど。でもそれは私だからではなく、みんなにでしょ? 黒尾とはお節介で世話焼きという代名詞。
「あ、今、”みんなに優しい”でしょとか思ってます?」
『……8割方そう』
「サチ先輩。私、サチ先輩の弱点をもう一つ見つけました。サチ先輩、鈍感すぎ」
言い逃げでもする勢いで、立ち上がると、先ほどの自販機の前で指をさす。
「サチ先輩これがいいです。これ買ってください」
なんかよくわからないけど、とりあえず咲良が元気になったからいいかな。なんか一歩前に進めた気がする。たぶん。
15ケセラセラ~物事は勝手に進む~
「今度恋バナしましょう」
『恋バナなんてやったことないけど』
「教えてあげるから大丈夫です」
『恋バナって教えてもらうものなの?』